三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
「あっ」
「ん?」
「どしたー、結衣ー?」
なんでしょう。琴葉もゲームをしつつですが注目しています。
「んん」
口に指を入れて、なにか出しました。あれは……!
「歯、取れたー」
「おお」
小さくて白くてかわいい歯です。
「おめでとう」
「ありがとう、ななちゃん」
「ちょっと見せて」
「え? ……う、うん」
そう言って手を出すと、ちょっと渋った感じでしたが渡してくれました。
指でつまんで、観察します。これは前振りなので、間が大事。結衣が私にしっかり注目したところで、
「はむ」
「あー!?」
口に含みます。
「あはははは!」
「なんで食べたのー!」
琴葉は"うぇー"という表情。
なんでだろう。ふしぎ。
いま自分がいたずらっ子の顔をしている自覚があります。にまにましながら口の中で結衣の小さくて白くてかわいくておいしい歯を転がしていると、結衣は「もー」としかたないなあの顔をして許してくれました。
「うまいかー?」
「うん。結衣の味」
本当に違法じゃないのこれ? ってくらい幸せ。
「汚いよー」
「えー? でもこれが汚かったらキスとかできないよ」
「あ、そっか。……じゃなくてー」
誤魔化せなかったか。
まあ、しかたない。引き際というものがある。口から取り出します。
「返したほうがいい?」
「うーん……」
悩み中。
「要らないかな……」
まあ、そうだよね。母親とかが集めそうだけど、瓶とかに入ってるの想像すると気持ち悪いよね。切った爪コレクションかよ。
「じゃあくれる?」
「うん」
ヤッター。苦笑いだけど、OKでました。
「はむ」
「食べるんだ」
帰って、部屋。宝石箱にしまって鍵をかけます。
この箱には素敵な魔法がかけられていて、勝手に開けると直ちに死にます。
魔法って便利だ。
路上ライブ。今日のお供はギター。エレキの方だ。
アンプだとか、電源だとか、そういうあれこれで使ってなかったけど、そういうのもちゃんとある。
問題が解決したのは、父がバッテリー内蔵のアンプを仕入れたから。くれたわけでも、使っていいと言われたわけでもないが、私のために用意してくれたのだろう。
重量十キロ以上あるけど特に気にしない。
今日は弾き語りなし。演奏がとても上手いってわけではないので、そういうのはまだ誤魔化しのきく日本語じゃない曲と、特に頑張って練習した曲だけ。
というわけで、声無しでできるゲーム音楽。
クロノトリガーより、風の
エレキ、と言ってもエレアコだ。アンプに繋げるアコースティックギター。
普通のもあるけど、こっちにした。
なにせこの曲も、この世界にはない。
この曲がないというのは、世界にとっての損失だと私は思う。そのくらいの名曲なので、初出は家にある中でそれっぽい楽器を選んだ。
DTMではほぼ完成させてあるんだけど。
次、FF9より、独りじゃない。
上野をしんみりさせてやるぜ。
曲自体がいいとテクがなくてもなんとか聴ける演奏にできるから弾いてて楽しい。
次は、FF5より、遙かなる故郷。バッツの故郷、リックスの村の曲。
村、街の曲って邪魔にならない感じ。調和、いい。
アコギで弾けるしんみり系ストックがそんなになく、ついチョコボを弾いてしんみり縛りがなんとなく消える。だが、さーて次はなににしようかな、と思ったところでもう丁度いい曲がない。練習不足の曲ばっかり。
別にしんみりに絞って練習してきたわけじゃなくだいたいどれも練習不足だけど、今はなんか満足しちゃったから。
シメで蛍の光を歌って終わりにすることにしよう。
「しゅうどおーぅどあくいんてんす びーふぉごっと あぁんねーばぶろうとぅーまいん」
原曲で。
「最近はギターなのか」
「そ。ピアノとギター。これさえできればだいたいの曲は弾けるから、重点的に練習中」
ギターの練習を増やした。
アジトでの作業も、今はこっちに集中している。
