三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
「ハラハラハラセー」
超かわいい。
私の中の危ない面が目覚めそうです。
でも泣き顔が見たくないから我慢してるのです。
「サッコラーチョイワヤッセー」
メザメヨ……メザメヨ……。
ぐぐぐ、呼び覚まされそうだ。もしやそういう呪文なのか……!?
ダメダヨナナシチャン! タイセツナオトモダチダヨ!
「ハラハラハラセー!」
や、やめてくれ……! 私は耐えると決めたんだ……とりあえず原作が終わるまで……!
『耐えろ相棒!』
う、うん。もう一人のボク!
……いまの誰だ!
内心だけでこっそりボケて劣情をごまかしているとなんか琴葉が私をじっと見ている。
「なんだ、その変な顔」
「結衣がかわいいな、って思って」
「ええっ!?」
「あー、結衣かわいいもんなー」
「……確かに、結衣はかわいい」
「うう……琴葉までー」
ニヤリ。
琴葉が悪ノリしました。
琴葉もかわいい。
ぴろぴろぴろぴろん。さっちゃんのメール音ですね。
「うん? ……ああ! みんなー、急いでののかの店に行くぞー!」
「えっ? どうしたの?」
「……事件だ!」
ドアの前には招き猫。
いずれ黄瀬フルーツから盗まれるやつだ。
「さっちゃん、優しい……」
「私、優しすぎる……!」
ぶつかった自動ドアを心配するさっちゃん。琴葉はなんとも言えない顔で二人を見ます。
どんな心境なんだろうか。
自動ドアがガーっと開きます。
「何してんの」
「ののちゃん!」
「いらっしゃい」
ののかだ。
かわいいことで有名だ。
「ののかはかわいいね」
「そお? ありがとー」
「ののか! メール見たぞ!」
「うん。送った!」
「事件とは、ほんとの事件であるか?」
「ほんとの事件であるよ」
みんなが嬉しそうで、私も嬉しい。カンテレをポロンと弾いて喜びを表現したいところだが、カメラと同時装備はちょっと……属性過多だから今は持っていない。
「事件だー!」
「事件だー!」
結衣とさっちゃんが声を上げて喜んでいますが、琴葉も静かに嬉しそう。
「ふふ。とりあえず、中に入ってよ。ようこそ、ササキのパンへ」
「パンもうあんまりないねー」
「今日はもうだいたい売れちゃったから。お客さんももうあんまり来ないかな」
「そんなことはどうでもいい!」
「?」
「事件レベルはなんだ、ののかー」
「事件レベル?」
説明。レベル一、殺人。レベル二、学校に犬乱入。
「じゃあレベル三は?」
「ななしぃがまた新しいこと始めてる事件!」
「あ、こないだ三角コーンを棒で回してたよね」
「正月は和服で傘回ししてたぞ」
見られてたのか。お恥ずかしい。
本来はさっちゃんママのおべんぴだけど、この世界線では私が魔法かけたりして解決してしまってるのでちょっと歴史が変わってた。
「……じゃあ、今回はレベル四かな」
「四!」
「すごーい!」
「初めての経験だ!」
「そう。これは大事件なんだよ」
だいたいの流れは知っているので、白々しくリアクションを取れない。
「事件レベル四。この店が乗っ取られる事件」
「…………それは一だろうが」
「ののちゃんそれは一だと思う」
「ののかウソはよくないなー」
「事件レベルなんてわかんないよ!」
ちょっと混ざりたいなーという気持ちはあるけど、まあそれはおいおい。
「私にとっては四なの。鬼にこの大事な店を乗っ取られるの」
「鬼!? 鬼が出るの!?」
「そう鬼! レベル上がった?」
「いや一だ」
「犬乱入強いな!」
「誰が鬼だって?」
「あっ」
ももかがやって来た。
大人のお姉さんといった感じの美人さんだ。
通算では私も彼女をお姉さんと言うような年齢ではないのだけれど、五十代の人にとっても熟女もののAVの女優さんは熟女なんだそうだ。
だからお姉さんだ。
できればぎゅーってしてなでなでしてほしい。
