三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第23話

 ある日。朝食を食べながらニュースを見ていると、コンゴでオカピの保護施設が襲撃を受けたというニュースを見た。オカピ十四頭ほか人間数名が殺されたようだ。理由は、象の密猟や金の盗掘を邪魔された報復。

 そんなことで、あのシマウマのなり損ないみたいな気持ち悪い見た目をしているくせに実はキリンの仲間な絶滅危惧種を殺すとは。

 

 覚えたぞ。私は。

 

 

 

 放課後。

 

「いらっしゃーい」

 

 噴水前。今日は敷物を用意して、バザーっぽいことをやっています。

 錬金術の生産物のうち、問題なさそうなのをここで売りさばく。

 

 錬金術。鍋に材料を入れて、火にかけてかき混ぜる。だいたいそんな感じ。

 隠された能力探しとして裏庭で実験してたら見つけた。

 レベル制のようで、レベルが上がるとレシピの知識が開放される。レシピで定められた材料は特定の材料の他、カテゴリ制の場合があり、液体、金属、植物、などのアバウトな指定で済む。そのタイプだとだいたいアメ横で揃えられるが、難しいレシピはファンタジー素材を要求したりする。そういうのは無理。それによると、とりあえずドラゴンはいる世界観のようだ。

 でもまあ、問題ない。だってこの錬金術自体必要ないから。

 やらない理由もないので一応こなしてはいるが、生産物もいまのところけっこう戦闘に偏っている。なにと戦えと言うんだろうか。

 

 レベル上げが楽しいからもうちょい続けるけどね。

 

「へー、今日はお店なんだ?」

「そだよー。手作りのお茶に、壷に、ポプリに、カゴに、毛皮の手袋」

「暖かそう。もう夏なのに」

「ちなみに毛皮はハツカネズミのだよ」

「えー……」

 

 見覚えがある。演奏してるとよく立ち止まって聴いていくお姉さんだ。

 ののかと同じ制服を着ていることがある。

 

「これは?」

「それはね、風邪薬」

「薬まで作っちゃうんだ」

「たぶん効くよー。どれも五百円!」

「うーん」

 

 薬事法とか知らん。だって小学生だから!

 ちょっと悩んでいたようだけど、ポプリと風邪薬を手にとった。

 

「丁度お兄ちゃんが風邪引いてるから、飲ませちゃお」

「それがいい。二つで千円ね」

 

 よしよし、ポプリはターン毎に回復できるぞ。ちゃんと装備するんだよ。

 

 そんな感じでそこそこ売れましたが、壷が売れ残りました。

 途中斉藤が通りすがったので目で"買っていけー"と伝えてみたのだけれど、スルーされた。

 うーむ。まあ、壷は食べ物入れて売ればいいだろう。やろうと思えば魔法で処分もできるし。

 

 そろそろアジト行こう。

 

 

「ハーイ」

「あ、ななちゃん。今日はなにしてたの?」

「ちょっと露天商をねー」

「お店?」

「うん。ほら、売れ残り」

 

 愛用のバックパックからゴトゴトと壷を出して並べていく。

 

「わっ、いっぱい」

「壷? なんでこんなに壷がある」

「もしかしてこれ、ななしぃが作ったのか?」

「そだよー。ピザ窯でガーッって」

「へー」

「ほー」

 

 いい加減なことを言っただけなんだけど、信じられてしまった。

 まあまあ、耐火レンガだしいざとなればなんとか。なるかな?

