オルガに転生した日本人の話

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異世界憑依!オルガと化した転生者

どこかの()()、どこかのスラム街。

 

一人の特徴的な髪型をした白髪の少年が一人の黒髪黒目の少女を背負って路地裏を駆け抜けていた。

 

その服装はお世辞にも綺麗とは言えずさらに少女の足は血が流れ出ていた。大口径のマグナムリボルバーがその足の肉を僅かに抉り取った痛みで歩けないのだ。

 

しかしこの世界では日常のような風景だ、様々な町様々な都市様々なスラム街には同じような死が溢れている。

 

親に捨てられ行き先を失った子供たちは路地裏で餓死して死ぬか、人生最後の一発逆転を狙って働くかでその運命が変わる。

 

金を持った可哀想だと同情する一般人が募金して養おうとするがそれも無駄、結局は孤児の元親が金を使って酒だ麻薬だと消費するだけ。

 

さらに近年はスラム街だけではない。無能な兵士の集まり、「ギャラルホルン」が仕事を必要最低限の働きしかしない。そのせいか治安は一層悪くなる一方で孤児の発生率は近年で数十万人を越える。

 

「ハァハァ……ハァハァ……クソッ」

 

「……」

 

少年は悪態を吐くが状況は変わらない。

 

この状況を作った少女はいまだに何故少年の背中に乗って逃げているのか分かっていなかった。

 

そうなるのも当たり前だろう。昨日まで少女に人権などありはしなかったのだ。さらに数分前には自身はたまたま通りかかった商人に目を付けられ強姦され処女を散らされていた。

 

つまり商人の男は少女を人通り強姦し発散するついでに調教したあと()()()()()に少女を売りさばくつもりだったのだ。

 

少年はたまたまその近くを通り掛かり見て見ぬふりをするわけにもいかず商人の後頭部に蹴りを入れて少女を連れ逃走しているのだ。

 

少年は少女を背負って必死に逃げ回る、後ろをチラりと覗くと少女を調教しようとした商人とその用心棒達が追いかけてきていた。

 

「クソ、あのガキ逃げ足だけは一人前か!おい、お前ら挟み撃ちにしろ!」

 

「「ウッス!」」

 

すると用心棒の二人は路地裏の道を別れた。挟み撃ちにされるのはマズイと思い路地裏をでる道を全速力で駆け抜ける。

 

「あの雌ガキはこれ以上ない上物だ、そんな逸材逃がす訳には……」

 

「うるせぇ!てめぇ黙って追いかけてこいやロリコン野郎がッ!!いや追いかけてくんな!」

 

「んなろぅ言うじゃねぇかッ!!?」

 

少年がついに怒り狂い足を止める。

 

さてここで問題だ。

 

一通り訓練された大人から子供一人抱え逃げ続けるその脚力と持久力。体重は少年少女どちらも四十㎏としよう、それだけある少年少女の体重を合わせると八十㎏だがそれが急に止まり大人はそれに気付かず全力で走っている。

 

八十㎏の蹴りが自分のスピードと重なりバイクのような恐ろしいスピードで股間に飛んでくるのである

 

それをうければどうなるのか……

 

バキュ

 

「クブッ」

 

「「あ」」

 

考えたくもない。

 

調度股間の辺りから発生した音はソレだけではなく靴から伝わる通り股間の卵の形をしたナニカは潰れたようだ。

 

南無阿弥陀仏…

 

「………」

 

「………」

 

少年は見なかったことにして再び自身の隠れ家を目指して走り出す。ちなみに余談だがその後商人は無事用心棒に確保され少女などの人身売買は自分一人だけでは出来なくなった模様。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ」

 

「…あ?」

 

隠れ家に戻ってきた少年──オルガ・イツカは少女の足を手当てしていた。頭上からする声にそちらを見ると光の消えた瞳でオルガを見る少女の顔があった。

 

「なんで助けたの?」

 

「……さぁ?」

 

