異聞帯がロスリックだった件 作:理力99奔流スナイパー
◎
「__何だ、ありゃ」
氷雪の女王の知覚範囲から離れた北欧の片隅。そこに立つ褐色の肌に露出の多い灰白の鎧を纏った女、神霊カイニスは突如として天から現れた飛竜とその上に立つ男に瞠目する。
炎の巨人王スルトが目覚め、この異聞帯の結末も見えたが為に自らのマスターの元へ帰ろうとしていた矢先に起きた出来事。巨人王の周囲を嵐が覆い尽くし、まるで異聞帯を覆う“嵐の壁”のようにドーム状の積乱雲を形成したのだ。
かろうじて中の様子は伺うことが出来るもののカイニスの思考の大半は先の竜に騎乗する男へと持ってかれていた。
本能的に理解する。アレは自身と同じ神霊であり、自身よりもずっと格上の存在であると__。
「ハァ……どいつもこいつも、容易く嵐の壁を突破しちゃってくれますねぇ。自らの特権を奪われてどんな気持ちですか? カイニスさん」
その隣で厚着をした悪女は溜め息混じりに言う。カイニスはそんな彼女の言葉を無視し、問い掛ける。
「おい女狐、あの神霊はどこの勢力だ?」
「コヤンスカヤです。さあ、分かりませんが、恐らくエルデンさんが担当するアフリカ異聞帯のサーヴァントかと……何でも物理的に嵐の壁を突破しちゃう化け物がごろごろ居るんだとか」
「エルデンだと? あの野郎のとこってこたぁ“火の時代”の神か……んで
あからさまに顔をしかめるカイニス。出来ればその予想は外れてほしいと願う。
「おや? 流石ですね、誰なんです? アレ」
「竜狩りの戦神。古竜の同盟者。無名の王__呼び名は色々あるが、神々によって歴史から抹消され、もはや真名は“座”にすら残っていない。原初の戦神とも言うべき、とんでもねぇ大物だ。自分で言ってて信じられねぇ……あんなもんがサーヴァントとして喚べるのか?」
__原初の戦神。
その単語だけでアレがどれほど規格外な存在なのかを理解し、コヤンスカヤは眼を見開き、そして悪どい笑みを浮かべる。
「__それはそれは。同じ神霊といっても、貴方やディオスクロイさん方を召喚するのとは訳が違いますね。オフェリアさんがスルトを召喚したように、ゼウスとかオーディンとか、そういうレベルのを召喚しちゃってる訳ですか」
「そうだ。そして、あんな化け物を召喚し、あまつさえ従えてみせてやがる……エルデン・ヴィンハイム__その面、拝んでみたくなったぜ」
流石は己のマスターが警戒するだけの人物である、とカイニスはにやりと笑う。
それとほぼ同時に、雷と炎がぶつかり、爆ぜる。その余波は山脈をも揺らし、カイニスたちの居る所にまで届く。
巨人王と戦神が戦闘を開始したのだ。果たして最後に立っているのはどちらか……コヤンスカヤは演目を見物するようにその衝突を眺める。
しかし、カイニスにはどちらが勝つかなど明白だった。思い出すのは生前に聞いた古い、古い巨人殺しの言い伝え。そこにはこうある。
「__“嵐”のみが大樹を倒す」
◎
嵐の雷鳴が、炎を呑み込まんとする。
摂取400万度__太陽にすら匹敵する地球上ではおよそ有り得ない超高熱。しかし、“嵐の竜”もその上に乗る“無名の王”も全く臆することなく一撃で吹き飛ばす。
「 グゥ……次から次へと、何奴かと思えば……貴様__神だな? 」
北欧最強の神殺しが故に、気付く。竜の乗る輩が忌々しき神族に列する存在であると。
「__然り」
その問いかけに、白い鬣を靡かせながら無名の王は短くそう答えた。
炎が、溢れる。胸を貫かれた痛みなど気にも留めない。あの間男も、月光の剣士も、
「 灰塵と帰せ!! 」
「……………………」
対する無名の王は怒り狂うスルトを悠然と見下ろし、その手に持つ“剣槍”が、バチバチと電流を帯びる。
そして、天へと掲げると一筋の雷撃が射出され、無数の落雷となって豪雨の如くスルトへと降り注ぐ。
「 ガアッ!? __まさかその雷は竜殺しの概念を……!? 」
投擲された槍のような稲妻は噴出させる炎を容易く貫き、強靭な皮膚にも突き刺さる落雷に苦痛の声をあげるスルト__自身にとって毒に等しい威力。悪竜現象がここに来て仇となった。