 魔法もあるしいけるいける。

 

「でもまあ、売れ残るよ。だって日常生活に壷っていらないから」

「確かに、タッパーで十分だな」

「琴葉」

「うん?」

 

 目を合わせます。

 

「塩の入った、壷」

「…………ぶぶっ、くく」

「えっ!? えっ、なんで!?」

 

 ダジャレにもなっていないのに笑いだした琴葉を見て、結衣は困惑する。

 これぞ奥義、普通。ツボに入らなければ理解もできない種類の笑いだ。琴葉自身、なにが面白いのかよくわかってないだろう。

 数ある笑いのジャンルの中でもおそらく最も人を選ぶが、琴葉ならいけると私は信じた。

 

「ふふふ、わかるまい」

「なにが面白いのー」

 

 

 

「あー。なにか事件はないのかよー」

「じゃあ私が殺人事件でも起こそうか?」

「いいなーそれー!」

「だめだってばー」

「でもななしぃを捕まえるのはなー」

 

 少年法あっても、みんなとは会えなくなりそうだねえ。

 

「殺しはだめだよぉ」

「そうかな? 私はそうは思わない。殺しておくべき時に躊躇うような無様はごめんだ」

「わかる」

 

 琴葉と意見が合った。

 

「殺すべき敵を日和って殺さず、そのせいで案の定あとあと味方が殺されたりする。私はそーいう主人公が大っ嫌いだ」

「ああいうの見るとうぇってなるな」

 

 死因、主人公の不注意。主人公の不覚悟。

 脇見運転みたいなことで味方を殺す主人公。自分はああはなるまい。そう思わせてくれる。そうなると、もうそのキャラクターに感情移入はできないわけだ。人によってはそれでも問題なく読むなり見るなり続けられるのだろうけど、私達のような特質系にはそんな自分と無関係なストーリーなんてどうでもいいのだ。

 

「みんな。いざって時は死体処理手伝うから、呼んでね」

「呼ぶ」

「もー」

「あははははっ」

 

 平和だなあ。

 冗談抜きでマッチポンプでもしようか。馬の時みたいに。

 悪の大王降臨せよ。

 

 じゃない。本当に来ちゃいそうだ。

 

「斎藤でも倒すかー?」

「いや……事件がいい」

「事件かー。……じゃあ私が起こすかー」

「さっちゃんもなのー? だめだってばー」

「大丈夫! 私は人は殺さない。とりあえず今は!」

「じゃなくてー、犯人さっちゃんだってわかってるから……」

「あー」

 

 まあ多少なりとも推理パート欲しいよね。

 おやじがなんかしてくんないかなあ。

 

 

「それで俺んとこに来たわけか」

「うん。おやじ、なにか事件知らない?」

「そうだなあ……」

 

 おやじはちょっと考えて、ポケットからメモを出しました。

 

「瀬川さんちの犬が行方不明。川崎さんちの車の調子が悪い。内川さんちのネット回線のトラブル」

 

 ……なんだそのメモは!

 

「全部川か」

「あん? ああ、言われてみりゃあそうだな」

「おやじ、ありがとう。調べてくれてたんだね」

「まあな!」

 

 さっすが身体がでかい。じゃなくて顔が広い。ただ、内容がなあ。

 

「これ事件か?」

「うーん」

「……ま、まあ。一般的な事件はこんなもんだろ?」

「どうしよう? みんな」

「この中だと犬だが」

「でも根気いるよー犬猫探しは。地道に探したり保健所に連絡したり」

「うー、それは面倒だなー」

 

 けっこう見つかるものらしいけど。

 

「他にないの? おやじー」

「そうだな……」

 

 メモをめくる。

 

「変な牛の目撃情報も、音沙汰ねえしな」

 

 琴葉と結衣の目がこちらに向かいます。結衣の眼差しは琴葉のそれより三倍は強く感じます。口ほどにものを言うそれを言葉にするなら、"テメー、ワニは見られなかっただろうな……?"でしょうか。大丈夫。ワニの方はほんとは出してなかったから。

 牛を見られたのは、ある程度場所を考えて消さないと消えるとこ見られてみんなに私が魔法使いだとバレてしまうから移動が必要だった。魔法のことが知られたら私、大婆様にグレムリンにされちゃうの。

 魔法少女フィジカルななし。次回、ついにグレムリン! お楽しみに!

