三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第13話

 日曜日。

 さんでー。

 今日はそんな日だ。

 

「足跡、ないねー」

 

 公園。

 風で散らばってうっすらとではあるがまだ残っていた小麦粉には、風のせいか紳士淑女のご協力あってか人の足跡はない。

 当然ながら、馬の足跡も。

 

「そうだなー」

 

 さっちゃんは今日もりんごを持っている。あ、かじった。

 

「うまい! で、ウマはどこだー!」

 

 闇雲に走り出すが、居るはずもない。

 私は今日は控えめに小麦粉を撒く係。

 そう、控えめに今日は五キロだ。

 

 例の地図のルートは人が多く、馬をどうするにも穴場を狙ったほうがいいなという判断から公園に一点集中。

 これは人が多くちゃ勝てないから競合を避けようという後ろ向きなものでは断じてなく、あいつらを出し抜いてやるぜというオフェンシブなものだ。勝つぜ。

 

 頃合いを見計らって、音を放つ。小声で唱える。

 

 ……ぱからっぱからっぱからっぱからっ!

 

「来たぞ! ほんとに来た!」

「どうする!? 結衣!」

「待って! 小麦粉のとこ通るよ!」

 

 冷静に、危険を避ける判断をするリーダー。抱いて!

 

 ここで撮影開始。

 普段どおり撮影してますよーというアピール。

 

 そして。私がそう仕向けたとおり、足音はしっかりと小麦粉の上を通っていった。

 

「……行った! どうだ!?」

「足跡は…………ない?」

「ええっ!?」

 

 全員で小麦粉の絨毯に駆け寄るが、そこに変化はない。

 と、いうことは……。

 

「なんだー音だけかー」

「捕まえられない」

「え……? 音だけ? えー……?」

 

 結衣的には"透明の馬"よりも"音だけの馬"の方が驚きだったようで、目を点にしている。

 そこはもうよくない?

 

 

 アジトで作戦会議。

 

「うーん。やっぱり動いてないよね」

 

 念の為、映像を確認しながら意見をすり合わせるが……やはり、実体はないものと結論が出た。

 強い風もなかったため、小麦粉はほぼ動いていない。ズームしてもそれは変わらずだ。

 音の位置的には、小麦粉をしっかり踏みしめていたにも関わらず。

 

「どうするー? 捕まえらんないだろーあれー」

「つまらん」

「ふふふ。まあ音じゃあお手上げだね。UMAハンターでも捕まえられないだろうし、これは放っておこう!」

「なんで嬉しそうなのー?」

 

 はっはっは。

 

「まあ、おやじにでも相談したら? さすがに音を捕まえる道具とかないだろうけどさ」

 

 終わりムードを育て、シメへと向かわせる。

 日曜日なのでまだ時間がたっぷりあるのがちと気になるが、まあ大丈夫だろう!

 

 

 

「す、すげえな……。マジで撮影しやがったか。いや、映像的にはなにも写っちゃいないが……こいつぁすげえぜ、カラーズ」

「だろー?」

「だが、この小麦粉……」

「あいつ、音だけみたいだ」

「な……」

 

 絶句。

 ……透明の馬、の後でそんなびっくりするもんなんだろうか。

 

「……ふう。なんなんだろうな、あいつは。お前らはまだ若いからそれほどでもないだろうが、俺はこの年まで不思議なことなんてなかったんだぜ? 透明の馬。最初聞いた時は驚いたもんだ」

 

 小さい頃は、なにがあって、なにがないのかわからない。

 だから不思議な事があっても、"そういうもの"と受け入れられるだろう。

 でも、大人になるうちにどーもそーいうのはなさそうだと気づくわけだ。

 

「斎藤のやつ、そんな冗談を言うタイプじゃねえからな。ワクワクしたぜ? だが、音だけか……」

 

 ながーい前振りあってこそ、驚きも大きくなるものさ。

 ……斎藤?

 

「斎藤さんも聞いたの?」

「あん? そうか、やつとは話してねえのか。まあ今さら話すこともねえだろうよ。それで、俺んとこに来たのは音を捕まえようってことか?」

「そうだよ。なにかあるかなー?」

「クックック……」

「おお! あるのか、おやじぃ!」

「あるわけねえだろ……」

 

 まあ、そうだよね。

 

「なんだー、ないのかー」

「ま、地面で足音をたててるってことは、重力には縛られてるんじゃねえか? 巨大な穴にでも落とせりゃなんとかなるかもな。そんなことができればだがよ」

「それだ!」

 

 それだ、って。穴? どこを? 公園?

 

「っておいおいおい! いくらなんでも穴を掘るのは……あぶねえぞ?」

「馬を捕まえるためだ」

「落とし穴はよ、人が死ぬこともあるんだぜ? 馬だってそうだろ」

「じゃあ落とし穴で手に入るのは死んだ馬か」

「死んだ馬じゃ意味ない!」

「じゃあやめとくかー」

 

 うん。よかった。

 他に案もなく、その後とりあえず会議をしたが方法は見つからずひとまず捕獲作戦は断念となりました。

 

 

 

 よかった。大丈夫だった。

 自室。私の机の上にあるのは、瓶。小麦粉。ダイアモンドパウダー。

 最終手段として用意していたものだ。

 まず、瓶の中に小麦粉を一粒入れる。その粒に馬の音の魔法をかける。で、その魔法を永続化させる。

 ダイアモンドパウダーはそのコスト。

 どうにもならなくなったらこれを使おうと思ってた。そのあとどうするんだって問題はあるけど。

 

 ほんと、これ使ったらどうなってたことか。

 

 さて。

 そろそろUMAハンターの始末をつけよう。

 

 

 透明になって空を飛び、やって来たのは墨田区上空。

 なんか飛んでたヘリに取り付いて、気が狂ったような笑い声をあげながらドアをガンガン叩くというおちゃめないたずらをしてから降り立った私は、人が通っているところを狙って馬の音を出した。

 

 ひひーん! ぶるるるるっ。ぱっかぱっかぱっか。

 

 いななきも加えて、より馬っぽくアピール。

 遠ざかるように数箇所で音を出して、テレポート帰還。

 

 

 これでどっか行くだろう。たとえ戦争が起ころうとも、上野だけは穏やかであれ。

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