ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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4ヶ月の始まり

______それでいいんやな。

 

 キバオウから最後の確認が返ってくる。

 

 俺はそれに一際大きく頷いて言った。

 

「はい。俺はキバオウさん達のギルドに()()()()

 

 俺のその言葉を聞いてキバオウさんを始めとした軍の皆さんは______

 

 

 

「あー安心した。アンタからどんな返事返ってくるのか全然読めなかったからマジで不安だったんだ」

 

______全員安心したような表情を浮かべていた。

 

「私はマクラギが入ってくれるのを信じてたけど」

「一番そわそわしてたやつがなんか言ってら」

 

 タケの言葉に笑顔のまま固まるナナ。

 

「楽しみにしててくれたんだ」

「______別にリクルーターとして成功するかどうか気になっただけだし」

 

 そう言ってそっぽを向くナナ。かすかに黒髪の間から見える耳が赤い。

 

 いやまぁ正直なところかなり迷ったのだが、攻略組の最大級のギルドの看板はデカい。ぶっちゃけ(管理者権限で手に入れたアイテムの一部を売り飛ばしたため)コルには余裕があるが、それでも手に入らない素材というものは存在する。それが潤沢に手に入る伝手があるならどれほどいいと何度思ったことか。

 

 発足したばかりとは言え、新入りならば対した責任はないだろう。

 

「まぁええ。これからよろしく頼むで生産部の()()()として」

「こちらこそよろ......ちょっと待て、隊長って何の話です?」

 

 そんな新入りに対する期待を裏切るようなことをキバオウさんから言われる。

 部隊長、チョウってことはオサってこと??

 

「ナナから何も聞いてないのか?」

「いえ特には......」

「生産部のメンバーはいまんところマクラギはんとナナだけや」

 

俺とナナだけ______元βテスター(管理者)と半ば騙すようにしてキバオウたちと引き合わせたこの小娘と二人。しかも俺がリーダー格......なんでや!!

 

「まじか」

 

確かに考えてみれば当たり前のことではある。今のアインクラッドに生産職がほぼ居ないのは周知の事実。俺でさえ、ナナ以外の生産職の知り合いは二人しかいないのだ。

いくら攻略組のトップギルドとは言えそう簡単には生産職のプレイヤーは集められないだろう。

 

とは言え

 

「なんで教えてくれなかったんだ? ナナ」

「いや......その......聞かれなかった。だから答えなかった」

 

 開き直るナナ。確かに聞かなかったが、この様子なら直接聞いたところで正直に答えたかはかなり怪しいところである。

 

 いや、流石に現実世界では平社員の俺が部隊長をやるのは少しばかし抵抗がある。いざという時にごたごたしそうだし。

 

「新入りが部隊長なんてやっていいんですか? それだったら経験の長いナナがやったほうがいいのでは?」

「やだ、やりたくない」

 

 ナナに押し付けようとしたが、彼女にはきっぱりと拒絶されてしまった。その意思は頑なそうであり、簡単に翻すことはできなさそうだ。

 

「しかしだからと言って生産職でもないやつが生産部の隊長になるのはおかしな話ですし、そこの小娘は論外ですのでマクラギさんが適任です」

 

「もっと私を尊重しろ」

「だったら部隊長やるか?」

「やだ」

「だろ。だったら静かにしてろ」

 

 ナナが"小娘"扱いに文句を言うが、タケの言葉に黙り込む。

 

「大丈夫です。もし問題が発生しても俺たちが相談に乗りますし、気軽に引き受けてください。もしマクラギさんが引き受けないと......」

「引き受けないと?」

「そこのわがまま小娘が部隊長になります」

「よし引き受けよう。こんなわがまま小娘をトップに据えるわけにはいかない」

「ちょっと⁈ 私をなんだと思ってるの?」

「「わがまま小娘」」

 

 ライオンのごとく激怒しているナナをしり目に、そういうことなんで今後よろしくお願いしますとキバオウさんに軽く声をかける。

 

「おうよろしゅう頼む」

 

 こうして、ここから軍の生産部隊長としての俺の新たな生活が始まったのであった。

 

 

 2年間の内()()()4()()()。たったそれだけの期間の話である。

 

 

 

 数日後、はじまりの街にて

 

「いくらなんでもおかしいと思う」

 

 出来上がった大量のポーションを前にナナが呟いた。

 

「どうかした?」

 

 純度の高いインゴットをストレージにしまいながら聞く。

 

「ちょっとマクラギの昨日のスケジュール言ってみて」

「部隊長をつけろ部隊長を。一日軍の鍛冶屋として働いてただけだけど」

「詳しく」

 

 詳しくっていってもそんなに話すことでもないのだが。

 

「5時半起床、7時半からフィールドで素材集め、11時からは軍からの依頼をこなしつつ鍛冶屋開業、1時に黒パンを食って君と一緒に知り合いの鍛冶屋の勧誘、体よく断られて14時帰宅。そこから23時まで鍛冶屋業務を行って、夜食を食べた後フィールドで素材集めして26時半に宿に戻った」

 

 こんな感じでいいか? と、問いかけると顔を青ざめるナナ。

 

「今の話には重大な問題がある、どこだか分かってる?」

「......?」

 

 どこだ? 言ったことをもう一度口の中で反芻して気がついた。

 

「すまん。就寝時間を言い忘れてた。宿で軍への報告書書いてたから実際に寝たのは27時半だな」

「そこじゃないけど、この人私の意図に全然気がついてないことは分かった」

 

 ナナの意図??? さっぱり分からない。

 

「労働時間を数えてみようか」

「22時間」

「それを毎日?」

 

 ナナの疑問に肯定の意を示す。

 