 

 さっちゃんがこっちを見ない理由は知らない。

 

「あのななしの牛なー」

 

 そういうことか。

 

「あん? 知ってるのか」

「ななしがアジトに連れて来てなー。あの牛、うんこ撒き散らして大変だったぞー!」

 

 まあ理屈じゃあ隠す理由はないんだろうけど。秘密って言えば黙っといてくれるだろうし。そう考えるとむしろ二人はなんで黙っているのか。私が隠していたのは私のプランだとおやじに私のそういう要素を匂わせるのはみんなにはっきりバレてからだったから。分けた方が、二度美味しい。でもさっちゃんは分けない。そういうことだ。

 

「な……ななし、お前が連れてきたのか? いったいどっから」

「A secret makes a woman woman. まあつまり、それはヒミツです」

「むう……」

 

 東京ってあんま牧場ないから不思議だろう。

 おやじは現実的な線として、異様に協力的な親とかを想像するだろう。まあ私の親はとても協力的だけど、この子は天才だ!という感じのアレとなかなかの裕福さから来るものだから、常識的な範囲だ。さすがにちょっとした遊びのために牛一頭用意する変態ではない。

 

「あれー? もしかしておやじにはひみつだった? ごめんなー」

「いやいや。おやじにはおやじで仕掛けようと思っていたから、黙ってただけだよ。おやじが朝起きると、部屋に牛がいるんだ。これでビビらないのは私ぐらいだろう」

「今言ってくれてよかったぜ……」

 

 別に知られたらやらないとは言ってないけど?

 

「それで、他にはないのか?」

「そうだな……できそうなのは、お、庭の草むしりなんてどうだ」

「うーん、普通だね」

「おやじ、そのメモ見せろ」

「お? ほらよ」

 

 琴葉の後ろから私も覗き込みます。

 

 引っ越した先に邪魔な庭木があって困ってます。

 大きな庭石が倒れてそれが処分できなくて困ってるけど、これ重機入れないと無理だよね。

 先立った夫が世話をしていた庭池が濁ってきてしまいました。

 

 ※意訳。

 

 ……庭系多いな!

 

「庭系多いな」

「まあよ、そういうのが街の住民にとっての事件なんじゃないか?」

 

 そりゃそうかもだけどね。

 でもまあ、子供向けの事件ではなさそうだ。現実的には草むしりが丁度いいだろう。

 

 ……しかしおやじ、どういう情報網なんだ。

 

「これだけあれば解決し放題だな! さっすがおやじー! 身体がでかい!」

「顔が広い、だろ」

 

 かぶった。

 

 

 

 そんなわけで我々がやって来たのは件のでっかい庭石のおたくである。

 

「どれだけ大きいか知らないが、四人集まったカラーズにできないことはない!」

 

 この根拠のない楽観が楽しみで、今日は久しぶりにカメラを用意しました。

 草むしりじゃないんだ。

 

「大石さん、だって」

「皮肉だな」

「ヒニクってなに? 琴葉ー?」

「う……」

 

 あるよね。訊かれなければ知ってるけど、訊かれたらわからない。そうそれは時間のような存在……じゃなくて使い方は知ってるけど説明できるほどには知らないこと。

 確かに、事情を知っていると悲しい表札だ。

 我らがリーダー結衣がぴんぽーんとチャイムを鳴らします。

 すると三十代半ばというくらいの女性が出て来ました。私が思うに、かなりの高確率で彼女は大石さんです。

 

「大石さんですか? 私達、カラーズです!」

「あらー。聞いてるわよー。庭石をなんとかしてくれるって。でもあれは手強いわよ」

「問題ない」

「そう? じゃあ案内するわね」

 

 当然というべきか、話が通っていた。できる男だ。脳裏に親指を立てる頼もしいおやじの姿が浮かぶ。今度新しいメガネでもやろう。

 

 庭。広いっちゃ広いけど、狭いっちゃ狭い。そんな普通の庭。

 そんな普通の庭には確かにあれは大きいかなと思う。

 

「うわー……おっきい」

「でしょう? なんとかなればいいんだけど、ここまで大きいと業者さんも無料引き取りはできないみたいでねー」

 

 やっぱり処分を考えてるのか。

 事前に調べてきたけど、邪魔な庭石は造園業者とかが引き取ってくれる……場合がある。費用をかけてでも引き取って保管して、それが売れるならいいが……現実問題需要も限られる。そういう判断から、これはナシなのだろう。

