ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者 作:眠猫の玉手箱
目の前のアルゴという、顔のおひげのペイントが特徴的な女性プレイヤー。
管理者である俺がただのプレイヤーの存在を覚えていたのにはちょっとしたわけがある。
この世界には『空手』というエキストラスキルがある。
が、習得場所があまりにも気がつきにくい所実装した木田センパイ曰く『想像力とアバターの限度を知らなければそもそも行こうともしない場所』)に配置されていたため、β時代このスキルの習得場所にたどり着けたのはたったの一人だけ。
その一人というのがまさに目の前の情報屋、アルゴだ。
「驚いたなアンタ。こんな状況下でも情報屋を続ける気か?」
「そのつもりダ。」
すごいな。とつい声が漏れる。こんな状況下でも情報屋を続けるつもりとは。素直にその精神性に感服する。
「さっきの質問の答えなら、これから出るつもりだアルゴ」
「なら、このアルゴ印の攻略本はどうダ? 一冊500コル。今ならこのアルゴちゃん特製サイン印付きダ!」
そういって出してきたのはお手製と思われる本。表紙にでかでかと『アルゴの攻略本』とマジック書体で書かれている。
仮に茅場によるデスゲーム宣言の前から作り始めていたのだとしてもわずか一日足らずに作ったことになる。思わず感嘆の息を漏らす。『空手』スキルの件で少しだけプレイヤーに扮して調べてみたのだがβ時代彼女はしっかりとした調査に裏付けられた、報酬の良いクエスト情報からプレイヤーのバトルスタイルやレベルといった幅広い情報を取り扱っていることで有名だった。
「試し読みしてもいい?」
「そいつはだめダナ。お嬢さん…と言いたいところダガ、未来のお得意様ってことでオネーサンが特別に試し読み版をプレセントダ」
「ありがとうアルゴ!」
俺も簡単に感謝の言葉を述べて、渡された小冊子に目を通す。始まりの原野に出現するモンスターついて書かれているようだがすごい情報量だ。俺の記憶とも大きな差異はない。キバオウさんたちと戦ったあの hard boar についてもすごく簡単にだが触れられている。
「買おう」
「毎度あり!一部だけで問題はないナ?」
500コルと試し読み版をアルゴに渡し代わりにアルゴの攻略本(サイン付き)を手に入れる。
「
おれがそういうとなぜかアルゴの顔が曇り険しい顔を見せる。
「……サービスでもう二つほど忠告していてやル」
「忠告?」
ヒルコが疑問を浮かべて聞き返す。
「一つ目。本サービス開始時とβ時代のシステムが変更されている箇所があるンダ。気を付けロ」
それは俺もいくつか変更した箇所が多かったから把握はしている。
「そして2つ目ダ。
「どういう意味だ?」
アルゴは険しい顔をしながら続ける。
「一部でβテスターを排斥する動きが出てきている。『やつ等は俺たち戦い方を知らない弱者を全員見捨ててリソースを独占する敵だ。』ってナ」
「見捨てる ってそんな無理なことを。この街に何人いると思ってるのさ。こんな状態で他人を助けられる人なんてそうそういないよ。しかも全員なんて……」
ヒルコが信じられないといった表情でつぶやく。残念ながら俺も同意見だ
「オイラもムチャなことだとは思う。だが、そういう流れがあるのは事実ダ。気を付けるんダナ」
「あぁ。忠告感謝しよう。」
そういうとアルゴは顔をやわらげ
「それじゃこれからも情報屋アルゴをごひいきにナ!」
いずれどこかへと去っていった。
この後アルゴの攻略本(サイン付き)をみて、あまりのβ時点での変更点も含めた正確さに俺が腰を抜かす……といった事態が発生したのだがそれはまた別のお話。
アルゴってβ時代もアルゴっていうプレイヤーネームだったのかな?とりあえずこの小説ではβ時代もプレーヤーネームはアルゴだった。ってことでご了承願います。