ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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SAO デスゲーム開始前 後半

 突然だが、このソードアートオンラインでモンスターを倒した時に入手できるものには大きく分けて2種類ある。一つは経験値。そしてもう一つはドロップアイテム。

 

 前者の経験値は、与えたダメージに大きく依存してるので、ラストアタックとられた程度ではそこまで影響はない。

 

 問題はドロップアイテムだ。これは最後の一撃を当てたプレイヤーに優先的に…というかほぼ確実にレア物がドロップする。だからこそ、プレイヤー達は隙あらばラストアタックを取ろうとしているのだ。

だが、最後のラストアタックだけを掠めとる行為は、間違いなく、暗黙の了解を破る行いだ。

 

「なっなんでや!あのデカブツ、ワイらが必死に削ったやつなんやで」

「それを最後だけ攻撃して経験値だけとっていくのは流石に酷くないか??」

 

 キバオウさんたちが、青年に詰め寄る。キバオウさんに至っては既に片手を剣にかけている。

だが、青年は一言も謝る気はないどころか

 

「ふん。ウスノロどもがなにをのたまうか。能力のある者が限られたソースを占有するのは当然じゃろうが。ソードスキルも知らない素人の癖に生意気じゃわい」

 

 寧ろ煽りと取れる言葉を呟いていく。

 

「いい加減にせんか!このボケ!なにが能力のあるやつがソースを占有や!第一このゲームは今日からサービス開始やろ!」

 

 キバオウさんが、青筋たてながら怒鳴る。だが、キバオウさんは一つ見逃していることがある。

 

「あんた経験あるβテスターが独占すべきとでも考えているのか?」

 

ベータテスター。それはサービス開始前に一ヶ月間千人限定で行われたβテスト。それに参加した一般人のこと。確かに彼らなら今日始めたばかりのプレイヤーとは違い、確かに知識は持っているであろう。勿論β版の知識が今も通用するかどうかは別としてだがと管理者として付け加えておく(暗黒微笑)。

 

「そうだ。合理的じゃろ。」

 

 笑いながら青年はふてぶてしく言う。

 

「バカじゃねぇの?これたかだかゲームだぜ。何が合理的だ、何がリソースの独占だ。ただあんたがいい思いしたいだけだろ」

 

 それを俺は一刀両断した。が、青年は主張を撤回するつもりはないようであり、

 

「ふん。愚者共には、いっても分からぬわい」

「愚者? 人の獲物盗んで開き直っている。あんたの方がよっぽど愚者と呼ばれるに相応しいと思うが?」

 

ふん。と、青年は鼻で笑って抜刀する。

 

(無強化とはいえ、アニールブレードかよ...)

 

この、アニールブレードという武器。一層であれば片手剣トップクラスの能力があるのだが、その入手方法が超低確率で出現するモンスター(一応倒し続ければドロップ率は上がっていくが)のドロップ品との交換。現在、時刻は4時半。正式サービスが始まったのが1時なので三時間半で手に入れたと考えるとかなり早いのであろう。……どんな手段で手に入れたのかは知らないが。

 

「文句があるなら三人まとめてかかってこい。この世は弱肉強食。貴様らが持ってる剣は飾りかなにかかの?」

 

挑発してくる青年に遂にキバオウさんが遂に切れた。

 

「なら、弱肉強食っちゅうんなら、今ここでぶっ飛ばされても文句言うんでないで!」

 

抜刀。そのまま一歩踏み出し切りかかろうとするキバオウを、

 

()()()()()()()。」

 

 引き留める。

 

「なんでや!なんで止めるんや。まさかあのボケをかばうつもりじゃあらへんやろな。マクラギはん」

 

 まさかそんな訳ない。青年に向かって、笑顔を浮かべ歩いていく。

 

「何だ。なぜ不用心に近づく?」

 

 そして俺が足を止めたのは青年の目の前。青年が剣をふるえばなにもできずに斬られる距離だ。

 

「ねぇ不公平だとおもいませんか?こっちは三人。あなたは一人」

「……何をいいたいんだ貴様は」

 

 青年が本気で意味がわからないと言いたげに呟く。

 

「まさか裏切るつもりやあらへんやろな。マクラギはん」

「そんなわけ無いでしょう。簡単な話です。」

 

 そして、俺は武器を地面に落とす。システム上武器を落とす行為は、モンスターからのとある攻撃か、または

()()()()()()()()()()()()()()()できやしない。今回の場合は言うまでもなく後者である。

 

「はい?」

 

 予想だにしなかったであろう、俺の行為を前にして青年の目が点になる。

 

「なっなんでや。マクラギはん気でも狂ったんか」

「違う違う、キバオウ。()()()()()()()()()()()