なんとなーくで演奏していたけど、そろそろかっこよく弾きたいし。
上手く弾かないと名曲に申し訳ない。そういう敬意はあるにはあるのだ。そういう想いを貫かないだけで。
「琴葉もなにか楽器弾けるようになったら私はとても嬉しい」
「……苦手だ」
「むう」
一緒にバンドやりたい。
琴葉はベース。さっちゃんがドラム。私がキーボードで、結衣がカスタネット。
タンバリン、トライアングルとかもいいな。なんでさー!が飛び出すぞ。
結衣もさっちゃんもいるし、いま飛び出させるか。
「琴葉はベースとか似合うと思うんだよ」
「ベース?」
「ギターっぽい楽器で、低音で曲を支える役。わかりにくいけど、ないとひどいことになる。パーティーにおける回復役くらい重要な役どころ」
「ふむ」
「わたしはわたしはー?」
「さっちゃんはドラム。体力勝負だから元気なさっちゃんに最適。パーティーの前衛だ」
「なるほど!」
「わたしはー?」
「結衣はカスタネット。これが無くちゃ始まらない。パーティーの遊び人だ」
「なんで!?」
飛び出ませんでしたが、琴葉が「結衣、結衣」と合図します。
「あっ、そっか。……なんでさー!」
「うん。じゃあギターがいいんじゃないかな。私はキーボードでいいし」
「あ、うん」
琴葉と力を合わせて飛び出させた。完全勝利だ。
とりあえず楽器の振り分けは済んだけど、実際やるだろうか?
訊いてみよう。
「とりあえず楽器の振り分けは済んだけど、実際やる? 練習用の楽器は用意できるけど。さっちゃん
「ななしん家で! ……あ、よだれが」
「さっちゃん汚い……」
「どれだけもてなされたんだ」
ついこないださっちゃんを家に招いた。本当はみんな呼びたかったんだけど、たまたま都合が合わなかったのです。
そりゃあもう、来た日はケーキまみれよ。
冷凍庫で保存し続けられるアイスケーキなんかも出してみたけど、さっちゃんはそんなには好きじゃないようだ。嫌いではないけど、どちらかというと普通のケーキの方が素直に喜んでくれた。
私はアイスケーキはなんか特別なものって感じがして好きなんだけどなー。
「みんなもうちで練習の合間におやつ食べる? やるなら、だけど」
「む……」
名付けて、
幸い、琴葉はちょっと心惹かれている。結衣は顔が輝いていて、二人がやるならやる感じ。追従するリーダー。
いけるかもしれない。
私以外のみんなが小二でどれだけできるか、という問題はあるけど、まあまあ、とりあえずピアノから始めればいい。ねこふんじゃったくらいの簡単なの。
「みんなで練習、楽しそう!」
「本気でバンドやるかはさておき、ピアノの楽譜の読み方くらい今のうちに覚えておいた方が得だと思う。大人になってからだと難しいよ。まあとりあえずピアノだけでもどう?」
「ピアノ! ちょっと覚えてみたいな」
「任せてくれ」
「よかったー。いろいろ教えてね、ななちゃん!」
膣がキュンとした。うーむ、私の処女もらってくれんかなあ。
さておきさておき、全ては私の望み通りに進んだ。さっちゃんはいつだって呼べば来るし、今回のことがなくても、ドラムやってみない?とか言ってちょくちょく教えていけば合意抜きでも仕立て上げられるだろう。問題は結衣。琴葉は結衣を落とせばついて来るから、重要なのは結衣をどう攻略するかそのただ一つだったが、なんとかなった。
計画通り……!
例の顔はしない。
「よーし。では記念に一曲!」
今日は普通のエレキギター。アンプを繋げ、演奏を開始します。曲は、『God knows...』。
結局私が死ぬまで音沙汰なかったハルヒ。なんだかんだあったが、こちらに持ち込めばいい曲になることでしょう。
それでは、聴いてください! まだイントロしか弾けないけど!
ここまで、と言った時の結衣のがっかり顔が楽しかった。
一度思ったことを、そのまま言わせるという珍しい手法。実際にやってみるわかるけれど、珍しい理由はくどくなるから。