異聞帯がロスリックだった件   作:理力99奔流スナイパー

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いきなりだけどブラボをクトゥルフで当て嵌めると

月の魔物=這いよる混沌

オドン=ノーデンス

ゴース=クトゥルフ

って感じかな? アメンボは落とし子らしいし、アザトースの落とし子? エブタソや乳母とかは何に当てはまるのかな?

正直クトゥルフ神話とかウルトラマンティガで初めて知ったくらい詳しくないからよう分からんのよね……

※それと各話のタイトルを一部変更しました。


狩人なるもの

 ◎

 

 

「__最悪だ」

 

 抉れた肩を押さえ、千切れかけた足を引き摺りながら必死で通路を進む。

 

「くそっ……何なんだ、あの化け物は……?」

 

 ロシアで見た魔獣が可愛く見える。悪態を付きながらカドックはここが神代よりも遥か太古の世界。火の時代であるということを再認識した。

 

 あの怪物、“不死院のデーモン”を視認した瞬間、彼が取った行動は逃走だった。

 

 しかし、背後の扉は既に閉まっており、それに絶望する隙もなく視界が上下逆さまになって宙を舞った。地面に叩き付けられ、尋常でない痛みによって自分があの怪物の棍棒で殴り飛ばされたのだと理解する。

 

 そして、幸運にも視界に入った壁際に小さな入口があるのを見つけた。

 

 当然、カドックは駆けた。怪物の猛攻を潜り抜け、全速力でのたうち回りながら__。

 

「畜生……」

 

 そうして、カドックは怪物から逃げ切った。しかし、普通ならば動くことすらままならない程の大怪我を負ってしまう。

 

 治癒魔術は既に施したが、気休めにしかならない。あちこちが複雑骨折しているが、一応は五体満足だ。これだけの怪我で済んだのはカドック自身が以前よりも強固な肉体を得ているからだろう。

 

「ソウルとの同化……だったか? ふざけんなよ、マーリン。確かに多少は強くなってるが、これじゃあの化け物には到底敵わないぞ……」

 

 本能でカドックは理解していた。アレは現代や神代の基準で言えばかなり高位の幻想種であるがこの火の時代においては大したことのない生物なのだと。

 

 故に、ここで心折れかけるのは、当然の帰結だった。そもそもの話、カドックはマーリンに言われるがままにロードランを巡礼するつもりなどない。

 

「だけど__僕は生きる。生き延びなければならない」

 

 この不死院に残り続けても朽ち果てるだけだ。ならば先に進むしかない。

 

 それこそが、カドックの今の目的であり、尚も足掻き続ける理由であった。

 

「……ん? あれは、何だ?」

 

 そして、そんな時だった。彼は遂に見つけた。小さな本当に小さな灯りを__。

 

「……篝火?」

 

 そう、それは螺旋状の剣が突き刺さった、遺骨を燃料としてメラメラと燃える“篝火”だった。

 

 まるで誘われ、惹かれるようにカドックはそれへと手を伸ばす__。

 

BONFIRE LIT

 

 __さあ、旅の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__問おう、お前が私のマスターか?」

 

 その場に居た誰もが驚愕し、硬直してしまう。

 

 光が晴れると、そこには漆黒なコートを纏った、異様な風貌の男が立っていた。

 

「……ふむ、即興にしてはなかなか良い出来だ。出力は大幅に低下しているが、これくらいの器ならば充分に使えるだろう」

 

 周囲の様子など気にする素振りすら見せずに男は自分の姿を確かめるように身体を触り、コキコキと首を鳴らす。その目はまるで昔を懐かしむようでもあった。

 

「えっと、その……誰、ですか?」

 

 ハッと我に返った立香が問いかける。

 

「名はとうに忘れた。与えられた真名は“夢の狩人”、或いは“月香の狩人”だが……単に狩人と呼ぶといい。マスター」

 

「あっ、えと、よろしく……狩人、さん……? マスターって私のこと?」

 

 戸惑う立香。当然だろう。彼女は召喚などした覚えがない。しかし、彼はどうやら己をマスターと認識しているようだ。

 

「ああ、その通りだ。人理の守り手よ」

 

「けど私は召喚してないよ?」

 

「そういう手間は省かせてもらった。確かめてみるといい、間違いなくお前がマスターだ」

 

「ちょっと待ってくれ。そんなはずは……何だって!?」

 

 するとモニターを確認したダヴィンチが大声をあげる。

 

「ど、どうしたのかね?」

 

「……信じ難いが、確かに彼は正規に召喚されたカルデアのサーヴァントとして登録されているよ」

 

「何だと……!?」

 

「けど一体どうやって……」

 

「簡単な話だ。ただシステムに干渉し、ただ魔力を肩代わりし、ただパスを繋いだだけに過ぎない」

 

