三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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時系列考えるのが面倒なのでほぼ無視。


第1話

「じぇめろにょんふりーありゅぃる」

 

 ぽろんぽろん。弾き語り。

 

「おぅぱっきゃまらーどおぱっきゃまらーどおぱおぱおぱ」

 

 玉ねぎは好きだ。

 レンジで温めてから切って、たっぷりの油とともにフライパンにぶち込んで、しっかり炒めると柔らかくて甘くて美味しくなる。

 切ってから温めるのでも構わない。たぶん、そっちの方が苦味成分が蒸発しやすい。私がそうしないのは、温める時間が短縮できるからだ。

 丸のままレンジで温めた玉ねぎは、いい感じになってくると先っぽから蒸気がぷしゅーと出る。

 更に加熱するとおしりからしゅぽんと芯が飛び出る。これが嫌なら、先にくり抜いておくか直前で止めよう。

 一般的には玉ねぎだけじゃ寂しいだろうから、だいたい肉や他の野菜なんかとご一緒することになると思う。

 野菜はなす、ピーマン、もやし、いも、かぼちゃ、きのこ系といろいろ組み合わせられるね。卵や木綿豆腐なんかもいい。

 というのがいつもの私のやり方だけれど、レンジのみ、玉ねぎのみでも良し。てきとーに切って、熱で割れない容器に入れて長いこと温める。あとはなんらかのタレで召し上がれ。

 もちろん私が今歌ってる通り、油で揚げるのも良し。なかなか安直な調理法だろう!

 こんなふうに、玉ねぎはとっても簡単に食べられるんだ。目にしみるのがイヤだって? それもレンジで抑えられる。いくらかは。

 それに玉ねぎは健康にとってもいい、なにかとメリットのある食べ物なんだ。みんな、玉ねぎを食べよう!

 あ、オーストリア人には秘密だよ。

 

 関係ないけど目にしみる成分は長らく硫化アリルと考えられていたがどうやら違うそうで、これ関連の研究で日本の研究者がイグノーベル賞を受賞しているんだよ。

 

 これだけ玉ねぎに対する愛を語っておけば、下手っぴなフランス語でもフランス軍に対してそう失礼にならないだろう。

 

 私はおぱおぱおぱなのにぱおぱおぱとか歌うやつを一人ずつ凄惨に殺していく者。

 そして今は噴水のふちに腰掛け、玉ねぎの歌を歌う者である。

 なお楽器はフィンランドの弦楽器、カンテレである。これでフランスの軍歌を歌うに至ったわけは、これといって複雑なこともなく、私がクリスマスにこの楽器をねだったのと、この曲を歌いたかったからである。上手くないけど、複雑なことをやろうとしなければ簡単な曲。なんとか弾ける。

 この演奏で楽器ケースに三百円入った。よしよし、このお金で帰りに玉ねぎを買おう。

 

 次にうろ覚えのIevan Polkkaを歌って、千五百円入った。これはフィンランド民謡なので、楽器的にも正しいね。ほんとは楽器要らない曲だけど。

 ただこの世界ではロイツマが歌ってないせいで知名度は低く、半分私のオリジナルとも言える。まあ転生者特典というやつだ。

 フィンランド語も難しいからこっちも負けず劣らず怪しい発音だけど、大丈夫。どーせ誰も聞き取れん。

 

 演奏も上手くはない。上手くないが、子供なので許される。しかも女の子だから更に許され度は高まる。

 得だよねー。ジョイスティック同梱版じゃないと気づいた時はショックだったけど、楽だよー。

 

 早くもネタが切れたので、練習中のゲーム曲なんかを演奏。こっちだとFFよりDQの方が勢いあったり差異が多く、その関係で私のオリジナル曲も増える。それにレトロゲーを漁ると知らない名作がいっぱいだ。幸せ……。

 と、この世界に来た幸せを満喫しているそんな折。

 

「なにニヤニヤしてるんだ、気持ち悪い」

「おや、琴葉」

 

 お琴さんがやって来た。

 暖かそうな服装。うむ、今日もかわいいぞ。

 

