三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第14話

A「俺、あんま夢見ないわー」

B「はーやれやれ。夢ってのは必ず見るもんなんだよ。ヤレヤレ。覚えてないだけなんだよやれやれ」

 

 みたいなやり取り、あるよね。三度は見た。

 夢は寝れば基本的に見る、という知識はある程度広まってるから、あんまり覚えていないという意味で夢を見ないと言うことは十分考えられるのだが、そこを確認せず全力で揚げ足取りに向かう……やめよう! な!

 そもそもちょくちょくひっくり返る医学の通説にすぎないのだから、そんな聞きかじりでなくちゃんと知識を持った人は断言しないものだ。

 でも、それを本人に言ったところで……。

 

 というのは前振りで。

 

 最近私は夢を見るために頑張っている。

 ちょっとした予感というか、なにやら夢の中になにかあるような気がして。

 早めに寝てみたり、夢ノートを書いてみたり、食事に気を使ってみたり。

 落語家が夢は五臓の疲れとか言ってたから身体を疲れさせてみたり。

 でも回復力が高いせいでそれは上手く行かず。

 

 とりあえず夢ノートは効いた。覚えてられる数が増え、夢が三本立てくらいになる。

 地道にそんなことを続けていると、ついに目当ての夢を引き当てた。

 

 赤い髪の老人が現れ、間違えて私の夢に現れたと言って、お詫びにと私に向けた指をくるりと回し……私は自分の中に魔法が足された感触を得た。"壁生成"を使える回数がいくらか増えたように思う。……この魔法系統、そのへんはっきりとわかんないけど。

 

 たまーに増えたような気がしても、それが気のせいかどうかわからなかった。それがとりあえず解決したのはいいのだけれど……夢ノート、続けるべきなんだろうか。

 こんだけだったら要らないぞ……。

 

 

 

 壁生成。

 幅、一メートル。

 長さ、一メートル。

 高さ、一メートル。

 壁、か? これ……。ドラえもんのスリーサイズみたいに揃ってるけど。

 

 素材は指定した場所の地面とだいたい同じもの。

 その質量をどこから用意したのかは不明である。

 

 実験はちょっと前に墨田区でやった。

 実験場所は壁まみれ、ついでに"扉生成"のテストで扉まみれになったけど、まあ墨田区のことだ。私には関係ない。

 多少騒ぎにはなったが、誰かの前衛アートだろうと片付けられた。

 

 扉生成は壁生成とセットのような魔法。

 組み合わせれば豆腐建築くらいはできそうだけど、好き勝手に使える土地ができるのは上位テレポを覚えた後だ。アメリカとかオーストラリアとか、どうやってもかまわないだろう。

 

 まあいずれは使い道もできないことはないけれど、今はこれと言って……な魔法でした。

 目立ちすぎる。

 

 

 今日は学校。

 

「ねえ、ななちゃん。テレビ見たー? あの馬もう行っちゃったみたい」

「そうだねえ。まあ捕まえられないとわかったし、もういいんじゃない?」

 

 当然ながら、流す気まんまんである。というかそれ以外ない。

 結衣はちょっと残念そうにしていたけれど、ひとまず決着らしきものはついていたし、なによりもう管轄外の話である。捕まえられないとわかった上で墨田区まで遠征する理由はなかった。残念そうだけれど、それなりに納得しているような感じ。

 ごめんね結衣。私、魔法少女ってことがバレたら腸炎ビブリオになるんだ。

 

 なんで隠してるんだが自分でもよくわかんないけど。

 

「今日は国語テストか。結衣は家で勉強とかしてる?」

「ううん、あんまり」

「そっかー。今度アジトで勉強会とかどう? きっとそれなりに楽しいよ」

 

 言ってから思ったけどすっごく楽しそう。みんなと一緒に勉強会。考えただけで幸せだ。

 

「わあ、それいいかも! あ、でも……さっちゃん大丈夫かな?」

「私がおやつでも用意するよ。ちょくちょくおやつタイムを挟めば集中力も上がるらしいよ」

 