「もか姉」
「もかねえ? なんだこいつは」
「私のお姉ちゃん」
「もしかしてカラーズちゃん? ののかがお世話になってます」
「してる」
「ののかの姉のももかっていうの。よろしくね。わ、君、すごいカメラ持ってるね。映画でも撮るの?」
「必要とあらば」
ショートフィルムとかやってみるのも良さそう。
「もか姉は鬼なのか?」
「ひどいよね、ののったら」
「もか姉がお店に来るなんて、なんの用?」
「決まってるじゃん。ののの……」
ぶー、ぶー。
「ケータイなってるぞ」
「あら。…………これどうやって出るの?」
もか姉、声いいな。
うーむ。歌手に仕立て上げようか。片霧烈火とかどうだろう。いや、それともKOTOKOとか。
それともお姉さん感を利用してみんなのうた。
いや、井上陽水の少年時代とか夢の中へとか、カバーっぽく。
ふうむ。
「お前とはもう別れたはずだ。次連絡してきたら目ん玉にリコーダー突き刺してチューリップが咲いたを奏でるぞ」
「赤いチューリップ……」
「このブタやろう」
でもなんか既にモデルとかやってそうな風格がある。
いやおにぎり屋志望だけど。……意外だな!
「カネ……コネ……」
おもしろくないよ、琴葉。
「パン屋続ける条件覚えてる?」
「覚えてるよ。ちょっと待ってて。今日カラーズちゃんに来てもらったのもこのためなの」
――気をつけろ、最低最悪のパンが来るぞ!
「おっまたせー」
「ん? ただのコッペパン?」
持ち出してきた五つのコッペパン。その見た目からは、秘める攻撃力の片鱗も窺わせない。
私はある理由から見(けん)に回り、琴葉とともに感想を待つ。
「レベル四……」
「事件レベル上げないで!」
「まずいよのの。生地になに入れた?」
「ふっふっふ。生地には地下街で手に入れた様々なスパイスを練りこませてみた。名付けて、ののかブレンド!」
「アホでしょあんた」
「あははは! アホでしょののかー」
「食べなくて良かった」
「琴ちゃん食べてすらいないの!? あっ、ななしちゃんも!」
「いや。私は今いただこう」
結衣が置こうとしたのを受け取っておきました。間接ちゅー狙いでした。
ぱく、もぐもぐ、ごくん。
「……なるほどなるほど」
「おいしいでしょ?」
「スパイスパン、というの自体は悪くない考えだとは思う。好きな人はいるだろう」
「でしょでしょ!?」
「ただ、コッペパンだと思って食べたら百パーまずいと感じる」
「うっ……そ、そう……?」
「かと言って覚悟して食べても、なんか足りない。まさかとは思うけど、塩を入れていないんじゃ」
「うぐっ」
「スパイス。無塩。挑戦しすぎだよ」
スパイスパンと二百二十円を置き、コロッケパンを取って開けます。
「うん。良い」
「うう、まいど……。でも、ななしちゃんからもNGかあ。ショックだよ……」
「へえ。カメラちゃん、よく来るんだ?」
「ちょくちょく。私は個包装のパン屋が好きなんだ」
その昔、パン屋は今のケーキ屋みたいな形式だったそうな。あるいはミスド。
つまり、ショーケースの中のパンを選ぶというもの。買うまで、客は触れない。
そんな中現れたトングとトレーを持って自分で選ぶという形式は当時革命的だったそうだ。
しかし、それは衛生と引き換えにした革命だ。
埃だとか細かいのを省いても、当たり前のようにハエが止まったり、パンに向かって咳をするおばはんとかわけのわからんのもいる。
それでいいってんならケーキで同じことやってみろというんだ。
「そんなわけで、パンが食べたくなったらここに来てる」
「語るねえ」
まあこの店は単に狭いからこうしてるんだろうけど。
結衣が二度かじられたスパイスパンをちらりと見ましたが、なにも言いませんでした。
さっちゃんとも間接キスしたかったけど不自然すぎるかな。
「しかし……そうか。このパン屋もなくなるのか。寂しくなるね」
