ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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久々のラーメン回です。



第2章-4 ラーメンフェス編
こいつら全員ラーメンきめこんでるんか?


「塩ラーメンを作って釣りだしましょう」

 

 そんな一言で俺たちのラーメン作りが始まった。

 

 ......いやなんで?

 

 

 話は数時間前に遡る......

 

 

 ある日俺は新入り数人と犬耳青年こと、リョウケンを引き連れて、ラーメン屋『スガーア』に訪れていた。

 

 あの忌々しきラーメン屋である。塩ラーメンが追い出され、味噌らぁめんと醤油ラーメンが幅を響かせ、食べ物未満が当然のごとく出されるあの魔窟殿である。

 

 もちろん、俺に店選びの権利があるのならこの店は絶対に選ばない。あのランダム災害饅頭が俺にもたらせたトラウマは本当に酷かった。思い出したくないので描写を最低限に抑えるが、俺の味覚遮断技術を貫通する味覚があるとは思わなかった。

 

 それでも俺たちがこの店に訪れた理由はただ一つ、待ち合わせ相手がここを指定したからである。

 

「おう来よったか。マクラギはんこっちや!」

「お疲れ様です、攻略軍の皆さん方」

 

 俺たちの来店に気がついたキバオウさんが手を思いっきりかざしてアピールする。

 

 そう、今回俺は生産部の新入り二人をキバオウさんに顔見せさせるために来たのだ。

 

 生産部の新入りと軍上層部との顔合わせは重要である。今のところはありがたいことに前例はないが、こうしておけばもし重役が死亡した場合、引継ぎがスムーズにいきやすい。簡単に死ぬ気はないし、生産部の連中を死なせる気はないが、念には念というやつだ。

 

 今回の新入りは長らくコンビで活動していたメンバーだが、力不足とやらで生産部に入部した。名前は別にあるが何故かチビとノッポという名称が定着してしまっている。陰口一歩手前だが、本人が自称しているのなら問題ないだろう。

 

 新入りの自己紹介を終えて、各自想い思いに注文する。

 

「今日はワイの奢りや! なんでも好きなものを頼んでええで!」

「じゃぁ俺、この店で一番高いものを」

「"じゃぁ"でとんでもないことを言うな。お前はコッチの安いのにしておけ」

 

 スーパーメガ盛りいっぱい一杯丼とかいう頭が悪いものを注文しかけた新入り(チビの方)を止め、普通盛りのを注文させる。

 

「パワハラだー。また今度自腹で食ってやるー」

「いつかお前は今の俺の行動に感謝する日が来る」

 

 なんて言ったって、スーパーメガ盛りいっぱい一杯丼はその名に恥じず桁違いに量が多い。しかも残そうとしようものなら何時ぞやと同じ、紫のシステム的な障壁に阻まれるオチだ。相変わらず性悪なシステムである。

 流石はアーガス社員が自らデザインした店だ。細やかな悪辣さが効いている。くたばれ。

 

「ここのおススメってなにかありますか?」

 

 ノッポの方はチビよりも礼儀正しい。敬語でオススメを聞いてくる。

 

「新入り。このsteamed bun of haphazardnessって奴がオススメだ」

「こらバカ。それを進めるなんてとんでもない」 

 

 しかし礼儀正しいからと言って、聞いた相手がそう返してくるとは限らない。

 タケがいたずらっ子のような顔で例のランダム饅頭を進める。

 

 慌てて止めるがもう遅い。ノッポは既に頼んでしまっていた。

 

「かわいそーに」

「祈ってやる、ノッポ。お前にとってそれが良いものであることを」

「えっ? えっ?」

 

 タケが他人事のように同情する。大体こいつの所業だが、今更そんなことを言っても仕方ない。

 祈る。ただひたすらに、食べれないものに当たらないように、運よく美味なものに当たるように。

 

 もちろんランダム饅頭の恐ろしさを知る由もないノッポはただただ混乱しており、明らかに食べるのを躊躇していた。

 

「この饅頭なんなんですか?」

「俺の酒の肴」

「人の作り上げた悪意。こんな悪辣なシステムをよく産み出したとSAOの開発システムに喝采代わりのミサイルを送りたいほどだ」

「えぇ……」

 

 タケと俺の返答を聞いてますます混乱するノッポ。

 目に余ったのか、キバオウさんが「食べてみりゃわかる」と言い含める。

 

「いただきまーす。…なんか酸っぱくてコリコリしてる。嫌いな味だ」

「ちっ、今回はマトモだったか。つまんね」

「この原寸大の地獄を前にそれを掴むとは…お前は恵まれている。その恵みに感謝してその饅頭を食べ切れ。そして二度と頼むな」

「なんなんですかコレ……マクラギさんはまだマトモだと思っていたのに」

 

 わけがわからないよ。そんな顔をしながらもノッポは饅頭を食べ切った。ところで、今までの会話で正気を疑われる発言があったか? いやない。

 

 ランダム饅頭はアーガスの醤油ラーメン派と味噌らぁめん派が仕掛けた究極で最悪の罠である。味は美味いものは美味いらしいが、大体食べ物を名乗る事すらおこがましい汚物である。というか俺はまともじゃないものしかあたったことがない。本当に悪辣なシステムだ。流石は塩ラーメンに遥かに劣る醤油ラーメン派と味噌らぁめん派の所業だ。人の精神がない。虫の方が賢いだろう。ひょっとしたらIQはサボテンと同じくらいかもしれない。

 

 もし仮にアーガス社員であることを明かすことができたのなら、そうした事情を明かしつつ、注文しない方がいい理由を一から説明してやるのだが──そうすれば食べるべきではない理由が分かってもらえるだろう──残念ながらそういうわけにはいかない。結局のところ地道に警告を広めていくしかないのだ。

 

 

 やっぱり醤油ラーメンと塩ラーメンってクソだな!!

