三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
「今日のお昼は一緒にピザを食べない?」
そんな私の誘いに乗ってホイホイついて来た三人は、理由も告げず住宅地へ誘う私に疑問を持ち始めたようです。結衣だけ。
「ななちゃん、なんでこっちなの?」
「まあまあ」
友達なのでまあまあだけで長いこと抑えられます。しかし、そろそろ目的地なので説明してもいいでしょう。
「ピザを作るのにはなにが要ると思う? 小麦粉、水、オリーブオイル、チーズ、具材。あとは?」
「えっ……? オ、オーブン、かな?」
「それでもいいけど、やっぱピザ窯じゃない?」
「あ、うん」
歩きながら説明する。
おいしいピザを作るにはピザ窯を使いたいけど、場所取るよね。家に作るのは難しい。
ではどうするか?
――見えてきた。あの家だ。
そこそこ立派な門をくぐって、塀の中に入り、庭へ案内する。すると、そこにあったものは――――
「他人の家に作ればいい。これが
「ええー!?」
やって来たのは蜂ばあの家。そしてその庭に鎮座する物体。
そう、あれこそがピザ窯である。
「耐火レンガとかで、頑張って作った」
「あはははは! バカだー!」
「すごい」
琴葉はこういうの好きか。
場所さえあれば、ピザ窯は意外と手作り可能なものだ。今は作り方もネットで調べられるし、材料もホームセンターやネットで買えて、夜中に《
「大丈夫なの……?」
「大丈夫大丈夫。庭使っていい?って訊いたらいいって言ってたよ」
「使いすぎだよ!」
お、ちゃんと突っ込めてる。
でもちょっとスルーします。
「やあ蜂ばあ。蜂は元気?」
「うんうん。お陰様でねえ」
挨拶は大事だからね。
蜂ばあは縁側に座っていた。この婆さんは庭にピザ窯を作ってもなんの突っ込みも入れなかった剛の者だ。私はそれなりに敬意を抱いている。
巣箱を見ると蜂たちも元気ぶんぶんだ。住宅地で蜂を飼うってのもかっこいい。でもご近所トラブルどうなんだ。なんかあったらボケたふりでごまかすとかかな。剛の者だし。
「あの、おばあさん。本当に大丈夫ですか……?」
「いいんだよいいんだよ。楽しいじゃないか」
なんてこった、結衣が常識人みたいなこと言い出すほどのことを私はしてしまったのか。私も捨てたもんじゃないな。
「余裕そうな顔をしてられるのも今のうちだ。いまに朝起きて庭を見たら目ん玉飛び出るようなことをしてやる」
「楽しみだねぇ」
舐めてるようだが、私はばあさんが想像できるより遥かに上を行けるぞ。
いつか究極技として、ここにシェルターを埋め込もうと思っている。
バッグからピザケースに入れて持参したピザを出して窯に入れます。事前に火を入れておいたので、すぐ焼けます。
焼き上がったらピザケースに戻して、冷めにくくします。
「二枚焼き上がったよー。私はアジトでゆっくりいただくつもりだけど、できたてがよかったらここで食べるのもよし」
「そだなー。一枚食べてくか」
「はいピザカッター」
さっちゃんは蜂ばあに「よっ」と挨拶して縁側に座ります。
膝の上にピザケースを乗せて、中のピザをピザカッターで切ります。ころころと丁寧に。
さっちゃんは意外と雑ではありません。
「食うかー?」
「ありがとね。でも、医者に脂っこいものは止められててねぇ」
「そっかー。それじゃーしょーがないなー」
さっちゃんが食べてるのはサラミピザ。今回焼くのはそれを含めて五枚である。ちょっと多いけどまあ小さめだし、いけるでしょう。
どんどん焼き上げていきます。
「わあー、膨らむねー」
「ね? 薄くても大丈夫でしょ」
生地はけっこうぺらっぺらにした。具材、ソース、チーズ。ピザのメインはそっちだと思うから。
生地でお腹を満たすのも悪くはないけど、いろんな味でみんなを楽しませたい。
と思って薄く作った私にとっても思ったより膨らんだけど。まあこのように、リハーサルをやんないとよくよく想定外のことが起こるけど、私はこのスタイルを改めるつもりはない。ぶっつけ本番。それが私の生き様。それが私のやり方だ。
どんなに効率が悪くとも、どんなに筋が通らない設定でも、"それが奴らのやり方だ"って言っちゃえば押し通せるものだ。
例文・SERNは任務を達成したラウンダーを処分する。非効率的なようだが、それが奴らのやり方だ。
みたいな。
まあまあ、膨らんじゃったけどいけるでしょう。
「焼き上がったよ」
いい焼き加減。パーフェクトと言っていいでしょう。自分の才能が怖い。
……私の場合冗談抜きで補正がありうるからなあ。
さーてアジト戻りますわよ。
みんなでピザケースを持ってホイサッサ。
道中。
「あのおばあさん、こないだの蜂飼ってるんだね」
「あれには痺れた。受け入れる度量と、蜂の毒で」
「刺されたんだ!?」
「あたぼうよ」
彼らは温厚だけど刺す時は刺す。
私は後で解毒すりゃいいから気にしないけどね。
さてさて。ここは私が号令するんでいいのかな? よーし!
