ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者 作:眠猫の玉手箱
心理描写難しいよ()
注訳
ウリエル(マクラギ)の本名は"白澤 直木"
ヒルコの本名は"大海原 健太"です。
<管理者目線>
目線がきつかった
「あのヒルコ、ユウキ二人とも何か言ってくれない?」
部屋に向かい入れた俺___一時の感情で公衆の面前で自らが管理者であると言ってしまった大馬鹿野郎___のをじっと睨むような目線が二対。ヒルコとユウキのモノだ。無言のヒルコとそれを見ながらも、思案気な表情で眺めるユウキ。
「...ウリエ「ゴメン、ユウキ僕から聞きたい」...分かった」
この開始早々とてつもなく重い空気に耐えれなかったユウキが俺に話しかけようとするが、その前にヒルコに止められる。
これなら、思いっきり一発殴られた方が楽だった。なにもされないとそれはそれで罪悪感が増すのだ。......体力もここが安全圏である以上減りはしないし。
ヒルコが予想以上に落ち着いている。ユウキが落ち着かせたのか?......いや違う気がする。多分これは......
「悪いが、呼んでいない客が迫っている。場所を変えよう」
近くにとある鼠が迫っていることを察知した俺は懐から回廊結晶を出す。このアイテムは指定した場所であるならばアインクラッド中どこでも即座に飛べるワープホールを生成する優れもののアイテムだが、現時点のプレイヤーには入手方法はない。これは管理者権限で生成したものだ。
先に行けと無言で言うヒルコの圧に負けて先にワープホールを潜る。
ついた先は、始まりの街にある日本庭園の一室。障子をあけ放った先に見える桜の巨木が好きで、βテスト終了から本サービスの開始まで休憩所兼、木田センパイからの避難場所として好んで通っていた部屋だ。
少し遅れてきた子供たちに、無地の座布団を投げ渡し、自分は畳の上で正座で座る。
「白澤直木さんも座布団に座って、やり方がこすい」
反省してる風を出そうと思い、あえて堅い座り方をしたのだが、どうやら見抜かれていたようだ。
というか白澤さんか。いつもの『直木兄ちゃん』呼びよりすっごく距離を感じる言い方である。まぁでも一時期の『ウソツキさん』よりはましだな。うん。
自分のメンタルへのダメージを無視しつつ、とりあえず座布団に座る。
「......いやここの畳は上質な畳を再現しててだな、別段座布団がない正座でもやわらかくていいんだ。アーガス社員の仲間でも和室は座布団派と畳派が1:1で......」
「余計な話は聞きたくない。なんであんなことをしたのか、あなた自身の言葉で教えてくれない」
一刀両断。適当な言い分はバッサリと切られてどこかに漂って消えていく。
......そうだよな、あの時俺は今のヒルコなら俺が居なくてもなんとかなる。そう判断してウリエルという一般キャラクターの破滅への一歩を踏み出したんだ。
ならば、小細工など弄さずに真摯に向き合うべきだ。
カコン。どこかで鹿威しの音が鳴った。
「......俺はずっとプレイヤー、特にβテスターに罪悪感を抱えていたんだ」
「罪悪感?」
「俺が作ったセカイでβテスターを中心に大勢の人を殺したからだ」
『殺した』その言葉を口にした瞬間空気が僅かに締まった。
「この世界での死は現実世界での死亡と等値だ。それを知った後でも俺は、全力でプレイヤーを助けようとはしなかった」
「そんなことはない。アルゴへの情報提供は? あの攻略本は? そのほかにもあなたが成したことは絶対にプレイヤーの生存への助けになっていた」
ヒルコの言葉は部分的には正しい。確かに助けにはなっただろう。
「いいや、違うそれは全力ではない。俺があの始まりの日やるべきことはプレイヤーをまとめ上げ、俺が知る情報を全て渡して導くことだった。もしくは管理者権限をフルに使って全員を無事に現実世界に送り届けるべきだった」
「ウリエルそんなことができるの?」
ユウキの疑問に首を横に振る。
俺はどこまで行っても普通の人間だ。茅場ほどの頭の切れはなく、如月のような剣技の冴えはなく、木田センパイのようなカリスマ性もなく、ディアベルのような度胸もない。ただの運命の巡り合わせで管理者権限を持っていただけの一般人でしかない。
