異聞帯がロスリックだった件 作:理力99奔流スナイパー
ヒャッハー! まさかのアーケード実装! これは始めるしかねぇ! 本家への実装も待ってるぜ!
◎
鮮血が、飛び散る。
「____ッ!?」
その場に居た誰もが驚愕した。振り下ろされた曲刀はオフェリアには届かず、フォーリナーの腕ごと宙を舞ったのだから。
「随分と見境無しだな、狩人よ」
腕を斬り飛ばしたのは、一本の長剣。それを持つのは巨大な金属製の鞘を背負う白い厚着の男。フードを目深に被ったその格好にフォーリナーは見覚えがあった。
「貴様__教会の狩人か?」
教会の白。医療教会の黒い予防の狩人たちの上位であり、実験に裏打ちされた、血の医療と獣の病の専門家。しかし、確かにその衣装とは類似しているものの形状はむしろローゲリウスの処刑隊の装いに近い。
そして、得物は、“ルドウイークの聖剣”。
教会の最初の狩人、ルドウイークが用いたことで知られ、銀の剣は、仕掛けにより重い鞘を伴い、大剣となる
特に医療教会の狩人が用いるその仕掛け武器を振るっており、背に聖布を垂れ下げるその姿からして悪名高き医療教会の関係者であることは明白。
「__だったら?」
「__殺す」
故に、そんな存在が己の狩りを邪魔するだけでなく、腕を切断したという事実はフォーリナーの逆鱗に触れた。彼の場合、その全身が逆鱗とも言えようが。
一瞬、断面から無数の青ざめた触手が生えたかと思えば、それが犇めき、血肉となって即座に欠損したはずの腕が再構築される。
「ほう__やはりマスターの言う通り。三本の三本目を拝領し、成り果てているか」
「ッ__何者だ?」
今一度振り下ろされる獣狩りの曲刀。男はそれを後方へ退くことで回避する。その速度はフォーリナーと同等であり、そして彼と同じく空間を跳躍していた。
加速の業。遺骨を使わずにそれを行ったということは、古い狩人の一人だということ。それに加え、あの騎士よりは薄いが鼻に付く獣臭さ……これだけの要素がありながらフォーリナーはその正体を把握出来ず、啓蒙することも出来ない。
「この反応……ふむ、どうやら白痴の秘匿は月の上位者にも機能しているようだな。元より君への対策だし、当然か」
「……何を言っている?」
「君は私の名を知れない。それは我々にとって実に好ましいということだ」
そう言って男は剣を鞘へしまう。すると刀身と鞘が結合とする重い音が響き、それは片刃の大剣へと変形した。
「同盟者よ。無事か?」
「__えっ あっ」
「さっき視たものは忘れた方がいい。君にとって知る必要のないことであり、知るべきことでもない」
「っ……わ、分かった。ありがとう、“聖剣”」
先程から完全に放心状態だったオフェリアはその呼びかけでやっと我に返り、その場から離れる。
「聖剣、だと……まさか貴様は___」
「__さて、最後の狩人よ。私の“狩り”を見せてやりたいところだが、どうやら彼女も我慢の限界らしい」
「ッ!!」
聖剣と呼ばれた男。その異名を持つ者に心当たりがあったフォーリナーは目を見開くが、名を口にするよりも先に背後から伝わる冷気に飛び退く。
「__邪神め。随分と暴れてくれたな」
氷雪の女王がその顔を怒りに歪ませ、睨み付ける。
「貴様……ッ」
「おまえが他に目移りしてくれたお蔭で余裕が出来たぞ。既にカルデアの者は無力化した」
その言葉にスルーズと戦闘していたはずのマシュたちへ目を向ければ立香も含めて皆その動きを停止していた。
それは雪の女神スカディの力によるもの。もはや彼らは意識はあるものの指一本すら動かせない脱け殻のような状態だった。
「マスター……ッ!」
「ほう……久方ぶりに怒ったか、女王」
騎士もまた、フォーリナーの前に立ち塞がる。氷雪の女王が激情に駆られている姿を見るのは初めてであり、意外そうだった。
「助かったぞ、聖剣とやら。危うくマスターを殺されてしまうところだった」
「ならば少しは心配する素振りを見せたまえ。もはや存在せぬ人間性を演じているようだが、実に見え透いているぞ?」
「はて、何のことやら。にしても貴公……あの黒ずくめのことを知っているような口振りだな?」
「ああ。同郷の者だ。まさかカルデアが喚び寄せるとは思わなかったがな」
「クク。道理で……」
