ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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この話から白澤視点の一人称に変えます


『アンカー』

「ええ、では10分後、『アンカー』でお願いします。木田先輩」

手に持ったスマホの電源ボタンを長押しする。光が消えた画面から目線をあげて再度深呼吸。

 

 吸ってそれからゆっくりとはいて

 

 それからようやく俺、白澤は意を決して目の前の自動ドアを通り抜ける。

 

通り抜けた先に待ち受けるのは消毒薬臭いが漂う独特の空気。それで、否応なしに自分が今病院にいることを自覚する。

 

 今の俺にとって病院という場所は一番苦手な場所だ。自分の非力さと、情けなさを意識せずには居られないから。昔はこんなことはなかったのに。

 

顔見知りのお局様もとい看護師長に話しかけられないように足早に歩きながらも、なんの反応も見せないと後々面倒くさいので会釈してからすぐにとある病室に足を踏み入れる。

 

そこにあるのは一応のガラス板。そして、それに仕切られるようにして一人の中学生男子が眠っていた。

 といっても一目で彼の年齢を的中するのは至難の技だろう。何故ならば全身にナーヴギアの前身を装着し、さらに点滴やらなんやらの管を繋がれている為、彼の全身が見えないからだ。それに彼の体も(まともに進学していれば)中学2年生にしてはかなり小さいのも拍車をかけている。

 現在のと比べ、かなり巨大な威容をほこる()()()()()()()()に、接続されているモニーターに写るのは赤。

 どうやらログアウトしているようだ。寝ているだろうか。約束もしてなかったし出直すかと思った瞬間にログインしたことを示す緑色に代わる。

 

「俺も今行くからな」

 

 ログインしている()()()に声をかけて、 壁のケーブルに自機のナーヴギアを接続する。

 

「リンクスタート」

 

.....

 

...

 

.

 

 

目を開けると都会の片隅にでもありそうな小さな公園と、こじんまりとした、けれども子供達が集まってドッチボールなり、バレーボールをするには十分そうな建物が目にはいる。

 

ここが俺が初めて創世するのに関わったワールド、『アンカー』だ。

 

「直木にぃちゃん。久しぶり」

 

そして、この世界の最初期から()()()()()()唯一まだ()されているプレイヤーが、ジャングルジムの一番上から飛び降りる。

 

「ここで会うのはしばらくぶりだな。健太」

「ヒルコ。ここでは皆からそう呼ばれててるんだ」

 

相変わらず独特の雰囲気を纏っている。どう独特なのかは言いづらいが、強いて言えば、神社のお賽銭箱。神聖な物でありながらどことなく俗っぽく現世に近い存在。

数か月ぶりに再会した、俺のいとこである『大海原 健太』の第一印象はそれだった。

 

ここで説明をする必要があるだろう。

目の前のいとこは7年前、5歳の頃『進行性骨化性線維異形成症』という奇病にかかっていることが判明した。

進行性骨化性線維異形成症とは、簡単に説明すると身体にできた炎症によって骨組織の異常増殖が発生し、体があたかも石であるかのようになってしまう奇病である。発病は200万人に一人と言われているだけあり、日本人の大多数はこの病気を知らずに一生を終わらせるだろう。事実俺ですら、目の前の従兄弟がこの病気かからなければ一生知ることはなかっただろう。

被病者の死亡率は100%。今現在治療法はまだ認可されていない。対処法はなるべく骨組織を増殖させないように身動きをとらずにいるだけ。

 

そして、余命は後5年。彼はそう医者から告げられ、その時から彼は骨組織の増加を最低限にするために、拘束された状態で病室に閉じ込められた。

 

もちろん医者は完全なる善意で行ったハズだ。治療法が確立され、間に合う可能性もゼロではなかったのだから。伯父も不承不承ながら頷いた。

 

だか、健太は僅かまだ5歳。そんなまだ小学生ですらない幼児が自分の命を守る為なんて理由は理解できるはずもなく、荒れた。医者に怒り、親を詰り、見舞い客に不満をぶちまけ荒れに荒れた。手どころか体も動かせなかった彼の呪詛は凄まじいものであった。

 

あれは酷い暴風雨だった。彼女……医者は後にそう語った。その通りだ。あの自分自身も含め全てを怒り狂うあの荒れかた。俺の反抗期なんか、アレに比べれば春のそよ風も同然だった。

