ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者 作:眠猫の玉手箱
「なんだ、この騒ぎは!」
皮装備の野球部員(っぽい)アバターの宮田さんが誰かに向かって叫ぶ。宮田
周囲を見渡すと、30人前後のイケメンや、美女や、ネタ方面に全降りしたアバターや、なんかのアニメのキャラを模したアバターが事態を把握しきれずに辺りを見渡している。全員アーガス社員である。
「やっぱりか、今ログインしてる管理者
タブレットでなんらかの情報を確認していた木田先輩がうめくように言う。
「その一人は?」
なんとなく白澤はその答えがわかる気がした。そして予想通り木田先輩の口からできたのは
「茅場君」
「ってことはこれは茅場の仕業ってことか?」
宮田は、木田たちがいち早く事情を察知したと気がついたのか、彼らの直ぐ背後まで来てた。宮田はステをほとんど敏捷値に振っているため、ものすごく速い。前に『コマンド222』を使った状態で、22層の湖(水はモドキだが)の上をバババッと、水飛沫を上げながらふんどし姿で渡った時は、そこに居合わせた全員目が点になったなったものである。
本人は後に
『右足を出し、それが沈む前に左足を出す。そうすれば歩ける!』
と、堂々と言っていた。白澤がそれを試したら一歩目から沈んで窒息ダメージで死んだ。
「そうみたいだけど、でもどうして…今日茅場君、一緒にメニュー画面をいじるっていってたから、ログアウトできない理由はわかるけど、転移に関しては完全に作為的なものだろうし。」
「ログアウトもできないのか?」
宮田が最後まで聞き終えて、頭を抱えながら問う。
宮田はバグ嫌いである。昔のゲーム黎明期の頃は、バグも多く、その中には進行不能になるものすらあり、それに何度も煮え湯飲まされたかららしい。嫌いな言葉の第一位は
おきのどくですが、ぼうけんのしょ◯ばんははきえてしまいました。
だ。ド◯クエである。
だからこそ、彼は茅場と共にあのシステム『カーディナル』を創ったのだろう。
大幅に話が逸れた。
2人が話を聞き出すと、宮田は51層の全体的に結晶無効果エリアのトラップ迷宮のところで一定の条件を満たすと詰む場所の調査をしていたらしい。
壮絶めんどくさい仕掛けを終えて、あと少しで確かめられるところだったのに!と凄く怒ってる。ダンジョンから脱出すると詰み防止のためそれまでのギミック全部初期状態に戻されるからな。仕様とは言え、宮田が怒るのも無理なきことである。
木田がどうしようもないわねと言わんばかりに肩をすくめる。そのときだった。
「おい上見てみろ!なんかでっけえオブジェが出現するみたいだぞ!」
管理者の誰かが大声をだし、それにつられて皆上を見上げ、
そこには大きな看板が出現していた
…なぜに看板?とその場に居たほぼ全員が思った。何か文字が書かれているのに気がついた白澤はじっと見つめる。そうするとフォーカスレンズが機能し、注視したオブジェクトが大きく見えるのだ。それによると大きな丸に仮と書かれその下には小さく『巨大オブジェクト出現用』と書かれていることが分かった。
実に分かりやすい仮オブジェクトである。
隣で木田が高遠くん作り終わってなかったんだ。と呟きをもらした。ちなみに高遠とは白澤と同期でグラッフィク担当のアーガス社員である。
そして、看板が消え代わりに表れたのは、
全長10m近くにもなる管理者用の赤いフード。それを纏うアバターはおらず、ただそこには虚構があるのみ。そして、もし人が着ていれば目の部分に当たるであろう場所は、赤いおぼろげな丸がある。そして、そのアバターは宙を漂いながら─
「管理者の諸君、デバッグ作業お疲れさま」
─俺たち管理者を労ってくれた。お疲れさまです。と、数人反射的に返す。悲しいかな。企業務め
「私の名は、茅場 晶彦
有象無象の管理者Aである。」
彼は過ぎたる謙遜はかえって嫌みになることを知っているのだろうか?
