三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第20話

 君は…実りを生むん――…

 

 その声を聞いた瞬間、私は夢の中で覚醒した。目が覚めないまま、明瞭な思考を手にした。

 それほどの衝撃だったのだ。その気配は、あまりにも大きく。人がその存在をカテゴライズするなら、通常は"神"というワードを使うことを避けられないだろう。それほど圧倒的な存在の気配。

 そして、私は転生者である。説明もなくいろんな能力を付け足されてはいるが、そこに一切の不満はない。私をこうしたのが神のような存在だとすれば、私はその神に可能な限り尽くすだろう。あの三人と上野に危害が及ばない範囲であれば、どこどこまでも。だいたいは。

 この神様は口ぶり的に私とはお初な感じだけど、私は神という存在を事前の想定として受け入れており、いま確信したわけでそれなりに敬意もあるわけです。

 なので跪いて頭を垂れ、それを示します。

 

「はい。お望みであればもっとやります。お望みでなければ二度といたしません。御意に従います」

 

 実り。植物、豊穣などの神様と推定。心当たりはあるので、あのせいか。

 問題は、それを喜んでいるのか、領分を犯したなと怒っているのか。それともどっちでもないのか。

 

 君の思うように―――いいよ…

 

 存在が大きすぎて一部聴き取れないが、怒ってはいらっしゃらないようだ。

 

「はい、ありがとうございます。私はななしと呼ばれている人間であります。よろしければ、御神名お聞かせいただきたく」

 

 僕はクミ―ミ…僕の領域は大地の恵み…その収穫…加工…

 

「お答えいただきありがとうございます。御神名しかと承りました」

 

 クミミミ様、か。*1

 加工まで一通りとは。

 寛容で、手厚い。

 

 神様。

 神様だ。

 感じる。温かく、見守ってくれているのを。

 ああ……。

 本当に……本当にこんな神様がいてくれたなら、人類は……。

 

 私は確信している。

 私がこの世界の人類の歴史上、初めて神と接触した人間であると。

 

 神などいない。神などいなかったから、人は散々バカなことをやって来たんだ。

 それを今更、こんな優しく温かい神様がいましたよ、だなんてそんな話、無いだろ。

 

 神はいなかった。いたとしても、人を救う神はいなかった。

 いま、クミミミ様はこうして少なくとも私の認識上は確かに存在しているが、これは私というエラー由来の例外だろう。

 しかし……これからはどうなんだろうか? クミミミ様、私だけで満足して黙っているんだろうか。私だけにしか話しかけられないとかそういうストッパーがないなら、どえらいことになるぞ。

 クミミミ様だけとも思えないし。邪神とかもアリならバトル展開になってしまいそうだ。

 どうしよう。ヤハウェとか出てきたら。絶対戦争になるぞ。今の人類にとっては災害でしかない。敵ではないのは、神の敵になれるほど人類が神秘を抱えていないというだけだ。

 私が完全体になったとしても神って殺せるもんなのか。ステータスがあるんなら神様だって殺してみせると言いたいが、私は私の仕様を知らない。成長限界がどこにあるのかもだ。

 

 厄介事が頭の中を巡る。どうか杞憂であれ。しかし、備えないとまずい。かと言ってどう備えるんだ。

 

 こうなればもう、クミミミ様は情報源としても超重要な存在となる。

 そんなクミミミ様が、要件は済んだ感じで離れていく気配を感じた。

 

「クミミミ様! クミミミ様ー!」

 

 なんだい?

 

「もうちょっと、いえ。またクミミミ様とお話ししたいのですが、また会えますか?」

 

 そうだね…君がまた…多くの実りを生む――ら…――を合図にしよう…

 

「わかりました。ありがとうございました! お会いできて光栄でした!」

 

 

 

 そんで朝。

 起きても記憶はハッキリしている。やはり通常の夢ではないようだ。

 しかし念の為メモを取る。クミミミ様。恵み、収穫、加工の神様。実りを生めば、また会える。

 ……会いに来てくれる神様か。進んでるな。

 話したいことが決まったら呼んでみよう。

 

 

 

「みんな、さくらんぼは好き?」

「好き!」

「好きだよー」

「好きだな」

「よーし! じゃあみんなでさくらんぼ狩りに出発だー!」

「おー!」

 

 と元気よく応えたのはさっちゃんだけで、結衣と琴葉はなんか不安そうというか、警戒している。

 おかしいなあ。どうして信じてくれないんだろう。私がなにかそんな警戒させてしまうような突拍子もない事をした。

 こないだ公園で、みんな、牛は好き? 好きか嫌いかで言えばどっち? じゃあ好きなんだね? 好きって言って!

 こんな感じで好きって言わせて、アジトに行くとみんなが愛してやまない牛がいるというのをやったんだけど、それがちょっとハードだったのかもしれない。

 ナマの生きた牛。しかも野生種のオーロックス。一見して、引くほど強い生命力。まあ絶滅したんだけど、その生々しさに笑っていたのはさっちゃんだけだった。

 それが尾を引いて、また変なことをするんじゃないかと警戒されているんだろう。

 ……そうか、よかった。わかってもらえてる。友達っていいよね!

