三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第12話

 ランドセルを背負ってると私今小学生だなーとテンション上がる。

 そんな異様な小学生でーす。

 そんな変哲しかない私だけど、特にゴイスーなのはマジカルでリリカルなパゥワーを持ってることかな。

 ただ誰も説明してくれなかったから、自分でもどんな力があるのかよくわからない。

 今わかってるのは、かっこいい魔法と、ゲームっぽい魔法。よくわからない魔法。他に念力が使えるけど、ティッシュ箱から出てるティッシュを動かせる程度。サイキックパゥワー。

 最近見つけたよくわからない魔法その二は、いろいろあるけど魔法ごとに使用できる回数が決まっていて、その回数はどうやら回復しない。

 

 超能力は鍛えればパワーが上昇するかもしれないけど、別に必要ないしスプーン曲げを頑張ってる姿や透視カードを持っているのを誰かに見られたら私は死ぬ。

 あの波線とかのやつ。

 

 私としてはマジックアイテムとかあった方が楽しいんだけど、その辺なんとかならないもんだろうか。アプデ待ってます。

 

 

 さあて、その魔法たちであるが、かっこいい魔法とゲームっぽいのにはレベルが存在する。

 そのレベルを上げるには経験値が要る。

 経験値を上げるにはどうするかと言うと、生き物を殺さなくてはならない。

 

 東京で? しかも、台東区。たぶん、日本中で一番キツイ。森とかないもの。

 

 よく十三レベルにまで上げたものだ。

 システムについてはなんとなーく感触でわかるようになっているが、ソーサラーを十三レベルにすれば失敗のない、しかも距離制限もなく詳しく知らないところに行ける上位のテレポートを覚えられる。ただクレリックに三レベル浮気しちゃったからあと三レベル上げないといけない。

 そうすると釣りにも行きやすいし山で鹿や蛇くらい狩れるかもしれない。その後のレベル上げは楽になるだろう。

 害獣ハンターなんかも楽しそうだ。透明化してヌートリアに即死魔法とか。死体は白骨に変えてしまおう。

 法はどうあれドバトなんて殺し放題だ。まあ、ちょっと、騒ぎになりそうだけど。

 カミツキガメとか経験値高そうだけど、数こなせなそう。

 

 テンション上がってた頃はこの力を使って害獣や外来種を駆逐してみよう。みたいなことを考えもしたけれど、そういうのは魔法あっても一種どうにかするのに年単位でかかりそう。

 限度はある。それは当然だけど……この魔法はできることが多い。

 だから、逆になにができないのか、不得意としている面に気づきにくい。

 

 範囲攻撃は、できる。

 特定の種を選んで探知することも、できる。

 しかし探知した対象を引き寄せたり、それのみを選んで攻撃とかいうのはないわけだ。

 大望があればそのためにどうしたら、と考える過程でその辺に気づくんだろうけど、私そうじゃないから。

 

 そもそも魔法なくてもべつに困らないし……。

 

 ただ、レベルがあれば上げるよね、とりあえず。便利は便利だし。

 

 そんなわけで、今日のレベル上げ。

 東京にも林くらいはある。馬を召喚して、不可視化して、林を探して走り回った。

 結果、首尾よくスズメバチの巣を発見した。

 

「《上位不可視化(グレーター・インヴィジビリティ)》《死の雲(デスクラウド)》」

 

 黒い雲が出現して、周囲の木ごと巣を飲み込む。

 数秒して雲が霧散すると、そこには静かになった巣と転がるスズメバチたちの姿が。

 たぶん木も死んでる。

 

 弱い生物を即死させる範囲攻撃魔法。上位の不可視化では、攻撃しても不可視が解除されることはない。

 これならバレずに稼げるのではないか、と思ったのだけど……。

 

 経験値…………悪くは、ない。

 数が考慮されたのかそこそこだけど、しかしこのために走り回って、ってほどではない。

 見かけたら狩るけど、そんなに偶然見かけるもんでもない。

 

 帰るか。

 

 

 

「聞いたかみんなー!」

「どうしたの? さっちゃん」

「この辺りで、見えない馬が走り回っていたらしい!」

「えー? 見えないのになんでわかるの?」

「その話なら私も聞いた。馬の蹄の音だけが道路を走ってく。ののかが言ってた」

「なんだー。でもののか嘘つきだしなー」

「あーなんだののかの嘘かー」

 

 便乗、火消し。

 そういえばあれ、音は消えないんだった。

 

 

 

「見えない馬なんでしょ? どうやって探すのー?」

「範囲攻撃するべき」

「危ないよお」

 

 そして火も消えなかった。しっかり本人に確認を取った。説明してくれるののか。けど三度くらい本当か疑うみんな。ののかは自分の信用のなさにうなだれてた。

 

