異世界に腕力転生   作:madamu

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終わったと思ったら続きというか別話。


キングギドラ
異世界に腕力転生2


魔王というモノは尊称だ。

王というのだから何かしらの組織をまとめるだけの器量が必要なのだ。

魔王を称する人物は、北の魔術師集団から生まれた反体制思想を持つ集団を複数まとめた人物である。

 

その居城は城というよりは館に近い。

ただ、それは広大かつ何重の区画に別れており一種の迷宮だ。

 

「こっちの区画を調べ終われば戻りだ」

後ろから小声で俺に話しかけるのは護衛対象の斥候だ。

俺の服装も斥候と同じ鼠色の服で、音が出ないように底が布張りの靴。

斥候はここ数年この館の南側を調べ、今後の王国軍侵攻の手掛かりとなる情報を集めている。

年齢は俺の雇い主よりも上だ。

50か60。ベテランと言った年齢で実際腕が良い。

 

組んで半年以上たつが最初の頃は足音の殺し方など教えてくれた。

捨て子であった俺を拾った傭兵団は戦に負け、団として機能しなくなると俺は今度は国王軍に売られた。

最前線の斥候のお供。

護衛であり監視役であり、斥候が情報を持ち帰られるように身を挺す肉壁である。

 

屋敷の外壁の影。

もう少しでこの辺りの地図も出来上がる。

この様子なら国王軍がここを攻めるのは時間の問題だ。

数年内には国王軍のジェリド騎士団辺りが出馬して、魔王の館への一斉攻撃と周辺の魔王領を自認する村々の平定が舞っている。

 

 

「キサマらニンゲンは我々魔王軍を舐めタノだ!」

双頭の黒龍が高圧的に話しかけて来る。

既に魔王館の中庭に無数の龍たちが溢れている。

哀れな人間二匹を嬲り殺そうというのだ。

 

死霊というのは厄介で肉眼で確認するには相当の時間と注意力が必要となる。

区画建物の角からずっと監視されていたことに気付いた時には中庭に追い立てられ、竜たちに取り囲まれた状態だ。

ひときわ体格の良い双頭の黒龍がどうやらこの竜の群れを率いている様だ。

 

横で斥候の親父が顔中に冷や汗をかいている。

俺も背中が異様に暑い。

 

俺は両手を前に出し、掌をそれぞれ左右に向ける。

「マホウか」

黒龍が喝破したようにつぶやく。

雷光が俺の肩から発生する。

「雷ノマホウなど無駄なのにな」

周辺の竜から声が出る。これが魔法に見えるのか。

 

「坊主、煙玉出すから逃げ」

戦功の親父はカタカタと歯を鳴らし腰に下げた袋に手を伸ばす。

しかし俺はそれを遮る。

「おっさん、一発かましたら逃げるぜ。連発出来ない切り札だ」

 

俺は両の掌から金色の光線を出す。雷に近いがどちらかと、もっと高カロリーな攻撃だ。

強大な神の雷。その威力は最新の耐震ビルだろうと、野球のスタジアムだろうと何だろうと容易に薙ぎ払う。

どこかで竜の、いや竜ならざる遥か天空の三頭首の邪竜の鳴き声がこだましたようにも思える

 

両手の雷が数匹の竜を消し炭、いや消した。

竜が吐く、魔法の息、火の息や酸の息、竜によっては氷や雷、変わり種では魅了の息とかもあるらしい。

俺が行ったものは、生物の最上位種である竜の息とは全く別。魔法とも違う。

これは銀河より飛来する悪神の怒りの雄たけびの象徴だ。

その雷は大地を割り、100万の人々の悲鳴を奏で、そして巨神の皮膚を貫く。

 

中庭に集まる竜の群れが半分以下になったとき、その群れの横合いから

勢いよく駆けだしてくる存在がいる。

それは冷静な突進というよりも狂乱による突撃だ。

 

ベヒモス。

地霊と雄牛を掛け合わせた魔獣だ。

目玉が異常に大きく凶暴性の高い牛。

 

その巨体は俺にぶち当たるが…俺は小動もしない。

158m、14万トン。

俺の肉体はそれと同じだけの理力を持つ。決して俺の体重が14万トンある訳ではない。

俺の肉体を取り巻く、いや俺の肉体に流れる理力は古代の巨人以上の腕力を俺に与えている。

 

小山ほどの牛の突進。だから何だという感じだ。

俺を押しやろうとするベヒモスの頭を殴りつけると、拳が頭蓋に埋まりベヒモスの動きも止まる。

 

牛、絶命。

 

竜たちはのたうち回るもの、そそくさと遥か中空に逃げるもの。

周囲の屋敷には火が付いており、煙が中庭に充満する。

「おっさん!」

俺は斥候のおっさんに声をかけ、煙の中、中庭を抜け半壊した屋敷を通り、屋敷外の森へ逃げる。

 

3日逃げ続けなんとか前線の基地についた。

 

我が名はキングギドラ。

 

金色の三つ首竜。遥か彼方より現れし災厄の存在。

生態系の王者と幾度となく争い破れ、そして復活した最悪の巨神。

 

格好つけて言ったが俺のチートは「キングギドラ(ギャレス版)」だ。

 

と言っても完璧じゃない。先ほどの雷霆も異様に腹が減る。

過去に3連射したことがあるか膝の力が抜けて動けなくなったこともあるので連発出来ない。

殴ればそこら辺の魔獣など粉微塵だ。

 

だが過剰な戦力は結局のところ使いつぶされて死んでいくだけだ。

それならば最前線でそれなりの危険手当をもらいながらギャーギャー生きる方を選んだ。

もう何年かいれば国王軍の年期も明ける。

そうすればそこそこの金を持って適当に隊商護衛でもやっていればいい。

弓矢や魔法なんて相手にならない。

 

そんな人生設計を思いながら前線基地の汚いテントで汚い毛布に包まれて俺は眠りについた。

ただ一人の巨神の能力者として。

 

 




あちらを出したらこちらも出す。
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