「なにって、音楽は楽しまなきゃ。琴葉も歌うかい?」

「私はいい。それより、事件だぞ」

「おっ、そうかい?」

 

 じゃーんとギターのように鳴らして終わりの合図。

 聴いていてくれた数名も、それを理解して解散してくれる。お金をポッケに入れて、楽器をしまって準備よし。

 

「いざ出陣」

「ああ」

 

 

 急ぎらしくアジトスキップで案内されたのは銭湯の前だった。

 

「あ、琴葉、ななちゃん!」

「おーっすななしー!」

「連れて来たぞ」

「私が来た」

 

 かっこいいポーズ。

 

「じゃあ行こっか」

 

 

「おーっす! 来てやったぞー!」

「こんにちは! あの! カラーズです! おやじから聞いて……あれ?」

「居ないじゃないか」

「あれえー……?」

 

 番台には誰も居ない。

 

「こっちだよー」

「あっ」

 

 隅の方に座布団を敷き詰めて、その上でぐったりしてる女将さん。

 そのスタイルは見たところ……、

 

「腰ですか?」

「そーなのよぉ。いやー、休業日はみんな休ませて掃除は一人で、なんてやってたんだけど……やっちゃったわ!」

 

 あははは、と笑う女将さんだが、それが響くらしくいたたと苦痛に眉をしかめている。

 

「このままじゃ明日の営業が遅れちゃうから、なんとかしたいんだけど……私から休むように言ったのを引き戻すの、かっこ悪いじゃない」

「なるほど! それじゃあ、お掃除はカラーズに任せてください!」

「ありがとねー。助かるわー」

 

 

 

「よーし! やるよみんな!」

「別にいいが、街の平和とは関係ないな」

「あはは! ないなー!」

 

 各々掃除道具を持って作戦を開始する。

 私はなに一つ文句がないので、黙々と掃除します。

 

「あはははは!」

「さっちゃん危ないよぉ」

 

 全力ブラシですね。あれは危険です。

 全力ブラシとは、デッキブラシ系装備時に使える技で、プールの底などにブラシを当てて全力で走るというものです。

 たぶんそんなに磨けないあれ。

 私はごしごしやります。

 

「ななし、洗剤取ってくれ」

「うい」

 

 すいーっと滑らせる。私のストーンはプレイエリアまであとちょっとの所、いわゆるフリーガードゾーンで止まった。悪くない一投目だったが、琴葉はちょちょいと近づいて持っていってしまった。気のせいだといいが、ひょっとしたら琴葉は私とカーリングする気が無いのかもしれない。だとすれば、それは悲しいことだ。

 洗い場なんかもしっかり磨きます。ごっしごしです。

 

「こ、これは……こうしちゃいられない……!」

 

 さっちゃん、謎の離脱。まあ、気にしません。

 少し経って、

 

「タオル使っていいって!」

 

 戻って来たさっちゃんはマッパでした。

 すると、私の内(うち)でなにかがむくむくと起き上がるのを感じる。ああ、ここにあったのですね。私のジョイスティック……!

 私は鋼の意志で視線を下げず、目つきも変えないまま語りかけます。

 

「なんかするんかい?」

「見てろー!」

 

 見てます。

 見てますとも。

 

 私がまばたきもせずに見守っていると、さっちゃんは勢いをつけて床にダイブした。

 ずいーっとそれなりに滑って、止まった。

 

 動かない。

 

「さっちゃん。痛い?」

「うう……」

 

 無謀なダイブでした。

 

「そこはもう流したぞ」

「先に言って……」

「急に飛び込むな」

 

 ひっくり返して怪我がないか確認したいところだが、もだえてる時に無遠慮にいじられると私ならぶっ殺したくなるからそれはやめる。

 

「表側を見る前に確認しておきたい点がある。血は出てる?」

「んー、どうかな……これは……」

「ヒント。今の所滲み出してはいません」

「ん……出てない! 血は出てない! 出てません!」

「よろしいですね? では……答えをどうぞ!」

「えーい!」

 

 さあ表側。……、

 