「なっ……そんなことが……」

 

「__可能だ。少なくとも私にはそれだけの力がある」

 

「ほう……それは興味深いな」

 

 淡々と告げる男にホームズが好奇の視線を向ける。

 

「フォーリナー……と、言ったね? それが君のクラスで間違いないかね?」

 

「ああ。そのクラスこそ、今の私には相応しい」

 

 __降臨者(フォーリナー)

 

 それは外宇宙、もしくは別次元より飛来した存在を根ざすサーヴァントクラス。

 

 地球、更に言えばその一円に類する内的宇宙に連なる真理から外れた、異邦から呼び寄せられた存在に、後天的な理由で縁深くなった英霊。“世界観を乱す者”とも形容される。

 

 アビゲイル・ウィリアムズや葛飾北斎、楊貴妃……かつてのカルデアにもそのクラスを持つサーヴァントは何人か存在し、そのどれもが強大な力を有していた。

 

「知らぬ訳ではあるまい? 召喚に際してお前たちの記録も幾つか閲覧した。シャーロック・ホームズ」

 

「! ……成程。既に私のことも把握済みか。しかし、フォーリナーのクラスならば納得だ。この星の領域外の存在。それも私の知る者たちよりもずっとその権能を使いこなしているように見える。システムに干渉し、魔力すらも自前で召喚し、更には感知されずにパスまで繋ぐ。そのような単独顕現紛いな芸当、普通ならば罷り通るはずがない」

 

「そういうことだ。理解が早くて助かる」

 

 男……フォーリナーがホームズを見据える。枯れた羽が特徴的な帽子を深く被っているのに加えてマスクで口元を隠しているためその表情を読み取ることは出来ないが、その瞳はまるで深淵を覗いているかのように光が無く、そして鋭かった。

 

 おおよそ真っ当な英霊ではない。相対してホームズは目の前の男の異常性を充分に理解する。

 

「それで、現界した理由は?」

 

「__目的はただ一つ。“狩り”だ」

 

 さも当然のように、フォーリナーは答える。

 

「狩り……? ふむ、君は自らを“狩人”と名乗っていたね。具体的には何を狩るんだい?」

 

「……主に“獣”、そして忌々しい“上位者”共だ」

 

「上位者、だと?」

 

 フォーリナーの発した単語にホームズは耳をぴくりと動かす。それは確かに聞き覚えがあった。

 

「失礼。その上位者というのは、もしや今回の異変の黒幕……“異星の神”のことかね?」

 

 そう、あのエルデン・ヴィンハイムは異星の神のことをそう呼んでいた。

 

「ご明察だ。あのタコかも虫かも分からぬ気色の悪い汚物を狩り殺す。ついでにその他の(ゴミ)も駆逐する。それこそが、今回の私の使命だ」

 

 淡々としながらもそこには確かに憎悪と憤怒があった。どうやらこの男は“異星の神”に対して並々ならぬ因縁があるようだ。

 

 推測はしていたが、もしや今回の黒幕であるアレもまた外宇宙ないし別次元が来訪した存在なのだろうか? 

 

 少なくとも“抑止力”が働いている時点でそれは違うと否定したいが、ホームズには気になることがあった。しかし、それはフォーリナーの返答次第ではこれからの戦いが最悪の展開となるものだった。

 

「成程……ところで君は先程上位者“共”、と言っていた。つまりそれは“異星の神”単体を指す呼び名ではないようだが……」

 

「ん? ああ、当然だろう」

 

 恐る恐ると問えば、フォーリナーはあっさりとそう返す。まるで何を今更とばかりに。

 

「ッ……それはつまり、異星の神のような存在全般を指す呼び名ということか?」

 

「まあ、そんなところだ。外なる悪夢から来た者、遥か高次元の星界から来た者、単に宇宙から来た者……その分類は実に大雑把だが、共通するのは我らが住まう世界の領域外から出現した人智を越えた存在だということだ。そして、皆等しく狩るべき汚物なのには変わりなく、どこまでも下劣でくだらない生き物だ。穢らわしい虫みたいなものだよ」

 

「__そんなものが、以前にもこの星に?」

 

 かの小説家が生み出した架空の神話。それは天文学的な確率で言い当てた現実だった。それと同じようなことが、まさか地球上で発生していたのではないか。

 

「そうだ。ずっと昔から、な」

 

 そんな突拍子もない仮説。杞憂であってほしいそれをホームズが問い掛ければフォーリナーは意図も簡単に絶望的な真実を突き付ける。

 

 人理漂白などという未曾有の災厄を行えるような存在が、複数居るというのだ。これにはホームズも冷や汗を掻く。

 

「だが、安心したまえ。地上に蔓延っていた連中はもう全員殺した。地下を探せばまだ居るだろうが……まあ、もう目覚めることはない」

 