自身のマスターが殺されかけたにも関わらず騎士は愉快そうに笑い、聖剣の横に並び立つ。
フォーリナーの顔が歪む。
「ああ……穢れた獣、イカれた医療者、気色悪いナメクジ……どいつもこいつも、堪らぬ血で誘う」
スカディ、スルーズ、騎士、聖剣。オフェリアも含めれば五対一であり、その内聖剣は未知数だが、神であるスカディと獣の騎士の力は自身と互角かそれ以上という圧倒的に不利な状況にも関わらずフォーリナーは構わず殺意を振り撒く。
「__だが、認めよう。此度は私の敗北だ」
故に、誰も気付くことが出来なかった。
目の前の怒り狂う猛獣が、怨敵と対峙しながら分の悪さを理解し、迷わず“逃走”を選択する冷静さを持つことに。
「!?」
__消えた。
今までのように空間を跳躍したのでもない。確かに視界に捉えていたフォーリナーも、カルデアのマスターたちも、忽然とその姿を消していた。
「…………! 対象の反応を消失、観測出来ません……!」
「っ、どこへ__」
これにはスルーズも目を見開き、攻撃に備えていたスカディは呆気に取られ、その表情を硬直させるも即座に周囲を捜索する。
「馬鹿なっ____!?」
しかし、彼らの存在を感知出来ない。雪を媒介する己の視野はこの北欧異聞帯全域に渡るというのに、ただの一人も見つけることが出来なかった。
一体何が起こったというのか。
「これは……ああ、成程。夢へと逃げたか」
皆が困惑する中、聖剣だけが理解し、納得する。
「__夢、だと?」
「偉大なる上位者の領域。魔術師で言うところの固有結界のようなものだと思ってくれて構わない。この世界から隔離された空間であるが故に、例え神であっても通常認識することは不可能だ」
「つまりこの世ならざる異界へ逃げ込んだということか? 外様の剣士よ、よもやおまえは奴が斯様な芸当を可能なことを知っていたのではあるまいな?」
「いや、“灯り”すら媒介せず、あの一瞬で離れた場所に居る連中も含めて転移することが可能だとは知らず、思いもしなかった。“狩人の夢”の主……もはや彼の力は私の想像の範囲外だ」
「……そうか」
まんまと逃げられた。
その事実に顔をしかめるスカディ。てっきりあの邪神としか言い様が無い得体の知れぬナニカは最後まで抵抗するとばかり思っていた。
しかし、結果は敵前逃亡__あの殺意はカモフラージュだったのか。否、あれは間違いなく本物の殺意と憤怒だったはず。ただ彼女は見誤っていたのだ。
無意識に自分たち神々と同一視してしまっていた。しかし、あの邪神に譲れぬ
そして、確信する。奴が戻ってくることを。
「クク。してやられたな、女王。無駄にこちらの手の内を晒しただけに終わった」
そんな彼女とは対照的に騎士の声は弾んでいた。
ミラのルカティエルを名乗る仮面の剣士、そしてあの黒ずくめの得体の知れぬナニカ__自身を楽しめてくれる存在が連続して現れたのだ。喜ばずにはいられない。
「__ッ。ああ……本当に、思いもしなかったよ。私とおまえは傷を負い、外様の剣士が居なければオフェリアも殺されていたかもしれない。これ程の屈辱を味わうことになるとは」
勝ち逃げ、とまでは言わないかもしれないが、フォーリナーは場を荒らすだけ荒らして、捕らえるはずだったカルデアの者たちと共に逃げ帰ってしまった。結局のところ彼らは何の損害を受けていない。
まるで最初から居なかったように。しかし、スカディの負った小さな火傷とオフェリアに与えられた恐怖心がそれが確かに存在したことを証明している。
__彼女にとってこのような屈辱的な思いをしたのは、これで二度目だった。
「……奴は、必ず舞い戻る。この我が
故に、この雪辱は果たさなければならない。
一度目は諦めたが、二度目もということなど、あってはならないのだ。
(……しかし、“聖剣”というのは少しばかり安直過ぎたか?)
一方、聖剣は彼女が決意しているのを他所にそんなことを考えていた。
◎
世界が、変わる。
「……ここは?」
先程まで幻想的な氷の城内だったはずのそこは星輪のような白い花が咲き誇る草原へと様変わりしていた。墓石や磔台のようなものが幾つもあり、奥には見上げる程の大樹が生えている。
そして、空を見上げれば__。
(__青ざめた血の空?)