「残念。絆創膏とか持ってくるから、水で洗っときなさいな」

「あはははは! はずれだ!」

 

 若干出てた。

 ただまあこのくらいなら止血して絆創膏でいいでしょう。そーいうのは常備しています。

 

「まず止血です。まあ直で絆創膏でもいいんだけど、意外と血が多かったりすると見た目が悪くなるので」

 

 なのでガーゼをテープでとめて、ちょっと置きます。

 血が止まるまでの数分ですが、戦力外が戦力外になりました。掃除は相変わらず大変です。私はこういうの好きなので、構いませんが。

 

「なー、ななしー」

「どっしー?(どうしたの?)」

「血ー止まったかな」

「あと一分待ちんさい」

 

 止血剤も持ってたけど、さすがにそれは大げさ。

 血が止まったら、絆創膏を貼ってあげます。

 ぺたぺた。

 

「かさぶた出来ないやつだから、初めてだったら驚かんように」

「おう! ありがとな、ななしぃ!」

 

 お礼はキスでいい。そんな言葉を飲み込む。してくれそうだから。してくれそうだけど、そっちの匂いを感じ取られると後に引くから。

 ただ愛しさをこめてそっと抱きます。ちょっとすりすり。

 よくやるので、そうリアクションもありません。計画通りです。

 

 さっちゃん以外も薄着です。まあ私の欲望は薄着くらいで満たされるほど根の浅いものではないのですが、琴葉の細い腕はとてもいいですね。

 さすがに帽子は外しています。レアですね。

 

「結構たいへんだねー」

「これだけ広いんだ。慣れてない私たちではな」

「ところで掃除ってどのくらいやればいいんだー?」

 

 さっちゃんが掃除に復帰しましたが、相変わらずマッパです。幸せ。

 

「まあそんな本気なのは期待してないだろうさ。とりあえず、お客さんに申し訳が立つくらいにって感じで」

 

 プロ意識的にどうなんだって思わなくもないけれど、まあ実際そんなもんだろう。誰も気にしない。

 それにたぶん、どうせ…………ま、私はしっかり掃除するけど。

 

「……でも、頼まれた以上はちゃんと綺麗にしたいよね。だってこれは任務なんだから!」

「うむ、私も同感だ。私たちはカラーズ。子供の使いとは違う」

「子供だけどなー!」

「……。」

 

 じと目琴葉。好き。

 

「よーし! ……えっと、みんな! 丁寧にやろう!」

「おー!」

「普通だな」

 

 まあそのくらいしか無いでしょう。うーむ、機械使っちゃだめっすかねえ。

 訊いてくるか。

 

「おばちゃん、機械使っていい?」

「うーん。危ないと思うよー?」

「いけるいける」

「いいけど、無理そうならやめといてね。こんなこと言っちゃ良くないんだろうけど、一日くらいほどほどでいいんだからさー」

「わかってる。わかってるが、その上でも全力を尽くすのがカラーズだ」

「しぶい」

 

 そして登場、

 

「新兵器」

「こ、これは……グルグルだ!」

 

 ブラシがグルグル回転するマシーン。正式名称不明ッ!

 業務用のでかいやつだ。

 

「あはははは! ぜーんぜん言うこと聞きませんがー!」

 

 さっちゃん、早速振り回される。

 私がやるから。

 

「よっ、と」

 

 力こそパワー。テクニックでなく、強引にねじ伏せる。乗りこなしてやるぜ、業務用床ポリッシャー!

 そうだポリッシャーだ。

 

 さすが機械。人力ではちょっと微妙な感じになっていたところも驚きの白さ。

 一日でこんな汚れるのか。そっちにびっくりだ。

 

「いける。こいつは私が面倒を見よう」

「じゃあ大まかなのはななちゃんに任せて、三人で細かいとこやろう!」

「作戦普通だなー」

「普通だ」

「もー」

 

 

 

「終わったー!」

「疲れたねー」

 