少女に問われるが実際はオルガも分かってはいなかった。この世界は弱肉強食、弱いものはすぐに殺され強いものでさえすぐに死ぬような世界だ。

 

そんな世界で自分一人だけで生きるのが苦しいのに幼い少女を助けるなど自殺行為も甚だしい。

 

だが自分は現に助けているし貴重な救急キットを使って少女を治療している。救急キットは本当に緊急の、ソレこそ鉛玉を食らった時以外は使わないようにしていたものだ。包帯の数も消毒液の量も救急キットなのだから当然少ない。

 

少女の怪我は足に擦り傷と銃弾が掠めたことによる裂傷。見たくはないが少女の服が引き裂かれ足には赤い血が見えている。

 

女と思われないようズボンとシャツを良く着ていたようだが時が経ち成長するに連なり体が女らしく育ったようだ。おかげであのあり様だが。

 

「……ま、そんな事はどうだっていい。お前名前何て言うんだ?」

 

「……?」

 

オルガはどうでもいいと切り捨てる。正直商人に手を出してしまってお先真っ暗なのを誤魔化したいだけだが。

 

少女は首を可愛らしくコテンと傾げ何を言っているんだコイツと言わんばかりの眼差しを向ける。

 

「お前に大事な救急キット使ったんだ、残念だけどお前には俺と同じく働いてもらわねぇといけねぇ。そのためには名前が必要だ、そうだろう?

 

あ、俺はオルガ。オルガ・イツカってんだ。オルガって気安く呼んでくれ。」

 

オルガがそう言うと少女は合点がいったのか納得し名前を脳に焼き付ける。彼女は昔から考えるのは得意ではないようだ。

 

「……じゃあ、私は何をすればいい?あなたと一緒に寝れば」「いや、お前は普通に働くんだよ。なんでそう言う考え浮かぶかなぁ…?」

 

「????」

 

少女は再び首を傾げる。自身の性別は女で男よりも筋肉が少なく体力も劣っている。労働に向いていないのは明らかだ、だと言うのに目の前の少年は同じ職場で働くといった。

 

少年の肉体と持久力から考えて子供でもわかる、明らかに肉体労働関係の職場だ。

 

そこで働くなど無理に決まっている。

 

「……?あ、お前もしかして俺と同じとこで働こうとしてる?」

 

「そうじゃないの?」

 

「ハハハッバカだなお前。俺の体からしてお前じゃ無理だってわかんねぇかな?」

 

そう言われ少女は分かりにくいが少しムッとした表情になる。

 

「じゃあ、どこで?」

 

「俺の知り合いに『アトラ』ってお前と同じくらいのガキが居てさ。ソイツが働いてる職場、結構売れてるとこなのに経営者の女将さんがお人好しの人でな?多分ソコならお前も働ける。」

 

「……つまり、オルガのコネで働ける?」

 

「ま、そう言うこった。」

 

隠れ家の中を少女は見渡した。スラム街の中でもダントツに人が住んでおらず近くには同い年くらいの子供達しか居ない。恐らく子供だけで住んでいるのだろう。

 

隠れ家の周りに見えるだけでも十人程子供が住んでいるようだ。

 

「おーい、みんな注目ー!」

 

皆がオルガに注目する。奥からさらに子供が増え、その数は見たところ三十人程だろう。孤児院でもないのにこの数は異常だ。

 

「新しい仲間だ、今ここで名前を発表する!ホラホラ名前言えって。」

 

「……ミ、三日月・オーガス…です。」

 

背中を叩かれ前に押し出される。全員から見られる事で緊張して小声になったがそれでも聞こえたらしい。「男っぽいな」「可愛い……可愛くない?」等々早速噂話がされている。

 

「………お、おう。そうか三日月か。よ、よし!じゃあお前ら早速今後の会議を始めるぞ!各班長は俺の家に集合、ほかは自分の仕事に移ってくれ。居ない奴が居たらすぐ報告だ、報連相は大事だぞ!解散!」

 

