三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
手品を覚えました。
「箱の中にボールを入れます。次に呪文を、あぶらかったーぶら。はい、箱を開けると……ほーら消えました!」
「……それって魔法じゃないのか?」
「ななちゃんったら、それはずるいよー」
「あはは! ななしぃ、新しい魔法かー?」
「……ば、……ば、ば、ば、」
「バレテーラ!?」
がばっ。
幸い聡明な私は布団をはねのけた瞬間、だいたいのことを理解しました。
まだ夢オチって法規制されてないよね。
手品は覚えてない。
アフリカオオコノハズク。
こいつはネズミを経験値にする理由づくりのために飼っている。
それはそれとしてフクロウは好きだけど、それはそれ。
それなりに好きだから魔法で会話とかしたいけど、その時はドルイドとかレンジャーに浮気しないとならない。
さすがにそれは厳しいから、失敗の可能性のない上位テレポを覚えた後だ。
「《
指先から黒い光線を発するとネズミはぐったりし、三発で事切れた。このレベル四の魔法は下位の魔法より威力が低いが、見た感じ苦しんでいる様子が無いのでとりあえず使っている。それに熱したり冷やしたりもせずに済むし、エサ用ならこれ。
ハサミで腸を取り出して、あとはまるごとフクロウにあげる。まるごとでも食うけど、取らないとフクロウのうんこが臭くなるのだ。
取り出した腸はコンポストの中に埋めます。ミミズ様、頑張っておくれ。
ホストっぽいやつら(あんまり素性は知らない)とネットを介して連絡を取ると、ちゃんと楽器の練習はしているよう。
DTMで作っといた名曲の仮歌を渡したから張り切っているようだ。
よかったよかった。あの曲聴きたいなー、って思ってもないんだもん。男声出すには男に変身するくらいしか方法ないし、それはイヤ。
上手くやってくれればいいけどねー。
「えー十人寄れば気は十色、なとと申しますが殊更好きなもの嫌いなものは人によって大きく分かれるようで。
おうっ! みんな来たかい? ちょっと手伝ってもらいてえんだ。ほら、このいなり寿司。かしらから貰ったんだが、俺はちょいと苦手でね」
和服着て、座布団敷いて、噴水前。
今日は路上落語。
ワイルドだろぉ? 落研の修行にありそう。
かなり珍しいと思うが、昔は路上落語あったそうじゃよ。
上方落語では小拍子をバンバンやるけど、あれは野外でやるといろんな声や音で客の気が散ってどっか行っちゃうから引きつけるために、みたいなことを落語家が言ってた。
言ってたけど、落語家の言うことを鵜呑みにしてはいけない。あいつらほんとに嘘つくから。実際私も半信半疑だ。
この落語というものは器用な私でも難しく、練習にかなり苦戦した。覚えたネタを声や身振りで演じる、というのは小学二年生には不可能だと思う。
今やってるこれも、喋るのはできるけど演技の練習量は足りない。でも落語する小二女子というキャラの立て方がしたかっただけだから、とりあえずこれでいいのだ。
終盤。
「あ、琴葉」
「事件だが、忙しいか?」
「大丈夫大丈夫。
ああっ! あいつ怖がるどころか俺らが持って来た饅頭、食ってやがるぞ! 怖いだなんて嘘だったんだ! ちくしょう!
だーいじょうぶだ。見てろ。
うぅっ!?
