よっし、小学生に能力過多できた。次はどうしよう、そろそろ原作に突入させた方がいいかな。
いや待った、その前に一悶着だ。
皆さん、こんにちは、佐藤・浩介です!
『いやそれはそうじゃないだろ』
『貴様、我に意見するとは。この能力はこちらに形にするのが最適だ』
『ふむ、そうなるとこちらはどうする?』
『待った待った、浩介に扱えるわけないだろ? なら、こっちを削ってだな』
『たわけ、それでは齟齬が出る。ここはだな』
ギルさんとこじょうさんとおじいさんが、僕の能力について頑張って組み立てています。女神様が色々と手を回してくれて、自動で統合されるらしいのですが。
『あ、太宰・治って異能を打ち消す能力だった。あれ、統合されて私の力も消している? ええ?! 抑止力も無力化されてるの?!』とか泣きながら叫んで、土下座していきました。
もう速かったですよ。頭が地面にぶつかって、穴が開いていますから。
これって僕の精神世界? ってものらしいけど、いいのかな。穴が開いているけど、起きた時に何かあったりしないかな。
『こんなもんか?』
『今のところ不備はない。これならば我の宝具をつければ、一般人と同列になれるであろうな』
『フム、英雄王の一般人は何時の時代のものであろうな?』
『神話の時代の一般人って、俺達の世界じゃ超人って言わないか?』
『仕方なかろう。こやつの中にある力は、一つの世界でも『超級の英霊』に匹敵するものばかり。ここまで抑え込んで統合させた我らの手腕、見事と褒めるべきではないか?』
『致し方ないな。しかし、流刃若火の威力があがっとるのは?』
『げ?! 眷獣もレベルアップしてるぞ』
『我の宝具はそのままか。いや待て、なんだその射出速度は? 亜光速を超えてやるとは誰を目指している』
なんだか賑やかです。
賑やかなんですけど、僕にはきっと関係ないと思います。目が覚めたら、学校の用意をしないと。きっとまたラキシスさんが、『今日こそ送っていきます』って待ち構えているかも。
きっと違うよね、ラキシスさんとリーナさんと、深雪さんにイオナさんが、怖い顔で待っていることもあるけど、今日はないといいな。
ヴィマーナがあるからいいって断っても、ロボットとか飛行機とかで送っていこうとするんだから。
でも、あの胸のライオンの顔がついたロボットはかっこよかったなぁ。
『なあ、あれってジェネシックガオ・・』
『言うな真祖よ! 我はもう休むぞ!』
『あちらで建造中のは、神にも悪魔にもなれる皇帝機ではなかろうか?』
『黙れ黙れ! 我はもう休むと言ったはずだ! 雑種! さっさと目覚めぬか?!』
あれ、ギルさんが必死だ。必死でいいんだよね。もう頑張って叫んでいるから、必死だよね。
「は~~い、また夜にね」
元気に手を振ると、なんでか三人が疲れた顔をしていた。
どうしたのかな?