「なくならないよ!」
「ごめんねー。お詫びに、カラーズちゃん。私が作ったおにぎり食べる?」
「食べる!」
私だからいいけど昆布って小学生的にあれだよね。私は好きでも嫌いでもないけど、見栄を張っておいしそうに食う。
「ななしぃには悪いけど、おにぎり屋たのしみだなー!」
「ののかは一生スパイス練りこんでたらいい」
「裏切り者ー!」
別の日。
「サッコラーチョイワヤッセー」
学校。校庭で、間近に迫った祭りの練習です。
割と楽しい。
ポンポンパタポン。
パタパタパタポン。
チャカチャカパタポン。
ポンパタポンパタ。
楽しい。
さて。さんさ踊り、というのは本来盛岡のものです。それをなぜ上野でやってるのか、原作・アニメを見て不思議な人も居たことでしょう。
その答えが、うえの夏まつりパレード。東北の祭りを集めたパレードです。
そこそこ以前からやっていて、もう三十回近いこのイベントは、ねぶたなんかも含めいろいろ一度に見れるおトクなものです。だからドラゴンが舞っていたり、ハゲが踊ってたりしたわけですね。
その中に、この湯門小学校も湯門小さんさ連という団体名で参加しています。
中にはやる気のない子や、ただ流されて踊ってる子も居ますが、ちゃんと真面目にやってる子もそこそこ居ます。私は超楽しく踊ってる子です。
「ハラハラハラセー!」
さんさ踊りには三種類ありますが、このはらはらはらせはその中の七夕くずしとかいうのでの掛け声です。
意味は、なんか祓うとかそんなです。
さっこらは幸せを呼ぶ、ちょいわやっせーは単純に掛け声とのこと。神社でガラガラガラーって派手に鈴慣らしてゴッドにアピールするのと同じ感覚なんじゃないでしょうか。
わかんないとこはわかんないですが、ちゃんと下調べしてます。
「ななちゃんまた上手くなってる!」
「ふふ、ガチ勢」
実のところ、学校での練習が始まる前から練習してる。
ネットでちゃんと動画があるから、それ見てカメラで撮りながら踊って確認して、とかなり真面目に。
結衣の練習にもたまに付き合いますが、私の方が熱意で勝っているので成長速度はかなり上です。かなり止まりなのは、結衣はちゃんと家族に見てもらって練習してるからです。
およよ。見てもらえない私、かわいそう!
家族仲はべつに悪くありません。
「更科さん上手!」
「赤松さんも練習してるんだね」
「平井さんと田所さんも上手だよ! 練習してるの?」
「うん!」
「私もちょっと!」
「ふふ。これ、けっこう楽しいですよね」
本気でやって、楽しむ。まだ年若いのに、それができてる二人に私は好感を覚えます。
私もかつては大人だったもので。
「サッコラーチョイワヤッセー」
楽しい。
昼休み。
「砂漠の蜃気楼ってほんとなのかな。どうして水がないのにあるように見えるんだろう」
と田所さん。彼女と平井さんと結衣の三人で話していて、私もオブザーバー的に参加しています。あんまり自分から喋らず、ただ聞く。
普通の女子小学生がどんな会話をするのかがとても気になるから。私、なんでも気になるんですね。女の子は話すのが好きなので、いろんなことを話して私も飽きません。
「うーん……ななちゃんわかる?」
訊かれたら答えます。
…………ん、なんか燃えてきたぞ。
「はい。蜃気楼というものは三種類ほどありますが、そのケースは上位蜃気楼と下位蜃気楼のどちらも考えられますね。上位であれば、本当はもっと遠くにある水が近くに見えている。下位であれば、いわゆる逃げ水ということになります。見たことがあるでしょうか? 逃げ水は夏の暑い日に車に乗っているとよく――――」
「光は基本的に直進しますが、空気中を進んでいた光が水やガラスを通る場合、またはその逆の時は少し曲がります。その曲がった光が私たちの目に入り、ちょっと変な感じに見えるわけですね。お風呂でお湯の中を見るとわかりやすいですよ。飲み物の入ったコップの中のストローも曲がって見えますね」