頭に浮かんだその言葉に、立香自身が困惑すると同時に視界に映る景色にどうしようもない違和感を覚える。
美しく、けれど妖しい夜空。曇っているせいか星々は見えないが、スーパームーンもかくやという巨大な満月だけがくっきりと浮かんでいた。
「マスター……あの空、おかしいです」
「うん……けどそれが何なのか……」
そして、それは傍らに立つ後輩も同じであったようだ。しかし、立香はその違和感の理由が分からず、首を捻る。
「分かりませんか? __月です。あの月、“雲より前に浮かんで”います」
聡明なマシュは違和感の原因を答える。その指摘を受け、漸く立香も気付き、本当だと驚愕した。
そもそも曇り空にも関わらず月がくっきりと見えていることが可笑しく、有り得ぬ光景だったのだ。それはつまり月が雲より近いということ。
「おいおい……何なんだここは? 北欧じゃねぇな。太陽は近かったが、月は普通だったぞ」
「はい。理解し難く、不気味な光景です。この花畑の外側に何本も連なる柱といい、まるでここだけ空間から切り離されているようで……」
「__実際、その通りだ。マシュ嬢」
同じくここに転移していたナポレオンもまた疑問を口にし、マシュもそれに同意する。
するとそれに答える者が居た。
「狩人……!」
立香がその姿を真っ先に認識し、名を呼ぶ。大樹の麓に、先程まで怒り狂っていたのが嘘のように、落ち着いた様子で彼__フォーリナーは立っていた。
「__ようこそ、“狩人の夢”へ」
「狩人の……夢……?」
「元々は狩人の隠れ家だった。血によって、狩人の武器と、肉体を変質させる……狩人の業の工房だ。そして今は我が領域、我が世界、我が存在そのものとも言える、正しく夢に等しき小さな世界。この
淡々と語るフォーリナー。かろうじてこの場所は彼の宝具によるものであり、固有結界とは似て非なる異空間ということであると理解する立香だが、その頭上には疑問符が幾つもの浮かんでいる。
「名はそうだな……かつて、この地に迷い込んだ夢見人の男の呼称を使うとしようか。__即ち、幻夢鏡。宝具『
「ドリーム……って、あれ?」
近寄ろうと歩き出す立香。しかし、足を前へ出し、地面を踏み込んだ瞬間バランスを崩して膝を突く。
「__先輩っ!?」
マシュが慌てて駆け寄り、その背中を擦る。突然襲われた脱力感と疲労感に立香は戸惑いを隠せず、立ち上がろうとすることも出来ない。
「……どうやら灯りを介さずに夢へ転移するのは、サーヴァントの身では無茶が過ぎるか」
急激な魔力消費。フォーリナーは先の戦闘の際、現在の己が出せる全力を以て氷雪の女王とあの獣の騎士を殺さんとした。加えて、一瞬にして異界へ転移する宝具の発動、それは多くの英霊と契約してきた立香でも負担が大きかった。
それに対し、フォーリナーは深々と頭を下げる。
「すまない、マスター。奴らを狩り損ねた挙げ句、みすみす敗走する羽目になった」
「っ……ううん。狩人が居なかったら、何にも出来なかった」
謝罪の言葉に対し、立香は首を横へ振った。これにナポレオンもまた同意する。
「悔しいが、その通りだ。あの女王様といい騎士といい想像以上にその力は絶大だった。ったく……まさか一瞬で俺たちを指一本動かせない脱け殻にしちまうとはな。というか狩人の旦那よ、当初の予定じゃあわざと囚われの身になるまでが作戦だったよな? にしても、まさかお前さんに殺意を向けてくるとはぁ思いもしなかったぜ。何者なんだ、アンタ?」
そう、潜入前にナポレオンは神として強大な力を保有する氷雪の女王スカサハ=スカディは、まともにやり合うべきではない相手だとし、彼女に捕らえられることまで考慮していた。
かの女神は慈愛の塊だ。人も英霊も本気で我が子と思い、愛している。敵は殺すと言っているもののこの北欧に彼女の敵と成り得る者は存在していない。
__そう思われていた。
「言っただろう、狩人だ。ただ獣を狩り、そして忌々しい上位者を狩る」
「狩人、ねぇ……あの女王、アンタのこと邪神って呼んでたよな? もしや神霊だったりすんのか?」
「……ふん。“今”は人だ。だが、曲がりなりにも神。私の身に宿る“青ざめた血”を感じ取ったようだ。奴らにとってヤーナムの上位者共は、正しく邪神の類いなのだろう」
異世界から舞い降りた偉大なる
フォーリナーからすれば全て似たようなものに過ぎず、狩りの対象でしかないが……。
「ふうん……よく分からんが、旦那って思ってた以上にヤバそうだな。何せあの女王だけじゃなく、あのルカティエルの旦那を倒した騎士相手にも互角に立ち回るなんて、一体どこの大英雄なんだ?」