 

 

 そろそろ向かう先に既知感を覚えたころだろう。みんなにも見覚えがある塀。そしてその向こうに、見慣れないものがチラリズム。

 そう、やって来たのは、

 

「ようこそ、蜂ばあガーデンへ」

「なにあの木!」

 

 結衣がびっくりしてる。どうしたんだろう。

 昨晩のうちに用意して実らせたさくらんぼの木が立派だからかな。

 

「やっちゃった」

「やっちゃったじゃないよ! おかしいでしょ!? なんでさくらんぼの木があるの!」

「頑張った」

「やりすぎだよ!」

 

 蜂ばあもさすがにビビってた。

 あの顔を見れただけでも錬金術頑張った甲斐があったというもの。

 

 最近錬金術を覚えた。鍋にいろいろ入れて煮込むといろいろできるわけだ。

 楽しすぎてもう、困っちゃう!

 在庫の山が……。

 どうしよう。

 

 まあ、まあ。夢のかけらの処理はあとあと考えるとして、ご紹介したいのがこちら、栄養剤。植物はもちろん、人が飲んでもたぶん害はなく、量とか考えずぶっこんでオーケー。たぶん。

 これといって難しい材料もなく作れるチートアイテムだ。原液だと植物を急速に成長させ、薄めればどんな植物にも万能な栄養剤として働く。これさえあれば現代でも十二分に神になれるだろう。もちろん、他称としての。

 

 とは言ってもそれなりに苦労はした。あの時のさくらんぼの種(さっちゃん)をまず家で苗木まで育てて、こっちに植えて栄養剤で成長させて。しかし、途中で受粉の問題に気づいて調べてみるとなんとだいたいのさくらんぼは同じ品種だと結実しないらしい。あの時は焦った。このままでは実もつけてないさくらんぼの木なんてものを見られてしまう。昨日まで木などなかった庭にたわわに実るさくらんぼという驚きを生もうとしたのにその程度で終わっては恥ずかしすぎる。

 どうにかならないのであれば、()ってしまおう。証拠隠滅の時間を計算するとタイムリミットはそう残されていなかった。

 私は考え、閃いた。そうだ、近所に庭にさくらんぼの木を植えている人がいた。昨日雨が降っていたから、落ちているはず。種をもらって、てきとうなところに植えて、花を咲かせて、花粉を綿棒で採取して。

 戻って木を育てつつ剪定してそれっぽくして、花が咲いた段階で受粉させ、ちょっと成長させるとうまいこと実をつけた。

 あまりにも忙しく、ぐんぐん育つ植物を楽しむ暇もなかった。

 

 とまあ私が頑張ったのは確かなんだけど、私がやったという事実をそのまま受け入れてくれてるのが実に嬉しいね。逆の立場なら……ああ、この婆さんが業者に頼んだんだろ。って思っちゃいそう。

 やったと言われりゃ信じるけど、なにも言わないうちに確信してくれてるんだもん。これは……愛。

 

 抱いて!

 

「さあどうぞ。おいしいよ」

「あ、話聞かない気だ……」

 

 容器を用意しました。

 もちろん各自の色。落としても割れないようにプラで、端には種入れを備え付けました。

 容器自体は百均だけど、種入れはペットボトルを魔法で加工して作った。わかりやすいように蓋にみんなの色も塗っといたぞ。

 では各自好きに収穫して、好きに食べるがいい。洗いたきゃ各々勝手に洗え。

 そんなストロングスタイルで第一回さくらんぼ狩りの回は開催されたのでした。

 

「うまいな」

「うまいなー!」

 

 最初は口を開けて驚いていた琴葉とさっちゃんでしたが、さくらんぼは美味しいのですぐに状況を受け入れました。

 

「蜂ばあも食べるかー?」

「ありがとうねえ」

 

 さっちゃんは優しいので、収穫してあげます。

 というか収穫が楽しいらしく、元気に木に登って、必要以上に取りまくっている。

 おぱんつ。

 

 木が大きく育ちすぎてちょっと高いけど、まあ落ちても死にゃあしないでしょう。私もいるし。

 楽しそうでなにより。私も嬉しいです。

 ふふふ、次はどんなことしようか。アジトがつる植物に覆われている、なんてのはどうだろうか。安全性の問題さえなんとかなれば地下を追加したり二階建てにしたりするんだけど。こないだの魔法マジックはけっこう面白かったし、あれのリターンズしてもいいかもしれない。

 うーむ、やりたいことが多くて止まらないぞ! ふふ、ははは。

 

「あーっはっはっはっはっは!」

「あ、久しぶりに出たな。ななしぃの高笑い」

「なにがきっかけなんだ、わからん」

「なんだろー?」

 

 ところで今生の私は感情が高ぶると高笑いが出ます。

 理由は私にもよくわかりませんが。

 

 

 

 後日。

 

「結衣、ワニって好き?」

「うん、嫌いだよ!」

 

 笑顔で元気よく答えてくれました。

 

「そっかー。……じゃ、片付けてくる!」

「…………いるの!?」

 

 しばらくこの手はおやすみ。

*1
Elonaというゲームの神様。知らなくても読めるようなるべく気をつけます。




Elonaというゲームの神様。数種類の魔法のうち一つもこのゲームです。
あんまりはっきり要素を出すと多重クロスとなり、どちらの作品も知っている人か知らない作品でも読める人向けになってしまうので、"主人公も知らない"という形で解決させてる……つもり。

牛、どうやったの?とか問い詰められるイベントが話の間にあるはず。
蘇生という誤解を排除するために説明すると召喚魔法です。
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