「ここで水やガラスの代わりになるのが、温度差により密度の異なる大気、つまり空気で――――」
あ、楽しい。
ちゃんと中高のぶんも勉強しててよかった。
「はい先生! 密度ってなんですか!」
「空気中にはいろいろなものがあります。窒素が七十八パーセント。あ、百分率はまだ習ってませんよね。三人共、パーセントわかりますか?」
「うん」
「なんとなくは……」
「百のうちどのくらいか、だよね」
「はい。少し難しい言い方をすると、割合と言います。全体の中で、それがどのくらいあるか。比率とも言いますね。空気中には窒素が百のうちの七十八を占め、酸素が二十一、アルゴンという物質が意外にも○・九。残りは二酸化炭素とか細かいものです。実際には水も含まれますが――――」
楽しい。説明楽しい。
説明好きなキャラの気持ちがわかった。
「空気とはどういうものか、だいたいわかっていただけましたね? 見えないけど、ちゃんとあるんです。では密度ですが、例えばここに箱があるとして、箱の中に空気をぎゅうぎゅうに押し込めたら、密度が高いことになります。逆に空気を吸い取ったら密度は低くなります。つまり、ある場所に、どれだけあるか、ということです。この教室も、参観日には人口密度が上がりますね」
「おー」
「なるほどー」
様子を見る。三人の顔に疑問の色が見えないので次。
「空気の密度は自然の中でも、気圧や温度の違いで変わります。気圧と言うのはとても簡単に言うと空気の重みです。水で考えるとわかりやすいですね。深いところまで潜ると、上に大量の水が乗ることになります。この場合は水圧と言います。ではここに、蓋を開けた箱を用意して、気圧を上げるとどうなるでしょうか? 空気が押しつぶされてそのぶんいっぱい入り、密度が上がりましたね。逆に気圧が下がると? ほら、自由になった空気は広がっていき密度は下がりました」
うむ。次は熱膨張だ!
気圧の説明は要らなかった気がするぞ!
「と、このようにして光の屈折がおこり、水平線の向こうの街や、地平線の向こうのオアシスの光景が届く。これがよく知られた種類の蜃気楼です」
「なるほどお!」
「全部わかったよ! 更科さんの説明、先生よりわかりやすいかも!」
……授業乗っ取れないかな。
黒板に描いた図を消しつつ、私はちょっと悪いことを考えるのでした。
「サッコラーチョイワヤッセー!」
「手の動きを大きく、しなやかに」
「ハラハラハラセー!」
跳ね方が弱いけれど、パレードするんだからこんなもんか。プロみたいに跳ねたら疲れるよね。私だけ元気よく跳ねよう。
「三回叩く時、手はちょっと低い位置に」
こんな感じに練習して、結衣の動きが少しアップデートされた。
「どうかな、ななちゃん」
「だいぶよくなったよ。プロの動きに近づいてきた」
「ありがと、ななちゃん!」
私の動きも見てもらうけれど、もうかなりちゃんとしています。もう二日後に迫っているので、なんとか仕上げました。
真面目にやるとできるもんですね。
「もしかして、ななしぃも踊るのか?」
「同じ学校だからね。まあ、完全な強制参加ではないから断る人もいるんだけど」
「えー? 楽しそうなのになー」
「合う合わないはあるからね。個性が尊ばれるようになったってことだよ。ふふっ。きっと年々参加人数減るぞぉ」
「なんで楽しそうなんだ」
なんでって? それはね……お前を食べるためだよ!
「かさ増しのために全教員が太鼓役でパレードに参加するの想像したら楽しくない?」
「…………確かに」
ニヤニヤしてる。
「それで、いつやるんだ?」
「土曜日だってば!」
そんなわけで土曜日。
「あ、ななちゃん早いね」
「おいおい結衣。なんか私がとても楽しみにして超急いで来た子みたいじゃないか」
「違うの?」
「いやその通り。一番乗り!」
今日も楽しもう!
