三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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第27話

 今日は楽器の練習。一日中やると決めた。

 今までも自分では頑張ってきたつもりだったけれど、ふと気になって練習時間を計算してみるとそうでもないことに気がついた。

 たとえば練習に最適な、カラーズ活動もオフなある日。なんとなくミシンを使えるようになっておこう、と雑巾を縫ってみたり、

 ミシンの構造ってどうなってるんだろうと思い足踏みミシンが無いか蜂ばあに訊きに行ったり、

 そこでタイガー計算機を見つけてしばらくいじったり、

 ふと焼き立てパンが食べたくなり自分でこねたり。

 出るわ出るわ、時間のロス。

 

 それが無くとも、そもそもが手広くやりすぎてて時間は足りてないのに。

 

 だから今日はギター一本槍。

 

「こう?」

「……こう」

 

 目の前の指さばきを、私の人並み外れぬ常人よりちょっと上くらいの動体視力はそれなりに見切れるが、指の動きという複雑な情報を記憶して模倣する特殊能力は残念ながら授からなかった。もしくはまだ覚醒していない。

 ギターだけはやるなあ、不出来な兄。

 

 ふーむ。もう少しうまくなれれば理解できる情報の量も増えるのであろうが、ちょいと今はスキル不足。

 まあできる範囲の見よう見まねで追いつこうとしてみる。

 

「……お」

 

 いい感じの音。

 いけたいけた。難しい部分だったけど、私にかかればちょろいもんだね。私が神だ。

 できるもんだね。うまくいかないの指がちっちゃいせいにしてたとこあったけど反省。

 

 今日は真面目にやって、経験値がぐんぐん上がった。

 

 

 次の日。

 

「あらあら、更科さん。ちゃんと復習してるみたいね」

「そう見えます?」

「ええ。上達もしてないみたいだけど、前のままよ」

「維持は得意なもんで」

 

 復習してない。楽器の習熟の維持特性。ありがたいね。

 この人は大村さん。ヴァイオリン教室のインストラクターをしている人。

 いや指南番? 違うな……。

 普通は先生と呼びますが、なんとなく反抗。

 たまにこういうレッスンにも来ています。

 

 

 またギター道場を挟み、今日はピアノのレッスン。こちらはふつーの民家。なんでも、昔なんかやっていたそうだ。

 もしもピアノが弾けたなら、俺ら東京さ行ぐだ。そんな思いでたまに来て頑張ってる。

 

「それじゃあ更科さん。この間の曲、聴かせてくれるかしら?」

「はい」

 

 清潔感のある部屋の中には立派なピアノがあって、壁にはいくつかのメダルや楯、トロフィーっぽいのが。ト音記号がちらほらあるのを見るに、それが何の賞であるか疑問の余地もない。具体的に何であるかでボケようかと思ったけどいいのは出ない。ボディビル辺りじゃだめか。

 

 曲はCLANNADから、渚。Key系も私の守備範囲。ただ旧作の記憶はどう頑張っても薄い。Airってプレイしたんだろうか、私。

 ゲーム曲ならUndertaleとかも良いのだけれど、そっちは難しい。なので自主練としてゆっくりめなのを選んだ。好きな曲で練習させてくれる柔軟な方でありがたい限りだ。

 とりあえずどうにか楽譜はこしらえたのだが、そう難しくないこの曲がうまく弾けないほど、年齢相応くらいに私はピアノが下手。ヴァイオリンの方がマシ。

 自分でも不思議だ。

 

「うーん。練習はしてなさそうね」

「最近チェロも始めちゃって」

 

 だから新しいことを始めるなと。

 でもスポーツにも興味あるのよねー。水泳とか。

 

 ピアノの師範、浅川さんはお若い四十代。もともと雰囲気が若かったが、お礼にマッサージをしている関係で、実年齢より実際一つだけ若い。通常より健康になったのも見た目や雰囲気に影響を与えた。四十代ともなれば、常にどっかしら悪いものだ。それが、ちょっとずつとかの調整ができない私の魔法によって一気に治った。

 不自然。

 

「けど、この間はトランペットって言ってたわ」

「あれもできる、これもできる、となったらもう、やらないのは損かなという貧乏性でして」

 