 倒れちゃいるが、文字を刻めば小さめの石碑になりそうなサイズだ。

 

「これを壊せばいいのか?」

「そうねー。半分くらいになれば処分もしやすくなるんだけど、壊せるかしら?」

「カラーズにできないことはない!」

 

 二度目。

 ひるまないなあ、この巨石を前に。

 

「一トン以上はありそう。種類は……」

 

 カメラは設置。金槌を取り出して、叩いてみるとこれが硬い。キン、キン、キンキンキン。

 

「チャートかな」

「ちゃあと?」

 

 さっちゃんかわいい。

 

「沖縄なんかにある星の砂が生き物の殻だってことは知ってる?」

「あ、聞いたことある!」

「あれは有孔虫って言って、それに似た感じの生き物で放散虫っていうのがいるんだけど、これは主に放散虫の死骸が長い時間をかけて海底で石になったものなんだ」

「それって化石か?」

「そういうこと。死骸の堆積物からできているから、分類上は堆積岩。叩くと分かる通り硬くて加工が難しいけど、やじりや火打ち石に使われてきたみたい」

 

 琴葉に金槌を渡し、試させる。キンキンキン。どうだ、楽しかろう。君もこっちへおいでよ。

 

「へえ……ずいぶん詳しい。低学年でしょう?」

「二年生ですわ」

 

 探偵さ。

 ちなみに彼は一年生。コナンはいいとして、光彦の方はどう説明するんだ。ずいぶん賢いぞ。

 

「しかし、いったい誰がいくらかけてここにこんなものを」

 

 これだけでかいの、安くなかっただろうに。それに、ここはこれを置くほど広い庭じゃない。

 惚れちゃったのかねえ。

 

 そういうの、嫌いじゃないよ。壊すけど。

 

「まあまあ、ここはカラーズにお任せを」

「ありがとね。疲れたらお茶菓子くらい用意しておくから、あんまり無理はしないで」

 

 首尾よく追い払えました。

 

「さーて。どうする?」

 

 これは硬いぞ。

 

「それはもちろん! 私のエクストラバージンオイルで!」

 

 そう言って拳を握るさっちゃん。

 止めはしないが、バフありの私でもこれを素手でどうにかしようとは思わないぞ。

 

「えーくすとらぁ! ばーじん! おいるー!」

 

 ぺちっ。

 

「大丈夫? 怪我した?」

「うー……」

 

 まあそのうち復活するでしょう。

 無謀すぎやしないか。さすがに心配です。

 

「さっちゃんのエクストラバージンオイルでも無理か。なにか道具が必要そうだな」

「だろうと思って、これを用意してきた」

 

 そう言って、金槌とタガネを取り出して配る。

 

「なんだこれは?」

「石割の道具」

 

 次に、なんとか矢(大きさで細かい種類があるけどこれがどれか不明)という、平べったい横長のクサビのようなものを取り出します。

 ……苦労した。一日だけ待ってくれ! とお願いしていろいろ調べて図書館にも行って、魔法で道具作って……とりあえずなんとかなった。

 後は実際にできるかどうかだ。

 

「タガネを金槌で打ち込んで、これを入れられる穴を作って、今度はこれを金槌で打ち込めばなんとか割れるはず」

「おお! そんなのがあるのか!」

「ただ……さっちゃんが身をもってわかってる通り、チャートは硬い」

 

 復活早いな。

 

 現代だとドリルで穴を開けて、そこにセリ矢という細いタイプのものを入れて、金槌で打ち込む。

 岩に使えるようなドリルが都合できなかったからこれを魔法で用意した。金属の形を変えただけだが、たぶん機能すると思う。

 ただ、チャートってこれで割れるの? それを調べに図書館に行ったのだが、わからなかった。ただ石英は割れるよう。そしてチャートは"主に石英"だ。

 

「大丈夫大丈夫ー! 頑張ればいけるさー!」

「よーし! みんな、ななちゃんの作戦でいくよ!」

「おー!」

「おー」

 

 

 おやじに借りた目を保護するゴーグルをみんな装備して、作業に当たります。そういえば石の破片危ないなーと思って訊いてみたけど、ほんとにあるとは思わなかった。

 おやじ、驚いてたな。草むしり程度を予想してたんだろうに、まさかの大穴。彼は私達がこの問題を解決できるとは思っていないでしょう。

 

 まあまあ、コツコツ削っていけば、たぶんできるはずです。

 こんな伝統的な方法で石割ができるとは思っていなかったので、一人興奮しています。

 

 カーン!

