ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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ヒルコ目線です。
今回プログレッシプ一巻既読前提です。


雑談 in はじまりのまち

「______かくかくしかじかでキバオウさん達に誘われたんだ」

 

 そう言って直木兄ちゃんは近況報告を終えた。

 ここは、はじまりの街にある小さなご飯屋さん。直木兄ちゃんから"ご飯でも一緒にどうだ?"という誘いがあったのでユウキと二人、久しぶりにはじまりの街まで戻ってきたのだ。

 

 一週間振りに会った直木兄ちゃんは、相変わらず疲れた目と顔をしていたが、それでもどこか吹っ切れたような顔をしていた。色々あるだろうが、一番の要因はなんだかんだ発散できたのが大きかったのではないかと思う。

 

 結果的にだが4桁を超える大量虐殺への加担。それによってプレイヤーへ抱いた罪悪感。

 

 その上であの攻略会議での暴走に至った経緯の大半を説明して、それを僕らが受け止めた。

 そのことで少なからず精神的に楽になってくれた部分もあるのではないだろうか。

 

 ......でも、直木兄ちゃんのことだから絶対にまーた色々抱え込むんだろうな。ヒルコは諦めのため息を内心ついた。

 

「それでウリエ......じゃなかったマクラギはキバオウの誘いをどうするの?」

 

「正直言って迷っている。一介の鍛冶屋として見るなら彼の誘いは正直魅力的だ。特に素材の手に入る量が増えるのが本当に助かる。生産職に素材とコルはいくらあっても足りることはないからな」

 

 それとユウキ。間違っても他の場所では呼び間違えてくれるなよ。と若干青い顔をして付け足す直樹兄ちゃん。確かにうっかりでも、その名前で呼んでしまったら色々大変だろう。

 

 今となっては、攻略組のみならず他のプレイヤーにとっては"ウリエル"は忌み名だ。

 

「僕達のことで遠慮してるなら大丈夫だよ」

 

「別にそういう訳じゃないさ」

 

僅かに揺れ動く視線。直木兄ちゃんに僕、大海原健太のことを気にするなって言っても意味がないのは知っている。

 

僕が小学生の頃からずっと______直木兄ちゃんはずっと僕のことを助ける役割を背負ってたから。

 

 きっと本人は口では'自分のためだ'とか言って否定するんだろうけど。

 

「まぁおいおい考えるさ......そうだ遅れたけど第2層ボス攻略お疲れ様。どうだった」

 

「強かった」

 

 第2層ボスは事前情報だと<バラン・ザ・ジェネラルトーラス>とその取り巻きの<ナト・ザ・カーネルトーラス>という話だったが、数人のプレイヤーによって迷宮区のボス部屋が発見する数日前に追加のボスが途中参戦することが判明。

 

 幸い、追加ボスである<アステリオス・ザ・トーラスキング>の弱点______額の王冠にダメージを与えることで行動を止められるということも判明したが、額の王冠はどうやっても地上から手が届かない場所にあった。

 その時点で遠距離攻撃が可能な投擲スキルを使用することが検討されたが、問題は攻略組で投擲を実用段階まで上げていたプレイヤーがたったの2人しか居なかったことである。 (ユウキは投擲スキルを持っていたものの熟練度の低さから除外された。)

 

 そこに現れたのがネズハというプレイヤー。詳しい話をヒルコらはキリトとアスナから聞かされた話でしか知らないが、彼は鍛冶屋を営みながらその一方でプレイヤーの武器を密かに盗みとることも行っていたらしい。しかしキリトとアスナにそのことを見抜かれ、ボスへの攻略方法を話している場に突然現れて被害者たちに謝罪。

 当然、場は更に荒れて『死刑だ‼』 と言い出す命をなんだと思ってるんだ。という過激な意見も飛び出したものの、実はネズハの仲間であったグループ、<レジェンド・ブレイズ>がそれを庇って主犯が自分たちであったと更に謝罪を重ねる。

 

 命を軽く扱う言動をしたプレイヤー達はそれぞれのリーダーであるキバオウさんとリンドに抑えられ、再発防止のために依頼人にバレずに武器を盗ったその手法を聞いた所、投擲スキルに関しては攻略組よりも高い熟練度を持っていることが判明。

 

 "プレイヤーを裏切るような奴にボスの足止めは任せられん"という意見もあったものの、ボスを足止めする役が二人ではいざという事態に対応できないといったことから、投擲スキル持ちに何かあった場合の補欠として投入されることが決定。

 

