俺の命を救ってくれたのは人形師でした。 作:元ジャミトフの狗
―追記―
毎回誤字報告をして下さる皆様、本当にありがとうございます!
なんでこんな誤字したんだってくらい間抜けなミスをすることが多々あると思いますが、これからもよろしくお願いしますっ!
というかガンガン誤字報告してくださるとうれしいです、自分でも確認はしても見逃しがあるので(土下座
★1998年 10月3日★
退魔四家と呼ばれる、かつて日本の魑魅魍魎とその混血の排除を生業としていた『歪みを正す者』たち。超能力や体術といった、人間が『魔』に挑むために編み出した業を後世に託した過去の英傑の末裔。
しかし移ろう時代に、彼らは取り残された。公式な記録によれば、現在まともに機能していると言えるのは両義と巫淨のみである。分家として名を連ねる者たちであれば取り潰しを免れた一族もいるだろうが、大概は退魔の務めを忘れて久しい。敵対する混血の一族が高名な資産家として生き残っている事を思慮すれば、なんとも皮肉な話である。特に遠野の一族は幅を利かせてるどころの話ではない。
さて、そんな衰退の道を一途にたどる退魔四家。代表的な例でいえば、我が
そして七夜と同じく御家断絶と相成った浅神の一族。その遺児が俺の目の前にいる。名を浅上藤乃、万物を捻じ
「急にお呼び立てして申し訳ありません」
現在、俺と浅上藤乃は恒例というべきか、ともかくいつものアーネンエルベにいる。彼女は心底申し訳なさそうにこちらを見ていた。いやまぁ確かに唐突な連絡だったため驚きこそしたが、目くじらを立てるほどでもない。
「いいや。元気そうで何よりだ」
実際、浅上藤乃は三か月前と比べて随分と元気、もとい表情が豊かになっていた。痛覚を取り戻し、生の実感を得たからだろうか。なんにせよ、良い傾向であるように思う。
「はい、
朗らかに彼女は笑って見せる。それだけで腕と足を犠牲にした甲斐があったというものだ。
「さて。それじゃあ早速本題に移ろうか」
「そうですね。時間は有限ですから」
そう口火を切ってから、浅上藤乃はカバンから一つの写真を取り出した。赤のコートとシルクハットを被った三十代の男性が写っている。人を食った笑顔が妙に腹立たしい。
「この人は?」
「魔術師、なんだそうです」
「……なんだって?」
思わぬ人間から、思わぬ言葉が飛び出てきた。しかしそれ以上に目についたのが、目の前の少女がその美貌を心底不快そうに歪めていた点である。何なら目力だけで人を殺せそうな勢いだ。
「大丈夫か?」
「問題ありません。ですが、少し面白くない話ですので」
本当に面白くない話なのだろう。俺が「構わないよ」と言葉を返して、浅上藤乃はようやく愛想笑いを思い出したようだ。苛立たしさはそのままに、「失礼しました」と前置きして口を開く。
「先週、私はこの方に会いました。それで自分を魔術師などと」
「ふむ」
それはおかしな話である。魔術師が一般人(彼女が本当に一般人かどうかはさておき)に対して自ら魔術師であることを告白する事に何の意味もないからだ。むしろ神秘の漏洩を危惧して名乗りすらしない輩もいるくらいだ、それ相応の理由があって然るべきだが。
「何かされなかった?」
「いいえ。ただこれを貴方にと」
そういって写真をめくる。すると裏面に筆記体の英字で何やら書かれている事が分かった。英語は日常会話に支障がない程度に修めているが、流石にここまでミミズがのたくっていると読み辛い。
「拝借しても?」
「もちろん」
すっと差し出された写真をもらい受け、解読に奮起する。その間に浅上藤乃は「シフォンケーキを2つ」と店員さんに注文していた。1つは自分の分として、もう1つは俺のだろうか。だとしたらちょっとヤバイ、主に金銭的な意味で。
閑話休題。
僅かばかり時間をかけて英語の内容を理解した。魔術的な細工はない。ただ粘着質な恨みと怒り、そしてほんの少しの愛憎を筆跡から感じた。
「……明日、観布子市の巫条ビルにて待つか」