「……だから、ただの狩人だ」
フォーリナーの正体に探るが、どこか物々しい雰囲気に一先ずその疑念をしまい込むナポレオン。そんな彼の発言に聞き捨てならない名前が出てきた。
「__あの、ナポレオンさん。今、ルカティエルと言いませんでしたか?」
「ん? ああ、そういや教えていなかったな。実は俺以外にも汎人類史から喚ばれたサーヴァントが居たんだ。ミラのルカティエルっていうんだが、こいつが篦棒に強くてな……」
「! そ、そのミラのルカティエルってもしかして翁の仮面を着けてた?」
「おう! その通りだ! 何だ、知ってんのか?」
「は、はい! ミラのルカティエルさんにはロシアでお世話になりました!」
「何っ、本当かっ!? じゃああのイヴァン雷帝がでかい象なのは本当の話だったのかっ!? てっきりルカティエルの旦那のジョークだとばかり……」
「……誰だ?」
お互いに驚く立香たちとナポレオン。一方、フォーリナーは知らない名前に首を傾げる。
「あ、えと。ロシアの時に助けてくれたサーヴァントなんだ」
「……ふむ、そいつが北欧にも?」
「はい。ナポレオンさんの話だと……」
「おう! お前たちと会う前にな! だが、生憎と前の城への侵入の際に騎士と戦ってやられちまった……」
「そうだったんですか……」
あの巨大な魔獣、イヴァン雷帝を打倒して見せた強力なサーヴァント……それがこの北欧異聞帯でも召喚されていることに驚き、希望を見るも既に倒されてしまっていることを知って残念そうにする二人。
「ああ。俺はオフェリアとワルキューレを相手にするので精一杯だった……情けない話だ」
「……まあ、既に死んだ者の話をしていても仕方があるまい」
閑話休題。フォーリナーはその朧気な瞳で立香を見据え、淡々とした口調で語りかける。
「さて、此度の戦いで分かったと皆思うが、我らはあまりにも戦力が不足している。非常に不服であるが、お前たちと私ではあの上位者擬きと獣の騎士、それにあの聖剣の狩人を殺し尽くすことは出来そうにない……数百回くらい死ねれば分からぬが」
実際フォーリナー以外は彼が挙げた面子を相手にすれば戦いにすらならなかったに違いない。自分たちはフォーリナーの眼中に無いワルキューレ・スルーズに苦戦する体たらくなのだから。
それは純粋にフォーリナーが強過ぎるだけであるが、敵もまたそれに匹敵しており、頭数が多いのだ。はっきり言って今のままでは勝利するのは不可能だろう。
ペーパームーンのみを奪取しようにも、それを持っている騎士を相手にしなければならず、それはつまりオフェリアも同時に相手にするということ。一筋縄では行かぬはずだ。
「__故に、新たな戦力を得る」
「だな……しかしよぉ、粗方探し回ったが、他に汎人類史のサーヴァントは見つかっていないぜ?」
「いや、居たぞ」
「何?」
「あの上位者擬き。随分と地下深くにサーヴァントを隔離していた。奴と同じ神特有の匂いがしたが、捕らえられているのだから、そういうことなのだろう」
するとフォーリナーは衝撃の事実を告げる。
「本当? なら、助けないと__」
「そう言うと思って、こっちに連れてきた」
「__えっ?」
そう言ってフォーリナーが視線を向けた先には、雪のような白い髪をした少女が立っていた。
「__驚いたわ。私までも夢の中に引き込むなんて、随分と強大な神性なのね」
アイヌ風の民族衣裳を身に纏った雪肌の少女は月明かりに照らされながら不敵に微笑む。
その顔は、いつしか共に闘った魔法少女によく似ていたが、その雰囲気はかなり違っていた。
「ご機嫌よう……カルデアの方々、そして月の香りがする御方。私に何かご用かしら?」
「__手を貸せ、混じり物の小娘」
「ふうん……率直ね。もしも断ったら?」
「無論、殺すが」
一瞬にして向けられた殺気。後ろで見ていた立香たちも凍り付くようなソレを一身に受けながら少女は涼しい顔をしている。
「あら、怖い。脅しじゃなくて本気ね。そんなに神のことが嫌いなの? 貴方も同類なのに」
「ああ。心底嫌いだとも。シトナイ、ロウヒ、フレイヤ、そして聖杯の娘、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」
「…………! ふふ。そういうこと。すべて見透かしているという訳ね。けど今の私のことは、シトナイって呼んでちょうだい」
少しだけ目を見開くも少女はシトナイと名乗り、再び微笑を浮かべる。
(シトナイ__加えてロウヒにフレイヤ……! 狩人さんの口振りからして複数の神霊が融合した疑似サーヴァントでしょうか? ですが、何故狩人さんは彼女の真名を?)
