三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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この話の前にみんなでお菓子作りをする回を書きましたが読み返すとまったく面白くなかったのでボツになりました。
「こんど一緒に作ろう」という会話があったので書いたのですが、有言実行だけを目的に書いても面白くはなりません。
魚釣りの話とかも同様に流れているので、作中で約束してても起こらないイベントがあります。


第25話

「あ」

「どうしたななし!?」

「どうしたのななちゃん!?」

「どうしたんだななしー!」

 

 みんなのテンションが高いのはそれまでそういう展開があったからだけど、それについては説明しない。

 

「私が魔法使いだってこと、もうみんなに話したっけ?」

 

 二戦目。

 

「なんだその話か」

「あはは! 何度目だよ!」

「二回目じゃないのー?」

 

 いろいろ仕入れてきたぞ。

 

「さーて、まずはさっき琴葉にプレゼントしたシルクハット、ちょっと貸して。ここからなにか好きなものを出して見せるよ」

「なにもないぞ」

 

 シルクハットを預かって、なにもないことをもう一度確認してもらってから手を入れます。

 

「さあ、なにがいい?」

「猫!」

「鳥!」

「ワニ」

「ワニはちょっと無理」

「猫と鳥はできるのか」

「ワニもできないことはないけど、収拾がつかないから。まず鳥ね。はい!」

 

 ばささ。さっき頑張って捕まえたドバトが飛び出ました。つまり白いのじゃないです。首元が角度によってグリーンとパープルなあいつです。

 

「おおー!」

「ほんとに出た!」

「す、すごい!」

 

 鳩はひとしきりばさばさやって、飛び出していきました。

 

「次は……猫か。ちょっと大佐、こっちへ」

「ナ?」

 

 抱えて、外に行きます。裏にまわって下ろすと、お願いします。

 

「さあ、このビーフジャーキーをここでゆっくり食べるのです。いいね? くれぐれも動かないように」

 

 ペット用だから安心です。

 久しぶりの肉や! という感じでがっついています。綺麗なお皿、なんて日和はなしで地面に置いてやります。ワイルドだろ。さあ牛を食いちぎれ。そうだお前は肉食獣! 虎だ、虎になるのだ!

 

「《動物転送(アポート・アニマル)》」

 

 魔法をかけて、戻ります。

 

「おまたせー」

 

 シルクハットに手を入れます。

 

「大佐だ」

「大佐が出るぞ」

「どうやってるんだろう。大佐ー?」

「お静かに」

 

 なぜかばれているけれど、まあいいでしょう。はい!

 

「ナー」

「おー!」

「……全然わからん」

 

 はーい中から大佐が出てきました。

 動物転送は動物を手元に出したりちょっと遠くへ送ることができる魔法。

 事前に対象に魔法をかける必要があり、転送可能距離はせいぜい三十メートルで、小さい生き物しか呼べない……ちょっと用途がわからない魔法だ。効果時間が十数時間だからとりあえずやっとくというのもできない。

 

「あ、ビーフジャーキー食べてる」

「なにー! 私にもくれー!」

「いいけど、ペット用だから味ついてないよ」

 

 単に干し肉。べつに嫌いじゃないが。

 袋を差し出すと、さっちゃんはためらいなく手を伸ばしてジャーキーを口に運びます。

 むぐむぐと口を動かして、なんだかほとんど無表情になりました。

 うまそうでもまずそうでもない。……どうなんでしょうか。袋を置いときます。

 

「じゃあ琴葉、ワニ以外だとなに?」

「ねじ」

「オーケーねじだね。《加工(ファブリケイト)》」

 

 要求物が用意した物の中にない場合は、数日前から付けて違和感を抱かせないように慣らしていた腕輪を素材に作り上げます。

 

「はいできた!」

「でたー!」

「なんで用意してた!?」

「すごすぎるぞななしー!」

「はっはっは」

「でもなんだか歪んでるねー?」

「はっはっは」

 

 イメージでの造形は難しい。だからぐにゃってるけど、ねじはねじだ。

 なんの規格でもないから、入る穴があるか怪しいが。

 

「はい琴葉」

「ん」

 

 シルクハットを返します。琴葉は興味深そうに確認しますが、当然なにもありません。

 

「次は……《奇術(プレスティディジテイション)》。ふつーのをやります。じゃあ結衣、このスプーンを確認して」

「あ、うん。……普通です!」

「ありがと。……はい!」

「う……浮いたー!?」

「お……おおっ!?」

「曲げるとかじゃないのか!」

 

 両手の間で浮き上がるスプーン。この魔法は複数の効果を持ち、その一つとして軽い物を浮き上がらせることができます。

 めちゃくちゃ便利。

 

「結衣が確認した通り、糸とかないよ」

 

 スプーンの周囲で手を回し、アピール。

 

「すごい! マジシャンみたい!」

「どっ、どうやってるんだななし!?」

 

 琴葉までテンションが上っています。

 

「今度は、《念動力(テレキネシス)》!」

 

 指先で柄を掴んで、ぐにゃっ。

 

「わー!」

「わー!」

「ナー」

 

 大ウケです。

 うーむ。これだけやって、実はただの魔法でしたって知られたらがっかりされるだろうな……。

 まあそうならないために、ちょっと別のも混ぜとこうか。

 

「それでは、ラストの大技です。このステッキをご覧ください」

 

 みんなの注目が集まります。わくわくが頂点に達しているのがわかります。ここだ!

