ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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柊目線です。
本当はおまけ程度の話だったので短めです。


閑話4:アーガス社員の茶会

「メイちゃん、今日こそ一緒にお茶飲もうぜ」

 

 あの告白から一日たった、12月5日の午後。柊メイは悶々とした気持ちを抱えながら、自分のデスクに戻ろうとした矢先に声をかけられた。

 

 声をかけてきたのは北沢琴美(きたざわことみ)。黒髪ボブの女性でアーガス社員の一人だ。後ろの椅子には彼女と仲のいい新田八宵(にったやよい)もいる。

 

「いや私は仕事が......」

 

 と言いかけて、遠因ではあるが仕事のし過ぎでぶっ倒れたことを思い出す。

 

「......やっぱり」

 

 偶然にも一タスク終えた所なのだ。少し休憩を取っても他の人の仕事の妨げにはならない。

 

「......いやでも」

 

 アインクラッドに囚われている8,500人あまりのことを思い出し、返事が滞る。

 

「まぁいいからいいから」

 

 そんな逡巡を見抜いたのか、琴海が強引に座らせる。

 

「アールグレイ、ダージリン、ハイビスカスティー、玄米茶______色々あるけどどれにする?」

「......アールグレイでお願い」

 

 ここまで来たらもう割り切ってしまうことにした柊は、そのまま楽しもうと差し出されたティーポットにケトルからお湯を注ぐ。

 

「ゴメン。それに茶葉入ってない」

「......ホントだ。まぁいいや」

 

 申し訳なさそうに謝る八宵。まぁ茶葉なんてあってもなくても変わらないだろう。そのまま白湯で楽しもうと柊がティーカップに手を伸ばした時だった。

 

 パシッと腕を捕まれた。

 

「どうしたの八宵」

「どうしたじゃないよ、まさかお湯のまま飲むつもり」

「......そうだけど」

 

 柊がそういうと、八宵の表情がまさか......? と自らの予想を信じたくないといった表情から、正気かコイツといった表情に変わる。確かに少しばかし仕事に忙殺されたり、好きな......別に何とも思ってもないことなんてこともない......別に格別に嫌いじゃ......今までただのよい同期だと思ってた相手(遠藤)に悩まされているが、私こと柊は食器です。間違い正気です。

 

「ダメ!! 淹れたくないなら私が淹れてあげるからちゃんとしたの飲んで!!」

「う......うん」

 

 とんでもない八宵の剣幕に押されてついつい頷いてしまった。

 

「あっちゃん*1、私にもお願い‼」

「はいはい。慌てなくてもちゃんと注いであげるから。期待してて」

 

 そう言って、八宵はティーカップにお湯を入れたかと思うと、そのまま近くの洗面台にティーカップとポットのお湯を捨てる。

 

「捨てんの?」

「温度が高い方が美味しいから」

 

 そのまま高そうな缶からから茶葉をポットに入れ、ポットとケトルの注ぎ口を近くにして熱湯を注ぐ八宵。

 

「これで少し待つ。一分くらいかな」

「えー長い。今すぐ飲みたい」

「はいはい。琴海ちゃんとメイちゃんには美味しいの飲んでほしいから待ってて」

 

 駄々をこねる琴美を優しい声で制止する八宵。

 

「なにかいい匂いするな」

「この香り......ベルガモットですかね」

 

 まっだかなまっだかなと鼻歌混じりに琴美が歌っていると、後ろから声がした。

 

「誰かと思ったら後輩くんたちか、ちょっとサボっていこうぜ。美味しい茶菓子もあるよ」

「こらそこ、後輩二人を悪の道に引き込まない」

「まぁいいからいいから」

「琴海、それを言えば()が黙ると思ってない?」

 

 やって来たのは如月春揮と小嵐楓。一番アーガスの在籍期間が短い社員たちだ。

 最近はあまり見かけて居なかったが、今日は来社しているようだった。

 

「俺たち自宅待機だったんですよ。なんか俺たちの入社に茅場さんが関わってたせいで変に警察の人に疑われてたみたいで。ようやく信じてもらえたのか昨日仮想課の『菊岡』って人に出社許可もらえたんです」

「なに、後輩くんたちの入社って茅場さん関わってたの?」

 

 確かに新入社員にしては妙な時期に入社したとは思っていたが、渦中の男が関わっていたのは初耳だった。

 

「疑いが晴れてよかった。はい、アールグレイ。熱いから気をつけてね」

 

 そんなことを話しているうちに八宵が準備を進めていたのか、ティーカップが差し出される。

 

 受け取って、やけどしない程度に冷ましてから一口だけ口に含む。それでもまだ熱い液体が喉を駆け下りていく。

 

「あったかくて美味しい」

「やっぱあっちゃんに淹れてもらう紅茶は最高やな」

「美味いです」 

「ごちそうさまです」

 

 4者4様の反応を受けた八宵は恥ずかしげに顔を赤らめてしまった。かわいい。

 

「チョコとかにもあうから良かったら」

 

 顔を赤らめたままの八宵のアドバイスに従って、チョコレートをつまんでみる。こちらも美味だった。実を言うと柊はチョコが好物なのだ。

 

「なんか安堵した。メイちゃんのそんな表情が見れて」

「そう?」

「最近ずっと顔色悪かったから」

「そうだったかも」

 

 思えば、ずっと働きづめで化粧なんて最小限の見栄えしか整えてなかった。いや、本気を出せばあの同期に気がつかれることもなかったのだろうから本気を出すべきだったか。いや別にあの同期がどうこうという話じゃないのだけども。

 