「今日のごはんは豆腐とワカメのみそ汁に、鮭の塩焼き、梅干しとご飯です」
「わーい!」
うん、ご飯だ、ご飯。やっぱり朝はこうだよね。ウィンナーとか卵焼きもいいけど、鮭って大好きなんだ。
友達に渋いって言われたけど、何でだろう。
パンより御飯が僕の大好物です。
「ねえ、ラキシス、ちょっといいかしら?」
「ダメです、リーナ。言いたいことは解りますから」
「解っていますか?」
うんうん、ご飯がおいしい、鮭も美味しい。やっぱり僕は日本人なんだって思うよ。
「ここ、食堂よね?」
「だから、言わないでください。はい、そうですよ」
「畳が敷いてあるんだけど、食堂よね?」
梅干し、スッパ! でも、ご飯が進むよね。うん、おいしい。
「あの天井、見事なシャンデリラですね」
「深雪まで乗らないで」
おみそしる美味しい。やっぱり、豆腐とワカメが最強だよ。もう地上最強だね。習ったばかりだけど、使いたい言葉だよね、最強って。地上最強なら、誰も勝てないからね。
「あっちの壁とかステンドグラスじゃないの?」
「いえ、あの、元々『フロート・テンプル』の朱塔玉座は、日本じゃなく西洋風の城ですから。まあ、中身は日本的なものもありますけど」
「そうではなく。ラキシス、目をそらさないで」
うん、ご飯、おいしい、鮭も美味しい。ごはん、もう一杯、食べたいな。
「あ、マスター、お代りですか? ご飯、まだありますよ」
「え、なにそれ? 電子ジャーじゃないの?」
「おひつって正気を疑う」
「イオナまで突っ込みしないで! はい、マスター、たくさん食べてくださいね」
「は~~い」
「・・・・もうダメ、ラキシス! なんでこんな西洋風の食堂の床に畳を敷いてちゃぶ台出して、全員が正坐してのごはんなのか説明して!?」
「明らかに場違いではないでしょうか?」
「場違いじゃなくミスマッチ」
「だってだってしょうがないじゃないですか! マスターが『落ち着かない』って言うんですよ! 何処かの個室を改造してもいいですけど、それじゃ出来たてが出せないじゃないですか!?」
「だからって畳を敷きますか?! ラキシス、貴方の頭の中はどうなっているのか不安よ!」
「畳よりもちゃぶ台に文句いいなさいよ、深雪! なんでテーブルじゃないの?!」
「リーナの指摘は明らかに違う。この場合、畳を敷いてテーブルとイスを用意しなかったことを指摘するべき」
「皆さんは好き勝手に言えていいですね?! あっちに見えるコックたちを前にして、そんなこと言えますか?!」
コックっていたんだ。僕がそっちに顔を向けると、何故か見たことある顔がチラホラと。
「誰あれ?」
「私の姉のアトロポスとクローソーです。後、エストさんと、アレクトーさんです」
「あ、コンゴウ、ヤマトにムサシもいる」
「コックなんですか?」
深雪さんの質問に、ラキシスさんとイオナさんは視線を反らしました。人の話はきちんと目を見てしないといけないって、学校の先生は言っていたんだけど、何か答えづらいことでもあったのかな。
「コックです。包丁で重装甲歩兵を刺身にできる、凄腕のコックさんです」
「包丁を持たせたら船体もすっぱり切れる。とても優秀なコック」
ラキシスさんとイオナさんがなんだか悲しそうな顔をしている。あれ、コックさんから何か思念のようなものが飛んでいるけど。
あれ、これが見えるって僕の新しい能力に関係しているのかな。
「ごちそうさまでした!」
「はい。マスター、今日は」
「ヴィマーナで学校に行ってきます!」
「マスター!!」
後ろでラキシスさんが嘆いているけど、僕は普通に学校に行くんだ! ロボットで行こうなんて考えない! 普通の小学生は、ロボットじゃ学校に行かないんだよ、ラキシスさん。
「あの! ジェネシック・ガオガイガー使っていいですから!」
僕は思わず振り返った。
「え、いいの?」
「はい」
「いいの?!」
「もちろんです」
「やったぁぁぁ!!」
あの凄いかっこいいロボット使っていいなんて。ラキシスさんも優しいなぁ、よっしあれに乗って学校に行こう。かっこよく校庭に降りて、友達に自慢してやろうっと。
「え、ラキシス正気?」
「冗談ですよね?」
「まさか、本気?」
「あ、え、その」
え、ダメなの、じゃヴィマーナで。
「マスター! レッド・ミラージュもかっこいいですよね?!」
「うん、カッコイイよ。でも、僕はもっと強そうなロボットが好きです」
「はいこちらをどうぞ!」
