三ツ星カラーズ転生もの(仮) 作:紅茶タルト
ざざー。
ざざー。
まるで箱などの中で小豆を転がすような音ですが、私の目的地はここではありません。あとちょっと向こう。
「こんちはー」
「こんにちは」
先人に挨拶をし、ちょっと離れたところで準備を始めます。
その完成形は、救命胴衣を装備し、釣り竿を構え、クーラーボックスに腰掛け、スナフキン帽を被ったかわいい私。
私を見つけたようで、さっそく海鳥がやってきた。
魚を引きつける魔法もないではないが、とりあえず普通にやる。幸い運が良く釣れてくれたので、その首を折って海鳥へ向かって投げる。釣っては折りそして投げ、そんなことを繰り返す。
美味しそうなのだけクーラーボックスに入れるが、家族で消費するにしても限界があり、そんなに多くは持って帰らない。
とりあえず、魚を殺す。時間が許す限り、電車で海まで来てなるべく殺す。
必要な前振り。必要な、作業。
別に苦ではない。ただ自由ではないだけで。
満腹になった鳥が去って、交代のように猫がやって来て、釣果を持っていく。
よいよい。私はかまわんよ。
たぶん青魚を食べすぎると猫の身体にはよくないだろうが、私はかまわない。
どうせここは上野じゃない。
「む、さらば」
フグはリリース。
解毒の魔法はあるけれど、確実ではないし、かわいいネズミを使って確認してまで食べるほどの熱意はない。
タイとか釣れればいいんだけどなー。
猫も鳥もいなくなってしまい、処分のあてがなくなった。
そろそろいいかな。
クーラーボックスの栓を開けると、血に染まった海水がどばどば流れ出る。便利なクーラーボックス。
ちょちょいとナイフをエラのとこの血管にサクーっとやって海水の中に放り込むと血抜きができる。
魚屋に教わった。
「おさきに」
「はいはい」
まだ釣ってる人に挨拶して、その場を去ります。
この前振りを始めた時、一人で釣りしている子供にツッコミを入れる正しい大人がいたら面倒だなあと憂いがあったけれど、いまんとこ大丈夫。
物陰で《
あんまり知らない場所に転移しようとすると失敗して大ダメージを負う確率が発生するので、家に帰るだけの魔法。海までは電車で来た。
低確率で多少場所がずれるので、《
さすがに海釣りルックでただいまは家族が驚きすぎるから。
包丁を魚の脳にぶっ刺して破壊し、神経にワイヤーを挿し込んで掻き回す。これをやると、血抜きは済んでるのに魚がびくんびくんする。不思議。
こうすることにより神経がのちのち旨味に変わるエネルギーを消費せず、あとあと美味しくなるそうな。
そうなるまで冷蔵庫で熟成させる必要がある。エラと内臓取って水気取って腹にクッキングペーパー詰めてビニール袋に詰めて冷蔵庫だ。
というのが魚屋から聞いたやり方。その通りにやっている。
自分でも調べてはみたけれど、こうするのがいい。いやこっちのがいい。と意見がバラバラで混乱したり、もっと美味さを目指すなら――
一晩生かして休ませる。
柔らかいマットの上で作業。
魚種ごとに別の熟成期間。
なんなら数日の熟成。
際限なく面倒になっていったりするから魚屋を信じることにした。
極まってくると熟成サバの刺し身とかできるようだけど、おっかないし魚屋になりたいわけじゃない。
「あら。今日はお魚?」
「いいや。あさって」
今日はチーズin豆腐ハンバーグ。
カラーズアジトに来てみたけど、みんなだらだらしてた。
演奏の練習でもするかな。今日はポータブルの電子キーボードを持って来たので、これで練習。でかいやつだから、琴葉もちらっと見た。
まずシュタゲのBelieve Meを。
「悲しい曲やめてよお」
結衣は楽しそうな本を読んでいた。
頷いて返し、ようこそジャパリパークへ。ゆっくり、ちょくちょくミスりながら。
OKだった。次、情熱大陸。弾ける部分だけ。
FFから、ビッグブリッヂの死闘。更に闘う者達。
また悲しい曲を弾いたらどうなるかなあといたずら心が湧き上がるけれど、読んでる時に邪魔されたくないよね。
「ななしぃ、トレイターって弾けるか?」
「ああ、あれね。やってやれないことはない」
ちょっと前のアニメのOPだ。前の世界には無い作品だね。
ストーリーは、平行世界の地球から侵略者が。そうせざるを得ない理由があっての侵略で、同じ理由によりむこうの地球はかなり纏まりを持って侵攻してくる。纏まりのないこちら側の地球はかなり圧されたが、遠慮なく核を使う(作中で核だという明言はなし)。直接的な侵略の理由は食糧難だったので、その後交渉で終戦。次点の理由は食糧難の原因でもある地球の寒冷化であり、暖かい土地が欲しかったのだそうだ。寒さで家畜が死ぬし、そのうち蜂が絶滅しそうだしで切羽詰まっていた。
しかし、世界を越えて侵略するくらいなのだからそれなりに技術はあるし、未知の物質もあり、これが核融合炉に使えそう。なんだかんだ協力して電気で寒さをごまかしつつあちらを温暖化させる研究を進めることにというエンド。
再現したいと思っている作品と似たのがあったらパクりがバレるというのに備え、こちらの世界の作品もそれなりに目を通している。
評判はそこそこと言ったところだが、OPが良かった。アニメよりも曲の方が有名かも。
私も好きだからまあ、なんとかなるだろう。
「やるなー。どう弾くんだ?」
「よしよし。まずドはどれかわかる?」
「これだろー? わかるさー。授業でやったからな!」
「うん。まずこの曲のサビの部分は――」
見といて良かった。
…………さっちゃんあの作品わかるんか?
「でも平行世界ってほんとにあるのかなー?」
「理屈上あるんじゃないか、と言われてはいる」
「あるのか」
「うーん……」
少し考え、説明することにする。
ホワイトボードを用い、
「まず、二重スリット実験というのがあって……」
「というのが多世界解釈。けど、注意してほしいのはこれが解釈だってこと。そもそもコペンハーゲン解釈の他にも別の解釈はあるわけだから、あるんじゃないかなー? でもないかもよー、てな感じになる」
「なんだー、はっきりしないのかー。でもあるかもしれないんだな!」
「ただ、あったとしてもなんかできるわけじゃないみたいだよ。アニメだとダークマターを登場させて解決させてたけど」
「ダークマターってー?」
「それはね」
シュレディンガーの猫は思考実験だとちゃんと結衣に説明した。死んだ猫はいないよ。
説明すんのってけっこう面白い。
今度は"様々な製塩"。"ピザの成り立ちから現在まで"。"恒星の死とその後"の三本をぶつけてみよう。
どんくらい理解できるかはともかくとして、きっと楽しいぞ。
琴葉はゲーム。結衣は本。さっちゃんにやることがなくて困る。アジトでいつもだらーっとしてるんだろうか。