ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者 作:眠猫の玉手箱
新編"25層攻略編"開幕です。なお今話に主人公のマクラギは出てきません。時系列的にはSAOが攻略された後の話です。
<前回までのあらすじ>
2022年、茅場晶彦はソードアート・オンラインの舞台となるアインクラッドをデスゲームの舞台にした。それに巻き込まれたアインクラッドの開発者ウリエルは、このゲームをクリアすることをヒルコ・ユウキと共に誓う。
それから色々あって正体ばれしたウリエルはマクラギへと名前を変え鍛冶屋として攻略に寄与する。そこで出会ったナナとワザマと共にキバオウ率いる解放隊の庇護の元《生産部》を立ち上げる。
中学時代の彼女ラサキとの一方的な再会、飛行する鍛冶台の襲来、カウントダウンパーティーで爆破されるドラゴンナイツ・ブリゲードなどのトラブルを乗り越えて、アインクラッド1の生産ギルドとして成長した《生産部》
攻略の前線が17層に差し掛かった頃、ウリエルの塩ラーメン好きを知った生産部員により塩ラーメン作成してウリエルを捕らえる作戦が提案される。周囲に正体を秘匿しているウリエルは頭を抱えるものの、金欲しさにその作戦を元にラーメンフェスを開催することを決定する。ラーメンフェスの最中ラサキに正体を明かしたくなるが、何とか堪えたマクラギは再び発生したトラブルの解決へと向かうのであった。
───そしてラーメンフェスが終わり、キバオウとラサキは解体するラーメンフェスを見ていた。実は"ウリエルを捕らえる名目"でラーメンフェスを開催するよう働きかけたのはラサキだった。その理由をキバオウは"知り合いがウリエルであることを確信すること"ではないかと指摘する。それを否定しラサキは一人内心で呟く。その理由がただ単に"好きな人に喜んでほしかっただけ"ということを。
とある配信者から始まるあの日の話
仮想世界を切り取った枠の中。妖精のアバターが動く。
そのタイトルは「雑談枠! SAO実体験Vが話すあの世界の話!」
「コン北、コン鬼、こんばんは!
迷子のみんなー今日も配信始めるよ!」
<id:qwCWB>待ってた
<id:Bheij>Myエンジェルは今日もカワイイ!!!
<id:rveZN>天使じゃなくて妖精定期
かつて隆盛を誇った動画投稿サイトの一画。そこでライブ配信が始まったのだ。
2024年。目下のトレンドは仮想世界であった。
何者かによってばら撒かれた
今まさに配信している妖精も、その恩恵をフルに活かした一人。
無期限活動休止から電撃復活して僅か2か月。それだけで元々のチャンネル登録者7万人を15万人に増やしていた。
彼女の魅力は、春を仄めかすようなかわいらしい外見の他にもう一つ。
<id:vdINn>タイトルからしてSAOの話?