ラキシスさんが見せてくれたビデオの中で、レッド・ミラージュが山を砕いていました。
拳で。
「・・・・・・かっこいい!!」
「はい、かっこいいですよ!」
「貴方、今度はレッド・ミラージュに何を改造したのよ?」
「フェイズ・シフト装甲を、少しだけ。手だけをそっくりそのまま」
「はい、マスター、こちらもどうぞ」
深雪さんが見せてくれた映像で、ジェネシックが星を砕いていました。
「え、怖い」
「え、そうですか」
なんだろ、深雪さんが落ち込んでいるなぁ。あ、遅刻しそう。
「じゃ行ってきます」
「待ってください! 待ってくださいマスター! バルキリーありますよ!」
「艦艇で行くべき、マスター、乗って」
「二人とも落ち着きなさいって! 深雪、いいから復活して!」
わぉ、なんか色々と混乱してきた。
でも遅刻しそうだから、僕は颯爽とヴィマーナに飛び乗ったのでした。
あれ、今、部屋の中にいたような。あ、これがテレポートか。うんうん、便利な能力だなぁ。
「こーすけ君?! 何処から降ってきたの?!」
「あ、なのはちゃん、やっほー」
「コースケ!! あんたちょっとこっち来なさい!」
「そうだよこーすけ君、あの時のことを説明してよ」
「ありさちゃん、すずかちゃん、世の中にはじんちのおよばないことがあるんだそうですよ」
「はぁ?! 馬鹿にしてんじゃないわよ!」
「こーすけ君、いいからお話しようよ」
「こーすけ君! なのはが先なの!?」
うん、今日も僕のクラスは騒がしい。一番の親友の武藤・健は、小さく手を振って笑顔を向けているよ。
助けてよ、親友。
「いやだよ親友」
ケチ。
高町・なのはにとって、佐藤・浩介は一番の親友、それ以上に恩人。
小さい頃、父親が死にそうで、家族全員がバラバラになりかけて、それで一人で泣いていた時に、目の前に走り込んできたのが浩介だった。
『なのはちゃん! みっけ!』
凄いいい笑顔で、汗だくになって言った彼に、彼女は泣きだしてそのまま飛びついた。
それから、浩介は何処にいても、迷子になっても、必ずなのはを見つけてくれる、そんな安心感を与えてくれるようになった。
アリサ・バニングスと月村・すずかにとって、佐藤・浩介は高町・なのは経由で知り合った、友達。
そんなに親しい間柄でもないが、なのはと一緒にいることが多いので、よく話をする。
何処にいても、絶対に見つけてくれる。なのはが全幅の信頼を寄せる彼は、頼りになるというイメージではなく、落ち着きないガキといったイメージが良く似合う子だ。
勢いがいい、ジッとしていられない。そういったものではなく、何処となく『飛んで行ってしまいそうな』雰囲気を持っていた。
あの事件までは。
一緒に捕まったはずなのに、気がつけばアリサとすずかは助かっていた。家族に保護されて、誘拐犯の姿は何処にもない。
囚われていた建物もなく、彼の姿もなかった。
自分達の助けてくれたのは、家族ではないことは話の内容から解った。
では彼が。まさかと思いながらも、彼のいつもと変わらない姿に絶対に違うと思ってしまう。でも、と同時に感じてしまう。
佐藤・浩介なら、ひょっとしてと何故か信じられる、そういう気持にさせるのも彼だから。
「ただいま~~」
「だからゲッターです! 真・ゲッターを作りましょう!」
「何のためにそっち?! マジン・カイザーのほうがいいじゃない!」
「いいえ間違っています! ここはグランゾンを! ネオ・グランゾンの建造こそ急務でしょう?!」
「マクロス。マクロス・フロンティアを建造するしかない」
なんだろ、四人が難しい顔で言いあいしている。きっと会議中だね、それじゃ僕は宿題を終わらせて。
あれ、携帯電話に着信だ。
「もしもし、あれ恭也兄ちゃん?」
『浩介、ちょっと話があるんだが、時間を貰えるか?』
「いいよ、今から?」
『ああ、すずかちゃんとアリサちゃんと誘拐された件と、なのはが話している件についてだ』
あれぇ~ひょっとして恭也兄ちゃん、怒ってない?
ついに浩介、高町戦闘民族にロックオンされる。
小学生に雰囲気は読めなくても、あれだけの転生特典が入れば、達人には解るよね。
特に高町家の皆さんには!
さあ、浩介、ピンチだ。
武藤・健は、浩介にとっての一番の親友。家は遠いが、よく気があって話すことが多い。小学校に入ってから常に同じクラス。遊びに行く時は必ず一緒に行動して、馬鹿やって怒られることも度々。
最近、クラスの女子が気になっているご様子あり。