三ツ星カラーズ転生もの(仮)   作:紅茶タルト

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この話の前にみんなを家に招いて楽器の練習の回を書きたかったけれどうまく行きませんでした。


第30話

「おめでとう!」

「おめでと結衣ー!」

「おめでとう」

「みんなありがとう!」

 

 今日は結衣の誕生日。略して結衣生日だ。

 結衣ハウスでのパーティーは家族とやるだろうから、私たちはアジトで一足先にお祝いだ。

 大きなケーキは後で食べるだろうし、買ってきたショートケーキと手作りマカロンとかを並べます。

 みんなのケーキにろうそくをたて、結衣にふーって消してもらいます。結衣の息がかかったケーキを食べられるという小技です。

 

 さっちゃんと琴葉がプレゼントを渡し終わって、私の番。しっかりラッピングした箱をテーブルに出します。

 

「ありがとー。なんだろう?」

「開ける前に、見て欲しいものがあるんだ」

 

 iPadを出して、みんなを集めて動画を再生します。

 

「これは去年の動画なんだけど」

 

 競馬場の映像が流れます。

 

『お待たせいたしました。第二レースの、出走馬と騎手、および馬体重と、その増減をお伝えします』

「競馬か……?」

 

 まずはパドック情報から。

 

『八番、メグロサンマ。四百七十七キロ。マイナス十(ふた)キロ。柳川亮太、五十二キロ。以上八頭だてをもちまして、第二レース、ななし様協賛、赤松結衣、七才の誕生日特別。サラ系、D(デー)クラス。距離千三百メーターレースを行います』

「…………ええー!?」

「あははははは!」

「なんだこれ!」

 

 去年からの仕込み。

 

『第二競争です。このレースは、個人協賛競争になっております。サラブレッド系、ディー級の千三百メートル戦、ななし様協賛。赤松結衣、七才の誕生日特別。メンバーは八頭です。それでは、協賛メッセージをご紹介します。

 

 このレースを見る頃には結衣は八才だけど、こっそりお祝いします。おめでとう!

 

 ななし様からの協賛です。協賛、ありがとうございました。赤松結衣様、七才のお誕生日おめでとうございます』

「なんでこっそりなの……?」

 

 あとは普通のレースが続きました。

 

「で、次なんだけど」

「まだあるの!?」

「さっき動画にしてきたばかり!」

 

 ネット配信って便利だね! 再生!

 

『お待たせいたしました。第五レースの、出走馬、騎手、および、馬体重と、その増減をご紹介します』

 

 紹介が済んで。

 

『以上、十頭立てをもちまして、第二レース、ななし様協賛、赤松結衣、八才の誕生日記念。サラ系、Cクラス、選抜馬、距離、千四百メーターレースを行います』

「こ、今年もやったんだ……」

「毎年やるよ」

 

『第二競争です。このレースは、個人協賛競争になっています。サラブレッド系C級四組、千四百メートル戦。ななし様協賛、赤松結衣、八才の誕生日記念。馬齢重量の、十頭で争われます。それでは、協賛メッセージ、ご紹介します。

 

 誕生日おめでとう。

 結衣のことが大好きです。ちゅっ!

 

 ななし様からの協賛です。先年に引き続きましての協賛、ありがとうございました。赤松結衣様、八才のお誕生日おめでとうございます』

 

「あれ、どうしたの結衣。表情硬いし、なんか呆れてるみたいな感じだよ」

「呆れてるよ!? どういう祝い方なの!」

「喜んでくれて私も嬉しいよ」

 

 あ、結衣の表情が"なんじゃこいつわ"という感じの、なんだかよくわからないものを見るような感じに。そうだろうね。だって自分でもよくわかんないし!

 

 レース終了。

 

「もー、ななちゃん。変なことしてー」

「あれー? これ、まだ続いてるぞー」

「えっ?」

『皆様、ウィナーズサークルのご注目ください。ただ今より、冠協賛。赤松結衣、八才の誕生日記念競争の、表彰式を行います』

「表彰式……?」

 

 表彰式っぽい曲がなります。

 

『優勝馬、ゴリラゴリラゴリラの騎手に対し、協賛いただいたななし様のお兄様より賞品および賞金八万円が授与されます』

「あ、お兄さ……八万円!?」

「……どれだけこれに金をかけたんだ」

「それはヒミツです」

 

 送り込んだ兄の旅費も含めるとなかなかの額。

 最近錬金術と魔法での金策の方法がいくつか生まれたので、今年は賞金と表彰式を追加できた! 金のかかった悪ふざけがアンロックされたわけだ。

 