<id:Bheij>初見です。主さん概要欄のSAO
彼女はソードアート・オンラインの経験者である。彼女の口から語られる生の体験談は聞きごたえがあり、多くの
「初見さんいらっしゃい! 存分に迷っていってね。
そうだね…なに話すか決めてなかったけど、初見の人もいるみたいだしSAOの話をしましょうか。なにかリクエストとかある? 視聴数稼げるし」
<id:qwCWB>オイw最後ww リクエストは性事情……いや下品ですね。止めておきます。
<id:Bheij>Myエンジェルは今日も腹黒。リクエストは自分の魅力で
<id:2XCxjJ>主のそういうところ好きよ。リクエストは主の3.14について
「うーん。なにがいいかなー。
後アレな方向性言ってる迷子さんらは森から追い出すよ? 私は森にすむ春を告げる妖精だからね!」
とは言え、いきなり本題には入らない。どのネタを採用するのか決めていないというのもあるし、開始から直ぐに話を始めると視聴時間が短くなるという問題もあった。なので最近悪目立ちしがちなコメントに釘を刺しつつ話題を繋ぐ。
<id:aG9bT>思い出したかのような設定開示
<id:7JubT>その設定まだ生きてたんだ
<id:aG7dR>
厳しい冬に春を呼び寄せる小型の妖精。春は自身が呼び寄せた微睡の中でゆったりし、夏と秋に春の残滓を集めて冬に備える。春に頑張れば一年中常春にすることもできるが、ものぐさな彼女はそれをすることはない。
<id:kX9bM>雑コピペ助かる
<id:L2fWq>上のコピペの名前消えてて草
「どうも名無しの妖精です。お前らも春にしてやろうか?」
<id:T8vHs>サーファーです。夏にしてください。
<id:dN3pE>スキーヤーです。欲は言わないのでスキー場に雪降らせてください
<id:B6hXk>婆さんや今年は紅葉が綺麗だそうだよ
「迷子さん達? 少しは春を望んでもいいんだよ? ほらお団子とか桜餅とか───」
そう言いかけた彼女の目が一つのコメントを拾う。
<id:rZ4pA>リクエストです。『3月30日』について教えてください
「3月30日か、確か『SAO最悪の日』なんて言われているんだっけ」
それは大小様々な悲劇が起きたSAOの中でも、間違いなく極大に分類される悲劇の名前であった。死者数は初日に次ぐ数である90名。攻略に与えた影響も大きく、SAOの歴史はこの日を境に初期から中期に移り変わったとも言われている。
だが、その事件の詳細をすべて知るものは少ない。
いい機会であるかもしれない。彼女はとっさにそう思った。準備を十全に行い、思いの全てをぶつければ放送事故。多少適当に力を抜いて話した方がかえって良いと。
<id:Mdot2>『SAO最悪の日』、フロアボスの攻略に失敗して莫大な死者が出た奴だ!
<id:V5uLn>たしかラフィンコカインとかいう奴らが暴れた話だっけ?
<id:qJ8xT>当時の大規模ギルドが解散にまで持って行かれた奴か
<id:W1eZy>詳細知ると関係者が邪悪に振り切ってるんだよな。加害者も被害者のトップも。
<id:D3tPz>なんかコメ欄俺が知っているのと別の話している奴がいない?
『SAO最悪の日』についての情報が錯綜していることを再確認した妖精は、頭の中で話をまとめながら語りを開始する。
「あの日のことはよく覚えてるし、知ってる限りの話をしよっか。と言っても人に聞いた話や事件後に調べたことも多くあるけど」
彼女にとってあの日の話は決して軽んじられて欲しくない話題だった。しかしそれと同様、配信者にとって沈黙は致命傷であることも熟知していた。幸い配信者は彼女の天職だ。
<id:kN7rY>ひょっとして壊滅したギルドの一員だったりします?
<id:mX9oV>実体験語る系Vなのに、人から聞いた話は草生える
<id:B2vTf>真面目な話ですね。全裸で待機します。
<id:H5nZq>SAO最大の悲劇を再生数稼ぎに使うな
<id:rZ4pA>よろしくお願い致します。
「少しばかし長い話になるから、温かい恰好してから聞いてね!」
全ての視聴者が真剣に捉えているわけではない。中にはただの娯楽として消費しに来たものもいるだろう。
それでも彼女は話し始める。なるべく多くの人にあの事件を知ってもらうために。
「3月30日。それは忘れてはいけない悲劇の名称。今から話始めるのはその一端。どうか最後まで聞いてください」
<id:jL8eK>春だから全裸でも大丈夫だよ
<id:F6pWx>割と当事者から、当時の話を聞けるの、貴重な機会じゃないか?
<id:yV1aR>悲惨な事故好きな俺めっちゃワクワク
<id:X7bJm>下手すると関係者から主の正体ばれないか
<id:AprT4>主さんはどっちの事件と関係してるんだろう
次回「機械仕掛けの神はいなかった」
明日投稿予定です