 どの程度の信憑性か知らないけど、長すぎず短すぎずだいたい十五分ぐらいごとに報酬があった方が頑張れるとかこないだ立ち読みした本にあった。

 鵜呑みにするわけではないが、まあ特に他に指針もないし、そんなもんでいいだろう。

 

「プリンとか作っといて、手作りだって話から一緒にお菓子作りという話になるのを私は望む」

「ななちゃんお菓子作り好きなの?」

「うん、けっこう楽しいよ。結衣は雰囲気的にクッキー作り似合いそうだから一緒に作るの楽しみ」

「うん! 私もななちゃんと一緒に作りたいな。いろいろ教えてね?」

 

 幸せ。

 

 

 

 転生者だからって、常にテストで余裕の百点ってことはない。問題やルールが理不尽なことはあるからだ。

 

 絵を見てカタカナで名前を書きましょう。

 

 答え

 パプリカ

 ピーマン

 

 こういうの。

 一年、まだ通ってたころ、漢字のとめ、はね、はらいを理由に減点する教師がいたので、文化庁の指針では誤りとみなさないということになっているとみんなの前で教えてあげたら怒り出したので、もちろん用意していた隠しカメラの映像を持って校長に会いに行った。もちろんバックアップ済み。抜かりはない。

 最高に楽しかった。

 面白くなるならば事を荒立てる気まんまんの私と、理不尽に怒り出すのは問題ながらクビにできるほどかというとそうでもない微妙なラインという事実。困る校長。

 

 別に敵意や悪意があるわけじゃないので彼が職を失うほど追い込むつもりはなかったから、ちゃんと採点ミスについて詫びることと私と笑顔で握手をするという条件で和解。

 愉悦。

 

 たぶん卒業まで彼のクラスに行くことはないんじゃないかな。

 

 まあクラス分けとかは魔法でどうにでもなるんだけど。

 

 

 国語のテスト。今回は、かん字のよみ方。

 おもに、送り仮名で変化する読み方について。

 

 こうして見ると、上や下という字は働かされすぎているように思う。

 うえ、うわ、じょう、かみ、あ(げる)、あが(る)。

 か、げ、した、しも、さ(げる)、くだ(る)、お(ろす)。

 誰か制限しようって人はいなかったのだろうか。

 

 余裕余裕。

 結衣もそれなりに本を読んでるし、間違える要素はないね。

 でもミスったら恥ずかしいからよく確認して、おしまい。

 

 余った時間は裏を使って絵の練習。巌のようなごつごつ顔。つながりげじげじ眉毛。短足。警察官。こち亀の両津だ。この世界にこち亀はないが、作者がこっちでは別の作品を描いてくれていて、これの面白いこと面白いこと。

 

 勉強。いろんな練習。いろんな作品の再現。レベル上げ。ストリートミュージシャン。たまに料理したり、ゲームなどの動画配信したり。いろいろ。

 そしてなにより大きいのが、カラーズ活動。

 この合間を縫って漫画を読んだりする余裕が多少なりともあるというのは魔法がなければ不可能だっただろう。

 ありがとう、覚醒増大。

 できればなんだけど、もう一つくらい余裕を作れる魔法はないものだろうか。倒れそうだ。疲労回復の魔法で倒れないけど。

 

 

 テスト終了。

 

「簡単だったね」

「まあ、小学校のテストって授業でやったことを覚えていれば大丈夫だからね。結衣は本も読むし」

 

 よしよし、大丈夫そうだね。ミスってたら私が補習をプレゼントするよ。

 

 放課後。

 

「じゃ、またあとで」

「うん」

 

 急いで帰って急いでアジト。今日はどんな感じかな?