「やっぱ遠藤君のおかげ?」

「ごふっ......なんでいきなりその名前が出てくるの?!」

「だって木田さんからあんな動画見せられたら......ねぇ」

 

 そういって琴海は苦笑する。他を見ると事情を知ってしまっているのか苦笑している。唯一如月だけは動画を見ていなかったのか、疑問符を浮かべている。

あんな動画とはどういう動画か。説明は簡単だ。だがそれを今の柊に説明させると、恥ずかしさのあまり悶絶死するので説明は省かせてもらう。

 

「で、返事はどうしたん。当然もう返してるんやろ」

「...です」

「ん?」

「...だです」

「はっ?」

「まだなんです」

 

 柊の言葉を聞いた琴海は大きなため息をついた。

 

「アカン。それはアカンやつや。速く返答せんと他にとられてしまうで」

「えっ」

 

 他に盗られる。言われるまでそんな可能性を微塵も考えてなかったことに柊はようやく気がついた。

 

「遠藤君、結構人気やからな......案外、今もアタックされてるかも」

「そんな」

 

 ......でも、入社したての頃先輩社員にチョコ貰ったって嬉しそうにしてたな。渡した先輩社員は既に寿退社しているが、他にも居ないと限らない。

 

「でも、遠藤のことどう思ってるか自分でもよく分かってなくて」

 

 いやまぁ'同期'としてはいいやつだと思う。明るくて誰にでも優しくて、相談にも乗ってくれて。

 でもそういうまぁいわゆる?『男女の仲』的な? 関係性になりたいかと言われると、ちょっと柊自身でもよく分からないのだ。

 

「でも嫉妬してたでしょ、今」

「......」

「それが答えだと思うよ」

「......」

「あっちゃん。多分メイちゃん今はなにも考えられてないと思う」

「顔真っ赤やもんな」

 

 ......(少女悶絶中)

 

 

「まぁ傍から見てる私としては、唐突な第三者(新キャラ)に盗られても面白いけど?」

「唐突に出現してなんてこと言うんだ。このセンパイ」

「おや後輩二人組もいる。久しぶりの出社なのにサボるとはけしからん奴め。口止め料としてこのクッキーを一つもらっていこう」

「ついでにこのチョコ菓子もどうでしょうか」

「新田さんは気前がいいね。じゃあもらっちゃおうかな」

「......ぬわにぃ?! サボってる奴がいるだと?! けしから_____」

「木田ちゃんパンチ 出力10%」パーンチ

「()」グエッーヤラレタァ

「唐突に現れた宮田さんがそのまま吹き飛んでいった⁈」

「えっ? なにが起こったん?」

「さぁ、昨日お酒のみ過ぎたんじゃないの?」

 

......ん? 柊が、とりあえず自身の気持ちに整理をつけて、目の前の状況にようやく思考を割いた。

 

「わっ。びっくりした」

 なんか宮田さんが『ムチャしやがって』と言いたくなるような恰好で倒れてた。ついでにいつの間にか木田さんが出現していた。

 

「この状況をその一言で表せるの......まぁいいや。柊、昨日の今日で悪いけど力貸して、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「なんですって」

 

 一ヶ月の沈黙を経て、唯一あの仮想世界に囚われていたアーガス社員が遂に動いた。

 

「分かりました。今行きます」

 

 うまくいけばこのまま、あの忌々しい鉄の城を崩せるかもしれない。

 

「琴海、八宵。誘ってくれてありがとうね」

「おう。私にはメイちゃんの代わりにはなれない」

「けど、お茶くらいならいつでも入れてあげるから、頑張って」

 

すっかり冷めてしまったアールグレイの最後の一滴を飲み干す。

 

「ありがとう! 行ってくる」

 

 さぁ8,500人を取り戻す仕事の再開だ。

*1
新田八宵のあだ名




琴海「メイちゃん、少しは休めたみたいでホント良かった」
八宵「ずっと辛そうな顔してたからね。さっきはいい顔してた」
如月「そういえば先輩が言ってた'あんな動画'ってなんだったんですか」
琴海「後輩くん、それはだね......」カクカクシカジカ

(琴海説明中)

如月「つまり、遠藤が弱った柊さんに告白した映像を木田さんが社内用SNSに投稿したと。よし、あとで遠藤にからかいに行ってこよう」
琴海「おうやったれやったれ。久々のいい知らせなんだから存分にからかってやれ」
八宵「ほどほどにね」
楓 「告白といえば、先輩は自分から告白したいですか? それとも相手に告白してほしいですか?」
如月「そうだな......やっぱり自分から告白したいかな。なんかそっちの方が自分のキモチをしっかり伝えられる気がする」
楓 「先輩ならそう言う気がしてました。......いつか期待してますからね先輩」
如月「すまない楓。最後の言葉が聞き取れなかった。もう一回言ってくれないか」
楓 「いいんです。聞かせる気のない独り言ですから」ワクワク
如月「?」
琴海・八宵(このふたりはまだかかりそう)

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今回の話で登場した北沢琴海、新田八宵、如月春揮、小嵐楓は桜花 如月様の作品からお借りしたゲストキャラです。如月と楓は0章でも出てましたが、北沢と新田はこの話が初登場となります(名前だけなら前々話でも出てましたが)

快く許可してくれた桜花 如月様にはこの場を借りて感謝いたします。
(リンクは第1話のあとがきに載せてます)

アーガスサイドの話はここまで。
もうちょっと現実世界sideで書きたい話もあるけど書いてたらマジで本当にきりがないので、その辺はまたの機会にということで。

次の投稿分からは白澤視点に戻ります!
次の更新日は知りません。
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