「赤松さん!」
「平井さん、田所さん」
「楽しみだねー」
「ちょっと緊張するけど……」
最初に来た私は当然挨拶済み。テンションの高い私を見てか、二人の緊張もちょっとはほぐれてる感じ。
これならこの二人も戦力と考えていいだろう。
いくぜ女郎ども! 開戦だ!
ところで「変なとこないかな?」のくだりかわいいよね。持っててよかったiPhone。そこそこの画質。
持っててよかった裁縫技術。シャツの内側にiPhone用ポケット追加するくらいちょろいさ。そっからコードを伸ばして胸元からカメラ。どや!
なお普通の子は貴重品を持ってこないように。置く所とかないぞ。
「サッコラーチョイワヤッセー!」
ポンポンパタポン!
パタパタパタポン!
「ハラハラハラセー!」
フィーバー!
ところでこの衣装、袖の防御力がいまいちに見えるけどちゃんとシャツなり下着なり着とくように指定があるので隙間から見えたりしないぞ。
下は体操着、靴は上履き。
靴下は白いスニーカーソックス、ということになってるけど私は足袋。特に突っ込まれなかった。
入ってるねぇ、気合!
「結衣ー! ななしぃー!」
すまんさっちゃん。ガチ勢だから隙間を縫って笑顔を向けるくらいしかできない。
その一瞬で、さっちゃんに持たせたカメラがちゃんと撮影中なのを確認。よかったよかった。
ちなみに私のちょっと長めの髪を指定通りおだんごにしてくれたのもさっちゃんだ。私、料理も裁縫もできるけど女子力はないから。
「サッコラーチョイワヤッセー!」
いぇーい!
「……なにしてるの?」
組体操?
「あっ、来たなダンサーズ!」
「ダンサーズ?」
「来たよダンサーズ」
「服着替えたのか」
「うん。みんな着替えるって言ってたから」
私はもうちょい着てても良かったけど、結衣に合わせた。
「あ、そだ。ほいななしぃ、カメラ! よく撮れてるぞ!」
「ありがとうさっちゃん」
組体操みたいなのの邪魔になってか下に置いといたカメラを拾って渡してくれる。本当によく撮れてるかは、たぶんさっちゃんも確認してないからわからない。
「じゃ、早く入ろう! 結衣の学校の祭りぃ!」
「うん!」
話しながら駆け足。これも楽しい。
「ハゲドラゴンかぁ」
「混ぜるな」
「あはははは!」
ちょっと合成にチャレンジしてみようかな。映像の素材次第だけど。
「祭りだー!」
「祭りだ祭りだー! まつ、……あれ?」
「どうした、ななし」
「盆踊りって……祭りなのかな?」
「……わからん」
検索。
「なんか、違うっぽい」
「なにっ!? じゃあなんなんだ!」
「いろいろ説があってよくわかんないってさ」
「な、なんだとぉ! ってことはこいつらよくわかんないのに踊ってるのか! バカなのか!?」
さんさ踊りは練習の最初ちょっと説明あったけど、盆踊りって誰からも説明ないよね。みんな"たぶん仏教の"って思ってるだろうけどそれすらもはっきりしないようだ。
踊りもだいたい見よう見まねで踊ってる気がする。
ちなみに、東京の盆はだいたい旧暦の方です。
「でも祭りっぽいな! 提灯! 太鼓!」
どれどれ、バチないかな。何の根拠もないけど私ならやれる気がする。
太鼓って見てるぶんには簡単そうだよね。
「おっさんがお酒飲んでる! 祭りっぽい!」
わかるようなわからないような。
おっさんは祭りの時に酒を飲むイメージがあるけど、おっさんは基本的にいつも酒を飲んでいる。なぜなら……、
「お酒しか楽しみはないのか」
その通り。
と言い切れるものでもないけど、大人はね、弱いんだよ。
だから手軽に楽しめる酒に頼っちゃうのさ。ふふっ。ちょっとおハーブと似てるよね!