 肝心のボス戦は、何人かのプレイヤーがボス達が使う攻撃の追加効果である<麻痺(パラライズ)>を食らってダウンしたものの順調に進み、遂に2層のラスボスである<アステリオス・ザ・トーラスキング>が出現した。

 既に弱点が判明したボスの対処は簡単だった。ブレスを吐くタイミングで投擲スキル持ちが額の王冠に攻撃を加える。たったそれだけで足止めができるのだから。

だが、そんな慢心が仇になったのか、投擲スキル持ちのプレイヤーが立て続けに<麻痺(パラライズ)>してしまうという事態が発生し、ボスのブレスを止められず危うく大惨事になりかねない所で、<レジェンド・ブレイズ>によって<麻痺(パラライズ)>攻撃から庇われたネズハがチャクラムでボスを抑えてた。

 

 最終的にはなんだかんだあって、キリトがボスとその取り巻き全てにラストアタックを決めて無事にボス戦はプレイヤーの勝利だったのだが、

 

「本当にネズハが居なかったらヤバかった」

 

 ユウキの言葉に同意するようにヒルコは首を縦に振った。ネズハがボスの足止めをしていなければ攻略組は半壊していたかもしれない。

 

「そうだったのか。よく頑張ってくれたな、二人とも」

「えへへへ」

 

 つい顔がほころぶ。いつになっても直木兄ちゃん褒められるのは嬉しいものだ。

 感謝することは沢山あっても、感謝されることは滅多になかったのだから。

 

「ところで聞きたいんだが、"額の王冠にダメージを与えることで行動を止められる"。

 このヒント......一体誰から貰ったんだ?」

「アルゴからだけど?」

「アルゴか......なるほどね」

 

 アルゴという名前を耳にした瞬間に直木兄ちゃんがほんの一瞬だけ変な反応を見せた。この反応は......

 

「直木兄ちゃんアルゴと何があったの?」

「なんの話だ?」

 

______ヒルコの勘違いだったようだ。

 昔、本当にむかしの話、まだ自由に動けていたころによく見せていた苦手な親戚の叔母さんに見せていた反応と同じように見えたのだが。直木兄ちゃんが心当たりがないと言外でいうのならそうなのだろう。

 あるいは知らぬが仏。黙っていた方がヒルコにとって都合がいいという話なのかもしれないが。

 

「ならいいや。ごめん、僕の勘違いだったみたい」

「そうか」

 

 そう言った直木兄ちゃんの顔がどこか追及されなくてほっとしたような顔をしていたのは、果たしてヒルコの気のせいなのか。真相を追求できるものは居ても、する者はこの場にはいない。

 

「そういえばユウキ、確か投擲スキル持ってたよな」

「そうだよ、ほとんど使ってないけど......」

 

意図してなのかそうではないのか直木兄ちゃんがユウキの投擲スキルについて話を変える。

ユウキの投擲スキルの熟練度はたったの4だ。実用性はほとんどない。参考までに言うとネズハの熟練度は50を超えていたらしい。

 

「なら鍛冶スキルの熟練度の過程でいくつか性能のいい投げナイフを作成したんだ。良かったらもらってくれないか」

「そんな、わるいよ」

 

 直木兄ちゃんがわざわざ人に渡すくらいなのだから性能は本当にいいのだろう。

 遠慮してしまうユウキの気持ちも分かる。けど......

 

「遠慮しなくていい。今後攻略を進めていく上で遠距離からの攻撃はあるに越したことはないから」

「僕も同じ意見かな」

「ヒルコとマクラギがそこまで言うなら。ありがとう。もらっておくね」

 

 ヒルコたちの言葉にほんの少しためらった様子を見せたが、そのまま素直に受け取るユウキ。

 

「どういたしまして......もちろんユウキたちの戦闘スタイルを曲げてまで無理に使うことはないからね」

 

少し慌てた様子でアドバイスをつけ足す直木兄ちゃん。

「うん。分かった!!」

 

 ユウキが朗らかに答える。

 

「今出して見てもいい?」

 

「悪くはないけど食べ終わってからの方がいいと思う」

 

「それもそっか」

 

 それからしばらくとりとめのない話を皆でしながらご飯を食べる。最近、ユウキと一緒に様々なレストラン巡りをしていたため、白米に味噌汁。それに魚の煮つけに沢庵といったメニューはシンプルでいい。

 

 なお、ヒルコとユウキが最近食べたメニューは世間一般では"ゲテモノ"と呼ばれる部類なのだが、2人がそれを知ることはない。

 

「______それでさ、語感だけで決めたメニューがすっごく多くてさ、丼からあふれんばかりの唐揚げが盛られててさ、凄かったんだよ‼」

 

「そうそう結局二人だと食べ切れなくてたまたま来店してたゴンダ達に助けてもらってようやく完食できたんだよ」

 

「語感だけで適当に選ぶと時折変なの出てくるよな。俺もキバオウさん達と一緒に言った店でとんでもない饅頭出されて酷い目にあった」

 

 そう言って青い顔して体を震わせる直木兄ちゃん。とんでもない饅頭とは一体どのようなものだったのだろうか?