一万ものプレイヤーを束ねることも、たった3回の管理者権限であのカーディナルの目をかいくぐってシステムを根本から改変することなど出来たとは思わないし、できるとも思えない。
でも、
「できるかできないかの問題じゃない。やるかやらないかの問題だった。そして俺はやらなかった」
何もせず、ヒルコただ一人を守ることだけを考えた。
「できないことに固執してもできないことはできないよ」
「やらなかった以上、できなかったということはできない。もしかしたら諸葛孔明並みの人材が力を貸してくれてログインしている全てのプレイヤーをまとめ上げて生存させることができたかもしれないし、アーガスと上手くコンタクトをとれて全プレイヤーを解放させることができたかもしれない」
俺がそれを選べればどこまでもプレイヤー達にとって都合の良い展開が待っていたかもしれない。けれども俺がそれを選ばなかった以上、決してどうなったかは分かることのないルートだ。
「もちろんこれは既に過ぎ去った話だ。それでも、俺はずっと罪悪感を持っていて、あの時たった一人だけで彼が負うべきでない全てのプレイヤーのヘイトを受け止める
その罪を受け止めるべきなのはアーガス社員である俺の役目で、
その罪を受け止められるのも管理者権限を使える俺だけだった。
______それに気がついた時、黙っていることができなかった」
今から思い返せば、あの時たまたま管理者権限の制限時間が残っていたことと、アルゴに正体がばれかけていたこともあるが、俺が管理者であると言ってしまった理由はだいたいこんな単純なものだろう。
「......あの時は酷い言葉を投げてしまってすまなかった」
そういって俺は二人に頭を下げた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
<ヒルコ目線>
直木兄ちゃんは自称する。
____自分は罪人であると
直木兄ちゃんは騙る。
____自分ができるわけない夢物語を、さも実現可能であったかのように
直木兄ちゃんは懺悔する。
____自分が起こしたわけでもない罪を被るのがアーガス社員である自らの役目だったと
そして、直木兄ちゃんは俺たちに向かって謝った。
僕達と管理者の縁はあまりに無常で管理者の側から一方的に切られた。そう他人に周知させるためとは言え、酷い言葉を投げてしまったと。
どこかで鹿威しの音が響いた。
大海原 健太という少年は目の前の従弟の性格を知っている。
茅場さんと協力してデスゲームを開催するくらいならば、それこそ大恩ある茅場さんを殺害してでも阻止する......
それがありありと想像できるほど、白澤直木という青年が大量虐殺に加担する姿というものは似合わない。
罪悪感に苛まれる直木兄ちゃんをどうすればいいのか。
貴方に罪はないと諭せばいいのか。それとも、一緒に諸悪の元凶に向かって怒ればいいのか。
経験の少ない少年には分からなかった。
「酷い話だね」
「ああその通りだ」
ただ諦めの言葉を口にして、それに無辜というにはあまりにも汚れた管理者が同意の返事をしただけだった。
それで終わるはずだった。この場に管理者とその従弟しかいないのならば。
「ウリエルいやナオキ、ボクは怒っているんだ」
ユウキがそこにいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
<白澤直木目線>
「怒るだって?」
つい聞き返してしまった。なにに対してだろうか。勝手に管理者であるといったことか。あるいは他のことか。
他のこと、心当たりがないわけではない。例えば......彼女にデスゲームのチケットを送ったのは俺だ。彼女がそのことに関して思うことがないとは言えない。
「......他のプレイヤーは、皆少なからず怒ってた」
それはそうだろう。と一人頷く。あのカミングアウトは全てのヘイトをSAOの管理者に集めるために行ったものだ。むしろそうでなければ困る。
「なんでナオキがその対象なんだ!」
かわいらしい微かな怒気を込めていうユウキ。俺に対しての怒りではないのか。身勝手にもほんの少しだけ安堵する。だが......
