ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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後でやろう後でやろう。そう思っていたら前回からかなり立ってしまった...

なおこの話は実は半年前にはほぼ出来ていたという事実()



まずやるべきことを一つずつ

 ログインしているはずの健太(とその友達)を放って置くわけにはいかない。

 まず最初のショックから覚めて、次はどうするかと考えた時、最初に思い至ったのはその事であった。

 

ただ問題は健太のプレイヤーネームが分からないということである。名前のスペルさえ分かればフレンドでなくとも簡単なメッセージが送れる『インスタントメール』という機能があるのだが……

 

(これなら名前聞いておけばよかったな。)

 

 『アンカー』で使っていた『ヒルコ』という名前を使っているのか。使っているとしても、どういうスペルなのか分からない以上、送りようがない。万が一別人にでも送ってしまえば後々大変なことになる……可能性がある。

 

いっそのこと、顔は変わらないのだから手当たり次第に始まりの街中を探してみようかとも考えたが、さすがに東京都の小さな区一つ分くらいある始まりの街を手がかり無しに探すのは無謀だ。

 

どうするかと考える。現在俺がいる始まりの街の中心部には、暴徒化プレイヤーども(無理もない)がいて、あまり長居したくはない。

 

ここで、一つ思い出した施設がある。

 

『黒鉄宮』

 

 犯罪プレイヤー(オレンジプレイヤー)を収監し、旧ソード・アート・オンラインにおいては、プレイヤーのリスボーン地も兼ねていたところであるが、今はどうなっているのだろうか?

 

単純に開発時の監獄としての場所になっているのか、それとも何らかの役割が新たに足されているのか。

 

もし足されているとすれば、そこには『ログアウト』した人を弔うためのナニカ……例えばログアウト者がわかるような全プレイヤーの名簿等があるのではないだろうか?

 

「行ってみるか」

 

そこでようやく俺は立ち上がって、()()()()()への一歩を踏み出すのであった。

 

 

 

結論から言うと、黒鉄宮にあったのは巨大な石板だった。黒鉄宮の雰囲気も合わさり、ここと離れた()()()のようにも感じられ...

 

(バカか俺は。あくまでもポリゴンの塊だろ)

 

事実ここは、僅かながら俺自身自身が作成に関わった場所である。……石板以外は。

 

石板をよくみるとフォーカスレンズが作動して、実はそこには、プレイヤー名が左上から右下へとアルファベット順に並んでいることに気がつく。数は約10,000。プレイヤーの左右が若干空いているのは恐らく死因でもかかれるのだろう。

 

今まさに一人のプレイヤー名の上に黒線が引かれ、その右に死因落下死と刻まれたのがその事推測を裏付けた。

 

ひっそりと黙祷を捧げ、『H』の行から下に向かって『ヒルコ』と読めるキャラネームがないかと探していき……

 

(あった『hiruko』)

 

他に『ヒルコ』と読めるような名前はないから恐らくこれが健太の名前でほぼ間違えないだろう。もちろん黒線は引かれていない。当たり前である。

 

急いで、インスタントメールで、『hiruko』宛に簡単に状況を知らせて、十分後に『黒鉄宮』にて、落ち合う約束をするのであった。

 

 

 


〈デスゲーム宣言前〉

 

健太こと、ヒルコははたから見てわかるほどとてもあくがれていた。

 

 普段、彼が感情をここまで表に出すのは珍しい。()()()()()()()()()()()()()()内なる感情を出してしまったからだろうか?