祭り。そう決めた。祭りをいろいろ見ていきます。
(^v^)
チャンスチャンスボックス。名前に反し、ハズレはないけどアタリもなしだ!
ちょっと寂しいけど、健全。
「ちょっと待ったぁ!」
ぱっと止まったさっちゃん。私は琴葉をすっと追い越し、結衣をひょいと抱きとめて衝突を防いであげる。
「あ、ありがとうななちゃん」
「うん」
「さっちゃんどうしたの?」
「なんかみんな、ピカピカしてないかー?」
そう言われて見てみると、なんかみんな胸元がピカピカ光っている。……いったいここでどんなくじ引きが行われているというのか……!
「二人の学校の人って光るのか」
「気持ち悪いな」
「三分以上活動できないのかな」
「ウルトラマン!?」
「結衣とななしぃも光るかも! やってみて!」
「えー……うん。ななちゃん」
「うん?」
「そろそろ放して?」
「うん」
結衣をリリース。
で、パー! ってやった。
すると、どうしたことだろう。こんなに愛した結衣なのに、まったく心が動かない。
「うん。じゃあ次は私だけど」
「楽しみだ!」
「本命」
「無視しないでー!」
なにか小道具は……と愛用のポシェットを探ってみると、ソーイングセットがあった。みんなから見えないようにボタンを取り出して、手に握り込む。カメラを結衣に預け、三歩ほど離れて、片腕で口元を隠し小声で、
「《
すると、手の中に光が生まれる。もう一方の手も合わせ、両手で握り込むようにし、光が漏れる隙間を作る。
「おお! ほんとに光ってる!」
「凄い! どうやってるの!?」
「やれって言えばできるのか……!」
まだまだ!
「かぁー……!」
「あ、あの構えは!」
「めぇー……!」
何度か試したけど出なかったからでぇじょうぶだ! たぶん!
「はぁー! めぇー!」
光を強める。この低レベル魔法の限界までだ!
「出るのか!?」
「波ぁー!」
光と共に、例のものを射出する。光を弱め、消します。
「出た! なんか出た!」
「なんだ!」
「光は!?」
追っていくみんな。屈んで取り囲み、さっちゃんが代表して拾う。
「……ボタン?」
こっちを見てくるので手を見せて、仕掛けないよとアピール。
戻ってきたので手を差し出すと、ボタンを返してくれました。
「手品? すごい!」
「まったくわからん」
魔法ですから。
でも、手品でもできそうだ。ボタンに目が行ってる間に仕掛けを隠せばいいだけのイージー技。光ってなくても、飛んできゃそっちを見るでしょう。
なーなー、どうやってたんだ? と訊かれるけど、わりぃな! 亀仙人のじいさんに教えてもらってくれよ!
それよりオラの如意棒で遊ばねぇか? あれー? どっかに落っことしたかな。
ではなく普通にごまかした。
「あのピカピカ、あそこのくじ引きでもらえるみたいだな」
「あれか! よしいこー!」
くじ引き。
「あ、結衣。それ電池すぐ切れるから替えてもらった方がいいよ」
「え、そうなの? ありが……なんでわかるの?」
「替えようかー? たまにハズレあるんだよ」
「あ、お願いしま」
「結衣」
「?」
「試そう。気になる」
「えー? うーん。わかった」
琴葉ストップがかかりました。
くじ引きやってる間に切れたら交換してあげるよーと親切なくじ引きお姉さんでした。親切さんは好きです。手を振って別れます。
私はなんかピンクのボールペンが当たった。迷う。どうする? これの行方は。
結衣か、さっちゃんか。結衣は無難。でもさっちゃんもピンクとか好きだ。琴葉は本当にそういうの興味ない。
ははぁん。さてはここ間違うとトゥルーエンド行けなくなるな。ひゃあー! オラ、今すげぇセーブしてぇぞ!
