異聞帯がロスリックだった件   作:理力99奔流スナイパー

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パイセンも水着かぁ……増えてる!? 

エルデンくんも海でバカンスしたいけどなぁーなぁー(なお足が宙に浮いた瞬間溺死する模様




カルデアと花園の少女

 ◎

 

 __不死。

 

 そう呼ばれる存在は多く、それらを打倒する所謂不死殺しの逸話は多くの神話や物語で残っている。

 

 けれど、殺されたという時点で、それは不死ではなく、単に死にづらい生き物に過ぎないのではないか。つまりは人々が不死と誤認していただけの紛い物だということだ。

 

 では、本物の不死とは何か。古い時代、ダークリングを身に宿す不死人は幾度でも死んで甦る、正真正銘のアンデッドだった。

 

 彼らの肉体は不朽であり、その魂は不滅である。

 

 霧に覆われた世界を支配していた朽ちぬ古竜たちは死の概念すら持たぬ生物を超越した正しく不滅に等しい存在だったが、それは彼らが住まう世界そのものが灰色だったからであり、差異がもたらされ、生命という概念が生まれてしまってからは不滅では無かった。

 

 生命ある世界では、古竜もまたその法則に従い、生命を持つ者、即ち生き物になる他無く、そして生命は彼らにとって猛毒であり、多くが生きたまま腐るかまたは貪食なる異形と成り果て、その末裔である飛竜や蛇もまた一個の生命体に過ぎない存在にまで落ちぶれた。

 

 結論から言えば、この世に不死の生命体など存在しない。死の概念を持たぬ者もまた抜け道次第で滅ぼせてしまう。

 

 不死とは何も死なないというだけではない。では、実際に死を迎え、しかし自力で甦ることが可能な不死人はどうか? あれこそ本物の不死と言えるのではないか。

 

 彼らを差別し、迫害する多くの者たちは不死人を無力化する方法を考え、編み出してきた。

 

 牢へ入れ、永久に幽閉する。血を抜き、埋葬する。全身を焼いてしまう。etc……etc……けれども誰もその復活を遅らせることは出来ても阻止することは出来ず、だからこそ人々は彼らを恐れ、より強く迫害した。

 

 が、しかし__そんな不死人にも“死”は存在する。それは肉体的な死ではなく、精神的なもの。即ち、理性無くソウルを貪り喰らうだけの獣、“亡者”と成り果てることだ。

 

 魂の物質化。数多の魔術師が追い求める第三魔法。不死人たちの復活の原理はそれに酷似するが、あまりにも不完全なものであった。

 

 かつて、闇から生まれた幾匹かが“はじまりの火”から強大なソウルの力を見出だした。

 

 最初の死者、ニトは差異を生み出したその熱から生命の死を操る力を__。

 

 イザリスの魔女は、世界を照らすその光から嵐の如き炎の魔術を__。

 

 太陽の光の王グウィンは、その純粋なる力から岩のウロコをも穿つ雷を__。

 

 そして、誰も知らぬ小人が見出だした暗い魂。はじまりの火の燃料となる薪そのもの。三柱が見出だした王の魂とは違い、暗闇の中でこそ輝くその力を、彼らは恐れた。

 

 完全なる不死というのは何よりも恐ろしい存在と言えよう。例え脆弱な人間でも無限に鍛え、無限に闘い続けることで無限に強くなり、やがては巨人を、竜を、神すらも殺すことが可能なのだから。

 

 故に、神々は真実を隠し、偽りの名誉を与えた。最初の死者が寿命と死を与えた。その暗い魂が枯れ果てるのをずっと待ち、そして人の不死性は歪められ、呪いとなった。

 

 __それが亡者だ。

 

 死に続け、精神を磨り減らし、自らの記憶を失い、生きる気力さえも無くなっていく。

 

 やがて完全に心折れた時、亡者と化す。ただ本能のままにソウルを求め、そしていつか完全に動かなくなり、物質化した魂と成り果ててしまう。

 

