三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
「ひまだー」
さっちゃん、だらーっとしてます。せっかくなので私も一緒にだらーっと。一緒のベンチなので、私の脚にうつ伏せで乗っかってくれてます。幸せ。
いつものことだけどさっちゃんあんまやることないよねー。なんか提供できる話題はないものか。
うーん。
「あ」
「どうしたー? ななしぃ」
ちょっと思いついた。
「私が魔法使いだってこと、もうみんなに話したっけ?」
たぶんこの話題は初だと思うんだけど、どうだっけ。
「あはは! 何度目だよ!」
「もう耳にタコができたぞ」
「えっ? えっ? えっ?」
「そっか。じゃあ話変えるけど、今度一緒に釣りとか行かない? 不出来な兄が免許取ったから海釣り行こうと思うんだ。私好きなんだよねー釣り」
「いいなーそれー」
「いいな」
実りがなさそうだから話題を切り替えたけど、なぜか結衣だけは混乱顔。
「あれ、結衣はまだ聞いてない?」
「聞いてないよ!? え、どういうこと!?」
「そっか。まだ話してなかったか」
まあ、みんなその手の話しないもんね。
「私、年の離れた兄がいるんだ」
「そっちじゃなくて!」
「釣りが好きなんだ」
「そっちでもなくて!」
じゃあなんの話なの。
「魔法ってどういうこと!」
「ああそれか」
その話さっき終わったんだけど。
「結衣、結衣」
「琴葉?」
琴葉が耳打ちします。
「……あ。な、なんでさー!」
違う。
「まあ、スプーンくらいなら私の魔法でいくらでも曲げてみせるから、曲げたいスプーンがあったら私に任せて」
「曲げたいスプーンはないけど……」
「それ魔法なのか」
魔法が不思議な術という意味だとするなら該当するんじゃないかな。
「他にもフライパンくらいならなんとかなるけど。魔法のような筋力で」
「もう超能力ですらないな」
いや小二でそれは十分超能力だと思うけど。
なんとなく雰囲気だが、みんな私が魔法使いだということを信じてない感じがする。まあ不本意と言えば不本意だが、私はそれを証明したいわけではないし、別にいいや。
と、私は話が終わったものと思っていたが、それから少し間をおいて琴葉。
「スプーン曲げは別として、他にはなにかないのか?」
「ん? ……ああ、もしかして魔法の話?」
「うん」
そうだなあ。
「ちょっと大佐どいて」
「なー」
箱の中からトランプを取り出します。
「じゃあ、一枚引いて、私に見えないように確認して」
「……こうか」
琴葉が引いたカードを確認します。このタイミングです。
「《
大声にびくっとなる琴葉の目を穴が空くほど見つめます。
「スペードの六!」
「当たりだ」
「このマジックのタネはね」
「やっぱり手品じゃないか」
「魔法を使って視力を上げて、琴葉の目に映ったカードを見たんだけど、だめかな」
「地味だろ」
「それはそれですごいけどなー」
そんなこと言っても派手な魔法って派手な攻撃になるし。
「では次は思考を読んでみせましょう。お客様の中で手伝ってくれる方はいらっしゃいますか?」
「はい!」
結衣。ワクワク顔です。
箱から道具を取り出します。えーと、ペンと……おや、なんかチラシだな。特に面白そうなこともない普通のやつ。なんでここに……。ま、これでいいか。
「では私が後ろを向いているのでこのチラシの裏になにか簡単な絵を描いて、裏返しにしたら呼んでください」
「うん!」
「もう完全にマジックショーだな」
後ろを向いて待ちます。
「できたよななちゃん」
よーし。
「では、今から思考を読んで描かれた絵の内容を当ててみせましょう」
期待に応えマリックポーズで宣言します。
「ではまず、テーブルの上に十円玉を置きます。確認してもいいですが、これは普通の十円玉です。ではお客様。この十円玉の上に裏返しにしたままチラシをかぶせてください」
「こう?」
「ありがとうございます。では、この上に私の手を置き……呪文を唱えます。《
ちょっと時間がかかる魔法なので、演出を加えます。
「見えます見えます。少しずつ思考が見えてきました」
再びマリックムーブ。手を大きく広げて間を持たせます。
関係ないけどマリック含めたマジシャンが使ってるギミックコインって裁判ではダメってことになってたよね。通貨変造。
こっちでも同じ裁判があったか同じ判決が出たか知らないけど。
「さあ、私になにを描いたか念じてください」
――大佐だよー。
「……見えました。白と黒の動物。まず間違いなく牛かシマウマかパンダかバクかシャチかイロワケイルカかダルメシアンです」
「すごい惜しいのに!?」
いっけね、ペンギン入れ忘れた。鳥類だからいいかな?
手振りで要求すると、結衣が紙をめくります。
「あっ! 十円玉が消えてる!」
「おおー!」
「これは……!」
それは魔法の発動に銅貨を消費しただけです。
それで肝心の絵は?
「これは……パンダか?」
「大佐だよー」
「あー大佐かー」
知ってたけどまさか大佐だったとは。
いかに画伯とはいえ、さすがにお馴染みの大佐は二本足で立たないようだ。
「どう? これ当たった……のかな」
「うーん……どうかな……?」
「まあ……当たり、ってことでいいんじゃないか……?」
「まー大佐はちっちゃいパンダみたいなもんだしなー」
とりあえず当たりの判定が出ました。
「これが魔法で作られた微妙な空気です。お楽しみいただけましたでしょうか」
「うん、微妙」
よかった。