 

「このステッキがなんと……ハイ! 花に変わりましたー!」

 

 なんと! ステッキが一瞬で花に!

 

「あははははは!」

 

 さっちゃんに大ウケ!

 あれ、……どうしてだろう。結衣ががっかり。琴葉は呆れてる。

 

「ななしはそういうところあるよな……」

 

 あれー?

 

「むう。じゃあもう一つ。ふんっ、ぬおぉぉぉ……!」

 

 片手を震わせてもったいぶって、ぽんっと花を出します。

 

「わ」

 

 結衣に手渡して、花の根元からするすると万国旗を取り出します。今はこれが精一杯。

 

「マジック速販、税込み二千七百円」

「それは言わなくていいよ……」

「これは結衣の持ちネタにするといい」

「う、うん。ありがと……」

 

 なんとも微妙な顔で受け取ってくれました。あとで説明書も渡そう。

 せっかくなのでさっちゃんにもなにか渡したいですが、なんかあるかな。

 あ、そうだ。最近アイテム制作に凝ってるのよねー。いいのはコストかかるからそんな作れないけど。

 

「さっちゃんにもなにかあげよう。防御力、攻撃力、どっちにする?」

「攻撃!」

「よーし。ちょっと琴葉手伝って」

「ん?」

 

 帽子を渡そうとする琴葉を制して、立ってもらいます。みんなから見える位置に連れてくると私はしゃがみ、琴葉のスカートの中に手を入れます。

 

「ちょ、ななし」

「こっから、はい! 四次元ポケット!」

 

 魔法空間から飛び出したのは金属の塊。子供サイズですが――――ガントレット。右腕用です。

 その、本物であるが故の物々しい迫力に満ちた鉄塊に、さっちゃんの目は輝きます。

 

「おおー……!」

「基本的には防具ではあるけれど、なんなら殴ってもいいのがガントレット。しかも力が少しだけ上がる特性が付いてるよ」

「それはいいな!」

 

 ウキウキと装着し始めるさっちゃん。なんとなく隣を見ると、琴葉がじとーっとこっちを見ています。

 なんとなく胸がきゅんとなって、吸い寄せられるように抱きつきました。

 琴葉はなにも文句を言わず、そっぽを向きます。私の胸の中にあるなにかはほとばしり、今にも喉から溢れ出しそうで、

 

「好き……」

 

 溢れました。

 すると、なんということでしょう。言ってみるものということでしょうか。気のせいでなければ、琴葉が少し頬を染めています。

 それは単純に、照れ。そうとわかってはいても、私の心はほんの少し、ほんの少しだけ、都合のいい妄想を抱きました。

 いつのことだったか、誰の言なのか、愛は狂気に似ているという話を聞いた覚えがあります。湧き上がるこれが愛であれば嬉しいのですが、だとしたら愛は思ったほど綺麗なものではないようです。

 もし思ったままを成すならば、固形の体があまりにも邪魔です。

 

「あれ? 付けたら軽くなった?」

「力が上がるからね」

 

 そっと離れます。離れたくありませんが、長々くっついてるとなにか誤解されてしまうかもしれません。

 

 いい香りでした。

 

「さっちゃんはなんだか、装備して学校に行きそうだなあ」

「まっさかー。いくら私だってそこまではしないぞー」

 

 疑わしい。

 結衣も私と同意見なのか、心配そうな顔をしています。

 

「ねえ琴葉ー。さっちゃん、最近もなにかしてるの? あれ、琴葉ー?」

「……あ、う。そうだな。……おとといは学校中の消火器をかき集めてサッカーボールでボウリングをしてた」

「一個も倒れなかったけどなー!」

「それは怒られそうだね……」

 

 うーむ。結衣がいるから今の学校に不満はないけど、それはそれとしてさっちゃんと一緒も魅力的だったなあ。

 

「私はそんな感じだなー。結衣の方はどうなんだ? 普段のななしぃ」

「私のことはいいのー?」

「だって結衣には謎ないもん!」

「えー?」

 

 ふうむ。私の方に矛先が向いたぞ。

 

「私か。それはもう品行方正で、勉強も体育も常にトップ。顔もかわいく、服のセンスもいい。まあパーフェクト小学生だよ」

「自分でそこまで言うか」

「で、実際どうなんだよ、結衣ー?」

「うーん……品行方正かどうかは……」

「じゃあ他はだいたい合ってるのかー?」

 

 おお、さっちゃんも私のことに興味津々だぞ。よーし結衣。思う存分私の魅力を説明してやってくれ!