 しかし、逆に言えば心が折れぬ限り完全な亡者にはならず、永遠に生き続ける。

 

 つまりこの先、諦めない心が必要だ。

 

「__ここか」

 

 胸に火の封。椎骨に枷。

 

 神々の施したそれは神々が滅びた後も残り続けた。人々は終ぞその真実に気付くことすら出来ず、遂には何者にも優るその不死性を失い、定命の生き物へと成り下がった。

 

 けれど、変わらぬことがあるとするならば__。

 

「やるしか……やるしか、ないんだ……!」

 

 一人の少年が、高台に立つ。

 

 こちらを見上げる異形の巨漢を前に、少年は恐怖を振り払い、高く跳躍して二階から飛び降りる。

 

「う、うおおおおおおおお……!」

 

 そして、その手に握る鉄の直剣(ロングソード)を異形の頭部へと突き刺した。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️__!!」

 

 けたましい悲鳴が、響き渡る。

 

 心折れぬ限り、彼は止まらず、諦めない。例えいくら変わり果てようと、その不屈の精神は失われず、その身に宿す者はいつの時代でも必ず現れるだろう。

 

 あの不死のように__。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 鮮血が、飛び散る。

 

 今日という日を、北欧異聞帯に住まう巨人種たちは忘れることはないだろう。

 

 突如として行われた大虐殺。数刻も経たぬ内に千を越える同胞たちが殺戮された。

 

 しかも、その犯人はたった一人の、小さきヒトだった。

 

 取るに足らない、単なる食糧に過ぎないと思っていた種族の一個体が、自分たちの天敵だとは誰も思うまい。

 

『こんにちは__ミラのルカティエルです』

 

 その名乗りと共に、殺戮劇は開幕した。

 

 あまりにも最適化された動き。酷薄な笑みを浮かべた翁の仮面で顔を隠した剣士に、反応も出来ぬまま全身を切り刻まれた。

 

 多数で取り囲んでも、掠り傷一つ負わせることは出来ない。まるで殺し慣れているかのように、仮面の剣士は巨人を一匹一匹確実に殺していった。

 

 巨人種たちは戦慄し、思い出した。

 

 長らく忘れていた、狩られる恐怖という感情を__。

 

「匂い立つなぁ……」

 

 そして、今この瞬間。仮面の剣士が女王の城へ向かったことで一時の平穏が訪れたと思い込んでいた巨人、山の巨人と呼ばれるその個体は再び恐怖することになる。

 

 偶然にも見つけた小さきヒトの子。本能のままに山の巨人は群れを成し、共に居た霜の巨人たちと共に無力な獲物を踏み潰さんとし__奴は現れた。

 

 血に塗れた黒ずくめの死神。気が付けば、傍らに居たはずの同胞の姿は無く、ズタズタに切り刻まれていた肉塊だけがあった。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️__!!」

 

 半ば恐慌状態になった山の巨人は雄叫びをあげながらその手に持つ巨大な槍を振り下ろす。

 

 しかし、その場所に死神の姿は無く、槍はそのまま地面へと突き刺さる。

 

「____!?」

 

 避けられた。そう認識した次の瞬間には、もう全てが終わっていた。

 

 胴体と泣き別れとなった頭部が宙を舞う。何が起きたのかすら理解出来ぬまま山の巨人は一瞬にして絶命する。

 

「……鈍いな。教会の大男よりはマシな程度か」

 

 つまらなさそうに死神__フォーリナーは呟き、足下に転がってきた巨人の首を踏み潰す。

 

「__凄い」

 

 その光景を遠方から眺めていた立香はただただ圧巻される。

 

 あまりにも熾烈な狩り。ステップを刻むかのような軽い踏み込みで彼は音を置き去りにしてしまう程の超スピードで移動し、相手の攻撃を避け、間合いを詰め、そして獲物を狩り殺す。

 

 何よりも特徴的なのは、その手に待つ仕掛け武器(ギミック・ウェポン)。二つの姿に変形可能なそれは普段はギザギザした刃を並べ、血を削る鋸であり、任意で長柄の鉈にもなる。