無名の王が操る雷は、太陽の光の王グウィンから受け継がれた岩のウロコをも穿つ竜狩りの雷。朽ちぬ岩の古竜からその末裔の飛竜まで数多もの竜種を穿ち、葬り去ってきた神雷と竜狩りの戦神とも呼ばれた無名の王は、正しく最高峰の竜殺しだ。
「 鬱陶しい蝿めが……! 叩き落としてくれる……! 」
嵐の竜と共に自身の周りを飛行する無名の王を叩き落とさんと炎の剣を振り回す。しかし、高い機動力を誇る嵐の竜はその一撃一撃を的確に避け、スルトの間合いから離れる。
かの戦神が竜殺しであるように、スルトもまた神殺し。その攻撃も受ければ致命傷と成り得るだろう。
当たれば、の話だが……。
「……何、あれ」
オフェリアが、ぽつりと呟く。
ただただ愕然としていた。覚悟を決め、自身の魔眼を犠牲にしようとしたその寸前で襲来した、巨人王を圧倒する程の神霊。理解が追い付かず、カルデアも氷雪の女王もその絶大な力に言葉を失い、見ていることしか出来ずに居た。
__恐らく他の異聞帯の勢力だろう。間違っても、弱った汎人類史があのような強大な存在を召喚出きるはずがない。
「一体どこの……くっ__!?」
ふらりと、彼女はよろめく。魔眼と魔術回路の接続を切り離そうとしたことによる肉体への負荷と疲労が蓄積したせいだ。
「! オフェリアさ__えっ?」
そのまま重力に従って前のめりに倒れようとする彼女にマシュがいち早く気付いてその身体を支えようとし、目を見開く。
ぽんっと、何かがオフェリアの顔に当たる。それは衣服の布の感触であり、誰かの胸板だった。一体誰なのか視線を向けようにも疲労で顔を上げる気力すらもない。
「……ああ、良かった」
「______」
ぎゅっと手を握られる。
安堵したような、感嘆したような声。またしても聞き間違いだろうか? __否、今度は違う。間違いなく、聴こえた、聴こえた。彼だ、確かに彼の声だった。
朦朧となっていた意識が覚醒し、オフェリアは自身を支える者の顔を見る為に残った力を振り絞る。そして、僅かに顔を動かすことに成功し__。
「あ、__ああっ__」
涙が溢れる。紛れも無く、彼の顔だった。
己は夢を見ているのだろうか? これは自分が見せている都合の良い幻覚なのだろうか?
でなければ可笑しい。彼がここに居るなんて、有り得るはずがないのだから__。
「__よくぞ、ここまで頑張ってくれた。オフェリア」
けれど、それでも彼女は安心し、安堵した。囁くそうに自身の名を呼び、そう語り掛ける彼の顔はもはや涙で滲んでよく見えなかったが、いつもの仏頂面ではないのだけは判った。
そうして彼の手を握り返しながら温かい胸の内でその意識を手放す__。
「……ああ。漸く貴公の手を掴めた」
「__エルデン・ヴィンハイム!」
眠るように気絶したオフェリアを抱き止める灰髪の男の名を、立香が目を見開きながら叫ぶ。
「エルデン、さんっ……!?」
『何ィ!? エルデンだとォ!?』
いつの間に。降って湧いたかのようにそこ居た、オフェリアを抱くその姿にカルデア一同が驚愕する。ブリュンヒルデらサーヴァントたちもその存在に気付いていなかった様子で目を見開いていた。
「……久方ぶり、という程でもないな。立香、キリエライトよ」
対するエルデンは何食わぬ顔で二人へ視線を移す。シャドウ・ボーダーで会った時と同じように。
「っ……な、何であなたがここに……」
「存外俺という存在は甘いらしい。セイバーを送り込んだから平気だろうと高を括っていたら、友人が想定以上の危機に陥ってしまってな……わざわざアフリカから出向く羽目になった」
『__つまり君は、オフェリア・ファムルソローネの救出する為に異聞帯を越えて駆け付けてきた、という訳か? エルデン・ヴィンハイム』
「……そうなるな、シャーロック・ホームズ」
誰よりも早く冷静さを取り戻し、目の前の男を分析するホームズ。他の異聞帯に居ることに対する疑問は無い。彼がシャドウ・ボーダー内に侵入出来た時点で、カイニスやコヤンスカヤのように嵐の壁をも突破し、異聞帯を自由に往き来する手段を持ち合わせている可能性も考慮していたからだ。