 

 

「さっちゃんとこもテストか。どうだった?」

「どーかなー。とりあえず全部埋めたけど……わからん!」

 

 興味ない感じかあ。ま、そんなもんだよね。学ぶ理由や意欲がある小学生はそう多くない。

 

「琴葉は?」

「まあまあだな。算数は得意だ」

 

 あっちは算数か。

 

「そうだよね。計算ってゲームにも重要だし」

「ぇっ?」

「ダメージ計算とかが複雑なゲームって、けっこうその辺がものを言うんだよね。まあライトゲーマーなら先達の計算結果を元に動けばいい話だけど、先駆者を目指すならそうもいかないじゃない。数値的には小さな補正が結果としてどう作用するのか理解して取捨選択してこそ効率よく動けるというものだよね」

 

 主にモンハン的なのとかネトゲとかの話だから、たぶんあんまり琴葉には関係ないけど。

 

「そ、そうだな! 計算は大事だ」

「というわけでリーダーから提案があります」

「え!?」

「ほら、さっきの」

「でもそれ、ななちゃんの……うう。こほん。ええと、みんな! 次の日曜日、勉強会をします!」

 

 おや、決定事項になった。

 

「えー? 日曜まで勉強かー?」

「私がおやつを用意するよ。なんでも作れるけど、なにがいいかな?」

「おお! ならいいかなー」

「私はプリンがいい」

「任せて。さっちゃんと結衣は?」

「うんこ!」

「かりんとう?」

「じゃなくてー、クレープとかできるか?」

「簡単簡単。結衣はマカロン?」

「え!? う、うん。そうだけど、なんで?」

「なんかマカロン好きそうだから」

「そうなの……?」

 

 プリン、クレープ、マカロン。こんなかで面倒なのはマカロンだな。

 クレープなんて生地作ってクリームとフルーツなんか乗せて巻けばいいだけだ。

 プリンは基本的なのは簡単だし。あんまりいっぱい作んなくていいし、水を引いたフライパンに型を並べて、て感じかな。

 マカロン……。マカロフ持ってくるんじゃダメかなあ?

 

「ところで琴葉。プリンはどんなのがいい? 普通の、チョコ、コーヒー、キャラメル、バニラ、チーズ、ミルク、きなこと黒蜜、抹茶」

「私はコーヒーだ」

 

 よろしくコーヒー。

 

「コーヒーなんだけど、本格的な豆、堅苦しくないコーヒー牛乳とあるけどどっちがいい?」

「断然豆だな」

「それで豆なんだけど、琴葉の好みはなにかな?」

「豆……おすすめでいい」

「じゃあ有名所でキリマンジャロ、ブルーマウンテン、コナ、モカ、グアテマラ辺りはどうかな。琴葉が好きならコピ・ルアクも用意するよ」

「……キリマンジャロだな」

「抽出方法なんだけど、ドリップ、エスプレッソ、ターキッシュ、サイフォン、水出しとあるけどどれがいいかな」

「……エスプレッソ」

「そうこなくっちゃ。じゃあ豆の粒度なんだけど、細かいのでいいかな?」

「ああ」

「コーヒーはこれでいいとして、次にプリンの固さなんだけど」

「いつまで続くんだ」

「あと……八個くらいかなあ」

「わかった。チョコプリンにする」

「チョコね。チョコの種類なんだけど、ビター、スイート、ミルク、ホワイト。あ、クーベルチュールあるよ」

「……ミルク」

「それでテンパリング方法なんだけど」

「いつまで続くんだ!」

「うーん。あと九個くらいかなあ」

「コーヒーに戻す!」

「そっか。豆とコーヒー牛乳どっちがいい?」

「最初からか!」

 

 ははは。

 

 お好みの固さ、甘さ、クリームを乗せるか、クリームの種類、量、固さ、甘さ、チェリーの有無を聞き出して、琴葉を倒した。

 さっちゃんと目を合わせる。

 

「いちごとバナナ! 生クリーム!」

「わかった」

 

 シンプルだ。

 次、結衣。

 

「中身、チョコ系バター系ジャム系とあるけどどれがいいかな」

「チョコがいいな」

「ガナッシュだね。外側はシンプルでいい? 甘さにこだわりがなければ控えめにするけど」

「うん」

 

 終了。

 

「私の時と違くないか……」

「マカロンってそんな手を加えられないし。あと、外側をいちご味にしたりはできるけど、どう?」

「あ、お願い」

「むう」

 

 琴葉とおしゃべりがしたかっただけ。




壁生成の下り、前回でちょっとも話が出なかったのは不自然だろうか?
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