「さっきの話を聞いていなかったのか。俺が、プレイヤーが死ぬ一因を作ったからだ」
なにを当たり前のことを言っているのだろうか。俺はソードアート・オンラインの管理会社アーガスの一社員だ。デスゲーム化した原因は茅場が一番悪いが俺にもある。
「違う!」
「違わない」
「ならそうなのかもしれない!」
「????」
いやどっちだよ。落ち着いて否定したら勢いよく肯定された。
ヒルコならわかるかもしれない。そう思ってヒルコを見るが、俺と同じような顔をしている。要するに分かっていないという表情だ。
「ボクが言いたいのはさ、たとえそうだったとしても、ウリエルは僕たちを含めた誰かを助けるために動いてた!!」
「それでも全力じゃ.....」
「全力かどうかなんて助けられた側からすればどうだっていい。ここに実際に助けられた人がいるんだ!それだけはたとえナオキにだって否定させない」
『ここに実際に助けられた人がいる』か。本当に俺の存在が彼女の助けになれたのか。
「......いや、ユウキの実力なら俺が居なくてもなんとでもなったはずだ」
「ボクだって、なんどだってナオキのフォローや情報に助けられたよ」
正直言うとオレの助力がなくたって、MOBの撃破速度が多少遅くなるくらいの違いしかないと思う。彼女とヒルコの仮想世界においての戦闘の素質は間違いなくピカイチだ。俺はそれの手助けをしただけに過ぎない。
「だからさ」
ありがとう
そういって、ユウキは微笑んだ。
別に感謝されたくて、このデスゲームを攻略に導いていたわけではない。俺がアーガス社員であることを考えれば当然だし、むしろ他のプレイヤーからは罵倒され、恨まれるのは当然だと思っていた。
けれどもそのありきたりな5文字を聞いてほんの少しだけ
____ここまでやってきて良かったなと思えたのだ。
「こちらこそありがとうな。ユウキ」
「...ハッ僕だって直木兄ちゃんに感謝してるからね!」
「おう、ありがとよ。ヒルコ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
<ヒルコ目線>
ついユウキに見惚れていたら感謝を伝え忘れるところだった。危ない危ないとヒルコは胸をなでおろす。
「これからも一緒によろしくね!」
そういって、ユウキが手を出す。それにつられてヒルコも手を出す。
そして、直木兄ちゃんは手をあげて......
「悪いがその手は取れない」
そのまま手を降ろした。
「え?」
その戸惑いの声は果たしてユウキかヒルコ自身の声だったかあるいはその両方か。
直木兄ちゃんが自身の顔に手を覆いかぶせ、
ぺらりと音を立てて、顔の皮がめくれた。
その下に出てくるのは黒眼で二重瞼の顔。特段イケメンでも不細工でもない取り立て特徴のない顔。
だが違う。今までの顔、要するにリアルの白澤直木との顔とは全く違う。
「考えてみろ、俺が顔を変えたとしても今まで通りお前らと3人パーティで動いていたら、周りから俺とウリエルが同一人物であるとバレる」
確かに言われたとおりだ。けれども......
「たとえ怪しくても、ボロを出さなければ周りにはばれないよ」
ユウキも僕の言葉に同調するように頷く
「確かに周りの一般プレイヤーにはばれないかもしれない。でもな管理者権限を使える茅場さん相手ならどうだ?」
茅場晶彦、それは直木兄ちゃんがここまで苦しむ事となった全ての元凶
「茅場さんの管理者権限は俺の権限よりも遥かに上だ。もし正体がばれたら俺はこの世界への存在を許されないだろう」
既に4桁以上殺害した奴が今更一人殺すのに躊躇はしないだろうな。と直木兄ちゃんは吐き捨てる
「だから俺はお前らとは一緒に行けないんだ」
ごめんな
そう悲しげにつぶやいた
「でも、ヒルコとユウキなら大丈夫だ。お前らは強い。二人で無理をせずに確実に立ち回れば、絶対に死なないだけの力量はある」
確かにユウキは強くてカッコイイ。僕だって、アンカーでの経験が生きているのか決して動けないわけではない。
でも、
「やだよ」
「......ヒルコ?」
「寂しいよ」
いやだった。別れたくなかった。リスクは分かっている。それでも信頼する直木兄ちゃんと一緒に居たかった。
これが駄々だということは自分でもわかっている。仮に今ここで彼がいくら言おうと決して直木兄ちゃんが意見を翻すということはあり得ない。
「これからも一緒にいようよ」