 

 この独特な形状ながらオーソドックスとも言える武器を、フォーリナーは見た目そのままに“ノコギリ鉈”と呼んだ。

 

 もう片方の手に握られるのは大口径の短銃。そこから放たれるのは血を触媒に破壊力の増した水銀弾であり、獣の強靭な表皮を傷付ける為のそれは巨人種の肉体にも問題無く通り、内部で炸裂する。

 

「終わったぞ、マスター」

 

「はい……戦闘終了です。周囲数十メール圏内に魔力反応は感知されません」

 

 同行していたマシュ・キリエライトが告げる。その言葉の通りこの辺り一帯に生息していた巨人種たちは彼女とフォーリナーの手によって殲滅されていた。

 

「しかし、凄いですね……目にも止まらぬ速さでした。狩人さん」

 

「別段大したことではない……狩人ならば誰しもが持つ業さ。マシュ嬢も、主武装の無い身でよくやる。その鎧はもう大丈夫なのか?」

 

「問題ありません。外骨骼への負荷については誤差範囲内です。……ダ・ヴィンチちゃんの再調整のお蔭ですね」

 

「……そうか。だが、あまり無理はするなよ。あの程度の存在は、私に任せておくといい」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 騎士に盾を破壊され、副装の剣で戦っていたマシュを心配する素振りを見せるフォーリナー。いつの間にか随分と仲良くなっているようだ。

 

 最初こそ得体の知れぬ物々しい雰囲気を放っていたフォーリナーだが、話してみると存外理性的な人物であった。

 

 ただ戦闘時はまるで人が変わったように冷酷な性格になり、一切の容赦無く敵を屠る……フォーリナーというよりは会話が可能なバーサーカーたちに似ていると立香は思った。

 

「フォウ、フォウフォウ。フォウー」

 

「ん? なんだ、獣」

 

 すると足下でくるくると回りながらフォウが鳴く。

 

 既に知性を失い、しかし再学習し、戻ろうとしている比較の獣……フォーリナーとしては即座に狩り殺したいところだが、一応現在は人類に敵対する気は無い模様なので見逃してやっている存在だ。

 

 だが、いつかは狩る。それが“獣”である限り。

 

「はっ! そうです、狩人さん、先輩。その女の子__」

 

 マシュが視線を向けた先には、山の巨人たちに襲われていた少女が頭を抱え、しゃがみ込んでいた。

 

山の巨人(ベルグリシ)……山の巨人(ベルグリシ)……山の巨人(ベルグリシ)……神さま……神さま……神さま……お願いです、お願いです……」

 

 毛皮を纏った金髪の少女は目を閉じ、ぶるぶると恐怖に身体を震わせながらブツブツと何やら祈るように呟いていた。

 

 どうやら状況に気付いてないようだ。

 

「どうか、巨人にぺしゃんこにされても安らかなまま、皆のところへ行けますように……」

 

(彼女が喋っているのはスウェーデン語? 音声翻訳の護符の力で会話そのものは問題ないですが……)

 

「……訛りがきついな。しかし、地下牢で見たことある光景だ」

 

 教会装備に着替えた方が良いだろうか? そんなことを考えながらフォーリナーは少女へ近付こうとする。

 

「あっ、ちょっと待って狩人」

 

 立香が、行く手を阻む。

 

「……何だ」

 

「その格好だと怖がられちゃうよ?」

 

「………………ああ」

 

 視線を下げ、自分の格好を見てフォーリナーは彼女が言いたいことを理解する。ただでさえ怪しげな黒ずくめだというのにその身には返り血どころか肉片すらも飛び散っていた。

 

 ヤーナムでは、常識は通用しない。

 

「目を開けても大丈夫だよ。巨人はもう近くに居ないからね」

 

 代わりに立香が少女へ呼び掛ける。

 

「はい。あなたの身を脅かすものは存在しません。一先ず安全は確保されています」

 

「……た、助かった、の? 山の巨人(ベルグリシ)はもう居ない?」

 