「うーん……ななしぃ、なんかないか?」

「おおっと私に振るか」

 

 不可視の対策かあ。でも、それ以前に。

 

「この事件のポイントは見えない馬がいたということ。見えないのにそれを確認できたのは、走る音があったから。ということはつまり、今の所走ってない馬は見つけてないわけだ」

「うん」

「大きな問題として、走っている馬は、危ない」

「えー、そうかー?」

「当たると弾き飛ばされるよ」

「踏まれると脳が出る」

「こわいよ琴葉……」

 

 だから、もし見つけるならまだ見つかっていない止まっている状態の馬を見つける必要があるのだけれど。

 

「というわけで琴葉、透明対策ってどんなのがあると思う?」

「いくつかあるな。まず、小麦粉を撒く。足跡がわかるし、馬に付けば見えるかもしれない」

 

 効果が期待できる量の小麦粉をどう入手するかということは考えない。

 

「同じように雨が降るとわかるかもしれないし、同じところを通るようなら待ち構えることもできるな」

「琴葉すごい!」

「ふふん」

「付け足すと、動物って臭いから、ひょっとしたら臭いでもわかるかも。ただこれは実体がある場合で……透明じゃなくて音だけの馬だったらつまんないよね」

「捕まえらんないなー」

 

 ただ、今回使ったのは《幻の乗馬(ファントム・スティード)》という魔法の馬。臭いがあるかどうか。

 

 さて。

 どうなんだろ。

 これは、

 ……サービスした方がいいのか?

 

「まあまあ、こんなの世界初だろうから、とてつもなくレアなことだ。もう出ないんじゃないかな」

 

 なんとかテンションを下げる。

 

「いーや! 世界初のそれがつい昨日現れたんだ! 捕まえるには今しかない! そうだろ、リーダー!」

「え!? ……う、うん! みんな! これより、緊急任務を発令します!」

 

 敬礼。内心はとほほ、ですが。

 

「これより、透明の馬捕獲作戦を開始します!」

「おー!」

「おー」

「おー……」

 

 

 

「いないなー」

 

 どこにいるんだろーな。

 公園にいるものだろうか。

 さーて。

 ううむ。

 どうしたものか。

 

 ずるい大人であれば、いなかったねーで済ませるだろう。まあ、三日もすれば忘れる。本人たちが実際に聞いたわけじゃないのだから。

 しかし、私にはそんなことはできない。彼女たちが求めていて、私はそれを用意できる。

 うぐぐ。うぐぐ。

 

 だが、だが。

 透明馬を召喚していられる時間は今の私では二十時間ほど。透明馬より効果時間の長い通常の馬を召喚していられる時間は、最大で四十時間。しかし……肝心の透明化が、二十分。

 限度は、ある。

 

 ふむ。

 

 ぱからっぱからっぱからっ。

 軽快な音をたて、走る透明馬。背中にはさっちゃんが乗っている。

 バカそのものの笑い声をあげ、とても楽しそうだ。しかし……ある時、ふと馬の透明化が切れる。

 なんだよーこれじゃ普通の馬じゃんかよー。

 残念だね。

 動物園に売ろう。

 

 ダメだな。馬も消えるし。他には……そうだ。本物の馬を用意して透明化。野生化した馬がどっかにいたはず。ちょっと旅行して連れてくることはできる。んで透明化が解除されちゃったあとは?

 

 かーちゃん、これ拾ったー! 飼えるか!

 馬のエサ代は月二万円とかそんくらい。ポニーでも一万五千円くらい。あと場所の問題。

 よし飼おうとはなかなか言えない。

 

 このプランはスカートがちらちらしてパンツが見れるくらいしかメリットがない。どうしようか……。

 珍しく琴葉のも見れる可能性はあるんだよな。うーん。

 でも落ちが弱いんだよな……。

 

「もうどっか行っちゃったのかなー?」

 

 いかん。リーダーが残念がってる。

 

「《幻の音(ゴーストサウンド)》ッ!!」

 

 小声で。

 あと念写に写った敵の親玉みたいなポーズで。

 

「あ! みんな、来たよ!」

 

 ぱからっぱからっぱからっ。

 音が目の前の池沿いの道を通る。

 さっちゃんがバカみたいに、というかバカなんだけど、突撃したが間に合うはずもない。過ぎ去ってしまった。

 

「逃げられたー!」

「どう!? さっちゃん」

「どうってなにがだー?」

「におい!」

「あ! ……ない!」

 

 さすがリーダー! さっちゃんとハサミは使いようだ!

