そろそろ本格的に、主人公に能力を使わせたいと思いながらも、周りが色々と暴走して混乱して、最終的に主人公に集約していくってものにしたいと願いながら、結果的にこんな形となりました。
「びぃまーな?」
『たわけ、『ヴィマーナ』だ』
「ヴぃまーナ?」
『小僧、本気でやっているのか?』
「がんばってます!」
こんにちは、佐藤・浩介です。
また悟りました。これは夢です、絶対に夢です。なんか昔のエジプトみたいな宮殿の上で、金髪の男の人と発声練習しています。前に出した金色の御船って『ヴぃまぁな』って言うらしいです。
この人が言うには、きちんと名前を呼べば出てくるってお話なので、きちんとお名前を呼べるように頑張って発声練習しています。
『初歩の初歩だが、貴様に扱えるのか?』
「がんばります」
『努力は認めてやろう。我の宝物庫を扱うには十分と、認めてやらなくもないが。しかし、このような小僧とは』
好きで貰ったんじゃないんですけど、そんなことを言ったら怒られそうなので黙っています。
後、この人の名前ですが、ぎるがめっしゅ? というそうです。難しい名前に何度か舌を噛みました。
『ギルでいい』
半泣きしたらギルって簡単に呼んでいいと、認めてくれました。見た目は怖いけど、優しい人だと思います。
きっと。
『見ろ、あれが貴様の宝物庫だ。我の宝物庫はこの世のすべての財が入っていたが、貴様のは多次元世界のものも入っているようだな』
「え?」
たじげんせかいって何なのか、聞いちゃダメかな。ダメだろうな、ダメって感じだな。
『いや待て、おい待て。なんだその顔は? まさか貴様、自分の蔵の中身を知らぬのか?』
「知りません。くらってなんですか?」
『そこからか。まったくあの女神も・・・・・・いや待て、まさか『また』か?』
あ、ギルさんが頭を抑えています。頭痛でしょうか、あれは痛いのですぐに治るといいなぁと願ってます。
『あの駄女神め。宝物庫の設定に細工をしたな。この世界ではなく、『人が関わったすべて』に変えるとは』
よく解りませんが、ギルさんが調子が悪そうなので、今日はここまでと思います。
『まて貴様! ええい! この『空間の支配権』は貴様にあるのだぞ! 貴様が終わると。待てといっているのが聞こえんのか?!』
「大丈夫です! 『ヴィマーナ』! 言えました!」
『たわけが! それだけではなく』
あ、朝だ。
朝です、起きました。起きたけど、なんだか体中がダルイ。もう少し寝ていたいけど、学校に遅刻できないし。
「よっしピンポイント!」
「さすがリーナ! 後は座標を固定して転移地点を確保して」
なんだか、朝からリーナさんとラキシスさんが騒いでいます。朝ごはんってまだ食べてないんじゃないかな。
「はい、どうぞマスター」
「あ、はい」
深雪さんにマスターって言われると、なんだかくすぐったい気持になるんだけど、止めてくれないよね。
ラキシスさんが最初にマスターって言うから、皆がマスターって呼んできて困るんだけど。
「今日は何で学校に行きましょうか?」
「艦艇で」
イオナさんがぐいぐい来ます。もう止めてください、『かんてい』で行ったら僕はクラスメートに何を言われるか。
『かんてい』ってなんだっけ?
「マスターは戦艦と空母、巡洋艦と潜水艦、どれがいい?」
「え、あのそれってなんですか?」
「船の種類」
御船かぁ、御船ならもうあるからいいや。
「最大で一キロの船もある。ロマンが素晴らしい、乗ってみると病みつきになる」
うん、止めておこう。
「大丈夫です、僕はギルさんの訓練で御船を呼べるようになりましたので」
「え?」
「はい?」
あ、イオナさんと深雪さんが固まった。ふっふっふ、僕だって何時までも子供じゃなのですよ。頑張って一人でやれることはやらないと。
「ごちそうさまでした。じゃ」
身支度を整えて、歯磨きして、制服を着て、鞄を持って。
「『ヴィマーナ』!」
あ、本当に出た。うわ、ギルさんって凄い人なんだ。
『貴様、信じていなかったな?』なんて、脳内でギルさんの声が聞こえた気がするけど、気にしたら負けだって僕の何かが叫んでいる。
「じゃ行ってきまぁぁぁす」
「マスター?!」
止めたって駄目です、僕は振り返らない男。涙を流さずにくーるにさるのがいい男だって誰かが言っていたから。
くーるってどういう意味だっけ?
辞典で調べてみようっと。
あれ、学校が見えて通り過ぎた。『ヴィマーナ』って速いな、これなら車に乗らなくてもすぐに目的地に着ける、便利だな、見た目が派手で降りる場所を選ぶけど、便利だな。
さてと、あの公園の茂みに降りて、『ヴィマーナ』を宝物庫に入れて。
「こーすけ君?」
「あれ、なのはちゃん」
なんでここにいるの!? あれ、なのはちゃんの通学路だった! なのはちゃん、バスじゃないの、なんで徒歩で学校に行っているの?!