「ああ。一匹残らず狩った」

 

 ゆっくりと少女が目を開け、そしてきょろきょろと辺りを確認し、本当に恐ろしい巨人が居ないことを知るとぱぁっと顔を輝かせる。

 

「ありがとう、ありがとう、ありがとうっ! あなたたちが助けてくれたのね、すごい、すごいわっ! 誰もぺしゃんこになってないなんてっ!」

 

 満面の笑みで喜ぶ少女。それを見て立香とマシュは助けて良かったと微笑み、そしてフォーリナーは僅かに顔をしかめる。

 

「ええと、あっ、あっ、ごめんなさい。……こほん。初対面の人には挨拶をするのよね。ちゃんと習ったから分かるわ」

 

 咳払いし、気恥ずかしそうに少女は言い、そして命の恩人に対して自らの名を告げる。

 

「__あたし、ゲルダっていうの!」

 

 きっと、彼らはこの出会いを忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あーあ。優雅なお城で気に入っていたというのに……」

 

 ボロボロに崩れた氷雪の城。それを見て防寒具で厚着をした悪女__タマモヴィッチ・コヤンスカヤは溜め息を吐く。

 

 何事かと思いきや無謀にも神の領域へ乗り込んできた二名の侵入者。どうせすぐ排除されるだろうと高みの見物に洒落込めば余波だけで城が半壊し、彼女もまた吹き飛ばされた。無論ノーダメージではあるが。

 

 侵入者の内の一名は見覚えのある仮面の剣士。そう、ロシア異聞帯において暴れ回り、王であるあのイヴァン雷帝すら討ち滅ぼした化け物だ。

 

 そして、オフェリアの騎士(セイバー)。あれも只者ではないとは思っていたが、あそこまで規格外とは。それにバーサーカーではないかと疑うくらいには頭がイカれている。よりにもよって氷の城であんな凶悪な炎を吹っ放すなど……今回の被害の大部分が彼の行った攻撃の巻き添えだった。

 

 楽しいバカンス気分だった彼女のテンションが急激に下がるのは必然のことだろう。

 

「ミラのルカティエル、でしたっけ? まさかロシアだけでなく北欧にも現れるなんて、我々のように嵐の壁を越え、異聞帯を往き来する能力を持っているのでしょうか?」

 

「さあな……少なくとも私のように壁を抉じ開けた訳では無さそうだ」

 

 その隣に立つのは、白い教服の男……エルデン・ヴィンハイムのセイバー__通称“聖剣”。彼の言葉にコヤンスカヤはあからさまに顔をしかめる。

 

「当たり前でしょう。嵐の壁に物理的な力を加えて大穴を開けて異聞帯に入り込むなんて馬鹿げた芸当、そう簡単に出来てたまるかって話ですわ。その点で言えばあなたもあなたで想定外でした」

 

 聖剣を名乗り、自らの得物である無骨な大剣を“師”と呼ぶ気味が悪いサーヴァント__あの得体の知れないエルデン・ヴィンハイムと契約する剣の英霊が、この北欧異聞帯へ来訪しているとは思ってもいなかったコヤンスカヤはその微笑の裏で彼のことを心底警戒していた。

 

 そして、あちらも同じだろう。どうも隠す気はないのか、聖剣は淡々としているように見えて先程から警戒の色をちらつかせている。

 

「別に大したことはしていない。我が師に掛かれば造作も無いことだ」

 

「ご冗談を。その剣、核兵器何個分なんです? それともまさかエルデンさんの異聞帯にはあのような芸当が可能なのがゴロゴロ居るとでも?」

 

「………………」

 

「……えっ? マジで?」

 

「ゴロゴロは、居ない。……はずだ。思い当たるのは数名居るが」

 

「……あらら、そりゃ随分な魔境ですわね。俄然そちらへ赴くのが楽しみになってきました☆」

 

 目を見開きながらも、にやりと笑みを浮かべるコヤンスカヤ。彼女はまだエルデン・ヴィンハイムが管理を担うアフリカ大陸全域に発生した未知の異聞帯には訪れたことがなかった。