 

「カメラにも映らない」

 

 琴葉は3DSで撮影を試みてたようだ。素早い判断。

 私は魔法の関係で撮影してなかった。撮影しているとあとで見直される可能性があって、小声とはいえそこで呪文は、さっきのポーズほどではないが怪しい。そのリスクを避けたわけだね。うーむ。なんて賢いんだ、私。

 

 それはさておき、四人で顔を見合わせます。

 

「いた……!」

「いたね……」

「いた」

「いたね」

 

 三人のボルテージが上がっていくのを感じる。私を置き去りに。

 そしてさっちゃんがぶるぶると震えて、弾けるように両拳を天に突き出しました。

 

「いたあああー!!」

「わああー!」

「おおおー!」

 

 琴葉まで吠えた。

 

 こまーる。

 

 

 その後。

 

「じゃあ私は小麦粉を用意しよう」

 

 と誤魔化して抜けてきたのはいいけれど、どう収拾つけるんだ?

 業務用の十キロの袋を担ぎながら、私は途方に暮れる。

 いや、一キロで十分だとわかってはいるけど、ウケが狙いたくて。

 

「多い! 多いよななちゃん!」

「これなら足りるなー!」

 

 合流しちゃった。

 

「よーし。撒くから指示しておくれ」

「う、うん。まずは、さっき通ったここに撒いて!」

「はーい」

 

 端をナイフで切って、どばーっとぶちまけます。

 普通の人はやめとこうね。迷惑だよ。

 

「よーし! じゃあ、次はののちゃんが聞いた場所に行くよ!」

「おー!」

 

 

 そしてアメ横付近。

 さすがに人通り多いけど、カラーズには関係ありません。

 リーダーの指示の下、無遠慮に小麦粉をぶちまけます。

 さて次は。

 

「ようカラーズ。馬を探してるな?」

「うん! なんでわかるの?」

「はっはっは! まあみんな探してるからよ。上野の外からもUMAハンターが来てたぜ」

「ゆーま?」

「探してるのはウマだぞー?」

「謎の未確認動物。チューチューカブリラみたいなやつのことだよ」

「へー」

「そういうこった。これほどはっきり目撃……まあ、見えないんだが、目撃情報が多数ってのは世界的に見てもなかなか無いんだそうだ。長年海外でビッグフットなんか探してた連中がやって来て、大捜索だ。みぃんな力入ってるぜ? これは先を越されるかもなあ」

「なんだとー! 私達が負けるって言うのかよー!」

「くっく。そうならないように、地図を用意した」

 

 先んじてさっと受け取る。

 こう言ってしまうと自慢に聞こえるかもしれないが、私は地図が読める。ふふん。

 わかってる。上が北で右が東だろ?

 まあ近場だから方角関係ないんだけども。

 

 ふむふむ、これは。

 

「おお! 目撃が耳撃かわからないけど、馬が通ったルートのマップだね」

「やるなーおやじ!」

「おやじ、ありがとう!」

「いいってことよ。だが、気をつけろよ? 轢かれたやつは居ないから、温厚だとは思うが……」

「わかってるってー! ほら、りんご!」

「なっはっは! なら大丈夫だな!」

 

 かなあ?

 

「しかし、ま。馬は足が速いからな……。もうどっか遠くへ行っちまっててもおかしくはないぜ?」

「それなら心配ない。さっき公園に居た」

 

 と琴葉。

 

「なに!?」

「池のとこに居たよ!」

「まじか……すげえな、カラーズ」

 

 おやじもびっくり。

 

「こりゃあひょっとするかもしれねえな。頑張れよ!」

「うん!」

「おやじもな!」

 

 さーて。地図をしまっても私には不思議と馬がどこを通ったかがわかってしまう。その道を行くと……。

 

「うわあ、こうなるのか……」

 

 わらわらと、いろんな人が集まっていた。

 仮に透明馬が居るとして、こんなとこ通らないだろってくらい。

 人参やリンゴを持ってる人も少なくはない。レポーターに、カメラマンも居るぞ。

 対抗心が湧き上がり、小麦粉と一緒に準備してきたカメラを構えようとしたが、やめといた。片手で立派なカメラを構えつつ片手で十キロの小麦粉を持ってる小学生(低学年)とか、それはまあまあUMAだ。

 

「あれ? もう撒かれてるね」

「あれは……石灰かな」

 

 わかんないけど、雰囲気的に。

 

「せっかい?」

「ほら、校庭に線ひくやつ」

「あー」

 

 どうする? 追加で撒く?

 目線で尋ねる。

 

「ここは、いいかな」

 

 そだね。

 

 

 林まで行かないとだめかなあと思ったけれど、幸い耳撃情報は途中で途切れてくれてた。

 そこまで、リーダーの思うままに小麦粉を撒いて、五時が近づいてその日は終わり。

 

 カラーズの活動的には、終わり。だけど……私はちょーっと、この事態……どげんかせんといかん。

 明日までにプランを練らねば……。


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