フォーリナーが少女の真名を言い当てたことに対して疑問を持つマシュ。前に彼は真名看破を持つ
「__良いわ。協力してあげましょう。ずっと地下牢に閉じ込められてて退屈していたところだし、貴方たちには私の力が必要でしょう?」
そう言ってシトナイは立香の方へ近付き、手を差し出す。
新たなサーヴァントとの接触。敗走したばかりではあるが、反撃の時は意外と近そうだ。
__そして、その時が終わりの始まりである。
◎
__まずい。
白い衣服の上にボロボロのローブを纏った男は、北欧の大地に立ちながら舌打ちする。
あまりにも理不尽。あまりにも不条理。とうの昔に忘れ去られた災厄が、今になって動き出し、降臨しようとしていた。
阻止しなくてはならない。故に、“カルデアの者”はこの状況を打開するべく策を考える。
「ほう……これはこれは。随分と面白い奴が居るわね」
____!
バッと背後を振り向く。いつの間にかそこに存在していた白い少女はクスクスと笑い、カルデアの者を興味深そうに見据えている。前髪で隠れているためその視線を伺い知ることは出来ないが……。
「__何者だ?」
気付くことが出来なかった。カルデアの者は顔をしかめ、警戒心と威圧感を露にしながら白い少女へと問う。
「名を尋ねるならばまずはそちらから名乗れ。__常識でしょう? ねぇ、同胞さん?」
対する白い少女は笑みを崩さない。
「しかし、ああ、本当に……良い、良いな、あの男の言う通り久しぶりに外に出てみるというのも存外愉しいものね。この世界という実験場は、まだまだ我が知識欲を十全に満たしてくれる」
「……気味が悪いな。“異星の神”の手先か?」
「ぶー、不正解だ。あのくだらない生き物はある意味では同志かもしれないが、残念ながら仲間でも協力者でもないわ」
女性的な喋り方をしているかと思えば途中で中性的な口調も見せ、そしてその仕草には子供っぽさが伺える。
それは実に歪で不気味。言葉を発すること事態に慣れていないようにも見えた。
「……では、他の異聞帯の勢力か?」
「然り。勢力といっても、私は誰の配下という訳でもなく、ただ個人として動いているがね」
「……それで、私に何の用だ?」
排除するつもりではないようだ。白い少女の態度ならそれは察せられ、故にカルデアの者は尋ねる。
どちらにせよ、戦闘は避けなければならない。目の前に立つこの人ならざる少女は明らかに格上の存在。今の己では勝てる見込みはゼロに等しいのだから。
「君を見つけたのはただの偶然よ。懐かしい獣の匂いに誘われ、暇潰しに訪れた低レベルな世界。そこでまさか君のような成れの果てが居るとは、思いもしなかった。いやぁ実に驚いたわよ」
「……そうか。用が無いのなら、さっさと失せろ。アレのことを知っているのならば分かるだろう。今はお前の相手をしているような場合ではない」
「獣のこと? なら、安心したまえ。まだ目覚めるには早過ぎる。単なる杞憂に終わるし、殺し方は分かっている。それよりも目先の問題は“第八の獣”のことよ」
「……何?」
聞き覚えのない、しかし聞き捨てならない言葉にカルデアの者が眉をひそめる。
白い少女はそんな彼に手を差し伸べる。
「__知りたいかね? ならば君もまた我が同志だ」
口角を吊り上げたその表情は、どこまでも純粋で、どこまでも邪悪だった。
あと二、三話くらいで北欧終わるかな?
狩人の夢の読みドリーム・ランドにしたけど水着アビーの宝具の名前もドリームランズなんだよなぁ……まさかの被り。やっちまったぜ☆