ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者 作:眠猫の玉手箱
PS:サブタイトル変更しました
「お前たちが攻略に参加することは分かった。だがまずはっきりしておきたいことがある。」
なに?とヒルコが聞き返す。
「俺はもし……見知らぬたくさんのプレイヤーと、お前の命どちらかしか救えない。そんな状況下にもし置かれてしまったならば……何人いようと俺は躊躇なくヒルコを助ける」
それは……とヒルコは言い淀む。だけれどもここで止めるわけにはいかない。
「だからこそ、
覚えておくよ。そうヒルコはためらいながらそう言った。 俺は心の中でため息をつく。ヒルコは決して冷淡にはなることはできない。ユウキも似たようなものだろう。
茅場という男の性格上、積極的に殺しにかかってくることはないハズ。HPがゼロになると死ぬというのは彼の言葉通り
けれども人間というものはきれいなものばかりではない。
だからこそ、ヒルコたちに少しは警戒心を抱いてほしかった。言わないよりはましだろうから。
「でも強くなれ。っていってもこれからどうするの?とりあえずの指針立てておいたほうがいいと思うよ」
ユウキちゃんの言葉に少し考える。道理だ。
皆が混乱してる今ならば競争相手は少ないだろう。
「いや、今はどこか宿を取って休もう。その代わり、朝は早く動くぞ。6時起床だ」
だが、これはHPがゼロになったら死ぬデスゲームだ。故に大事で集中力が途切れた場合……いや、考えることすらおぞましい仮定だ。それに……俺こそ少しは動揺を抑えたかった。健太たちに保護者として偉そうなことを言っておいてそのくせ自分が一番動揺している。
「明日はどこに行くつもりなの?」
「始まりの館っていう動作確認ができる、要するにチュートリアルだな。ができる施設があるんだ。まずはそこで基本的なことを覚えよう。もちろん圏内の施設だからHPは減らない。」
「…分かった」
「また、明日。お休みヒルコ」
『願わくば誰も死なずにハッピーエンドを迎えられますように』》
耳元でジリジリとなるアラームを止める。メニュー画面の時刻を確認すれば 05:01 。横に寝ているヒルコをみるとまだ寝ているようである。起こさないように部屋をでて、一応メールでヒルコとユウキに少し散歩してくると言ってから、宿屋の外に出る。
始まりの街にはそこらかしこに人がいた。疲れたようにベンチにふて寝する女性。音楽を奏でるNPCのそばで酒を片手に居眠りする男性達。上層を見上げてブツブツ何かを吐き出す男性。黒パンを食べながらメニューをいじる少年。などなど。
一晩を経てとりあえずの混乱から抜けた静かな始まりの街があった。
とりあえず人のいない空き地でストレージから片手剣初期武器であるスモールソードを取り出す。装飾もなにもない安っぽい剣。けれども圏外に出たらこの剣が生命線。耐久値をみるとほんの少しだけ減っているが、2、3日くらいならばよっぽどの酷使をしない限りは壊れることはないだろう。
(スキル構成も決めないとな)
このSAOではレベル1の時点では3つのスキルを保有できる。現在俺がとっているスキルは片手剣のスキルのみ。
だからあと二つとれるのだがどれを取るかを迷う。現状戦闘系でとれるスキルでえらぶのなら『盾スキル』『軽金属装備』『気配遮断』『気配察知』のこの中のどれかだ。
一応短剣(ダガー)や大剣スキル等の攻撃的なソードスキルが使えるようになるスキルもとろうと思えばとれるが、正直スキル上げ(と武器の入手、維持)が大変すぎるので片手剣に絞ったほうが賢明だろう。そもそもデバックの段階で何種類ものソードスキルを実戦レベルで使いこなせていたのが木田センパイと茅場。しかも茅場は基本タンク装備だったので実質木田センパイのみ。マネできるかあんなもん。そう思えるほど悔しいがあの二人の動きは別次元だった。
まず、この先ヒルコたちとパーティを組んでいくとするならば、気配察知はだれか一人がとれば十分であり、気配遮断は全員で取らない限り効果がないので、とりあえずこの二つはスルーである。となると『盾スキル』か、「軽金属装備スキル」等の守りを固めるスキルがいいのだろうか。それに、皮装備に片手剣に盾はデバッグの時俺がよく好んで使っていたスタイルだ。メジャーなスタイルであるし、とりあえず『盾スキル』をとって損はないだろう。今のレベルならばもう一つとれるが……それは後でヒルコたちとと相談しよう。
背を伸ばして
そんなことを考えながら宿に戻る。とりあえずヒルコとユウキがこの世界でどれくらい動けるか確認しないと。『アンカー』での経験があるから多少は動けるだろうか、はてどれくらいだろうか……
想定外だった。まったくもって想定外だった。なにが”多少は動けるだろうか”だ。始まりの館で俺は驚愕に包まれていた。
目の前で二人が訓練用の案山子を次々と切り捨てていく。二人とも動きに若干粗はあれど判断と反応がスバ抜けている。この二人予想以上にできる!アーガスの社員でも初めて挑んだ時にここまでの動きができた奴は少ない。
「なおきにいちゃん……じゃなかった。マクラギどうだった!」
チュートリアル最終メニューである案山子15体切りをほんの20秒余りで達成したヒルコとユウキが、離れてみていた俺のほうに駆け寄ってくる。
「悪くはないな。予想以上に動きが良かった。」
「ほんとに!」
「ああそうだ。お世辞じゃない。こんな重要な場面で俺はウソはつかん。」
俺の肯定にヒルコとユウキがぱぁっと顔を輝かせる。
「やったね!ヒルコ!」
そして喜んだユウキにヒルコが手を握られてヒルコがはたから見えるほど顔を赤らめる。わかりやすい奴め。
「これそこの若人二人。」
「はい、なんでしょうか!」
すごい勢いで声の主の方向に振り替えるヒルコ。恥ずかしさのあまりにげたか。
余計な事しやがってこのジジイ
「わしはこの施設のオーナーだ。二人の若人よ。いいものを見せてもらった。」
そして、オーナーとなのった男が初期武器よりもちょっと輝きを増した剣が手渡される。
「お礼にこいつをやろう。もっていきたまえ。」
「ありがとう。おじさん!」
渡されたのはユウキには片手剣。ヒルコには両手剣である。チュートリアル時に使っていた武器種によって決められたようだ。たしかここで得られる武器は初期武器の耐久値が高くなっただけの武器のはずだが、ヒルコたちが喜んでいるようである。純粋に褒められたのがうれしいのだろう。
「次はどうする?フィールドにでも出てみる?」
「そうだな」
この様子だと、二人ともフィールドに出ても十二分に戦えるだろう。むしろ、もう一つ先の町に出ても十分戦えそうだ。
「なァ。お前さんたち。ひょっとしてだが、フィールドに出るのカ?」
そんなことを考えていると声をかけられる。振り向くとフードを被った女が一人。彼女の顔を見ると特徴的なおひげのペイントがされている。そう言えばβ時代にも同じようなペイントをしていたプレイヤーがいた。もしやこのプレイヤーは……
「まさかあんた、情報屋のアルゴか」
「そうダ」
目の前の女プレイヤーがにやりと笑った。
アルゴ参戦!!正直個人的に彼女原作でも二次でもすごい扱いやすいキャラだと思ってる。