 

そして、それから約1年後。健太は『あきらめた』

 

 理解してしまったのだろう。自分がどれほど荒れ狂おうと、どうしようと───ここから出れることはないと。

 

それからの健太はまるで いきる(しかばね)のようだった。自分からはなにもしゃべらないし、なにもしない。それは治療というという面からしてみれば最善だったかもしれない。けれどそれは、子供にしてはひどく歪んでいるように思えた。

 

 健太に転機が訪れたのはその数年後、詳しい経緯は省くが俺が工学系の大学に入ってフルダイブのことを知り、その最初の体験者となったことである。

 

そもそも俺がフルダイブに俺が興味を持ったのは

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

進行性骨化性線維異形成症は骨増殖の異常が原因で起こる...ならば体を動かないように拘束するという考え方は間違ってはいない。だがそれだけやっても余命5年。

 

 ではそれまでに治療法が発見されるか?

 

 答えは絶望的としか言いようがない。

 

 だか、フルダイブは頭からの命令の()()()()()()()()()()()()()全てを遮断し仮想世界での行動に置き換える。

要するにログインしている時はレム睡眠と同じような状態で、ここが肝心なところだがなんと、骨組織の増大を最低限に押さえられるのだ。

 

そして、時は過ぎ2年と半年前。健太や、他の協力者のお陰。それにとある新規アドベンチャー企業───後に『アーガス』と呼ばれ一躍有名になることとなる───に協力をとりつけあるサーバーを建てた。

 

その鯖の名前は『アンカー』

 今俺たちがいる世界だ

 

健太のように病気が重く身動きがとれない子供達の為に創られた世界。現実世界でのイタミを和らげようとした結果の世界。

 

 まだまだ発展途上のこの世界だが、それでも───

 

 爽やかな風がふく草原を見渡す。男の子も女の子も入りまみれて鬼ごっこをし、賑やかな声をだしている。

 

 尊いと思った。『あの時』投げ出さなくてよかった。今なら心のそこからそう思える。

 

この世界のお陰で健太を助ける目処もつき、これにてパッピーエンド。

 

 

って行けば良かったんだけどね。

 

先程のべたとおり、健太は『アンカー』の最初期のメンバーである。そして、この世界は基本的に身動きの取れない重病人の子供であり、そして最初期のメンバーは、健太を含めて皆余命宣告されていた。健太と、他のメンバーで違っていたのはただ一つ余命の長さ。

一年後には健太以外の皆、亡くなった。

 

 

多分健太は真の意味での『死別』を理解していなかったのだろう。あの一人、また一人とこのセカイから()()()()()していく。その度に健太は『死』を理解し、そしてどんどん成長していった。その成長が正しいことなのかは俺には分からない。

時々この世界に健太を誘わない方が良かったかもしれない。そんな事を考えてしまうほど、彼は短い期間にに身近な『死』に触れすぎた。

 

まぁ今は正しかったと思いこむことにしよう。

 

 

 

「どうしたの?急にボーッとして」

 

 健太、いや、ヒルコか。が俺の顔を除き込む。なんとなく頭を撫でる。

疑問を頭につけながら、それでもされるがまま撫でられるヒルコ。

 

「悪い。少し疲れててな。」

 

 結局俺がヒルコの頭から手を離したのはそれから5分後のことだった。もし、この光景をアーガスの同僚や上司に見られていたら、『お前も木田先輩side(同性愛)に堕ちたか……』と思われること間違え無しの光景だが、やましいことはないもない。ないっていったらない。

 

「んーまぁいいや。それで直木にぃちゃんが久々に来たってことはもしかして……」

 

 ヒルコが、期待に満ちた目線を向ける。いくつになっても笑顔がかわいらしいやつである。

 

 フッフッフと不敵に笑いながら懐からとあるものを出す

 

 そして、ヒルコは懐から出したものを見たとたんに目が?になる。仮想世界特有のオーバー過ぎる表現だろう。

 

「どうだスゴいだろう!遂に俺()はこの世界でコレを作り出すことに成功したんだ!

 長く大変な道のりだった。ありとあらゆるデータを造り、組み合わせ、失敗してはまた別の組み合わせを試し、試行錯誤を繰り返し、天才の上司に無意識に邪魔されたり変態に妨害されたりしながらも足りないところがあればまた新なデータを作り、勤務時間が終了してもなお様々なことを試し!」

 

「あのゴメンこれ......