「いかれてる。いくら何でも働きすぎ。一日何時間か知ってる」

「世の中には3日間ぶっつづけに働いても平気な顔してる生物がいるんですよ」

 

 木田センパイとか木田センパイとか。

 

「......その人ほんとに人間?」

「それは俺も疑っている」

 

 この事件の解決のためにこの一か月間一度も寝ずに働いている。そう言われても信じられる程度には人間やめてるからなあのセンパイ。

 

「そんな人外の存在を引き合いに出すな。」

「それはゴメン。じゃあそういうことで」

 

 そう言って鍛冶屋業務に戻ろうとして、頬をつままれる。

 

「改善してその労働体制」

「なんで?」

 

 むしろアーガスでの勤務と比べればかなり楽な方なのだが。

 とここまで聞いてようやく彼女の意図に気がついた。

 

 なるほど、なぜ気がつかなかったのだろうか。

 

「もちろん俺が勝手にやってるだけであって、他の人にも強制する気は一切ないから安心してくれ」

「違う‼」

 

 グーだった。力強く握りこまれたグーだった。安全圏による体力の保護がなければ体力が削れてたのではないだろうか。

 

「違うの?」

 

「小学生の作文問題でももうちょっとまともな回答が返ってくると思う。

深読みするな、マクラギが働きすぎって言いたいの私は」

 

「大丈夫だよこれくらい。精々週154時間なだけだし。160時間超えてないきゃセーフセーフ*1

 

「誰だよ、こんなになるまで放置したの......社会? このブラック企業が放置されてる社会が悪いの?」

 

 前職......というかアーガス社はほんの少ししか黒くなかったと思うのだが。

 

「そこでポケットしてるワザマもなにか言ってやって!」

「私?!」

 

 とここで、ナナが話に巻き込んだのは技マシン20、略してワザマさん。コボルト王を倒すときに共闘した軍のメンバーの一員であり、口数が少なく......とにかく顔が丸い人だ。

 彼はあの第一層の攻略後、自身を実力不足だと感じ生産職のサポートに回ることにしたとのことで、俺達が圏外にでて、足りない素材採取をする際によく手を貸してもらっている。元攻略組というだけあって実力は確かだ。

 

「そうですね。とりあえずマクラギさんは自分がその、世間一般からみたら労働時間が多いということは理解してますよね」

「まぁそれははい」

 

 それくらいは分かっている。なんでナナはうっそだーって呟いたのだろうか

 

「あなたは隊長です。今後軍が規模を拡大して生産部に関わる人数が増えてきた時、いくらマクラギ隊長が俺が勝手にやっていることと宣言しても、マクラギ隊長に配慮して無理して一緒に働いてしまう人が出てきてしまうのではないでしょうか。

 それに、もし睡眠不足による判断力の低下も問題です。もしなにかが起こった後では遅いんです。隊長がいなくなったらこの生産部は立ち行かなくなります」

 

「確かにそう考えるとまずいか。分かった改善しよう」

 

 要するに人に見られるところで働くのが悪いんだな! 睡眠不足による判断力の低下は今までだって配慮してるから問題なし!

 

 なのでナナさん。ジト目でコッチ見るのやめてくれません・

 

「改善って具体的に言うと?」

 

 具体的......? なんとなく自分が考えた改善策をそのまま言うと、また話がこじれそうな気がしたので......

 

「なら新しく人を増やすというのはどうだろうか。そうすれば一人当たりの負担も減るだろうし」 

 

 ちなみに、技マシン20はスキル取得数上限の関係で未だに生産スキルは一切獲得していない。その内鍛冶スキルを取りたいとのことだ。

 

「間違っていないと思うけど。まだ心当たりある?」

 

「いやもう知ってる生産職プレイヤーには全員声をかけ終わっってるな。逆にベテランポーション師さんは伝手ある?」

 

「私も全員軍に紹介済み......」

 

 何人知り合いが居たかは知らないが、俺の時を考えると事前説明なしでいきなりキバオウさん達に引き合わされた可能性が高いわけで......俺以外にスカウトに成功した人材が居ないことを考えるとそういうことだろう。

 

「ちなみに何人くらい?」

「2人」

「なるほど。ちなみにだが、紹介の仕方は俺の時と同じか?」

「うん」

「分かった。ナナお前リクルーター、クビな」

「?!」ナンデ⁈

 

 びっくりしてるナナに、「軍へ合わせる前の説明不足及び勧誘者の逃げ道をふさいだこと」と事実だけを淡々と答える。心当たりがあったのか固まるナナ。......その反応だと俺の隣に座ってたのも確信犯か。

 

「だからクビ。異論は?」

「ん______まさに正論」

 

 ため息一つしてから、なにも書かれていない紙を取り出し『・知り合いの生産職の勧誘』と書いてその上から二重線を引く。

 

「誰かほかに案がある人居るか?」

「発言いいですか?」

 

 手をあげたのは技マシン20。そのまま身振りで発言を進める。

 

「私は______という案がいいと思ったので提案します」

「......へぇ?」

 

 提案された内容は案外面白い案であった。

*1
1週間=168時間




技マシン20に関してはもうちょっとまともな名前を考えてあげればよかったなと、作者反省。ある意味ネットのハンドルネームらしさは出ているかもしれませんが。

 前話評価バーに色がついたことについてお礼の言葉を述べさせていただいたのですが、不可解なことに前話投稿後に評価を削除した方がいらしたようで現在評価バー無色となっています。
 前話のお礼はなんか評価と感想もらえない底辺作者が幻覚みてらぁと思って気にしないでください。同情するなら感想と評価下さい。

 お気に入り登録や感想、評価をもらえると作者が喜びます。

 これでストックが切れたので毎週投稿は終わりとなります。
 次回更新は遅くても4月1日を予定しています。
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