 

「ちなみにだけど別にゴンダの様子は変じゃなかったよな」

「変って?」

「例えば......頭が粉砕されてたりとか?」

「どういうこと???」

「いやぁなんか脳が破壊されたって風のうわさで聞いたもんだから」

「マクラギ、人は脳を破壊されたら生きていられないと思うよ」

「そうだよな。そうだよなうん......変なことを聞いた。忘れてくれ」

 

 直木兄ちゃんの言ってることがなんかよく分からないけど、よく分からなかった。(よく分からなかったので二回言いました)

 

「そういえばマクラギのおすすめの店とかある?」

「おすすめか......美味しいと面白いどっちがいい?」

「「両方‼」」

 

 この世界では現実世界ではありえないようなお店がある。空を飛ぶ食事プレート。注文して即座に展開されるラーメン。オレンジジュースが出てくる胴の蛇口などなど_____初めて体験するものばかりでヒルコはユウキと一緒に楽しんでいた。

 

このゲームの開発者である直木兄ちゃんならばさぞかしすごいものをオススメしてくれるに違いない!

 

「両方か......そうだな、なら6層に絡繰り屋敷があってな。そこでは絡繰り弁当を取り扱っているんだ」

「絡繰り弁当って決められた手順で箱を動かさないと開かないあの?」

「そうそう。ただこの世界だと全ての物体に耐久値が設定されているせいでな......制限時間以内に開けないと中身ごと消滅する」

「えぇ......」

 

なにそれ酷い。

 

「ただ、その分味はしっかりしてる。濃厚なたれがかかったかつ弁当、その肉は口入れると溶けるほど美味い。付け合わせの野菜の煮物も絶品」

 

ごくりと、腹が既に満たされているのにも関わらずのどが鳴る音が聞こえた。

 

「値段はお高め4,990コル。制限時間はたったの15分......興味があるなら6層に到達した段階で教えてやろう」

「絶対だから、絶対だからね!!」

「ああ約束だ」

「嘘ついたら針千本飲ますから」

「この世界だとマジで実行できてしまうのが怖いな」

「針ってはじまりの街で売ってた?」

「まてヒルコ、本当に買おうとするんじゃない」

 

 直木兄ちゃんの焦ったような様子をみてくすりと笑う。

 6層に到達した時もこんな感じで皆で笑いあえているといいな。

 

 少年が抱いた願いは叶うかどうかは......今は誰も知らない。




第2層ボス「めっちゃダイジェストで流された.......」

第2層を真面目に書くと本題関り薄い所でどんなに早くても2、3か月くらい(リアル時間が)吹き飛ぶのでカットします。ダイジェストに収めても第2章第1話に乗っけたそれまでの(本作)あらすじより文量あるのはなんでぇ?(ヒント:原作の情報量と本作の情報量の差)
 原作から逸れてる部分はウリエルが攻略組を散々にかき乱したことや、ディアベルらが色々裏で頑張ったってことでお願いします。

 ネズハの投擲スキルの扱いには少し悩んだのですが、
コルを出して投げナイフなどを買わないと碌にダメージを与えることができないが、ストックが尽きるとほぼなにもできない。ことと、
投擲スキルのソードスキルをSAOで使いこなすプレイヤーがいるはずない。と、プログレ一巻で言及されていたことから、使い勝手の悪いスキルを攻略組で取って尚且つ上げてる奴はほとんど居ないだろうなということでこういう形にしました。

 
 それと拙作も遂に評価バーに色がつきました。これもここまで読んでくださった方々のおかげです。評価・お気に入りしてくださった方本当にありがとうございました!こらそこ2年10ヶ月11日書いてようやく評価数5とか言わない 
 これからも暖色目指して頑張っていきますのでよろしくお願いします!緑バーは嫌だ緑バーは嫌だ
 話のストックも残り一話。毎週投稿も次で最後になりそうです。
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