しかし、まさかよりによってスルトが目覚め、終焉の危機にあるこの北欧に現れるとは思いもしていなかった。彼の言い分が事実ならばこのようなタイミングだからこそ、なのかもしれないが……。
「セイバー、オフェリアを」
「__了解した」
すると先程までスルトと戦っていたはずの聖剣がエルデンの背後に現れ、オフェリアを代わりに抱き抱える。
「エルデン……ああ、クリプターの一人か」
その光景を見ながらスカディが言う。カルデアが呼ぶ名前には聞き覚えがあった。あの聖剣と名乗るサーヴァントのマスターであり、オフェリアが古き地中海の神々の支配する異聞帯と並べて同盟を推奨していたアフリカ異聞帯の管理者だったはず。
そこは“火の時代”が終わらず、現代まで続いてしまったという有り得ぬ世界らしい。スカディとしては得体が知れず、手を組むのには消極的だったが、オフェリアがあまりにも残念そうにするので一応検討には入れていたが……。
「……ふむ、聞いてはいたが、本当にスカサハ瓜二つだな。いや、貴公の方が少し若々しいか」
対するエルデンは、現代まで生きた本物の神からの視線に一切臆する様子も見せずに興味深そうに彼女を見据える。
「フッ オフェリアの言う通り、随分と肝が据わっているな、古きヒトの子よ。あの古竜に騎乗する戦神は、おまえのサーヴァントか?」
「……ああ。俺が召喚した
「む? しかし、彼は紛れも無く……ああ、そうか、裏切りとは、愚かさとは、そういうことか」
何かを察し、スカディは顔をしかめる。北欧の神々と古き神々との圧倒的な神格の差をありありと理解したからだ。
無名の王は、その神性を棄てている。何らかの方法で物理的に取り除いているのだ。
古竜の同盟者である彼はもはや神ではなく、にも関わらず彼を神霊足らしめているのは枯れ果てることなく残った戦神の神核のみ__悠久の時を経て人間性に毒され、その身が干からびて亡者のようになろうとも、彼の持つ絶対的な神としての威厳を、その力を完全に奪うには至らず、強大な神霊として彼は君臨している。
「しかし、凄まじいな、神としての己を捨て去っても尚、あれだけの格が残っているとは。流石は古き時代の神々__原初の戦神だ」
「……ほう。なかなか聡明だな、貴公」
エルデンが意外そうに笑う。自身が漏らした一言でそこまで察せられるとは思ってもいなかった。
「これでも神だからな……おまえの正体についても、何となくだが、理解出来ている。“
「……ふむ、神の目は誤魔化せぬか」
「ああ。だが、それでも私はおまえを愛そう。例え我らにとって猛毒であろうとも」
「……随分と変わっているな、貴公。オフェリアの話を聞くに、てっきり神らしい神だとばかり思っていたが、どうやら違うらしい」
北欧の母なる女神と対等に語り合うエルデン。その両者の会話にカルデアは割り込むことが出来ずに居た。
__その時、轟! と火の粉が舞い、ただでさえ高温だった周囲の外気温が更に上昇する。
「 ああ……ああ……! 貴様、貴様か! よりにもよって貴様なのか! 」
気が付けば、スルトが無名の王との戦闘を続行しながらもこちらへ視線を向けていた。
否、正確にはその瞳はエルデンただ一人を忌々しげに睨み付けている。
「 エルデン・ヴィンハイム! おぞましき人間性の怪物よ! 」
「……声がでかいな。巨人スルト」
熱風が襲う。凍て付くような憤怒と殺意を一身に受けながら、エルデンは涼しい顔で巨人王と向き合う。
「……成程。炎、氷、竜、そしてデーモン。随分と歪なソウルをしている」
本来召喚されるはずだったシグルドの霊基の影響で
よくもまあこうも成り果てたものだと、エルデンは内心称賛する。悪魔殺しに食い潰されなかったのは、奇跡としか言い様がないだろう。
「 ああ! 実に忌々しい! 実に腹立たしい! 貴様、貴様だけはこの星を終わらせた後、この手で殺すと決めていた! 」
「……ん? 何やら随分と恨まれているな?」