自己紹介が終わったのかオルガは家に戻る。その時に三日月は知らないがかなり挙動不審で後に不審がられていたのは余談だ。

 

オルガの家に数人の男女が入って行く。自分もどうすればいいかわからずその後をついて行く。

 

「オルガ、今日は何も収穫はなしか?」

 

オルガと同い年程の少年がオルガに聞いている。収穫、と言うのは恐らく金になるものの事だろう。

 

その服はやはり子供のものが無く大人の物しか無いのかかなりブカブカのようだ。

 

「あぁ。そんときにミカを見付けたんだがそこでドジってな。恐らく、と言うより確実に連中に目を付けられたかもしれねえ。」

 

「……例の奴らか?」

 

「多分な、あのワッペン……最近この辺りを嗅ぎ回ってる『オルクス商会』の人間だと見て間違いねぇだろうよ。」

 

よくわからないがかなり深刻と言うことがひしひしと伝わってくる。

 

ここは黙っていた方が良さそうだ。そう考えた三日月は隅で丸まって眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

[視点/オルガ・イツカ]

 

………はぁー、ヤッパリあれオルクス商会の一員の奴等だよな?それもその幹部かナニカだろう。用心棒つけてここらを自由に歩き回るなんて幹部くらいしか思い当たらねぇ。

 

しかし困ったな、ソイツの玉潰して怨みを買っちまった。今後に響くぞこれ……

 

 

突然だが俺ことオルガ・イツカはこの体に憑依した憑依転生者だ。

 

この世界の知識……オルフェンズの原作知識はアニメを見た程度で深いことは思い出せないが俺のこの体の持ち主の事はよく知っている。

 

何せ『異世界オルガ』なんて新しいジャンルを産み出したキャラクターだからな。

 

『オルガ・イツカ』、身長が二メートルあるガチムチの青年で第二期では監督のおかげで「止まるんじゃねぇぞ…」でお馴染みとなってしまったネタキャラだ。

 

人気キャラでもある(強調)

 

だがその実態はもっとすごい人だ。

 

短期間ではあるが小さいとは言えない軍事組織を経営し延命するのではなく繁盛させるというその外見からは想像できない能力がある。

 

さらに仲間と一緒に前線に出て指揮をする等の度胸もありその指揮能力も高く仲間に送る指示も的確、そして成功率が低く失敗すれば死ぬかもしれない麻酔無しの手術も泣き言を言わず大人しく受け無事成功させる等の打算的な能力もある。

 

まさに上に立つ人間として相応しい人間だった。

 

そんな人間の幼少期に憑依したのですが…

 

いつのまにか子供達の集団のリーダーとしてこの子達を生かしています

 

いや、確かに(中身)年上としてアドバイスして回ったけどさ?襲われてて見捨てられないかなーなんて思って助けた子供も居るけどさ?

 

なんでこうなるん?

 

でもまぁ結構好都合だった。この世界じゃ何が起きるか分からないからな、一発逆転でこの子達の中でデカイ組織に所属して俺にパイプを作ってくれるかもしれない。

 

まぁ、自分の身第一だ。俺だって折角の第二の命失いたくないのだ。

 

クズと罵られようがこの世界じゃ誰もが等しく死んで行く。しかもかなり治安の悪い火星だ、死亡率はマッハで俺達子供なんて抵抗できずに殺されるのがオチだ。

 

だから俺は、俺達は一緒に協力し束ねて今日を生きている。明日を生きるために今を使ってこの残酷な世界に抗っているんだ、この一分一秒でも無駄に出来ない。相手を利用しなければならない、相手もこちらを利用するのだからこちらだって相手を利用してやるだけた。

 

だが今これは重要じゃない。

 

オルクス商会……かなり経歴の長い会社で今かち合うと100%確実に負けるのは火を見るよりも明らかだ。

 

どうにかして奴等と遭遇しないようにしなければ……いや、対抗できるようにするしかないか?