 止まると死ぬから。

 私の父親、どうやら楽器に関しては財布の紐ゆるいみたいね。

 でも通常の子育てにおいてはなんでもかんでもやらせると集中力がつかないよたぶん。

 

「うーん。もう少し絞ったほうがいいと思うけど……」

「大丈夫です。私、才能あるんで」

「ピアノ以外は?」

「まあ、はい」

 

 あるねえ、不向き。

 

 長めに特訓してもらった。

 

 

 

「あれ? ななちゃん、ピアノうまくなってる?」

「そうかい?」

 

 結衣よ。それはつまり、ななちゃんってピアノへただなーって、ずっと思ってたってことだよね。

 ……どうやらそうとう伸びる段階で停滞してたようだ。

 

「結衣。私ってもしかしてピアノの練習あんましてなかった?」

「え? うーん……練習しようとして、すぐさっちゃんと遊んでる感じかなあ」

「なるほどなるほど」

 

 確かに、思い出そうとするとさっちゃんの頭が膝の上に乗っている感触が蘇って、なでてるうちに楽しくなって来ちゃう自分が目に浮かぶよう。ははあん。さてはここ、練習に向かないな?

 でも、これはロスじゃないし……。どうしたものか。

 

「では、今日は頑張ります」

「うん」

 

 モードチェンジ、外面モード。このモードになれば、感情の起伏が半減。さっちゃんとかの誘惑にも負けないことでしょう。

 弾き始めてしばらくして、さっちゃんが私の膝に頭を預けました。

 

 

 

 なでなでなでなでなでなでなで。

 

「あははははは!」

「大人っぽくなってもそれは変わらないんだ……」

 

 

 なーで、なーで。

 ついに優しくなでるという技を習得。今までは顔に至るまでなで回していたからさっちゃんも笑っちゃってた。

 こうして優しくなでてあげれば、すやすやってくれました。寝顔かわいい。下腹部がきゅんきゅんしちゃいます。

 

 激しくない曲を選んで練習。

 

 竹取飛翔。

 

 ゲーム音楽と言えば東方は外せない。ただ、楽譜は簡単なのを。指が折れるから。

 

『らららーら ららららら らららーらら らららららー』

 

 おや、メールか。バイブにするの忘れてた。

 

「着信音、自分で歌ってるのか」

「島唄。沖縄の歌です」

 

 この世界には無いが。

 知っている曲がこちらに無くて、ラッキーこれでパクれると思う時と、聴けなくて残念と思うことがある。この曲は後者。

 ちゃんと再現したかったが渋い声でデイゴとかウージとかの方言を使う上野の小学生に説明がつかないので、今はらららでごまかしてる。

 

「ああ」

「どうしたの?」

「ホスト部が現段階のをYouTubeにアップしたから見てくれとのことですね」

「ほすとぶ?」

「たまにエンカウントする四人組です」

「あいつらホストなのか?」

「まだ本人たちには確認はしてません。かなりホストっぽいけど、確認してないから仮にそう呼んでるだけで」

 

 ようはバールのようなものだ。

 

「ちょっと前あいつらにバンドやらないかってけしかけたから、こうして経過報告が来たんだけど……さあてどんなかな」

 

 音量を小さくして、再生してみます。

 結衣と琴葉が私の両サイドに密着。……!

 

 いくつか渡した曲の中から彼らが選んだのは、ポルノグラフィティのメリッサだった。

 まるで閉店中のホストクラブのようなところで演奏する彼ら。うむ、最近始めたにしては悪くない。

 

「ヘタだな」

「ふふ、初心者だからね。けど、その下手さをうまくごまかしてる」

 

 多少やってたメンバーがカバーしてるよう。あとドラムうまい。

 できちゃうのかよお前。

 

「なにより、楽しそうなのがいい」

 

 ってのは好みの話だけどね。

 

「そういえば、私たちもバンドやるって話あったな」

「あれどうなったの?」

「準備はできてるんだよ。ただ、私から言い出すべきなのかリーダーに任せるべきなのか迷って」

「ななしぃはあれだなー。考えすぎだな」

「自覚はある」

 

 起こしちゃいましたか。

 

「じゃ、今度の日曜どう?」

 

 言われりゃ直す。かしこいので。

 今からどう? と言ってもよかったけれど、そうするとあんまり時間がないから日は改めた。

 

 そんな感じで日取りが確定しました。

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