『騎手の芹沢道幸様へ、ななし様のお兄様より今、賞品と賞金が贈られました』

 

 映像の中で、兄が騎手に渡したものの中に、小さな箱がある。結衣にも見覚えがあるだろう、ラッピングが施された箱です。

 

「と、言うわけで優勝騎手とおそろいのプレゼントです」

「そういうことだったの!?」

「今の全部前振りか!?」

「長い! あはははは!」

 

 開けると、中には金色の大きなメダルが。

 

「手作りの幸運のお守りだよ」

「……うん、ありがとう!」

 

 金運とか上がるよ。マジで。

 マジで。

 

 

 

 

 幸運のメダル。錬金術で作ったアイテムは正式名称――が、あるかどうかも――不明。金運を上げるアイテムは複数作れて、これと暇そうな兄が組み合わさり最強に見える。なにせ公営ギャンブルでも普通に儲かるのだから。

 サイコロ転がすなりなんなりして、運に任せて券を買う。それだけだ。

 なお公営ギャンブルによる収入は通常一時所得に分類され、控除は五十万円です。外れ馬券は経費として認められません。脱税したいね!

 

 だが私は既に羽振りがよくなってきてしまっているぞ。

 

 ああ、もうすぐ夏休みだ。できうることなら、旅行に招待したい。遠慮されそうなのが悲しい。

 いろんなことをして一緒に遊びたいからこそ、今稼いでいるのに。

 

 あと将来は母子家庭なさっちゃんの高校からの学費とかできれば出したい。まあ、そっちは頭を下げてでも受け取ってもらうとして。

 

 もうちょっとこう、羽振りがよくなっても問題のない……、

 

 ……! あるじゃないか、宝くじ!

 割に合わないイメージがあって考慮から外していたけれど、非課税でまとまった額が手に入り、怪しまれない。

 ロトなら毎週で、売り場だって選ばない。これは……いける!

 ところで、海外の宝くじってどうなってるんだろうか。こち亀に書いてあるとおり日本国内から買うのは違法だけど、海外で買う場合は……、

 

「なに調べてるの?」

「海外の宝くじ。なん百億円とか当たることがあるんだってさ」

「へー! 本当にそんなに当たるの?」

「実際に三億六千五百万ドル当たってるね。んー……三百億円くらいかな」

 

 円高だから。仮想通貨もいいけど、ドルの手堅さにも揺れる時期。

 

「そんなに!?」

「そんなにあったらダム買えるぞー」

「買ってどうする」

 

 買ってどうする。

 えーと、どれどれ。……うーん、三百億じゃ足りなそうだね。残念。

 

「でも当たっても税金とかめんどそう。日本の宝くじは非課税だけど、これはしっかり税金で持ってかれる。持ち帰った後も課税対象だし、夢がないねえ」

「結局いくら残るんだ?」

「まず、三十年分割か一括で支払い方法を選ぶ。一括だと六十二パーセントしかもらえない。でもだいたいみんな一括を選ぶから百八十六億円。更にここに三十パーセントくらいの税金がかかって百三十億円。日本では……これだけ大金だと四十五パーセント引かれるのかな。七十億円」

「ずいぶん減るなー」

「その計算合ってるのか?」

「さあ?」

 

 わからん。

 税理士がどれだけ頑張っても桁が下がることは止められなさそうだ。

 

「よし、決めた。ちょっとロト買ってくる」

「急だね」

「でももうちょっと調べたり占ったりしとこう」

「あ、ななちゃん占いできるんだ?」

「魔法使いだからね」

 

 iPadをどかし、タロー*1カードをテーブルに並べる。

 これも金運の上がる錬金術アイテムの一つだ。

 

 たぶん上がってると思う。金運。わかんにゃい。

 

 まあ実際になんらかのパワーがあるわけであるし、ふつーに占いとして使っても効果あるんじゃないかな、と使い方だけは覚えてある。

 占いを信じているわけではないから優先度が低く、今までは試しもしなかったが、うまく行けば面白い。世にはびこる占い師の全てが詐欺師か勘違いアホだとしても、私だけは本物かもしれないのだ。

 ええっと、ロト7を占うには……頼んだSiri。ふむ、大アルカナに、小アルカナから十六枚加えるのか。で、小アルカナに数字を割り当てる。よしやっていこう。

 

 八、二十二、三、十一、十二、……愚者。

 

 ふむ。

 シャッフルしてもっかいやってみると、一枚目で愚者が出た。

 ううん……。これを解釈すると……ブーストした金運でも一等は無理ってことかな。

 思わせぶりな結果が出たけど、三等で十分だよ。一等教えてくれてるんならありがたいけど。

 念の為もっかいやってみると、愚者。もっかい。もっかい。愚者しかでない。

 