 

 

いや、今は後だ。皆からの報告のあと指示を出して俺から報告だな。

 

「オルガ、こっちは明日には給料が出るわ。女将さんのおかげで今月もなんとかもたせられるかもしれないわ。」

 

「リーダー、今日補給物資が店に届くと思う。これで当分武器には困らないぞ。」

 

「こっちは予想通り当分先よ、あのジジイ私にヤることヤって帰るからツケが貯められるだけで私が怒られるわ。止めていい?」

 

「……そうだな、金が貰えないならスターシャは仕事止めてこっちでミーナと働いてくれ。そんでナルガは受け取りを頼む、バルクとムンガの三人で向かってくれ。念のためチャカも持ってけ。」

 

「「了解」」

 

「ケミィ、ミカを女将さんに紹介してやってくれ。仕事を教えれば新しい職場の後輩だ。」

 

「分かったわ。」

 

一旦区切って深呼吸。

 

「……さて、お前達報告は以上か?」

 

「「「……」」」

 

「じゃあ次は俺からだな。カネだが今回も収穫は無し、ミカ一人が追加されたが最悪なデメリットが付いてきやがった。

 

恐らくだがオルクス商会に目を付けられちまった、俺のミスだ。」

 

「「「!?」」」

 

俺の告白にギョッと目を見開いている。相手が相手だからな、ギャラルホルンよりマシとはいえ組織としてはかなり大きい。シャトルや宇宙船すら取り扱っている組織なんだからギャラルホルンより小さくてもこちらからすればデカイ組織に違いはない。

 

「参ったわね、まだ来られては困るのに…アトラやミニョエルにも言っとかないと」

 

「こりゃ参った……高くなるが貯金減らして武器を仕入れないと」

 

「うーん、こっちから売り込めば………いや、無理よね。」

 

「いや、ほんとに悪かった。」

 

この時期、つまり俺達の中でCGSという民間軍事会社への入社がある時期にこれは不味かった。

 

もしこれがバレれば営業妨害になって俺達は皆殺しになるかも知れねぇ

 

「……なんか、ごめん。」

 

ミカが唐突にそう切り出す。どうやら自分のせいだと思ったようだな。

 

「自分のせいだって思ってんのか?だったらそりゃ違うぞ。」

 

俺はミカの頭に手を乗せて優しく撫でる。ボサボサの髪は所々土で汚れているがそれでも気にすることなく撫でる。

 

「俺がミスをしたからこうなったんだ、お前はなんも関係はない。もしあの時の奴がお前じゃなくてもこうなってる可能性はゼロじゃないんだ、自分のせいだとは思わず俺に責任押し付けときゃいい。何せ俺はお前らのリーダーだからな!」

 

そうやってニッコリ笑うと今度は目を見開いている。あれ、なんか不味かったか?

 

「(みて、またオルガが堕としてるわよ)」

 

「(堕ちたな(確信)」

 

「(ダメみたいね…)」

 

「おい、なんか言えよ。ひそひそ話さず俺に直接言えよ。」

 

「「「別に?何でもない」」」

 

「えぇ…?お前らやっぱり絶対なんかあったダルルォ!?ハッキリ言えよこんにゃろう!」

 

「ちょ!?なんで俺だけ…ギャースッ!」

 

「……ふふっ」

 

俺がナルガにヘッドロックをし、それを周りが笑い会う。いつも通り辛気くさい空気は吹き飛び隠れ家にはいい空気が溢れる。

 

この世界では水ですら貴重だ、俺が転生する前の日本よりも過酷な世界。

 

だがそれでも、俺達は立ち止まる事なく進み続ける事でこの状況を乗り越えてきた。バイクに馬力がありスピードが出るように俺達もこのスピードとパワーを生かし困難という山を乗り越える。

 

そうすることで、俺達は………

 

 

 

 

 

始まったであろう物語

 

しかし物語はまだ始まってはいなかった

 

ここは地獄だ、しかし俺達は本当の意味で地獄を経験してはいなかった。

 

ここからが、本当の地獄だった


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