 

「……まあ、一部では歓迎はされるだろう。君のような存在はロスリックでも珍しい」

 

 相手によっては顔を合わせただけで殺されるだろうが、と言い掛けるも寸前で飲み込む。

 

 それは彼としても好ましい出来事だった。彼女のような“醜い獣”が己の愚かな好奇によって自業の死を遂げるなど、実にヤーナム的な笑い話だ。

 

「そうですか。……ところで、あのミラのルカティエルとかいう殿方、本当に死んだと思います?」

 

「__どうだろうな。不死なのだろう? あれは」

 

「ええ。あなたのマスターが言うには。例え死んでも篝火を起点に何度でも生き返るのだとか。ああ、実におぞましい生き物ですわ。無限リスポーンとかゲームキャラじゃああるまいし」

 

「同感だ。もし英霊の身でも未だ呪いに囚われているのであれば、あの程度では死なぬだろう。この異聞帯にまだ居るかは不明だが、どこかで復活しているはずだ」

 

「ふうん……そもそも英霊なんですか? あれ。現代まで生き延びているパターンもあるんじゃないでしょうか。だとしたらお手上げですが」

 

「ああ。それは間違いない。どういう理屈で座に登録されたかは知らぬが、彼は英霊__サーヴァントだ」

 

「……その根拠は?」

 

「我が師の導きが、あれは紛れも無く英霊だと告げる。ならば間違いあるまい」

 

「はぁ? 導き、ですか……? その剣には意思があると?」

 

 馬鹿げた話だ。少なくとも彼の剣からは何の力も感じられないし、その見てくれからして決して大層な代物にも見えない。

 

 だが、そんな凡愚な剣で嵐の壁を打ち破るという神造兵器でも困難なこともやってのけたというのもまた事実。故に、コヤンスカヤは聖剣の言葉を戯言とは思わずに耳を傾ける。

 

「愛玩の獣よ、君は光の糸を見たことがあるかね?」

 

「______は?」

 

 突然の問い掛けにコヤンスカヤの表情が固まる。さも当然のように放った言葉の意図もそうだが、その呼び名は彼が知るはずのないものだったからだ。

 

「此度は戯れ。世界は真っ白に消え失せ、異聞帯もいつかは破綻する。すべては“異星の神”が降臨するまでの暇潰し」

 

「!!」

 

 目を見開き、そして理解する。このサーヴァントは知り過ぎるところまで知っているのだと。

 

「全く以てその通りだ。どれもこれも、くだらん茶番劇の一幕でしかない」

 

「っ……一体、何の話を__」

 

「だが、努々忘れぬことだ。私も君たちも、単なる歯車に過ぎず、盤上の駒でしかないということを。でなければいつかきっと、玩ぶのではなく、玩ばれる側になるだろう」

 

 暗い夜のような瞳がこちらを見据える。警告とも忠告とも脅迫とも取れる言葉を受け、コヤンスカヤは顔をしかめる。戯れ言だと切って捨てることは出来なかった。

 

「……そう、身に染みるご忠告どうも。驚きました、色々とご存知なようで……まさかエルデンさんも?」

 

「いや、彼が知るのは君が分離した九尾の一本であるということだけであり、それ故に随分と過小評価している。君よりも言峰という神父とリンボという狂人のことをやたらと警戒しているようだ」

 

「あら、あらあら? 本当ですかぁそれ? 所詮は分身体だと舐められているということでしょうか? それは心外ですわね。ちょっと、ほんのちょびっとだけムカつきました」

 

 “異星の神”すらも警戒している予定外の八人目(イレギュラー)。単純な戦闘力だけならばキリシュタリアをも上回り、英霊にも匹敵する古きヴィンハイムの魔術師。

 

 彼女にとっても興味深い人物だった。何せあの芥ヒナコがえらく気に入っており、その口振りからして彼もまた“人間嫌い”なのだろう。

 