 

 

 

 どっからどうみてもインスタントラーメンに見えるんだけど」

 

 どこかしら呆れた様子をヒルコが、ポツリと言う。が、そんなことは俺の耳に入っていない。

 

「その成果が塩ラーメンだ。いや、ホントに苦労した、茅場先輩筆頭の醤油派、木田先輩に統率された味噌派に邪魔され、妨害され……けれど俺たち塩派はどこよりも早く開発に成功したんだ!」

「…よかったね。」

俺の剣幕に微妙な顔をして、答えるヒルコ。そこに今ログインしてきたところなのか紫髪の少女が二人現れる。双子なのだろうか?とてもそっくりな容姿である。そして、なぜか(マズイ)といわんばかりの顔をするヒルコ。

 

「ヤッホー健太!」

「おす。木綿季、藍子。元気そうでよかった」

 

お互いに(多分)本名で呼びあうということは恐らくリアルでの知り合いだろうか?

 

「ところで健太そちらの方は?」

 

 藍子と呼ばれた女の子が俺に見覚えがないのか、不思議そうな目でこちらをみてくる?これでも一応管理者なのだが.....。やはり、この頃SAO開発に掛かりきりになってログインしていなかったのがまずかったのだろうか?ちょっと落ち込んだがそんなことは顔に出さずに自己紹介する

 

「始めまして、俺の名前は 白澤 直木

アーガスの社員で、このサーバーの管理者の一人だ

ところで君たちは健太の友達かな?」

 

「そうです。ランと言います。で、こちらが妹の」

「ユウキです!健太と同じ【横浜港北総合病院】に入院しているんだ。よろしくね!」 

 

 やはり当然といえば当然だが、彼女たちも病人か。一体何の病気なのか気になったが、向こうから話さないのならこちらから聞くのは失礼だろう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

というかユウキちゃんの次の一言はどうでも良くなった。というか頭から吹き飛んだ。

 

「おじさん()?」

 

 おじさんがではなく『も』 つまりそれは…

 

「まさか…俺以外にもいたというのか。ラーメンを開発したのは」

 

 ヒルコの方を見るとあーああついに言いやがったという顔をしていた。

 

「いつごろなんだ」

「最初に来たのは三週間くらい前。それから皆に感想聞いて一週間おきくらいに作り直してきている。」

「誰なんだ」

「それは…」

 

「あれ?シラサワくんもうログインしてたの」

 

 健太の返事を待つまでもなかった。後ろを振り向くと

 

「いや、何て格好をしてるんですか、木田先輩」

 

そこには丹前を着て、チャラメル口に加えて更に後ろに屋台、そしてチャラメルの音色に惹きつけられた子どもたちを引き連れた木田先輩がいた。無論現実での男性の姿ではなく、SAOの世界と同じ女性アバターを使用している。

 

「ん?あぁこれ?」

 

屋台をポンポンと叩きながら木田先輩は言う。

 

「また味噌らぁめん作って来たからね。皆に食べてもらおうと思って、せっかく人に振る舞うんだから。それなりの舞台を用意しないと。

まさか適当な袋詰めのラーメン持ってきて、渡してドヤ顔する訳にもいかないし、まさかそんなことを気にしない管理者なんていないよね?そうだよね?白澤くん?」

 

俺は黙って袋詰めの塩ラーメンを投げ捨てた。

 

「直樹兄ちゃんの塩ラーメンも美味しいとおもうよ…」

 

 ヒルコのフォローが身に染みる。 続けて形はアレだけど… という声が聞こえたのは気のせいだ。うん

 

 SAOの塩ラーメン入手クエスト見直すべきか。今からだとリリース直後に間に合わないがそれでも変えるべきかと俺は心のなかで自問自答する。そもそも塩に限らずラーメンなんてログアウトすればいつでも食べれるし、無理に速く実装するつもりはないし、アプデで実装した方が話題になるかもしれない。まぁ今はいい。

 

「それでだ。ヒルコできればちょっと木田先輩含めて3人で話したいことがあるんだかいいか?」

「それってソードアート・オンラインのこと?」

「あぁ ようやくな。」

 