 そして、フォーリナーは何食わぬ顔でそう言い、その最悪の想定は覆される。

 

「殺した、だと?」

 

 一瞬、怪訝な表情を浮かべるホームズだったが、それが虚言や戯言ではないということを彼の慧眼が訴えていた。

 

「ああ。奴が仲間を呼ばぬ限りは、お前たちの言う異星の神とやらを殺せば、再び“上位者”はこの地球から駆逐される」

 

「……仲間を呼ばれた場合、どうなる?」

 

「無論、皆殺しだ。私が狩ると決めた以上、その結果は絶対に覆らない。絶対にだ」

 

 ドス黒い殺意。神霊と対峙しているような威圧感がホームズたちを襲う。周囲を一瞥すればゴルドルフやカルデアスタッフたちは完全に怖じ気づいていた。一見平静を保っているように見える立香とマシュは流石と言えよう。

 

「……まあ、要するに私とお前たちカルデアは共通する目的を持つ同志という訳だ」

 

「ふむ、そうなるね。だから手を貸そうと思い至ったと?」

 

「ああ。私が“上位者”を狩り、お前たちが人理を救う。こういうのを確かWin-Winな関係と言うのだろう?」

 

 そう言ってフォーリナーは再び立香へ視線を送り、その風貌とは裏腹に綺麗な一礼を行う。対する彼女は話へついて行けず、困惑している様子だった。

 

「マスターよ、名は何と言う?」

 

「……藤丸、立香」

 

「では、フジマル・リツカよ。今この時を以てお前は我が(マスター)であり、私はお前の単なる走狗、正しく従僕(サーヴァント)である。存分に使い、狩らせたまえよ」

 

「う、うん……分かった。よろしく、フォーリナー」

 

 あまり物動じない性格の立香だが、今回ばかりはあまりの異常事態に動揺を隠せずに居た。加えて、どうにもフォーリナーに対して苦手意識を抱いたようだ。数多の英霊と心を通わせてきた彼女としては珍しい。

 

『__貴公こそが、我らの敵に相応しい』

 

 理由は単純なもの。彼のその眼が、あのエルデン・ヴィンハイムのものと酷似していたのだ。

 

 瞳の色やその形は全く違うが、その人ならざる異様な視線は間違いなく、あの時あの瞬間に対峙した彼と瓜二つだった。

 

「……さて、早速だが危機的な状況にあるようだな。私は何を狩ればいい? 何を殺せばいい?」

 

 そして、フォーリナーは命令を求める。

 

 待ち望んだ新戦力。しかし、それは全くイレギュラーであり、信用出来るのかも怪しい正体不明のサーヴァント。不安の色を隠せない一同であるが、後に彼らは思い知ることになる。

 

 ヤーナムの“狩り”というものを__。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __一方その頃。

 

「ほう……カルデアとやらが攻め入るには些か早過ぎるとは思っていたが、あの大砲男はこれまた随分と面白い輩を連れてきたな」

 

 雪の女神が住まう居城にて。無謀にも大砲を担ぐ弓兵と共に真正面から攻め入った輩と対峙した騎士が、愉快そうに笑う。

 

 あの弓兵だけならば自身が出向くまでもなく、戦乙女たちだけで事足りるだろう。しかし、もう一人の新たな侵入者はそうも行かなかったようでセイバーが待ち構える、その部屋にまで到達してしまった。

 

「………………」

 

 薄く笑う翁の仮面が、ただ無言で騎士を見据える。見たところ外傷は無い。どうやら無傷でここまで突破してきたようだ。

 

 一目見た瞬間から、騎士には理解出来ていた。この者は、此度の召喚において出会った誰よりも強者であると__。

 

 故に、一切の油断無く愛用の直剣を構える。

 

「奇妙なソウルをしている……何者だ? 貴公」

 

「__ミラのルカティエルです」

 

 騎士の問いに、仮面の剣士はそう名乗ると胸に手を当て、優雅な一礼をする。

 

 それ即ち、開戦礼。騎士は目を見開く。それは、その姿は、とても、とても懐かしい光景だった。

 

「ク、ククッ……ハハッ……ああ、そうか、ミラのルカティエルか。忘れるまで覚えておこう……生憎とこちらに名乗る名などなくてな」

 

 対する騎士もまた、一礼する。

 

 これから殺し合う者たちが行うにはあまりにも場違いな動作。けれども、きっと、多くの者たちにとっては見慣れた光景であり、常識であった。

 

「__では、殺ろうか」

 

 そして、騎士はすぐにその声質を一変させ、底冷えする幕開けの言葉を告げると共に目にも止まらぬ速さで接近して直剣を振るい、仮面の剣士は円盾でそれを防ぐ。

 

 __ここに、戦いの火蓋が切られた。




挨拶は基本。古事記にもそう書いてある。
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