ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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SAO デスゲーム開始前 前半

「キバオウさん。引きましょう。俺たちのレベルじゃまだあんなデカいの無理ですって」

「なんでや!一体どれだけ時間を費やしたと思ってるんや!あともう一息なんや!」

 

そういいながら、片手剣装備の男が通常のより一回りほど大きいボアに突っ込んでいき…一太刀浴びせたもののそのまま吹き飛ばされてしまった。

 

そんな始まりの原野(始まりの街から最初に行けるフィールド)での和気あいあいとした光景を見ながら、俺こと白澤、もといmakuragi(マクラギ)は日当たりのいい小丘で寝そべっていた。

 

(何時になったらログアウト障害復旧するかなー)

 

そんなことを考えながらあくびをする。

本来ならばこのソード・アート・オンラインへのログインが確認できた時点で俺はログアウトするつもりだった。無論俺だって怠けたくて、怠けているわけではない。

本来ならば、今ごろはアーガスに戻って、山のように溜まっているであろうデスクワークをこなしていた筈だ。

 

だが、一体全体どういう訳か()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

正直に言おう。何でこんなアホみたいなバクが発生したのだろう分からない。少なくとも前日にログインしたときは(当たり前だが)ちゃんとログアウトボタンがあったのだが。ここまで酷いとかえって()()()()()()()()()()()()()()()と、勘繰るほどである。

 

まぁそれはともかくとして、そんなこんなで出られなくなってしまったのをいいことに、()()()()()()()始まりの街の様子を見てきてから、日当たりのよい始まりの原野にて、ゴロゴロ転がっているというわけである。 溜まっている仕事に関しては都合よく忘れることにしよう。

 

(そういや最近ゆっくりしている暇なかったなー)

 

近年は大学で木田先輩辺りに振り回されたり、就活だったり、アーカスに入社して以降も連続勤務は当たり前だったりしたしな。大学入学前には地獄の受験勉虚があったし。

今俺がいる始まりの原野は一応圏外なのだがフィールドにスポーンするmobは全てノンアクティブであり、こちらから攻撃しない限り攻撃してこないのであんしんである───

 

「なんでや!なんでワイらを無視してそっちの方向に行くんや! …って、あんさん危ない!」

 

ただし、既に他のプレイヤーに攻撃されてアクティブになっている場合は除く。突っ込んできたいのしし型モンスター名前は hard boar 。体力ゲージは、レベル1の俺から見るとかなり濃いめの赤だ。

 このSAOにおいて敵対モブの体力ゲージの赤が濃くなれば濃いほどそのモンスターが強いことを表しており、逆に薄ければ薄いほど弱い。

 そのことを考えると、半分くらい削れてはいるが周りの普通のboarの体力ゲージがピンクであることから、割りとレベルの高いレアなモンスターであると推測できる。

 

が、いくらレアなモンスターだとしても所詮は最初のフィールドのモンスターである。

 

とりあえず突っ込んできたところに(慌てて)装備した片手剣でカードして、弾く。本来ならばソードスキルの一つでも打ち込んでやりたかったが、残念なことに体勢が悪かったので、発動しなかった。

 

ソードスキル。それは、この魔法の無いソード・アートオンラインにおける必殺技である。発動には基本的には剣をもって(最も格闘スキルなどの例外もあるが)特定のモーションをとる必要があり、使ったあとは技後硬直を課せられる。相当な数があるのだが、残念なことに体勢が崩れた状態で打てるのはほとんどない。

 

「おいあんさん大丈夫かいな」

「大丈夫」

 

ここに出てくるボアは全て突進それと、稀に角での突き上げしか攻撃のパターンがなく、更に一太刀でも攻撃を入れるとスタンするという、正に最初のモンスターにふさわしい弱さである。それはレアモンスターといえども変わりなかったようだ。

駆け寄ってきたのは、二人の(自分の造形が好きにできるこの世界では)ありふれた美男子。両者共に体力ゲージが三割程度しか残っておらず、先ほどのモンスターに相当の苦戦していたようである。

 

「すまん。あの猪ワイらが戦っていた奴なんやが、逃がしてしもた。止めてくれてあんがとな。それでな、ものは相談なんやが...ちょっとあのデカブツ倒すの手伝ってくれへんか?」

 

それと同時に俺の前に現れた

『 キバオウからパーティーへの 誘いがありました。

了承 拒否

 

 

パーティーの誘いを見て少し考える。今のおれのステータスは完全に正規の値であるから、管理者であることはバレない筈である。動きがこなれているのはβテスターだからとでも言っておけばいい。