 

「かったっ!」

「硬いね……」

「彫れるか? これ……」

「あ、ななちゃん、すごい彫ってる」

 

 私一人だけ、あれー? みんなどうしたのー?って感じでかっつんかっつん彫り進めます。

 それはもう、ノリノリで手を動かします。

 

「楽しい!」

「よかったね」

「うん!」

 

 幸せ。

 

「よーし! ななしにできて私にできない理由はない! いっくぞー!」

 

 気合を入れて彫り始めました。

 さっちゃんはアホなので、そんな気の持ちようだけでわりと彫れてしまいます。

 まあ当然そのペースが長く続くということはないのですが。

 

「疲れたー!」

「さっちゃんおつかれー」

 

 そうねぎらう結衣は、既に琴葉と一緒に休憩モード。

 まあ無理はせんでくれ。

 

「ななちゃん疲れないの?」

「えっ? なにが?」

 

 私は"あっ、こいつはアホだから疲れとか感じないんだ"と思わせる感じの笑顔で答えました。

 

「ううん、なんでもない。頑張って」

「うん!」

 

 この捨て置かれる感じに、私の下腹部はキュンキュンします。

 結衣! 責任取らなくていいから孕ませて!

 

 ふー。なんとか二つ彫った。タガネにかけた《上位魔法武器(グレーター・マジック・ウェポン)》が仕事をしたのでしょう。みんなのにもかけてるんだけど、素のパワーが足りんかったか。さすがに本人に筋力強化かけたら気づかれるよね。

 それでもさっちゃんもなんとか一つ、琴葉と結衣がそれなりに彫っているので、もうすぐ五つの穴ができあがるわけです。

 私もやったことないから五つで足りるのかよくわかんないけど。

 

 休憩。

 みんなのためにスポーツドリンクを用意しておきました。私的なベストは水筒に入れておいて回し飲みなのですが、それなりに量が必要そうなので人数分の小さいペットボトルです。

 本当のベストは琴葉に口移しで飲ませてもらうというものですが、実現性の問題から今回の選考からは外しました。

 

「これが石割の動画ね」

 

 職人さんがやって、ぱかっと割れる岩。そんな動画を見せる。

 

「おー。ほんとにきれいに割れるんだな!」

「へー! こうなるんだ!」

「ほー」

 

 なるといいなあ。

 

「どう? カラーズちゃんたちー……うわ、穴開いてる」

「あ、大石さん」

「なんだか凄いことやってない?」

「もうちょいで真っ二つだよ」

「え!?」

 

 古の知恵の力だ。可能か不可能かで言えば、子供にだって可能。だが、現代人には驚きだろう。

 

「しかし、他の方法はなかったのか? これは地味だ。私は爆破がしたかった」

「私もそれは考えた。火薬くらいなら用意できるし。ただねえ、量次第では辺りのガラスが割れたり、破片が壁や塀を傷つけたり、私達の鼓膜が破れたり、そういう心配があってちょっと地味だけどこっちにした」

「物騒な話してるね……」

「大石さんがそのくらいの被害は気にしない人なら今からでも火薬を都合するけど」

「します。とっても気にします」

 

 不発なんかも怖いけど、そうなったら魔法で着火しちゃえばいい。

 だがどうにもならない問題として、とても派手というのがある。こんなとこでッパーンと鳴り響けば半々くらいで騒ぎになる。それはちょっと、面倒。

 火薬量をちまちま試していくと、確率は更に上るわけで、ちょっとそれはなあ。

 それに錬金術の火薬、まだ試してないし。

 