茅場 晶彦
一言で現すと「天才」
白澤と木田のほぼ同年代なのに、功績は既に両手両足を使っても数えられるものではない。ざっと思い付いただけでも、メディキュボイドを開発し、フルダイブシステムを構築し、SAO根幹システム「カーディナル」作成に貢献し、ゲームシステム(主に戦闘)の3/4近くを作り上げ、等々。
苦労して就職した白澤たちとは違い、学生時代にスカウトされてこのアーガスに就職。ちなみに天才は変人であるということを証明する分かりやすい例でもある。学生時代彼に議論で太刀打ちできたのは本当にわずかである。白澤? 根性で何とか理解してました。
「聡明な管理者の皆は、すでにメニューからログアウトボタンが消滅したのに気がついたと思う。
まぁそれはそうだろうね。と白澤は心の中で頷く。
一瞬、茅場先輩割とデスゲームモノ好きだから、ここで、100層クリアまでゲームからログアウト出来ません。 一度HPがゼロになったら現実でも死にます。管理者の諸君頑張ってくれたまえ。なんて言われるかと白澤は一瞬想像してしまったが、杞憂だったようである。
まさかそんなこと、事もあろうに茅場先輩がするわけないのに。人生の勝ち組。美人の恋人がいて将来もほぼ約束されているようなもん。そんな未来を自ら捨てる人がいるはずない。だれだ今フラグたてたって言ったやつ
後に白澤は思った。まさかそんなことそう思って思考を止めてしまう、想像力が足りていなかったところが俺の限界だったのだろう。もしもこの時なにかに気がついていたら、俺は止められたのかも知れない。フルダイブゲームの歴史に永遠に刻まれたあの忌まわしきデスゲームを。
眼の前で なんだミスだったのね、と言いながら僧侶っぽい格好をした柊さんがメニューをいじり、即青い穏やかなログアウトの光りに包まれる。
「おい待て茅場。じゃあなんで俺たちをここに集めたんだ?」
が、まだ話は終わっていないとばかりに宮田さんが剣を片手に聞く。相当根に持ったようである、この様子を見ると。そして空気読む気のない茅場が
「どうせならついでにイベント用のプレイヤー強制移動機能もデバックしたかったからだが。」
仮想世界ではアバターの感情表現はオーバーで、思ってることが直で現れやすい。そして、宮田の顔に青筋がいくつか浮かんでいる。いや、いた。今、ブチって音を立てて数本ある青筋の一本が切れた。
宮田の装備する剣が強そうな赤金の武器からなんというか凄みのような__ポリゴンの塊である以上そんなわけないのだが_____魔剣クラスの槍に変更される。
「宮田さん落ち着い「緊急事態以外なら黙ってろ」Yes.ボス」
だめだこれ。とシラサワはおとなしく諦める。クエストならば、シラサワはせっとくに失敗した!と表示され、失敗するか、バッドエンドに行くところだ。
「いいぞもっとやれ!」
木田は小声で煽ってなぜかログアウトする。周囲を見渡すと少なくない人が同じように煽ってるし。みんなノリいいわ。
しかし、宮田さんはどのようにしてあの茅場のアバターに攻撃するつもりなのだろうか。あの手に届かないほど高みに浮いている不気味なアバターとは、距離にしてだいたい8m以上離れている。
白澤はそう思い宮田を観察していると、宮田さんの装備する魔剣クラスの槍が金色の輝きを帯びた次の瞬間、
「覚悟は出来たか茅場、エネギ・ガリュウシュート!」
白澤の真横を
「次だ!喰らえ茅場!」
キレてる宮田は当然そんなものを気にせずどんどん魔剣クラスの槍をストレージから無尽蔵に放出し、先程の投剣最強ソードスキルで放ちまくる。クーリングタイムは、管理者権限を使って無効化してるのだろう。
流石の茅場も避け始める。恐らく、不死属性と圏内との設定が同じである以上、ダメージこそないとはいえノックバックの衝撃やばかったのだろうな。
「やめたまえ!おいっ!」
「宮田さん、
「ナイスだ!木田!」
「槍を投げるのをやめてくれ!」
「宮田さん
「ナイスだ!柊!」
茅場先輩がやめてくれ!と言うが皆そんなことを聞き入れる筈なく、
「管理者の皆茅場君を殺れー!」
Ohhhhhhhhhhhhhhh