「こーすけ君、あの御船とその金色の輪っかは何なの?」
「なのはちゃん、学校に遅れるよ」
「教えてくれないの?」
語尾がなのなのになっている、ちょっと怖い。見た目はいつもと変わらないのに、なんか背負っているみたいで怖い。
「教えて教えて教えて」
ぽかぽかと叩いてくるので痛い、ような気がする。なんだろう、昔なら痛かったのに今はちょっと触れたような感じでしかない。
『そりゃ、第四真祖だからな』、『死神にあの程度ではのう』とかお兄さんとおじいさんが言っているけど、どういう意味なんだろ。
僕はそのままなのはちゃんに叩かれるままに学校に行きました。
そして、授業を受けている僕に突き刺さる視線がいくつか。
なんでアリサちゃんとすずかちゃんにも見られているの?
僕、何もしてないよ。
浩介不在のフロート・テンプルでは。
「へぇ~~中々いいじゃない」
「え? なんでリーナさんがMHを操縦できるんですか?!」
ラキシス絶叫。まさかまさかで、リーナがレッド・ミラージュを操っている。本来なら騎士とファティマが揃っていないと動かない機体が、たった一人のコントロールで縦横無尽に駆け抜けていく。
さすが、脳内に演算を積んでいるとか、CADの補佐があるとはいえ科学的な魔法を使う魔法師。
一方、深雪は動かせない。純粋な身体能力の差か、あるいは『転生特典』関連で身体データが改ざんされているか。どちらかは誰も答えを出せないでいるが、リーナは動かせて深雪は動かせない。それが事実。
一通り訓練場を動かしたリーナは、ハンガーにレッド・ミラージュを戻し、コクピットから出て歩いてきた。
「今度、私がマスターを迎えに行くわよ?」
「いいですよ。私が行きますから」
「遠慮しないでラキシス。ほら、私は対人戦もできるから、適任じゃない?」
「それなら私もできます」
「へぇ~~そう、なら強いほうが迎えに行くって言うのは?」
「望むところです」
バチバチと二人の間に火花が散る。ゆっくりと二人はそれぞれの右手に、自分の武器を取り出す。
リーナは銃の形のCADを、ラキシスは光剣を。
隙を窺うことなく体を動かし始め、そしてどちらともなくぶつかりかけて、両者の足元が凍りついた。
「お二人とも、ここが『どこか』忘れましたか?」
冷たく見つめる深雪の言葉で、二人は武器をしまう。
ここは朱塔玉座、マスターの居城。敵の侵入以外で、この場にて武器の使用は認められず。暗黙の了解が二人の脳裏を駆け抜ける。疑問を挟まず、それが当たり前だと確信して、二人は両手を上げた。
「悪かったわよ、深雪」
「すみません」
「二度はありませんよ?」
にっこりと微笑む深雪はとても綺麗で可憐なのだが、その気配は冷たい極寒の空のようで、二人は震えるように頷いたのでした。
「とにかく、MHの製造はこれで終了ですね」
話題を切り替えるように深雪がモニターを展開した。次々のデータを流し画像を映し出すモニターは、次に別の人型兵器を浮かべる。
「ガンダム系ねぇ。本当に必要なの? 二十メートル以下の人型兵器なら、MHのほうが速度、攻撃力共に高いじゃない」
リーナが反論を口にした。確かにMHの反応速度はスバ抜けている。銃弾を回避する人型兵器なんて、何処の世界を探してもないだろう。あるいはあったとしても残像攻撃が可能としれば、大抵の敵が直接対決はしないで回避していくだろう。
MHに対抗できるのはMHのみ。その中でも最高レベルの機体が、『レッド・ミラージュ』だ。動力炉の見直し、装甲材質の再構築、武装のアップグレード、間接や機体フレームの新規製造と、知り得た知識と技術を使って見た目はそのまま中身は別物にした機体は、作ったラキシス達にとっても思わずに引いてしまうほどの機体になってしまった。
「強すぎます。この機体を市街地で使ったら、恐らく十万人の都市くらいなら一日の戦闘で灰燼になります。そうなったら、マスターは悲しみます。だから市街地戦になったとしても、周辺を『ある程度、壊さないように戦える』戦力が必要ですから」
ラキシスは説明しながらも、画像を切り替えていく。
基本設計で弾いたもの、戦術を考慮した時に不採用にしたものを除外していき、最後に残った機体はまっ白い機体だ。
「RX-0『ユニコーン』、これを製造します」
「ガンダムではなく?」
深雪が挟んだ疑問に、ラキシスは首を振る。
「ガンダムはすでに製造完了しています。後は技術評価と試験のために、F91とGP03、その追加兵装。νガンダムとその発展形の武装。これらを建造した後、別の可能性を模索します。できれば、核融合炉ではない動力炉を使用したので」