さっちゃんにあげると計画を思いとどまってくれる。通常ルートで散々苦しめられることになる例の計画だ。真ルートでも結局他のイベントが起こって大変なんだけど。
まあどうせここまでの選択も重要だからここだけやってもダメなやつでしょう。
「はい琴葉」
「いらない」
ハコール行きかな。
当たった私もピカピカはもらえました。
ところで、バタフライエフェクト的には結衣が引いたのがハズレである確証はない。けれど、私は自信を持った口調で断言した。
それはなにか狙いがある、というわけでもなく、別に外れてもティヘッ! で流せばいいんですね。昔の預言者的なやつ。むしろ当たった方がめんどいけど、無用なスリルを避けるほど、なんかあの、あれじゃないのだ。
あれだ。
結衣がピカピなんとかとか言ってたけど、たぶんピカチュウのものまねだと思う。そういえばみんなとポケモンの話ししたことなかったな。きっとこれからもないと思う。
みんなで祭りっぽいのを楽しみます。踊ったりも。みんなで踊るのも楽しいねぇ。それはもうノリノリで踊った。
いろいろ挑戦しているせいか初めてでも器用に踊れるのも嬉しい。
ところで提灯の一つに鯨岡工場ってあるんだけど。私、気になります! たぶんおやじとは関係ない。
「あっ、赤松さん! 更科さん!」
呼ばれたので、さっちゃんの後ろに隠れます。
「あ、平井さん田所さん! わー、浴衣かわいいね!」
「へへ。そお? ありがとー」
「ねっ、それどうしたの?」
「これはねー」
結衣に対応を任せ、影になります。
「なにやってるんだ?」
「実は人見知りなんだ」
「うそつけ」
ばれちゃった。
「更科さんはなにしてるの?」
「え? ……うーん。わかんないけど……なんとなく隠れてみたんじゃないかなぁ」
「へー」
「更科さんって不思議だよね」
へへっ。
「学校の友達か」
「結衣の友達」
「……お前は違うのか?」
「んー、何ていうか。私は曖昧だからなぁ。友達なのかも」
「わからないのか。自分のことなのに」
「わかんないねぇー、自分のこと!」
琴葉の後ろに移ります。
「わかるのは、私には琴葉をかるーく持ち上げられる力があることくらいか、なっ」
「うわっ!」
両手で腰を掴んで持ち上げる。ちょっと暴れるけど、そのくらいじゃ私は微動だにしません。琴葉はおとなしくなりました。
「結衣なのにー!」
「い、いいのー!」
琴葉を引き寄せて、抱きしめます。
「わかんないけど、とりあえずそれなりに幸せだからいいと思う」
すりすりする。
私も小さいのに、琴葉の体はすごく細く感じる。
肌のきめ細かな手触り。さらさらな髪。子供用シャンプーの香り。
どうしてこう、胸がきゅんきゅんするんだろう。
「結衣ちゃん、そのカメラおっきいね?」
「お父さんの?」
「あ、ううん。ななちゃんのだよ」
「ななちゃん?」
「あ、そうだった! ええと、ななちゃんってのは……」
名残惜しいけど、出番のようだ。出撃する。
「私のことです」
すっとカメラを受け取る。
「あ、更科さん!」
「そっか。更科さんのことなんだ。……あれ、でも更科さんの名前って」
「あまり名を名乗らないので、ななし。そんなかんじですよ」
細かいことは、言わない。
彼女らのことはそこそこ好きだが、そこまでの仲とは思わないからだ。
だけど、これだけ言っておこう。
「そして、名乗ってもいないのに勝手に下の名で呼ぶ無礼者は敵です」
「あ、じゃあ内藤君……」
「かわいそう……」
ピンと来ないけど敵です。
ところで信長とか家康は諱(いみな)と言ってもともと生きてるうちはあんま使わない名前で、普段は官位とかで呼ぶそうだよ。ドラマとかはわかりやすくしてるけど、呼ぶのは失礼だから家臣に信長様とか言われたらたぶんぶった切るぞ。
というのは私とはまったく関係ないけど。
「お、いたいた。さっちゃーん」
「あ、かーちゃーん! たーっち!」
終焉の刻は来たれり。我らの宴もここまでのようね。おっと熊本弁が。
「では」
「またね」
「バイバーイ」
「またねー!」
闇に飲まれよ!