 ならば人間嫌い同士仲良く出来ると思い、声を掛けてみれば初対面でいきなり女狐呼ばわりされた。それだけならばまだしも今回判明した事実は聞き捨てならない。

 

 どうやら彼はコヤンスカヤを単なる九尾(タマモナイン)の一角に過ぎず、取るに足らない有象無象だと認識しているらしい。おまけにあの外道神父以下の評価を下している。果たしてこんな屈辱的なことがあろうか。

 

 これには内心憤慨した様子で頬をひくつかせるコヤンスカヤ。人間風情に見下されているという事実は我慢ならなかった。

 

「……しかし、勉強になった。このような在り方の世界もあるのだな」

 

 すると聖剣が話題を変える。彼の視線は氷と炎に包まれた世界に見える複数の小さな集落を見据えていた。

 

「ん? ええ。実に冷酷で残酷で無駄のない世界でしょう?」

 

「ああ。初めて見たときはこの世界の王は牧場を営む趣味でもあるのかと思ったよ」

 

「ええ。まるで家畜ですものね。100の集落に、約100人の住民。総人口1万人の世界。本来なら絶滅するだけの人数を増やしもせずに延々と幾星霜。人間たちは無意味な幸せと最後にやってくる無慈悲な苦しみに回っている。これではイジメ甲斐がなく、正直私のやる気も萎え萎えでしたが……実際のところコレって“愛多き状況”だったみたいですねぇ。私の趣味とは真逆です」

 

「__正しく愛玩だな」

 

 ぶわり、と青白い粒子が辺り一帯に舞う。それだけで女神の魔力が宿った雪は溶け、その声は遮断される。

 

「ほう? やはり汎人類史の英霊には理解出来ませんか? この世界の仕組みは」

 

「ああ。これを人類史と呼べるか? 世界というよりは箱庭だろう。あまりにも次元が低過ぎる」

 

「まあ酷い。あの女神さまだって必死で世界を維持しているというのに__」

 

「単なる神がただの一匹で身の程知らずにも世界を管理しようとした。その結果が、この有り様だ。殺そうか、愛そうか……だったか? 何ともまあ“上位者”らしい物言いだが、だからこそ、この世界は行き詰まった。他ならぬ神々のせいで我らの人類史は滅びを決定付けられたのだ」

 

 雪の女神は知らない。人間という種族の強さを、その変異性を。脆く儚く弱い生き物だと、彼らには愛が必要なのだと勝手に勘違いしてしまった。

 

 コヤンスカヤはそれを嘲笑う。愚かな神によって人が脆弱な家畜に成り下がってしまったという悲劇を__。

 

「だが、それももうすぐ終わる」

 

「へぇ……その理由は?」

 

「気が付かないか? 滅びの因子は、既に各地に点在している。もはや誰にも止められまい」

 

「………………?」

 

 怪訝な表情を浮かべるコヤンスカヤ。対する聖剣は小さな笑みを浮かべ、目を澄まして己の周りを飛び交う光の小人の声を聴く。

 

 __カルデア。

 

 __夢の狩人。

 

 __消えぬ炎の快男児。

 

 __絶望を焚べる者。

 

 __炎の剣。

 

 __そして、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️。

 

 物語は着実に進んでいる。故に、終わりが近付くのはまた当然の理。

 

 炎が舞い、悪魔が笑う。雪の女神が長い年月を掛けて築き上げたものは一瞬にして崩れ去り、すべてが台無しになってしまうだろう。

 

 何もかもを失い、星の終わる(とき)を前に、現代の戦乙女は覚悟を決める。

 

 __その時、雷鳴を以て彼は降り立つ。




エルデンくんのアルターエゴたちの評価

麻婆←黒幕っぽい。とりま後ろには気を付けとこ。

コヤン←玉藻じゃん。本体じゃないしまあいけるっしょ。

リンボ←キャスターじゃなかったんか。なんかうざいし底が知れんから気を付けとこ。

村正←あっ敵かぁ。道理で実装されない訳だ。ないとは思うけど主人公補正ありそうだし気を付けとこ。

結論:フワッフワで草
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