「なんだと」

「だから不公平だから、一太刀分俺のどの部位でもいいから浴びせていいってことです。勿論俺は防御しませんし、避けもしません」

 

 意味不明な狂人を見るような目でこちらを見てくる目が(多分)三対。地味に傷つくのでやめてほしい。

 

「オススメは首ですね。うまく行けば八割は削れますよ」

「意味がわからんわ。いいからそっちからかかってこんかい」

 

()()()()()()()()挑発を続ける青年。思っていたとおりだ。

 

「いや、あなたは斬らないんじゃなく、()()斬りかかれないんでしょう。」

 

 図星だったようで、青年の端正な作り物めいた(というか作り物だが)顔が歪む。

 

「...そんなわけあるわけないじゃろ」

「なら攻撃してこいよ。」

 

 あがくように挑発をするがタネに気づいた以上は無駄だ。当然俺の挑発に相手の青年が動く様子はない。

 

「どっどういうことなんや。マクラギはん説明してくれへんか」

「簡単な話です。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あいつは」

 

 キバオウの連れが小さく「合法的な殺人」と呟く。

 

「このソード・アート・オンラインでは別のプレイヤーに意図的に攻撃すると、その瞬間から、体力バーがオレンジになって犯罪者プレイヤーとして認識されます」

「その『はんざいしゃプレイやー』になるとどうなるんや」

 

 キバオウからの質問にデメリットはなんだったかと少し考えて思い出す

 

「アンチクリミナルコード有効圏内、要するにモンスターの存在しない街や村に入れなくなりますね。」

 

 木田センパイを些細なことから刺殺したあと、近場の村に戻って油断した瞬間に多数のガーディアンに瞬殺されたのはいい思い出である。

 

「そして、もう一つ。オレンジプレイヤーを攻撃したプレイヤーは、オレンジプレイヤーにならないんです。」

「……だからこそ、システムに関知されない合法的な遺品目当ての殺人か」

 

 キバオウさんの連れが思わずといった形で呟く。

 

「それが分かったからなんだというんだ。オレンジにならずして、俺に攻撃を加える手段はない。」

 

 目の前の青年が吐き捨てる。……悔しいがその通りだ。正確には管理者権限を使用すればオレンジにならずに殺れないことはないが、こんなところで使おうものなら後で木田先輩にリアルで半殺しにされる。

 

「…マクラギはん。オレンジプレイヤーから元に戻る方法はあるんか?」

「あることにはあります。けれど凄く大変ですよ」

 

ならいいんや。そういってキバオウは、剣先を真っ直ぐ青年の方に向ける。

 

「待て待て正気か?初日にいきなりハンデ背負うようなものじゃろうが!おっお前らも、止めんかい」

「…そうだな。キバオウ」

 

 青年の都合のいい懇願にキバオウさんの連れは少し考え込んだが、

 

「付き合うぜ。一緒にアイツをぶっ飛ばそう」

 

 スモールソードを抜刀した。

 

 さて、この場面手伝いたいのだが俺はこれでも管理者の端くれである。そんな俺がプレイヤー同士の戦いのどちらかに協力していいものか……そんな俺の躊躇を見て取ったのか、キバオウから「マクラギはんは、引っ込んといてや!ここはワイらで決着をつけるんや!」と言われたのでありがたく静観を決め込ませてもらおう。そんな覚悟に押された青年のほうはというと

 

「こっこんなんやっていられるか! オレンジ覚悟で突っ込んでくる阿呆二人に、自らに一太刀を求める異常者め!」

 

 こう吐き捨てて

 

「ちょー待ってんか!あんさん逃げるな!」

 

 脇目も振らず逃げた。恥も外見もへったくれもないヘッピリ腰のくせにやけに早い。そしてそれを追ってキバオウたちは走っていきあっという間に全員地平線のそのさきまで(描写距離の限界まで)走り去っていき、そして見えなくなった。

 

「あっという間だったな。」

 

 一瞬追うかとも考えたが、今からだとおそらくもう追いつけないだろう。それよりも流石にログアウトも復旧しているだろう。そう考えながら先ほど落とした武器を回収し、メニューを開くが、そこにあるはずのログアウトボタンは()()()()()()()()()()()()()()

 

 これ以上この場にとどまり続けると、流石にリアルの事情が気にかかるのだが。そう考えたところで不意にβ時代のあることを思い出す。

 そういえば開発時にも似たようなことがあった。あのときは5時になると同時に鐘の音が響いて───

 

 何気なく時刻を見ると、メニューのデジタル時計が16:59から17:00にかわり、

 

リンゴーン  リンゴーン

 

 あのときと同じ鐘の音が響く。

 

 管理者全員が茅場センパイに集められたのと同じように

 

 

 青い光に包まれていく。なぜかどうしようもなく嫌な予感とともに




次回デスゲーム宣言。お楽しみに!
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