なんだ? 急に苦しみ始めたぞ。
こんなとこじゃないかと思って、あんこに毒入れといた。
お前それはあんさつだよ! 冗談いっちゃいけねえ。どうもありがとうございました」
軽く頭を下げ、おしまい。
これは冗談落ちというテクニック。時間が押してる時とかに強引に終わらせることができる。二千年代に出て来た、わりと新しい技らしい。
この技がなくても、これから奉行所へ願い出ていざお白洲、というところでございますが残念ながらお時間のようです。というように終わらせられたのに、なぜこの技は生まれたのだろうか。
ただ今回はもうすぐ落ちだったから三十秒くらいの短縮だ。
「じゃ、行こうか」
「うん」
あんまり聴いてる人いなかったけど、それなりにウケた。そしてそれなりに楽しかった。町内会の寄り合いみたいなのないかな。次はそういうとこでやりたい。
「ところでななし」
「うん?」
「さっきのはなんだ?」
「落語だよ」
「落語……何人か並んでるのとは違うのか?」
「あれは……なんだろう。落語家が集まってなんかやってるだけで、ほんとの落語は一人何役もして話をすることだよ」
「そうだったのか。じゃああれはなんだ」
「なんなんだろう」
たぶん、なんか悪いことしたらあれやらされるんじゃないかな。
「よく来てくれたカラーズ諸君」
「謎は全て解けたッ!」
「えっ! どうしたのななちゃん?」
私の超感覚が全てを示す。
「ここにあったはずの招き猫。これらの符号が示すものは一つッ!」
「ヒント一個だよ!?」
「人類は滅亡する!」
「ええー!?」
ふー。
やりきった表情で、さっちゃんママの続きを待つ。
「するどい! まあだいたいそういうことね。さっちゃんがここに設置した招き猫がいつの間にか無くなってたのよ」
「ほんとだ!」
「てことは……」
「盗難事件!?」
三人の声が揃う。
私は背中のバックパックから取り出したカメラで、それを撮影していたので混ざりませんでしたが。
そんなわけで、犯行声明を受け取り作戦開始です。
「今回の事件は事件レベル一だ。だから今回はハンデをつけようと思う」
「ハンデ?」
「この事件が解決するまで私は一度しか喋らない。重要な時一度だけ!」
「なにそれ! 面白そう」
「喋らなくてもさっちゃんはかわいいってこと証明してあげる」
「別にそれはいらないけど……」
「さっちゃんかわいいよー。私はある理由により、この事件の解決に参加しません」
「えっ! なんでー?」
「それは解決したら説明します」
ネタバレはよくないよね。
「じゃあ今からスタートな」
「うん。よーい、スタート!」
「うんこー!」
かわいい。
「ななちゃん、今日は和服なんだね。でもなんでおっきなリュックなの?」
「ななしは噴水前で落語をしてた。リュックの中はその時使ってた座布団だな」
あと今は出してるけどカメラね。
「らくご?」
「一人何役もして話をする古典芸能だよ。らくごという字は落とし話と書いて、だからだいたいは落ちがある笑い話。でも中には怖い話とかもあるんだ」
「へー?」
わかんないよね。今度披露しよう。
技を持ってる落語家が小学校とかで営業する時はドラえもんとかを題材にすることでわかりやすくするそうだけど、そういうのやるべきかな。でも日和るのはなー。まず本格的なのをぶつけて様子を見て、無理そうならかな。それなら反応を見てレベルを下げる高度な技術って感じになるし。
おやじ、斎藤を経て、ののももと会いました。片方は犯人です。
一緒に新作パンのネタ探しだって。仲いいねぇ。
どんな感じなんだろうね。パン屋でいいのか、おにぎり屋にしたいのか。わかんないや!
大人のおねえさんの気持ちってふくざつよねー。
私は参加を見送ったのでこれといって原作と変化もなく、事件は普通に解決しました。要するに、もともとパン屋のだったんですね。
「なんでななちゃんも黙ってたの?」
「やー。だって私、ここに招き猫あったの気づいてたから」
「あー。そっかー」
そんだけの話ですよ。
「でーお前の怖いものは?
めめぞ。
めめぞぉ? なんだそりゃ。
めめぞだよ。土ん中にいてニョロニョロしてて、なんか首元に色の違うとこがあるあいつ。
ああミミズか。へえ。あんなもんが怖いかね。
不気味じゃねえか。どこが口なんだかわかりゃしねえ」
まんじゅうこわい。
私もまんじゅうは怖い。むかし耳をかじられたから。それで身体が青くなったんだ。
「ななし」
「あ、琴葉」
再び。今回も終盤だ。が、ショートカットで終わらせよう。
「なんだなんだ、妙に静かだぞ。びっくりして飛び出して来ると思ったんだが。ちょっと様子を見に行くか。おぉいみっつぁん! どうし…………し、死んでる」
死んで終わるネタは古典落語の中にもあるからなんの問題もない。
今の所他の持ちネタは時そばと黄金餅。寿限無もできるけどできるだけで面白くはない。
練習中なのは佃祭。小間物屋の旦那が佃島の祭りへ行く。その帰りの船が沈むが、旦那は乗ろうとしているところを引き止められ死を免れる。
その事を知らない家のものたちは死体ひとつあがらなかった大事故の話を聞き大パニック。そんな中帰ってくる旦那。最高だ。
私はなにを目指しているんだ。