帰り道。
「あ! ほんとに切れてる!」
「なにっ!?」
「マジか!」
特にズレもなく、予定通り電池が切れました。
どういう理由なんだろう。すぐ切れる電池というものは。
「なに? どうしたの?」
「ななちゃんね、私のは電池がすぐ切れるって言ってたの」
「替えてもらえと言ってたが」
「琴ちゃんが気になるみたいで、試したんだ!」
「そしたらほんとに切れてー」
「あらま。すごいじゃない」
「だろー!」
「ななしはそういうところがある」
……。
どうやったの? なんでわかったの?
そういうの、一切ありませんでした。
そこスルー?
まだ近かったのでピカピカは戻って替えてもらいました。
アニメではさっちゃんが「夏休みももうちょっとで終わりか」と言ってるけど、いろいろ計算が合わないのでミスだと思う。夏休みが始まる辺りのはず。この作品ではまだということにしている。狙ってのことではなく、この話書くのを後回しにした結果そうなってしまった。
ののちゃんが可愛いのでこの話を書きたかったが、アニメではこの前振りにののかが地下街でスパイスを仕入れている。
そのシーンはおやじの爆弾の回だが、その前振りとしておやじが爆弾を作っているシーンがバナナの回にあったので、バナナ回書く熱意がなかったけど無視はできなかった。
Google Earthで上野周辺の小学校を調べるとまっさきに目に映るのは「台東区立忍者小学校」だろう。Google Mapでも忍者小と略されてるが、本当は忍岡。報告しようかと思ったけどちょっと面白かったから……。※修正済み
台東区の小学校を見ると、だいたい屋上にバスケやサッカーのコートやプールがあったりする。下には決まって陸上コート。深刻な土地不足を感じる。
結衣の学校、湯門小学生は黒門小学生がモデルっぽいが、見た目はかなり違う。たぶん、見た目だけ他のところにしたんでしょうな。一般的な小学校のイメージと違いすぎるし。自分の通ってたとことずいぶん違うな、という印象は作品として完全に不要だから。土のある校庭くらい欲しい。
近くに湯島小学校を発見。黒門と湯島を合わせたのか。でもこっちも見た目は違う。
この学校はどんなかなーと思って覗いた台東区立松葉小学校公式HPはとても古い見た目のアクセスカウンターが2788。まじかよ、と思ったけど壊れててランダム。どうしたらこうなるんだ。地味な2000年問題かなんかか。"シュミレーション授業"という記載があるが、Simulationなのでシミュと書いてほしい。
アニメでのさんさ踊りのシーンは静止画が多い。手をぐにゃぐにゃする動きが多く、真面目にやろうとすると作画コストがヤバイことになるからだろうか。絶対崩壊して大変だったろうし、さすがプロ。
主人公はステータスに器用さの値を持つため、わりと踊れる。
わしの若い頃は盆踊りに行くと焼き鳥屋のおっちゃんがなんか一本くれたもんじゃ。昔ってすげぇ。その後もう一本くれた。主人公の前世がいつ生まれかは設定しない方がいいからこういう昔語りは作中に盛り込んでないつもりだけどちょっとうっかり書いてるような。
2018年の第35回うえの夏まつりパレードは7/21だから過去のもそのくらいにやるとして、作中では土曜日。2012年の旧暦お盆7/15は日曜日。2017年まで15が土曜になることはないが、盆踊りの日にちはけっこうアバウトだから関係なさそう。いちおう調べただけ。
東京の小学校の夏休み、おおむね7/21からの35-40日間。東京のお盆は一部を除き旧暦。パレードの時期的にも夏休み開始ごろ。時期は合う。
内藤君。主人公を意識していて、なにか間違えて名前で呼んでしまった男子。というのは説明しなくてもなんとなくわかると思うので作中では説明なしだけど、ここまでに内藤君出たっけ?という疑問が出そうなのでここで。