 こんな感じに、壊すだけならいくらでも方法はある。倒れた石を戻すんでなくてよかった。そっちだと魔法にものを言わせるくらいしかプランがないもの。

 

「頑張ってくれたお礼にケーキ買ってきたから、ちょっとお茶にしない?」

「おお!」

「ケーキ!」

 

 様子を見に来るのが遅いなと思ったら、なるほどその用意をしていたのか。

 しかし……、

 

「リーダー、カラーズ会議を提案します」

「え? う、うん。みんな! カラーズ会議をします!」

「お? おー!」

「うん」

 

 首をかしげる大石さんを置いて、隅の方でひそひそします。

 議題を投げるのは、もちろん私。

 

「私が思うに、大石さんは私達があの石を割れないと思っている」

「えっ!? なんで!?」

「そうなのかよななしぃ!」

「む……確かに、ありうる」

「琴葉もそう思うのか? ってことは……」

 

 さっちゃんがちらりと大石さんを見る。

 

「……わからん!」

「つまりだ。私達なら用意したケーキをいつ食べる?」

「祝勝会!」

「なのに、今か? 確実とまでは言えないが……確かにこれは怪しい」

「手伝いに来てくれたのだから、お礼にケーキを用意した。けど、残念だったねという時にケーキでもどう?とは言いにくいよね」

 

 まあそこまで考える人ばかりではないから、考え過ぎも十分あるんだけど……"頑張ってくれたお礼に"というのがどうにも解せない!

 なのでその後軽く意見のすり合わせをして、

 

「ケーキは石を割ってからにします!」

「そ、そう? 頑張ってね」

 

 続行……!

 

 ナメられたくない。その想いから、カラーズは本気を出しました。かっつんかっつんやって、すぐに穴は立派なのが六個出来上がりました。ついもう一個やっちゃった。

 あとはこの穴に矢(くさび)を入れて、それを金槌で叩いていく。

 

 カン、カン、カン、カン、カン。

 

 ところで私も石割初めてなんだけど、やり方これで大丈夫だよね?

 ちょっと心配。

 

 みんなで一通り叩いてから、私は持って来た大きなバッグから大きめの金槌を取り出してさっちゃんに渡します。みんなからそんなものまで用意していたのかという視線をいただいたあと、さっちゃんが代表して石の上に立ちガンガンやります。私は後ろでさっちゃんを支える役割です。危ないからね。

 そしてついに、心配で見に来た大石さんの眼の前で、庭石はパカン――――と、割れました。

 

「おおおおおおーお!」

「わ、割れたー!」

「おおおおお!」

 

 琴葉まで吠える。

 私は少し溜めて、

 

「うおおおっしゃあああああ!」

 

 拳を握り、もっとも強く叫びました。

 

 

 

「ありがとうね。まさかあんなに奇麗に割れるなんて……」

 

 祝勝会。

 しばらくぽかーんとしていた大石さんだったが、無邪気に喜んでハイタッチしたりする私達を見てハッとした感じで気を取り直し、準備をしてくれた。

 私はケーキ欲が溜まってないという理由で辞退。親に養われているのに自分の判断で使える収入があるこの状況だとケーキは食いたい時に食えるし、実際そうしている。だから出されても飛びつけないのだ。

 みんながあーんしてくれるなら食道が詰まるまで食うけど今回そういう流れはなかった。

 

 

「面白かったねー」

「大変だったけどなー」

 

 帰還。道具はもう要らないので大石さんのとこに置いてきた。自力で小さくすれば、可能な処分方法も増えるだろう。

 

 いやはや、今日は実に大掛かりなミッションだった。私いなかったらいったいどうなってたんだってくらいの。

 人に頼れる子たちならおやじにドリル用意してもらうなりしていただろうけど、そうしなかったら。……諦められるならいいんだけど、年単位でかよってどうにかしていたかも。

 なんて心配な子たちだ。

 

 アジトに戻る途中五時になったので、唐突だけどここで解散。乙カラーズ!

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