「ピザ祭り開催!」
「わー!」
「おー!」
「おー」
それなりにみんなテンションが上がっています。よかったよかった。
私の感覚だとピザの時はコーラなんだけど、三人中二人が炭酸苦手とのことでオレジュー。百パーセントのやつだ。
肝心のピザはどうかな?
サラミ。海鮮(エビイカ)。マルゲリータ。チーズ。テリヤキチキン。
テリヤキチキン、子供は絶対好きだよねーという感じの無難なチョイスと見せかけて、このうちチーズだけはちょっと違う。お楽しみに。
「おいしー!」
「うまいなー!」
「うまい」
「そうだろうそうだろう」
「ななしぃはなんでも作れるなー」
「なんでもは、……いや。なんでも作れるよ。任せて」
核兵器とか作れないから否定しかけたけど、ハードルを上げればなんらかの無茶振りをもらえるかもしれない。そうすれば、便利は便利だけど敵がいるとかじゃないから持て余してる魔法の使い道ができるかもしれない。
それにお願いとかされたい。なんでも叶える。全力出す。
「じゃあ寿司とか握れるか?」
「もちろん」
どんなの来るかと思ったら易しめ。
寿司は家でたまに作る。私は寿司を作ろうと思ったら手巻きなんて日和ったことはせず、練習してでも握る。
今日その経験が活きた。
努力は報われるとは限らないが、完全に無駄になることは少ないものだ。たまたま活かせることもあるし、だいたいはなにかに応用できる。
だから、今生は止まらぬ。
「じゃあ次は寿司祭りにする?」
「寿司!」
「お寿司!」
「……!」
まあ今回は活かせたというか、努力以上に報われたけど。
「寿司ネタの話は今度するとして、紹介したいピザがいるんだ」
紹介したい人がいるんだ、みたいな感じで言ってみたけど伝わった感じはしない。
宣言したのち、閉じておいたピザケースを開ける。するとそこには。
「三種のチーズピザでございます」
「普通だね?」
「ただこれ、ゴルゴンゾーラが入ってる。つまりブルーチーズ」
「ブルーチーズ?」
琴葉だけ、聞き覚えがあるような?という表情。説明しよう。
「ようするにカビさせたチーズ」
「えー!?」
「あ」
びっくり。琴葉は思い出した、という顔。
「使うカビが青カビだからブルーチーズ、かと思いきや諸説ある」
「カビってあれだよなー? 食べ物ほうっておくとふわふわしたの生えてくるやつ」
「そうそう。いろいろ種類があるカビの中でも無害なのをチーズにつけて、繁殖させる。わざわざそうするには理由があって、単純な話これがうまい。だからこのスタイルのピザが生まれたんだけど、まあ好みが分かれる代物だから、こうして説明した上で食べるかどうか各自決めてもらう」
言い終えて、取り出したのははちみつ。べつにあの巣箱から取ったわけじゃない。そういうことをすると巣箱から逃げ出しやすくなるから。
国産というくらいしかこだわっていないが、まあまあおいしいはちみつ。
「なお、このピザははちみつをかけて食べる」
「なんと!」
ピザカッターで切って、お皿に移し、はちみつをかけてお先にいただきます。
……うむ、自分の才能が怖い。
次はピザソースも自作しよう。
ちなみに白カビだとカマンベールだよと教えてあげると、琴葉はカマンベール好きだけど知らなかった様子。
「ゴルゴンゾーラに合うのはワイン……といきたいとこだけど、さすがにあれなのでぶどうジュースを用意しました」
ぶどうジュースを飲みながらおいしそうに食べる私を見て、まずさっちゃんが特攻します。
「うまいぞ!」
「えっ、じゃ、じゃあ私も」
切り込み隊長がOKを出して、リーダーも続きます。
すると、リーダーが手を出したものなので琴葉も抵抗はなくなり、食べてみると気に入ったようです。
そんな感じで、ピザ完売。
次回の寿司ではカリフォルニアロールかなんか出そう。隙あらば、変わったもの。私なりの食育だ。
「ふー、食ったなー」
「おいしかったねー」
「うん、よかった」
喜ばれると胸がいっぱいになります。幸せ。
あ、みんなが礼を言わないのは親のしつけがなってないわけじゃなくて、私がそういうの苦手とわかっているからです。
とっても友達。
日常なので落ちはない。
ゴルゴンゾーラにはちみつのピザはアニメARIAでもちょっと話題が出てた気がする。
マシュマロとか乗ったピザもよさそうだ。
大佐にはちゅーるをあげた。