 

そんな彼がここまであくがれている原因はやはり───

 

「みてみて、このお店可愛いね。ちょっと覗いていこうよ、ヒルコ!」

 

小物屋をみて、テンション高く跳び跳ねてるユウキの存在であろう。

 

従兄である直木兄ちゃん(白澤)と、その上司である木田さんから、自分ともう一人誰かを先に『アンカー』においての仮想世界のデータ収集の礼で、ソードアートオンラインに参加できると聞いて、誰を誘うかと、考えた結果…いや、実のところ考える暇もなく真っ先に思いついたのだが、ユウキを誘うことにしたのであった。

 

もし、仮にこれで、残りの『アンカー』の()()が、ソードアートオンラインに招待されることはない。と、いとこから言われていたのなら彼も少しは考えただろう。だが、最終的には皆招待されるのだ。なら、抜け駆けしたところで問題ない。し、不自然ではない…筈だ。と、健太は考えた。

 

事実、かなり自然にこのゲームにユウキを誘えたと、健太は思っている。

 

 .……実際には、端から見てはっきりと分かるくらい顔が赤かったのだが、その事実に彼と誘われた本人は気がついていない。更に余談だか、木綿季/ユウキ以外のアンカーの住民にとっては、健太/ヒルコがユウキに好意を抱いてることは、もはや暗黙の了解だったりする。

 

閑話休題

 

とにかくそんな訳で首尾よく(?)誘えたユウキと共に、二人()()()始まりの街で店をひやかしていたヒルコだったが、

 

「いっけなーい。もうすぐ5時で検査の時間になっちゃう。ログアウトしないと。」

残念ながらタイムリミットが来てしまったようであった。

 

「もうこんな時間か…」

 残念そうにヒルコは呟くがこればかりはしょうがない。ずっと遊んでいられるわけではないのだから

 

「じゃあね、ヒルコ!また明日!ヒルコはまだ遊ぶの?」

「いや、僕もここでログアウトしようかな? …ここで止めないと()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…そうだね」

 

 ユウキも、本音を言えばもう少し遊んで居たいのだろう。だが、恐らくだが、彼女にとって検査は欠かせないものだ。

 

「あれ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、ユウキの手がピタッと止まり、不思議そうな顔をする。

 

「え?確かメニューの目立つところにあったと思うけど…無いな」

 

 急ぎヒルコも、メニューを開きログアウトボタンを探してみるが…見つけることができない。

 

「バクかもね…他にログアウトする方法ってある?」

「GMコールすればログアウトさせてもらえるかも知れないけど……変だよ。だって______」

 

 ヒルコが内なる疑問をユウキに話そうとした瞬間。

 

 リゴ-ン リゴ-ン

 

鐘の音が響く

 

それとほぼ同時に、目の前に次々と人が現れる。十人とか二十人とかそんな生易しい数ではない。下手すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()と思うほどに多い。

 

「NPCではないですよね?」

 

とりあえず、ヒルコは近くにいた()()()()()()()()()をつけた武者男に話しかける。わからないことは素直に人に問う。彼の美徳とする精神である。

 

「もちろんそうだぜ。オレはクラインっていうんだよろしくな!ところでここはどこかわかるか?」

 

ここは始まりの街のとヒルコが言いかけた言葉は途中でユウキの短い悲鳴に遮られる。

 

「どうした。ユウキ」 

「上に」「上だと、何だあれは。」「キリトあれなんだか分かるか。」

 

 そこには、赤いローブを着た"ナニカ"が漂っていた。"ナニカ"には実体がなかった。ただ空だった。けれどそこにはたしかに描写し難い"ナニカ"があるのだ。例えるなら

それは剥き出しになった感情。悪意の区別などない純粋な子供が追いかけるような夢。純粋すぎる理想。

 

「分からないけど、あのローブはβテストの時に使われていた管理者のアバターが着ていたものだ、もしかしたら何らかの都合でアバターが用意できなかったのかもしれない。」

 

近くで発せられた言葉に心の中でヒルコは首を振る、そんなななまやさしいものではないと。いった本人であるキリトと呼ばれた男も似たようなことを思っているのか、浮かない顔をしている。

そんな考えを巡らせる中、なにかが話し出す。

『プレイヤー諸君、私の世界へようこそ私の名前は茅場 晶彦。

今やこの世界をコントロールできる唯一無二の人間だ。』

 

「茅場晶彦?!」

 