 その言葉でヒルコはすべてを察したかのように笑った

 

「分かった。そこの体育館で話そう。いま味噌ラーメンで皆屋台に集まってるから、誰もいないはず」

 

そして、俺は木田先輩にハンドサインを送ってからヒルコと共にらぁめんに夢中になっているプレイヤーから隠れるようにしてこっそりと体育館へと向かうのであった。

 

体育館は当然のようにだれも居なかった。

 

「コマンド2:オブジェクト長机1 及び 丸いす3を償還」

とりあえず管理者権限を使って机と椅子を召喚する。一応これでもこの世界『アンカー』の管理者の一人なのでかなり高度な権限は持っている。

余談だがSAOでは管理者の中でもかなり下の方なので、なんと一回5分間のを三回しか使えない。しかも一回使ったらその理由を報告書にまとめて茅場先輩にあげなければならないというおまけ付き。茅場先輩は無制限に使えるくせに。

 

「さてと、では説明させてもらおうかな。大海原 健太さん。貴方にはSAOを譲歩するにあたっていくつか説明したいことがあります。説明は私、木田と白澤からします。」

「はい」

 

 いつになく真面目な木田先輩である。この状況で茶々を入れるつもりもなく、健太につられるようにして頷く。

 

「まず一つ目 決してあなた()『アンカー』のプレイヤーが私たち管理者とのつながりがあることは決して誰にも話さないでください。トラブルの元になりかねませんので。」

SAOは世界初の本格的なVRMMO。よって世間の注目度は高いが、製作者陣のメディアへの露出は極端に少ない。少な過ぎてかえって不自然に思えるほどだ。せいぜい茅場先輩が雑誌に2、3回でただけだ。そして、熱狂的なゲーマーの中には人を傷つけても謎に秘められたアーガスの情報を少しでも得たいというやつもいる。そんなやからに手を出されたらたまったものではない。

 

「ついで、二つ目 本来ならばSAO作成のための仮想空間でのデータ貯蓄に協力していただいた皆様にお渡しするのが筋なのでしょうが、ちょっと()()()がありまして……初回分のソフトが2つしか用意できなかったんです。ですからまず先にこの『アンカー』の中で最も長い間協力してくれた健太君と、その健太君が推薦するもう一人に渡そうと思って。白澤くんの強い希望もあったし

「余計なことは言わなくていいです。木田先輩」

 

ちょっと木田先輩?!なにさらっと暴露してるんですか?!めっちゃ動揺したが、ここで下手に動揺を示すと後で木田先輩にからかわれることは確実なので、あくまでも冷静に振る舞う。

 

「いや、めちゃくちゃ動揺顔に出ているけどね」

「ッ う、うるさいです木田先輩。話を戻してください」

「ハイハイ。茅場君以外の男のデレなんか誰得だから話を戻すよ」

話を戻すもなにも脱線したのはアンタのせいじゃねぇか、と声を大にしていいたいがそのあとの展開がありありと想像できたので黙りこむ。

 

「ちょっと待ってください。そうなると他の人にはいつ渡すんですか?」

 

 ありがたいことに先程の木田先輩の発言に言及することはなく、心配そうな顔をして他の子の心配をする。

 

「心配しなくてもちゃんと『アンカー』の皆には第二回製造の分を渡すから実質的に1週間延びるだけだから安心してちょうだい。説明しなきゃいけないのはこれくらいかな?」

「サービス開始は何時からですか?」

 

おっと一番真っ先に説明しなければならないことを忘れていた。

「11月6日 の午後1時からだ。(サーバー)が落ちない限りな」

「大丈夫(サーバー)は1万どころか10万人が入っても落ちないから……机上の空論ではね!」

「不吉なこと言わないででください」

 

思わずといった体で健太が笑う。それにつられるようにして俺もいつの間にか笑っていた。

 

だが、後で俺は結果的にこの選択を激しく後悔することになる。

 

知らなかったとはいえ、俺はこの時健太(と健太が誘ったという()()()に)

 

地獄への片道切符を贈ってしまったのだから。




進行性骨化性線維異形成症は実際に存在する病気ではありますが、内容はWi○ipe○iaを適当に読んで適当に描写したものであるので、絶対に現実とは違うところがあります。ご了承ください。

主人公の影響でかなりフルダイブが医療用途に注目されているようですが果して───?
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