「ふうむ……」

「何度やってもそのカードだな」

「このカードはフール。愚者のカードで、数で言えばゼロ。だから、一から三十七を占う時に出ると困る」

「だったら抜いておけばいいじゃないか」

「でもたぶん重要なカードなんだよ」

 

 確率の偏り。

 これは……。

 

「ならば奥の手」

 

 ポケットから布の袋を取り出す。その中から出てくるのは別のカードの束。

 花の絵が描かれた、四十八枚の謎のカードだ。

 これも錬金術アイテム。タロットもだけど、鍋の中から絵の描かれたカードの束がポンと出てきた時はとても気持ちが悪かった。

 

「これも占い?」

「たぶん」

 

 詳細不明。

 せめてわかりやすいように、出てきた束の上から順に数を書いてみたけど……。

 まあいい、やってみよう。タローと同様な感じで扱ってみる。

 ただなんとなくレベルを下げてロト6にしてみる。使うのは四十三までと、なんかよくわからないが種子と枯れた花。勘で入れた。

 三等でいいですよ。

 

 五、九、十六、四十三、十五、枯れた花。

 

「うーん」

 

 三等、なのかな。

 もう一枚引いてみると、種子。

 

「ふむ。行ってくる」

「もーしょーがないなー付き合おう!」

「お、さっちゃんも来る?」

 

 で、なんだかんだで全員で走る。

 楽しい。

 

「なーななしぃ。宝くじ売り場ってどこにあるんだ?」

「丸井の辺り」

「二つくらいあったな」

 

 まあ近い方。もしくは遠い方。いっぱい走りたい気持ちもあるから気分で。

 

 二つの売り場の両方が高額当選が出たことがある。そう書いてある。

 

「あった! こっちにはロト売ってるよ!」

「これかー!」

 

 先に行った方にロトが無かったから、結局両方回った。そういうものなのか。

 

「よーし。魔法使いの技を見せよう。お姉さん、スクラッチ十枚!」

「はいどうぞー。袋は選ぶ?」

「かたじけない。……これだ! みんな、削るの手伝って!」

 

 ごしごし。

 

「……はい出た! 五千円!」

「えええええ!?」

「マジか!」

「なんと!」

「あら、おめでとう」

 

 《吉凶占断(オーギュリィ)》。ごく近い未来に予定している行動の結果の良し悪しを知る。

 これを途中で何度か使っといたのだけれど……私はみんなに走りながらぶつぶつ呟く子と見られてるかもしれない。不安。

 なお一回の使用のコストとして、私のポシェットから五百円程度の高いお香が消える。

 

「これが魔法です」

「いや運だろ」

 

 相乗効果だよ。

 

「……あ!」

「どうしたの? さっちゃん」

「私らも買おう!」

「でもお小遣いないよー?」

「クオカードをおやじに売ればいい!」

「……あ! さっちゃん天才!」

 

 …………おお!

 銭湯の時の。確か千円ぶん。おやじに千円と替えてもらえば、二百円の宝くじが五枚は買える。おやじにも負担ないし、いい手だ。

 共同資金で宝くじ。すごく仲間って感じがする。

 

「よーし! みんな。これより、カラーズ資金を増やす作戦を開始します!」

「おー!」

 

 

 てなわけで。

 

「おやじ! 千円と替えてくれ!」

「おお? いいけどよ、なにか買うのか?」

「宝くじだよ」

「ははあ。そりゃ夢があっていいな! だけどよ、あんなもんそうそう当たるもんじゃねえぜぇ?」

「大丈夫! ななちゃんが占いできるから!」

「ほお?」

 

 おやじが私に視線を向ける。へんてこメガネごしに。

 ふふふ、私は逃げも隠れもしないぞ!

 

「おやじよ。お前は私の力を信じていないな? よろしい。運とかを試せるものを持ってまいれ!」

 

 どんな無茶振りが来ようと、無為無策で受け止める!

 

「なんだその口調。別に疑っちゃいねえが……そうだ。いいのがあるぜ!」

 

 待ってろ、と言って店の中へ引っ込んだおやじ。このままこっそり帰ったらと考えるだけで胸が高鳴るけれど、今はその時ではない。

 そうだ、隠れるだけなら、と思ったけどおやじがそれを持って来た。

 

 ……そ、それは! その緑色の、プラスチックのボディは!