木田先輩の扇動に雄叫びを上げながらたくさんのチート装備を身に着けた有象無象の管理者が襲いかかっていっくのを白澤は1人眺めながら 茅場先輩がんば と祈った
なおその数分後に茅場先輩のアバターはHPがゼロになり大量のポリゴンの粒子へと化した。そして、その場に復活してまた囲まれていた。
茅場が醤油ラーメンをすすりながら、「フィールドで超低確率でシークレットスペースとかいう謎の空間に閉じ込められるとかいう問題はどうなった?」白澤に問いだたす。
白澤は塩ラーメンの汁に沈んだモヤシやメンマを救いながら「それなら如月っていう若手のバカがこっそり仕込んだようです。ちょっと脅したら吐きました。今は完全に跡形もなく消去しましたよ。一応バックアップは取っておきましたが、全く許可を得ない勝手な行動ってやっぱり問題ですね。そう思いませんか?」
茅場先輩は無言で醤油ラーメンの汁を最後の一滴まで飲み干してから「因みにそのシークレットとはどんなシステムだったのだ?」と言った。
ここはアーガス本部の近くのラーメンの屋台。あの後、リスキルされてた茅場先輩を白澤がリアルから回線切断し代わりに茅場先輩のホロウ・データを投入することによって他の管理者にバレないうちに逃亡し、二人でラーメンをすすっているところである。ちなみに木田先輩は、再ログインし、宮田さんたちとリスキルに夢中になってたのでなにも言わずに放置してた。
「一定の条件を満たした先着1パーティのみが強制的に遭遇させられるボスエリアで、超絶強力なボスを倒せば強力な武器や莫大な経験値とコルが手に入る。三回まで蘇生可能───そんな感じだったかな?」
振り替えるとそこには背の高い一目でなかなか鍛え上げられていることが判別できる
「但し問題点としては完全にバランス調整がおかしいこと。一層の時点で五十層クラスのボスが出てきたり、八十層辺りで出現して倒してもドロップアイテムが五十層クラスだったり。」
「(置いてきたはずなのに)なんでここにいるんですか?
「この後昼飯食べるっていってたし、さっきのことを考えると社内食堂は使わないきがして。とりあえずおじさん味噌一つ大盛りで」
後半は店員さんに向けて言う木田。
「なるほど。しかしどうして、私がログアウトしていたのが分かったのだ?白澤君が私のホロウを代わりに配置した筈だか」
「んー?」
木田先輩が唸って出した答えは
「動きに命が感じられずに、NPCみたいだったからかな……いやま、実際NPCだったわけだけど」
「具体的にどの辺りがNPCみたいだったのだ。」
「普段の茅場君にしては無駄な動きが多かったり、その割には体の動き方が最適化されていたり」
白澤は少し考えて最後の塩ラーメンの汁を飲み干し、カバンから耐火性、耐水性、クラキング対策済みのノートパソコンを取り出し
パースワードを打ち込んで、とあるアプリを起動する
次の瞬間画面に現れたのは黒一色のエリア、テストプレイ用のために作られた、ホロウエリア(だったけ?)。
「これは..私のホロウの目線録画データか?」
画面を覗き込んだ茅場に一瞬で言い当てられたのに白澤は驚きながらも頷き、茅場(のホロウを)中心にした俯瞰者目線にし、逆再生で茅場と入れ替わったところまで巻き戻し、0.5倍速で再生する。
次の瞬間茅場のあの不気味なアバターの人間で言う顔の部分に黒い槍がぶっ刺さり
「よし、クリーンヒットした!」
「代われ如月!我が暗黒剣を喰らえ!」
次の瞬間宮田の剣から生み出された暗黒の濁流によって不気味アバターのフードの一部が削がれる。
「暗黒剣ってなんだっかしら。聞き覚えがあるんだけどあの剣の名前?」
「いやユニークスキルの一種だな。部位欠損に大きなブーストが掛かる」
ユニークスキルとは茅場考案の条件を満たしたプレイヤー1名のみに与えられる超強力なスキルである。(ちなみに習得が複数のプレイヤーが出来る場合は
そんな話をしながら十分程茅場のホロウをその場のみなで観察したのだが、結局具体的に木田がどうやって特定したのかは分からなままだった。
伝説の境地は万が一出るとしたら完全にネタ回になります。(断言)
あと、今更ですが本作品における茅場の扱いは割とひどいです。苦手な方はブラウザバックをお願いします。