俺の命を救ってくれたのは人形師でした。   作:元ジャミトフの狗

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FGO二部五章後半を終えて、途中まで書いていた話を中断してこっちを仕上げ申した。


第10話

 ★1998年 9月20日★

 

 

 

 日曜日、例によって『伽藍の堂』の休日である。

 

 午後三時頃。今日の橙子はどうやら一人で集中したいらしく(何やら人形を作っていた)、空気を読んで散歩をしている身の上である。因みに式ちゃんと黒桐くんはデートである。先ほどたまたま逢瀬中の二人に会った。所感だが、超楽しそうだったので超羨ましい。今度橙子誘ってみよっと。

 

 さて、話は変わるが今現在俺は廃ビル立ち並ぶ観布子市にいる。

 

 浅上藤乃が存分に『歪曲の魔眼』を行使してくれたおかげで、路面に土がむき出しになっている複数箇所が見られ、廃ビルも二棟ぺちゃんこになっている。後処理は全部我が主(橙子様)がやってくれた。すっげぇ怒られたけども。

 

 だがここで注目すべきはそんな激戦の痕ではない。ましてや橙子に食費を100円減らされただとか、そんなみみっちい話でもない。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

 いや、元々観布子市のこの区間は人通りが少なく、だからこそ俺は浅上藤乃との対決の地としてここを選んだ。しかし俺が言いたいのはそういうことではない。

 

 こんな廃ビルしかない場所でわざわざ散歩しようだなんて、普通は思わない。だというのに気の向くままに散歩していた結果、まるで()()()()()()()()かのようにいつの間にかこの地に立っていた。

 

 「さて、どうしたもんかな」

 

 何をするにしても、既に()()()であることは察している。執行者もしくは『黒幕』による魔術か、俺に恨みのある魑魅魍魎による妖術か、それとも俺の全く知らない、理の外にある何らかの(わざ)か。何にせよ、これが如何なる者による策略であれ、迂闊にも俺はその術中に嵌ってしまった訳だ。

 

 

 そして、俺の目の錯覚でなければ目と鼻の先にあった空間が、世界が、時空が、ほんの瞬きの間だけ()()()

 

 

 気づいた時には全てが収まっていた。まるで何事もなかったかのように、構えていたのが馬鹿らしくなるくらいに。ただそこには一人の女性が当然の如く佇んでいた。

 

 

 着物と呼ぶには些か露出が目立つ和服もどき。何なら配色も艶やかに過ぎる。何より頭髪の色が桃色とか、これで「日本人です」と言われても納得しかねる。だからアニメか何かのコスプレ少女なのかと思ったが、それも違うようで。

 

 腰脇に差した二振りの刀剣。そして『視』ただけで分かるほどの殺人の相。しかしソレは決して快楽によるものではなく、慈悲と求道の結果である。言い換えればその女の本質は、時代錯誤も甚だしいが()()()()と形容すべきである。

 

 「あっちゃあ、またか」

 

 女剣士はこの状況に困惑する様子もなく、この良く分からない現象を事実として受け入れていた。そうして「よしっ」と己の頬を叩いてこちらに近づいてくる。

 

 ただ『歩く』という動作だけで、その女は『剣士』としての力量を示していた。

 

 今まで出会ってきた如何なる生物よりも()()。ともすればあの紅赤朱にも迫るほどの存在感。苦戦を強いられた鉄拳の嬢ちゃん(執行者)や、鬼のような強さを誇っていたあの()()()()()()()ですら霞んで見えるような錯覚を覚える。

 

 「お兄さん、もしかしなくとも達人でしょ」

 

 女は朗らかな笑顔だった。しかし鯉口を鳴らしながらする発言ではない。もっとも俺は剣士ではなく暗殺者であるため、そんな挑発に乗る意味がないのだが。

 

 「なんのことか」

 

 大体何の達人だって言いたくなる。人を殺す技術を磨いたって、所詮は人殺しにしか使えないのだ。まぁ、そんな考えをしているから、殺人で到達する()()()が俺にはないのだろう。

 

 「まっさかぁ。ここには他に人もいないようだし、ちょっと切り結ぶには良い環境だと思わない?」

 

 何て危険な人物だろう。優れた容貌と隠すつもりのない剣気。最初に抱いた時代錯誤という感想はあながち間違いでもないらしい。何故ならこの女の()()()は現代日本には到底当てはまらないからだ。

 