 

「どうだ。こないだ実家行ったら見つけてよぉ。お前ら知らねえだろ? こいつはなあ」

「スーパーイタイワニー! スーパーイタイワニーじゃないか!」

「……何才だ!」

 

 ワニ型のおもちゃ。口を開けると下顎に十三本の歯があり、それを押し込んでいく。運悪くハズレを押してしまうと、口が閉じて指を噛まれるというもの。歯茎に歯を押し込まれるのだから確かにそれはスーパー痛いだろうに、最大十二本まで許してくれるのだから、スーパー優しいワニだ。

 なお実際のワニは歯に触れただけで噛む。絶対に。

 

「なるほど。奥でやろう!」

「どんなのなんだ?」

「黒ひげみたいなやつ!」

 

 黒ひげは百均でも売ってるからみんな知ってますね。

 ところであれ、もともとは飛び出させた人が勝ちなんだそうですよ。

 

 店のカウンターにワニが置かれる。よおし。

 

「えいっ」

 

 ぽちぽちぽちぽちぽちぽち。六個ほど押してやった。勝算なしで。

 

「おお! ……って、占ってねえじゃねえか」

「こっからだよ」

 

 花カードを取り出し、その中から七までを抜いて並べます。

 

「残った歯のうち、左から何番目を引くか……これで決める」

「ほほう。よし、見せてくれよ、お前の力」

 

 ふふ。

 ぽち、ぽち、ぽち、ぽち、ぽち。

 

「残り二個」

「おお! こりゃすげえ……やるじゃねえか!」

「おー!」

「おおー!」

「やるな、ななし」

「ふふん」

 

 最後の一つ。……これが!

 

「あいたー!?」

 

 ばちーん。

 

「あはははは!」

「ななちゃん……」

「くぷぷ……」

 

 なんでだよお。

 

「ふっ。これが私の実力だ」

「……まあ、すげぇのはすげえよ」

 

 パーフェクトではないようだ。もうちょっと鍛えねば。

 

「この力があれば三等はいけるね」

「三等かよ。……けど、お前ならひょっとするかもな」

 

 そんなわけでおやじを倒した。

 特に意味はないが。

 

 

 

「五、九、十六、四十三、十五。……あとなんにする?」

「四だろ」

「四だね」

「四だな!」

「それもそーか」

 

 四、と。

 さて、次は。

 

「宝くじ四枚お願いします!」

「はーい。好きなの選んでね」

 

 こういう時かわいいと得だ。他の客の時こんなにやんないだろっていう量のくじを用意して選ばせてくれる。

 それぞれ一枚ずつ選びます。うーん、これだ!

 

「これ!」

「これだ!」

「これだー!」

 

 決定!

 

「袋いる?」

「いるいるー。ありがとお姉さん」

 

 とりあえずロト6と私のくじを入れて、結衣に渡します。結衣はみんなのを集めて袋に入れます。うむうむ。

 これで、当たっても外れても誰のか分からなくなった。

 そうしてくれるとありがたい。だって自分のだけ外れた琴葉がうがーと頭を抱える姿を見たいようで見たくないから。……見たくないから。

 

 さっちゃんのおかげでいい結果になりました。

 これなら、どの券が当たってもカラーズ資金。

 外れたらどうしたものかですが。

 

 木曜日が楽しみ。

 

 

 

*1
タロット




この話を書いた時点ではカラーズに誕生日の設定はなし。のちにTwitterでだいたいの時期を投票したりで決定。
ボツになった釣りの回で兄とは面識ある設定。
歳の字は中学で学ぶので、才表記。
参考にした協賛レースの競馬場は複数なので整合性はちょっとあれ。ある競馬場の協賛での副賞は現金だめ。ある競馬場では個人協賛は表彰式なし。なので混ぜた。ベースは高知。ただし高知の場合レース名に協賛や特別が必要。荒尾が使いやすそうだったけど、廃止済みなのでデータが足りない。
副賞(賞品)は馬主・調教師・騎手・厩務員の四人に用意しなければならないところや、協賛金の九割が四人に分けられる、みたいな制度があったりする。八万円は二万円ずつ分けられたかもしれない。
Tarotの発音はたろー とか たぁろー。その後にカードと付くのかは知らない。とりあえず日本においてはタロットカードでよし。タローとこだわるのも自由。
現在は上野公園にも宝くじ売り場があるけど、Google Earthのストリートビューの2014年の画像に見当たらなかった。
黒ひげはもともと飛び出させると勝ち。箱にそう書いてあった。でもなんか当時も逆の認識が多かったのか事前にどうしたら勝ちか決めてね、という感じになって、最近は飛び出させたら負けでだいたい統一されてると思う。
ナンバーズがいつからあるのかは調べてない。
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