ラキシスが説明しながら、画像を切り替える。話に出たガンダムの機体のデータが別々に浮かび、やがて別世界の機体が浮かび上がる。
「できれば、太陽炉の機体、エイハブ・リアクターも製造したいですね」
「重力子機関のダウンサイジング、やる?」
イオナの提案に誰もが思案顔になった。
できないことはない、かもしれない。データはある、縮退炉、波動エンジン、モノポールエンジンといったSF作品、あるいはロボット作品に出てきた動力炉は実物と同時にデータが『フロート・テンプル』には収められていた。
やろうと思えば、複数の世界の技術を繋ぎ合わせて、完全なオリジナルの機体を作れるのだが、ラキシス達はそこで手を止めてしまう。
禁止項目だから、神様側でロックをかけていたからではない、それをしたら引き返せないのではないか、と危惧してしまうから。
もっと深い場所に、戦争のない世界に、戦争の道具を持ち込んだ。そこからさらに技術を発展させたら、『もっと凄惨な戦争を呼び込むような』気がして。
「重力子機関のダウンサイジングを行います」
ラキシスは俯いていた顔をあげて、そう告げる。
「やるの?」
「いいのね?」
リーナと深雪の『覚悟したのか』の問いに、彼女はゆっくりと頷く。
「私たちが躊躇した結果、マスターに被害が及ぶことのほうが怖いから。やれることはすべてやります」
「OK、ならやりましょう」
「データの再確認、行いますね」
リーナが頷いて歩き出し、深雪は端末を持ち上げる。
「一人で背負わない。ここにいる皆で護るのがマスターだから」
イオナはそっとラキシスの背に手を触れて、そのまま歩きだして行った。
「解っています」
そう呟き、彼女も歩き出した。
なのはちゃんの追及を回避して、なんとか学校が終わった後の放課後です。
ただいま、佐藤・浩介、ピンチです。
「おい予定にないぞ」
「仕方ないだろ、見られちまったんだから」
何故か知らないけど、誘拐されました。隣にいるのはアリサちゃんとすずかちゃんです。
『ふむ、難儀な宿命よのう』なんて、おじいちゃんは呑気だなぁ。
「やるか?」
「そうだな。悪いな、小僧、怨みならそこの化け物を恨みな」
え、化け物、なにそれ。
「いや、止めて」
え、すずかちゃん顔色が悪いけど、そうだよね。こんな怖いお兄さんたちに捕まって、ロープでぐるぐる巻きにされたら、怖いよね。
「すずかがなんだって言うのよ?」
「知らないのか? そいつはな」
「止めて!」
うわ、初めて聞いたかも。すずかちゃんってあんなに大きな声が出るんだ。
うんうん、でも大きな声なら悲鳴みたいじゃなくて笑い声のほうがいいって思うのは、僕がだけかな。
「吸血鬼なんだよ!」
へぇ~~~、え?
『なんだ、俺達と同じか。いや、それにしては能力が低いような』。だるそうなお兄さんがそんなことを言っています。吸血鬼って、あれかな、血を吸うって言うのかな。でも、すずかちゃんは普通に食事していたし。
「どうだ、驚いたか?」
「だからなんだっていうのよ!? すずかは私の友達よ!」
お~~~アリサちゃん、かっこいい。これは男として負けてられない。
『そうだよな、女の子にここまで言わせたんだ。やろうぜ』。お兄さんも手を貸してくれるみたいだ、良かった。
「そうかよ、おい、もういいぜ、殺せ」
「ダメぇぇぇ!!!」
うん、決めた。すずかちゃんとアリサちゃんを悲しませたんだ。
許してやらないからな!
「レグルム・アウルス」
僕がそう呟くと、眩しい光が周囲を照らしました。
『第四真祖の眷獣は十二体。どいつもこいつも暴れん坊でな。一体だけでも戦争みたいなもんだから、扱いには気をつけろよ。って、おまえさ、暴走状態で出すなよ』。
お兄さんに怒られました。途中でお兄さんが制御してくれたので、被害は僕たちが連れ込まれた『廃工場が吹き飛んだ』くらいです。
あ、でももっと被害が大きくなるかな?
『マスターをよくも』
『へぇ~~そっか、そっか、マスターをそんな風にしたんだ?』
『誰の許しを得て、生きているのですか?』
怖い声出したラキシスさんと、リーナさんと、深雪さんがレッド・ミラージュを引きつれて暴れているので。
これ、僕の責任になるのかなぁ?
主人公、ギルガメッシュに発音を習う、でした。
後、意図的にひらがなで書いているところがあります。小学生だから、難しい感じや英語は、まだ言えないし覚えてないだろうからって意味です。
チュートリアル機能、暴走中、本来なら教えて終わりなのに、脳内に三人が住んでいるようなもの。でも体の支配権を奪ったり、主人公を強制的に眠らせたりなんてできないもよう。
あくまで、佐藤・浩介の体は佐藤・浩介のものなので。