 つまるところ、あろうことかこの女は果し合いを望んでいる。

 

 「さて、俺にはてんで―――っ!?」

 

 視線を放したつもりはない。自然体のまま、俺は確かに女剣士の一つ一つの動作に気を配っていた。剣気が決壊前のダムのように溢れそうになっていたから、()()()()事は分かっていたし、そのために全身の準備と呼吸は整えていた。

 

 驚くべきはその足捌き。数メートルあった距離を、女は音もなくあっと言う間に詰めてきた。

 

 居合の軌道は魔眼の御蔭で辛うじて視えていた。だからほぼ反射的に上体を落とすことでやり過ごし、二合目に移る前に引き絞った弦の如き身体を解放し、その反動を利用して女の右腕目掛けて蹴り上げる。

 

 渾身の足技は着弾する。握力に衝撃が優り、女の握っていた太刀が飛んでいく。

 

 「なんのっ!!」

 

 しかし女剣士もまた(うま)かった。素手となった右腕をそのまま振り下ろす。云ってしまえば何の変哲もない、ただの徒手空拳。しかし地から足が浮いていた俺に迎撃の手段なんて在り得ない。そのまま顔面を殴り飛ばされる。

 

 その衝撃を甘んじて受け入れた後、即座に態勢を整える。地面に叩きつけられるよりも先に着手し、その勢いを殺す事なく距離を放した。

 

 「……()ってぇ」

 

 ジャケットを脱ぎ、脇に差していた二本の大振りのナイフを取り出す。刃が内側に大きく沿ったソレはククリと呼ばれ、銘をそれぞれ『鬼哭(きこく)三影(みかげ)』という。混血にして刀匠である刀崎一族、魂の逸品である。

 

 「びっくりしたーっ! お兄さん、やっぱり強いじゃない!」

 

 手首を撫でながら女剣士は愉快そうに笑う。下手をすれば人を殺めたかもしれないのにも関わらずだ。全くもって度し難いが、それが恐らくは侍もしくは剣士という生き物なのだろう。

 

 「もし躱せなかったら死んでたぞ、俺」

 

 「振り下ろした刀を止めることが出来て一人前。私、自分の腕には自信がありましてよ?」

 

 それはそうだろう。今のやり取りで文字通り痛いほど分かった。

 

 先ほどの蹴り上げ、八朝本家である『七夜』発祥の足技である。瞬きの間に六度の打撃を与えるこの技だが、そのうちの一撃のみしか当たらなかった。因みに全発命中すれば岩壁すらも穿つ自信がある。

 

 したがって初見で見切ったこの女は、紛うことなき達人である。特に()が良いのだろう。

 

 「このまま続けるのは俺の本意じゃない」

 

 女は暗に『殺すつもり』はないというが、白熱すればそれが最終的にどうなるかも分からない。うっかり斬ってしまったものなら、「ごめんなさい」の一言で済ましてしまいそうだし。

 

 そもそも技術的にも精神的にも、この女剣士の方が()()()()()だ。暗殺者と侍が一騎打ちすれば侍が有利になるのは自明の理というものだろう。なのにどうして一騎打ちを望むのか、これが分からん。

 

 「でも付き合ってくれるんでしょう?」

 

 笑顔をまるで崩す事なく、そんな事を宣う剣士。無駄に美人なのが余計に腹立つ。なんというか、強引さで言えば橙子といい勝負だと思った。

 

 「ならまずは名乗るのが礼儀だろうに。果し合いに興味はないが、何事も筋は通すべきだ」

 

 「ん、確かにその通り! 私ったらそんな事も忘れちゃって」

 

 本当に悪気はないのだろう。女は思い出したように口を押える。最後に「最近おうどん食べてないからかしら」とか意味不明な事を付け加えてるが、当然無視する。

 

 「浮世を渡ること幾星霜。未だ『(くう)』に至らぬ未熟者ですが―――

 

 

 

 ―――新免武蔵守藤原玄信、ここに見参っ!!」

 

 

 

 長い口上が終わってようやく名乗ったと思ったら、聞き逃せない、とんでもないビッグネームが飛んできた。

 

 

 




ぶっちゃけやりすぎた。
でもどうしても武蔵ちゃんを書きたくなったのです(泣

ぶっちゃけ事件簿は……

  • 漫画だけなら見たことある。
  • 小説呼んだぜ。
  • アニメだけなら見たことある。
  • 見たことない。
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