 塩ラーメンこそ正義!! 残りの二つはダメ! それ以外はラーメン権なし!

 

 

「つまりランダム饅頭は頼んじゃいけないってことだよ」

「過程がよく分からないですけど、今まさに食べている人に言われても全く説得力無いことだけは分かります」

「マクラギは反応薄くてつまらない」

「不味いとは思ってますよ?」

  

 どうでもいいが今回は今甘い味噌そして錆びた銅をまぶしたコーン飴味だ。意味が分からないと思うが実際にそうとしか表現できないのだから仕方ない。

 ちなみに反応が薄いのは、テンションが同じ==てめぇウリエルだろ!! と推測されかねないからあえて抑えているのだ。やだよ、食事の反応でバレる最悪の裏切り者(笑)卍ウリエル卍さんとか。

 

「……つまりかくかくしかじかってことだよ」

「なるほど頼むごとに味が変わるんですね。しかも事実上食べ切るまで脱出できないと」

 

 置いてきぼりになっていた新入り二人に、リョウケンが概要を説明する。

 

「ちなみに不味いのはあの管理者である"ウリエル"すら匙を投げるほどだ。」

「ウリエルってあの?!」

「管理者でも飯食べるんだ…」

 

 ウリエルの話はキバオウやタケとここに来ると必ず飛び出る話だ。俺のことを笑い話に出来ているのなら───それでいい。

 

「ウリエルってどんな奴なんだ? 倒せるのか?」

「本性を現した後に、尾が三つ腕が百、眼が十の化け物になって、当時のリーダーを始めとした攻略組を20人殺戮したとか聞きますけど」

 

 案の定興味を抱いたようで、新入り二人はタケの方を向いた。……ところでその悪意に満ちた伝聞はなに? 誰もコロコロしてないし、リーダーに至ってはむしろ蘇生してるんだが。

 

 印象操作し過ぎたか…? 鍛冶業務の最中、ウリエルを悪者にするためにあることないこと噂したのは流石にやりすぎたかもしれない。

 

「なんでや! なんで死人が増えとるんや!!」

「しっぽに腕に眼か──おもしろ。ちなみに最後には口と尻から火も出てたぜ!!」

「出しとらんわ、アホ!!」

 

 いや俺はやらかしてなんていない…噂の流布に関しては。

 大体タケのせいだな。茅場と木田センパイ以外のアーガス社員をなんだと思ってるんだコイツ。人間だぞ、ただ人の常識と良識が通用しない奴らが大半なだけで。 

 茅場と木田センパイ? アレは人間外の存在と考えた方がまだ納得できるから除外。

 

「ワイが見た限り、あほうなところはあっても、普通の───いい奴だと思ってたんやがな。正体明かされるまでは」

 

(……俺としても、あの場でキバオウさん達を罵倒したくはなかったよ。)

 

 聞き飽きた。そんな退屈そうな表情を繕いながら、一人ため息をついた。

 

(それでもウリエルを悪役にするためにやっちゃったんだけどね)

 

 それはそれとして"あほうな"ところって is どこ? 全く見当がつかない。 

 

「いい奴。そうなんだよな。あの塩ラーメンを求めての狂気のランダム饅頭二度打ちは演技に見えなかった。

 間違いなくあのあほうな行動は奴の素の行動だ」

 

 そっかー。タケからみてあの行動はあほうだったのか─。

 お前に言われたくないんだよ! この塩ラーメンばっか当てる幸運野郎め!! お前のような奴に恵まれないものの気持ちが分かるか!! バーカバーカ

 

「なんですか、ランダム饅頭二度打ちって」

 

 チビもそんなところに突っ込まなくていいから。塩ラーメンって呟いて混乱しているノッポを見習いなさい。

 

「大した話やないで。ただ、一度死にそうな顔をしてランダム饅頭食べ切った後に更に注文して食べ切れずに泣きながら饅頭に剣をふるっただけや」

「なぁにそれ」

 

 もし俺が何も知らなければ、ノッポと同じ言葉を吐いただろう。あの時の味は───。うん、少し思い出しただけで気分が悪くなってきた。吐瀉機能をオミットしておいて本当に良かった。慌てて思考を切り替える。

 

「つまり、管理者は塩ラーメンに固執していたんですね」

「…まぁそういうことになるのかな」

 

 それはそう。タケの言葉に内心同意する。

 

 

 

「なら、塩ラーメンを作って釣りだしましょう」

「「「「「はぁ?」」」」」

 

 チビはどや顔でそう言った。

 コイツの発言によって、この後"SAO最大のネタ作戦"と嘲笑される作戦が開始されることとなるのであった。

 

 

 いやマジでなんでこうなった。




リアルが忙しすぎて更新が滞ってしまい大変申し訳ございません。久々の更新がこんなラーメン回のでいいのだろうか?

切りの良いところまでのストックはあるので、次回更新は近いうちにします。
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