 

「うん。わからないところはなんでも教えてくれるし、体育も凄いよ。跳び箱なんて八段跳べるし」

「なんだよー。なさそうだなーおもしろエピソード」

「うーん……あ、ちょっとだけなら。ななちゃん、フラフープがあんまり回せなかったんだ。それでも普通くらいだったんだけど、ななちゃんそれで満足しないから。次に体育でフラフープが出た時は同時に三つ回せるようになってて」

 

 ちょっと恥ずかしい。

 でもみんなに隠すことなどない。見て! 私を見て! 生まれたままの姿の私を見て!

 現に魔法使いであることもうちあけた。それもなぜか二度に渡って。

 まあその話は流れたけども。

 

「フラフープは、身体を左右ではなく前後に動かすのです」

「練習することか」

「まあ現実的な限界はあるとしても、可能な限りパーフェクトでありたい。……そんな気持ちを歌にしました。聴いてください。かわいいななしちゃんで、翼の折れたエンジェル」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「歌わないのかよ!」

 

 

 

 

「他にはないのか?」

 

 あ、続くんだ。落ちたのに。

 

「他ってー?」

「……ななしが普通にしている姿が思い浮かばん」

「そうかな? けっこう普通……あ、でも私以外の人には猫かぶってるかも」

「なに!?」

「ななしぃが……猫かぶってる!?」

 

 おおっ? なんだろう。なんか嬉しいぞ。

 

「だいたいいつも、丁寧な喋り方で」

「ほう」

「ほうほう」

「みんなさん付けで呼んで」

「さん付け!?」

「ななしがか!?」

 

 でもやっぱ恥ずかしいかも。

 

「でも自由な感じなのは変わらないかな」

「さっぱりわからん」

「でも猫かぶってるななしぃかー。ちょっと見てみたいなー」

 

 期待されてる? 琴葉にも目を向けると、こちらも興味ありげです。

 むむむ。……あいわかった。

 

「別に猫をかぶっているわけではありませんよ」

「おお!?」

「おお」

 

 この状態になると、表情に乏しくなります。その変化はぱっと見でわかるのでしょう。

 

「ただ、状況や相手によって露骨に態度を変えることに縛りを設けていないだけで」

「しばりをもうけ?」

「私は自由に生きる。自分の性格すら、自分の好きなように好きなだけ変える。縛りを設けるというのはその逆で、不自由を受け入れることです」

「……表情が違いすぎるぞ」

「省エネです」

 

 つまりは省エネモード。表情筋の働きも大きくカット。

 わりとどうでもいい相手を受け流す流法(モード)

 感情も省エネしてるから、感動も薄くなって普段使いには不向き。

 

「もう戻してもいいですか?」

「ダメだ」

「これはこれで面白いな」

「もうちょっと……」

「ふむ。私はかまいませんが……」

 

 あれ、意外と好評? でも、私はみんなとは子供らしく接して、子供らしい感性でみんなを感じたいのですが。

 まあ、それもまたよし。望んで縛られるのもまた自由でしょう。

 

「なんだか、ななちゃん……」

「ああ。いつもより……」

 

 三人が声を揃えて言います。

 

「かわいい!」

「えー……」

 

 想定していなかったことを言われてびっくりしましたが、私の明晰な頭脳はただちに答えを導き出しました。

 

 私、今キャラが立ってる。

 ギャップ。

 もともと黙っていればかわいい。

 

 そんな感じでしょう。

 確かに今の私は清楚系と言えなくもない。このモードだとなんとなく背筋も伸びるのでお嬢様感も漂うかもしれません。

 奇しくも今日の私は珍しくスカート。そのへんも加点対象でしょう。

 まあかわいいぶんにはいいんですが、それによるちやほやでの喜びもこのモードのせいで半減されてなんだかなという感じ。

 

「おしとやかな感じ!」

「なんだそのか弱そうな感じ!」

「まるで女の子だな」

 

 女の子ですが。

 そう褒められても複雑な思いです。このキャラ、好き好んで作り上げたわけではないですし。

 

 二度目の生。記憶を引き継いで。

 どう考えても、それは喜べるものではありません。最初は脳天気にヤッホイでしたが、まてよ?という感じのが頭を頭を過ると、その瞬間背筋を冷たいものが貫いて、私はちびるかと思いました。全身の毛穴が開き、小さな体の隅々までが恐怖で満たされ冷えていく。それからはもう悪い想像しか浮かびませんでした。こわくてこわくて、震えが止まらない日々。そんな中で、少しでも恐怖を感じないために生まれたのがこの私。おめでとう。そこから外面用にカスタマイズして今日(こんにち)に至る。

 そんな生まれの私を肯定されても、いろいろ割り切るのにあと三秒くらいかかります。

 

「照れますね」

 

 これからはたまに性格が変わるキャラになろう。




普段という字が元は不断だったと聞いて試しに「不断遣い」みたいに使ってみてたのを修正。
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