内容としてはこんな感じである。本当は魔術師らしく格式ばっている上に厭味ったらしい挨拶が長々と書かれていたのだが、全部省略して本題だけを述べたらたったの一行で済んでしまった。時間を返せ。
そして翻訳に夢中になっていたから関心の埒外だったが、目の前に2つのケーキがおかれていた。そして浅上藤乃は優雅に紅茶を嗜み、ケーキに舌鼓を打っていた。だというのに器用に殺気を振りまいているのだから、相当この写真の主に恨みがあるのだろう。
「……何もされてないんだよね?」
「
「私は?」
「はい、私は何も。勝馬さんに害を為す方だとわかっていても、何もされなかったから」
なるほど。つまりこの写真の魔術師は浅上藤乃に
「これは俺の問題だ。だから浅上さんは何も気にしなくていい」
しかし聞いた通り面白くない、本当につまらない話だ。わざわざ浅上藤乃を通している以上、
そして何よりも、自身の能力や性根、実家の事情に折り合いをつけてようやく日常を手に入れた浅上藤乃に
「よく我慢した」
彼女はもとより他者の痛みを快楽とする異常者だ。他人が苦しむ様を見て享楽してしまう人でなしである。それが先天的であろうが、後天的であろうが本来一般社会に馴染める人格者ではない。
しかしそれでいて良識を持ち、己が異端を弁え、人を思いやる事が出来るのも事実だ。
だからこそ、浅上藤乃は殺気すら振りまいてまで怒るのだろう。本当は世の不条理を、理不尽を
勇気のいる決断であると思う。或いは俺を信頼してくれているのかもしれない。
「あとは俺に任せてくれ」
ならば俺はソレに応える義務がある。
モノの道理とやらをその魔術師に教えてやるとしよう。
因みにケーキは浅上藤乃に奢られてしまった。彼女曰く、「せめてごちそうさせて下さい」と懇願されてしまったがためである。大変情けないと思いつつ口にしたシフォンケーキは大変美味でした。
★1998年 同日★
とある事務所の扉が開かれる。事務所の所長、すなわち人形師の女魔術師は作業する手を休めた。そして入室してきたのが自らの使い魔であるとわかると、胡桃色の目を細めて口を開く。
「今日はどこをほっつき歩いていたんだ?」
「橙子、この写真の男を知ってるか」
彼女の嫌味をまるで意に介せずに、使い魔はデスクに一つの写真を乱暴に置いた。
「……懐かしい顔だな」
「こいつに招待されてね、暇がほしい」
「何時だ?」
「明日」
「急だな」
「すまん」
「……まぁ、いいだろう」
人形師が答えると、彼女の使い魔は姿を消していた。周囲に揺蕩う無機質な殺気に、人形師はらしくないなと思った。
「まったく、身の程知らずな奴だ」
かつての学友が辿る末路を悟り、人形師はただ静かに目を閉じる。それは追悼であり、同情であり、せめてもの情けである。そうして数分の間だけ黙祷をささげた赤髪の人形師は、何事もなかったかのように作業を再開させる。
「決して嫌いではなかったが。しかし奴を怒らせるとは、全く本当に―――」
運がなかったなと、人知れず最後にそう付け加えた。
最近身の回りが少しづつ忙しくなってきましたね。嬉しいような悲しいような。
ところで最近APEXなるゲームを始めたのですが、なかなか面白いですね。
特にパスファインダーなるキャラが自分の性癖ぶっ刺さってます、全くうまく使いこなせませんが(笑
ぶっちゃけ事件簿は……
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漫画だけなら見たことある。
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小説呼んだぜ。
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アニメだけなら見たことある。
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見たことない。