けれども言わずにはいられなかった。
そっと頭を撫でられる。優しい手だった。
「直木兄ちゃんはほっとくと直ぐに無茶をする人だから」
「......そうだな」
「直木兄ちゃんも無理はしないで」
「......あぁ」
「がんばれ」
「......」
「もういいよ......もう大丈夫だから」
「分かった」
無条件に庇護してくれる手が頭からゆっくりと離れていく。
「これから攻略難度はどんどん上がっていく。気をつけろ。二人とも決して負けるな」
「「もちろん!」」
ユウキと声が重なった。それを見て、直木兄ちゃんはそっと微笑んだ
~~~~~~~~~~~~~~~~
<直木目線>
「それじゃ、なにかあったら直ぐに連絡しろよ、助けになってやるから。転移始まりの街」
ヒルコとユウキの視線を最後まで感じつつ、それを振り切るようにして転移した。
第一層と他の門を繋ぐ転移門から出た俺は、第二層が解放されてごった返す集団をすり抜け、誰も居ない路地裏へ抜けていく。
路地裏はサービス開始から誰一人として入った事がない_____そう言われても納得する程度には埃っぽかった。
「_____まぁ(管理者権限の)3回の内の1回を使ったに見合った成果は得られたんじゃないか」
ストレージから透明な鈴を取り出す。軽く振ってみるが音はならない
この鈴の名は『朋鳴りの鈴』。これに対応する呪符を持つプレイヤーが死亡した時に、そのことを知らせるアイテムであり_____一度だけ呪符を持つプレイヤーが死亡した時に自動的に、
あえて言うまでもないがこの死んだ終わりのデスゲームにおいて、これは最大級のセーフティネットである。
もちろん、こんなある種のぶっ壊れのアイテムを通常プレイで入手できるはずもない。回廊結晶、
これで、ヒルコの安全だけは保障された。
このデスゲームにおいて一般プレイヤーが圏外に出るという前提ならば、
いかに俺が知識を持っていても、いかにヒルコとユウキが仮想世界での戦闘に対して天賦の才を持っていたとしても、少し油断と不運で体力がゼロにされる危険性はゼロではない。
だからこそ、どこかで
「『きっかけは君の死だが、本題と本意は別のところにある』」
自身がディアベルに語った言葉を再び呟く。まさしく俺にとって
ヒルコの安全が保障されただけでも使った甲斐があったというものだ。
そこまで考えて口を引き締める。デスゲームと化したこの状況を打破できない俺が、それでも『ありがとう』と『がんばれ』を言ってもらえたんだ。
「さて、攻略に向けて再度進んでいくとするかな」
_______全てはプレイヤーを救うために。進み始めよう
誰かの命を助けられる可能性の高い手段があるのに助けなかった。というのは自分が思うより重荷になるものです。
そんな重荷を背負っていた白澤直木という一人の人間があのベータ―のつるし上げに贖罪の機会を見出してそれに縋っただけのお話です
これにて、第1章完結となります。あー長かった!
1層攻略+αでここまでの時間たてて一つの章完結してるのマジでこの小説だけだろ......
3話ほどアーガス側の話を挟んで第2章に入ります。
ちなみにちょっとネタバレすると第2章の終わりは30層あたりを予定しています。現在攻略した30倍の層の数だけど、話数的には......そこまで変わらないといいな(希望的観測)
流石に週一投稿は疲れたし、次回更新はストックも切れたのでだいぶ先になります。
それとアンケート追加しました。答えて頂けると幸いです。
蛇足として、ウリエルが騙っていた夢物語を実際に実行に移していたらどうなったかについては
ログインしているプレイヤーをまとめ上げようとした場合、どこかで白澤が管理者であることが仲間のプレイヤーにバレて疑心暗鬼の末に謀殺されます。初期の犠牲者は本編より40人ほど減ります。
管理者権限を使って、アーガスと連絡を取ろうとした場合は、制限時間がないなら奇跡的に突破できる可能性はありますが、15分×3回計45分という制限時間がある以上カーディナルシステムをどうやっても突破できないので普通に失敗してシステムに関して無力な一般プレイヤーになり下がります。
もし仮にアーガスを始めとした外部との連絡が取れたとしても、直ぐに茅場に嗅ぎ付けられて消されます。遺言くらいは向こうに残せるかもしれません。
どのみち白澤にとっては現時点よりも酷い状況になりますね(笑)