 

「いいでしょう。自分はマクラギって言うものです。よろしく」

「ありがとな。ワイはキバオウってもんや。」

 

了承を押して、差し出された手を握ったところで、

 

「キバオウ、あのボアが来てます!」

 

ようやく目の前のボアがスタンから回復したのかこちらに突っ込んでくる。ヘイトが向けられているのは……やはりというか俺だ。

 

「とりあえず俺がヘイトを稼いでおきます。その間にキバオウたちは回復をしててください。」

 

キバオウたちの体力ゲージはもう既に半分を切っている。この一層で手に入るレベル1ポーションは飲んでも、回復するのに結構な時間がかかる。その時間なんと約1分。バトルが終わってからならばともかく、戦闘中だとかなりの隙である。では数本一気に飲めばいいと思うかも知れないが、クーリングタイムが設けられているので、ただ無駄にくそ不味い液体を飲むだけである。

 

「ワイらポーションもうきれてないんや!」

 

が、そもそもキバオウはポーションを持っていなかったらしい。ボアが突進してきたところに一太刀入れて怯んだ隙を見計らって先程始まりの街で買ったポーションを投げ渡す。無事にキャッチするキバオウ。

 

「ありがとな!」

お礼を聞きながら片手剣ソードスキル『スラント』を発動させる。右上から切り落とすだけのシンプルなソードスキルだか、その分技後硬直が短めに設定されているので個人的には使い勝手がいい。

 

「なんや!いきなりマクラギはんの剣が光ったで!」

「ソードスキルですよ。始まりの街の施設で教わりませんでした?」

「…なんやそれ?」

 

始まりの街にチュートリアル代わりにソードスキル等の基礎的なことを教えてくれるNPCの館を設置していたのだか…(しかも割りと目立つ位置に!)ギバオウ達はスルーしてしまったようである。あのイベント無駄に作り込まれているのでしっかりと体験してほしかったのだが…言ってもしょうがない。 なんでや!

 

「皆さんが取ったスキルってなんですか?」

「ワイは片手剣やな」「自分もそうっすね」

 

二人とも片手剣か。

 

「なら、モンスターに向かって斜め上から切り落とすようなイメージで剣を振ってみてください。」

 

二人とも怪訝げに顔を見合せ、hard boarに突っ込んでいき...

 

「おっ。なんか出た。」「なんでや何でなんもでないや!」

 

結果としてキバオウが不発。もう一人が見事に成功し、スラントを発動させて一気に1割ほど削った。

 

「キバオウさん。もっと踏み込んで、もう一回やってみてください」

 

キバオウが不発だったのは恐ら中途半端に遠かったから。

そのアドバイスにしたがってキバオウさんがもう一度___今度は踏み込んで___やると、

 

「おお。なんか出たで!」

 

今度は見事に成功。『スラント』が見事に命中し、しかも超低確率の部位欠損が発生したのかhard boarの前足の片方が切り落とされる。

 

「今のが、このゲーム最大の必殺技、ソードスキルです。特定のモーションを取ることで発動しますが、使った後は一定時間硬直します」

「エグい削れやな、ちまちまと削っていたのがバカみたいに思えるで」

 

 硬直したままのキバオウはがぼやく。たしかにあれをソードスキルなしで半分近くまで削ったというのだから大したものであろう。

 

「まぁいいこれで勝機が見えてきたぜ!しかも、前足切れてて動けん。チャンスだ!」

 

 そして、キバオウさんのつれのソードスキルの光がhard boarに吸い込まれていくその寸前。

 

「っておわっ」

 

 角での突き上げをもらってしまい体制が崩れ地面に転がる。カッコ悪。

 

「なにをやってるんや。どうせならかっこよくきめんかい!マクラギはんもそうおもうやろ!」

 

 ここは素直にうなずく。それにキバオウさんのツレは片手を上げて答え改めてhard boarに向き合う。

 

 

 

 

 そして、

 

 「おうとも__「ならワシがいただくとするかの」

 

 勢いよく振り落とした先にはhard boar の姿は()()()()。だだhard boarのと思われる青いポリゴンが舞うばかり、そしてその脇には一人の青年(これも勿論腹が立つくらいのイケメン)が剣を持って立っていた。

 

 「え?」「は?」「なんでや!」

 

 三者それぞれの疑問符を浮かべ、その矛先の青年は笑う。否、()()()()()()

 

 「なんだ若いのがそんな腑抜けた顔しおって。ほら次いかんかい」

 

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