確かにあの人なら難なくできるだろう。とヒルコは納得する。茅場晶彦、フルダイブを確立させて仮想世界を作り上げた人だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして、そのまま茅場は語りはじめる。後にSAO事件と呼ばれるデスゲームのルールを。

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実である

 証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに

 私からのプレゼントがある。確認してくれ給え』

 

そして、茅場に言われるがままストレージを開き、手鏡をポップさせる。とたんに光に包まれて、

 

「なにか変わった?」

「さぁ」

 

 ヒルコは真っ先にユウキの方を見るが何一つ変わっていなかった。相変わらず可愛らし……いやなんでもない。

 

だが周囲のイケメン比率そして男女差さえもが明らかに減っていた。それはカッコいいバンダナ男とキリトと呼ばれた男性は例外ではなく

 

「お前キリトか?」

「ひょっとしてクラインか?」

 

顔が明らかに変わっていた。背丈と装備、それに声は変わっていないため流石に別人と考えるのは無理がある。

 

『───以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスの

 チュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の───健闘を祈る』

 

 その言葉を最後に茅場はいずれどこかに消えていき。

 

 そしてあとに残された始まりの街のプレイヤー達は、悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。咆哮。疑問を上げるだけ。

 

 

 

 とりあえずショックから回復したヒルコが、真っ先に聞いたのは───

 

「と、とりあえず。ユウキ、検査。検査は大丈夫なのか」

 

 ユウキのことだった。あっと短く声を上げる、ユウキ。その様子を見てとある疑念を抱くヒルコ。

 

「まさかとは思うけど忘れてた なんてことはないよねユウキ」

 

 その疑問を直接ぶつけるとユウキがバツが悪そうにそっぽを向く。

 

「いや、だってそのいろいろなことが一気に起こってそのなんというか頭から抜けてた……」

「確かに気持ちは分かるよ。僕だってまだ混乱から抜けきってないし。」

 

 そうだよね。まさかあの人が───そういって、ユウキは首を振る。

 

「それよりも今はボクの話だよね。今日の検査に限って言えばいつもの定期的な奴だから多分大丈夫」

(ならとりあえず今はそういうことにしておくか)

 

 一瞬ヒルコは今日は良くても明日以降はどうするのか聞きかけたが、すんでのところで口を閉ざす。心配しても、この仮想世界の中の囚人の身にあってはどうにもできないことだ。

 

「とりあえずこの騒ぎがある程度落ち込むまでひとまずどこかの店に入らない。皆パニック状態になってるから」

「そうだね」

 

 最後にヒルコは混乱の 中にある群衆を見つめて、近くに見えた路地裏の喫茶店へと歩いていった。

 

 

 入った喫茶店には誰もいなかった。初老の店主らしいNPCがグラスを丁重な手つきで磨きあげているだけである。扉を閉めたとたん、外の喧騒はシャットダウンされ静かなクラッシックの店内BGMが聞こえるようになる。

 

「ボクさ、このアイングラッドを攻略してみたい」

 

 開口一番座るなりにユウキはそういった。

 

 ヒルコは驚いた。直木にいちゃんからアインクラッドのことについて簡単に聞いていたからである。

 

「この鉄の城が何層まであるか知ってるよね?100層だよ。しかもベータ版の時はわずか10層までしか昇ることができなかったんだ。しかも、その間に体力がゼロになったら死ぬんだよ。そのリスクは分かっているの?」

 

 分かってる。とユウキはいい、

 

「それでも」

 

言葉を繋げ

 

「ボクはこの街で攻略までずっと指をくわえて待っているなんて嫌なんだ。」

 

ユウキはヒルコをまっすぐに向いて宣言した。

 

その言葉を受けてヒルコは頷く。

 

「なら、僕も付き合うよ。ユウキほっとくと危なっかしいし」

 

ひどいなぁとぼやきながらも嬉しそうにユウキは笑った。

 

「これからもよろしくね!ヒルコ!」

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