 男湯女湯、双方完了。

 ミッションコンプリートを祝い、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳で打ち上げです。

 ミッションの出来具合は私的に文句なし。ほっといていいって言われたけど髪の毛まで取った。

 あの異界はゴム手袋が無けりゃ私でも手を出さなかった。

 ここまでやったのだから、子供の仕事とは思われないだろう。カラーズ完全勝利である。

 

 琴葉は腰に手を当てて飲むんだね。チョイスはフルーツ牛乳だけど。

 

「終わったよー」

「ありがとう。しっかりやってくれたのねー」

「おう! 大変だったぞー。ななしが居なきゃ無理だった!」

「えー? ほんとにあの機械使えたんだ。なんてったっけあの……ぼり?」

「ポリッシャー」

「ああそうそう! ボリッシャー。あれ難しいのに」

「ポだってば」

 

 居るよね。コンピューターをコンビューターとか言うおばちゃん。

 でもこの人上に見積もっても五十代くらいだと思うんだけどなあ。

 

 あ、ポリッシャーはどうやらハンドルの上げ下げで操るものらしく、後半はパワーも必要なくなった。

 

「お礼はちゃんと用意してるからねー。お風呂入り放題とかでも私はいいんだけど、うちって熱いからねー」

「私は熱いの好きだけど。ちなみに何度?」

「四十六度」

「江戸かっ」

 

 つい突っ込んじゃったけど、江戸の風呂の温度なんてデータはたぶん無い。熱いの好みそうってイメージで言っただけ。

 

「ね? だからほら、こないだ雑誌の懸賞で当たったやつなんだけど」

 

 そう言って、懐から取り出したものは。

 

 図書券と、クオカード。

 

「おー」

「おお」

「おおー」

「いやー、動けないからありもので悪いねー」

「いや、これで十分だ」

「そうだね。なに買おっか?」

「図書券じゃ新兵器は買えないなー」

「図書券は三千円。クオカードは千円分だからねー」

 

 当たるもんだなあ、懸賞。

 そして手回しいいなあ。

 

「じゃあな、お大事に」

「お大事に!」

「オタッシャでー!」

 

 私は無言で手で挨拶。

 こんな感じで、地味な任務が終わりました。

 

「琴葉のクリア無かったねー」

「なんか違う」

「そっかー」

 

 ところでこの報酬がどうなったかと言えば――――保留扱いとしてアジトの箱にしまわれました。

 そんなもんですよ。

 

 

 

「おっやじー!」

「おやじさん!」

「おお、戻ってきたなカラーズ」

「戻ってきたよカラーズ」

「きた」

「で、どうだった?」

「楽しかった!」

「そーかそーか! なっはっはっはっは!」

 

 ここだ! おやじの高笑いにチェーンして、速攻魔法カマかけを発動!

 

「あとでおやじさんも見に行くんだよね。きれいになってると思うけど、あとよろしくね」

「おう! なんだ、女将さん話しちまったのか! そーなのよ。ま、仕上げってやつだな。機械でこうガーッと」

「機械ならななしがやったぞ」

「……ん!?」

「ななちゃん凄いんだよ! あの、ぽり、ぽり……?」

「結衣。……ポリッシャー」

「ポリッシャー! それでがーって。ありがと琴葉!」

「うん」

「ほー。よく扱えたな」

「力こそパワーだ」

「よくわからねぇが、やるなっ」

 

 あれは回転するブラシで移動してしまうので暴れ、扱いづらいが、持ち上げてしまえば済む。体重の倍ほどの重量はあるが……私はカッコイイので大丈夫だ!

 

「あれ?」

「どーした結衣?」

「私達が掃除したあとに、おやじがやるつもりだったんだよね?」

「おう」

「ってことは……」

「ああっ! 私らの掃除には期待してなかったってことか!」

「おおっ!? い、いや。そんなことは……」

 

 三人にたかられ、ぶーぶーからまれるおやじ。そして彼は見た。三人の向こう側に立つ、私の顔を。

 大人であれば、わざわざ暴かない。彼は好意から、活躍の場を与えたのだから。それを暴いては……恩仇というもの。しかし! やる! やるのだ!

 

「ふふ……」

「!?」

 

 それが、愉悦というもの!

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