想像以上に激昂しているスルトに対してエルデンが不思議そうに首を傾げる。
もはや巨人王は満身創痍だった。竜狩りの極雷を受け続け、空想樹による魔力供給も追い付かない程に衰弱していた。
しかし、それでも彼は身に余る程の怒りを糧に立ち続け、急速再生によって無理矢理活動している。何をしようとしているのかは明白__。
「 ここまで弱った俺ではもはや星を終わらせることは出来ぬかも知れぬ! だが、ただでは死なん……この異聞帯諸共灼き尽くされるがいい! 」
『__自爆するつもりかっ!?』
そう、やけになったスルトはナポレオンのように自らの霊基と霊核を犠牲に過剰出力させることで足りぬ魔力を補い、半ば無理矢理宝具を発動。超高熱の炎の剣を振り下ろし、この北欧異聞帯を道連れに心中するつもりだ。
皆が、戦慄する。このままではナポレオンの犠牲も、無名の王の登場も、すべてが無駄になってしまう。
「 ォォォオオオオオオオオオオオオオ!! 星よ、終われ!! 灰塵と帰せ!! 」
生命に対する優先権を有し、地表から神代という現実を剥ぎ取る装置としての役割を持つ対界宝具。その力は形ある生物であれば神代の神でさえ滅ぼす。
「……ああ、それ、良いな、欲しい」
その凶悪な“終わりの火”を目の当たりし、エルデン・ヴィンハイムは__笑った。
「
だからこそ、誰しもが驚いた。
対生命。対神性。対界。ありとあらゆるものを灼き尽くすその黄昏の一振りを“極雷を纏う剣槍”が弾き飛ばしたのだから__。
「 __な、に? 」
炎の剣が宙を舞い、砕け散る。
これにはスルトも呆然とする。炎の剣が本来切り裂き、灼き尽くすはずだった場所には、無名の王が古竜に乗らず、その大地に立っていた。
「………………」
ほんの一瞬。かの戦神の魔力が急激に膨れ上がった。それはスルトの宝具の総量を遥かに凌駕し、その極雷は超高熱を完全に打ち消してみせたのだ。
有り得ぬ。それ故に、スルトは何が起きたのか理解が及ばず、怒ることすらも忘れ、硬直してしまう。
「__
そして、その決定的な隙をエルデンは見逃さず、右手に杖を握る。
「__
闇が、這う。その寒気がする程おぞましい気配にカルデアは凍り付き、息を呑んだ。
小さな黒い精のようなものが羽蟲のようにエルデンの周囲を漂い、蠢き、その量は次第に多くなっていく。
それに恐怖するのはカルデアだけでない。ブリュンヒルデも、シトナイも、スカサハ=スカディも先程のスルトの宝具以上に本能的な生命の危機と恐怖を感じ取った。
__その正体を知るのは、スカディのみ。
「我らは
それは人の本質。誰しもが持ち得る人の根源そのもの。けれど、それは人にとっても神にとっても紛れも無い猛毒であり、世界すらも陰らせる。
故に、それは禁忌なのだ。そして禁忌は暴かれ、狂った忌み子は究め、極め続け、その真髄を確かに視た。
視てしまった。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのを理解しながら魅了されず、発狂せず、それを支配する。何故か? 彼にとってそれは単なる手段に過ぎず、道具に過ぎないからだ。
__この場合、果たして深淵はどちらなのだろうか?
「我らは
黒い精の名を、“
ならばこの魔術は、その発展にして究極系__。
「__
杖を向ける。それだけでエルデンの周囲で蠢いていた追う者たちはまるで引き寄せられるかのように渦を描きながらスルトへと向かっていく。
最初はゆったりとした動きだったそれはスルトへ近付くにつれ勢いを増し、正しく人間性の嵐が如き奔流へと変わってその巨体を穿つ。
「 グ、グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!? 」
けたましい悲鳴を上げる巨人王。彼の体内へと入り込んだ追う者たちは尚も勢い止まらず、その炎を、その血肉を、その魔力を喰らいながら突き進み、そして爆ぜているのだから__。
今の彼が受ける痛みは、人間が大量の蛆虫に内側から貪られ、更に小さな爆弾によって細胞の一つ一つが直実に破壊されていくのに近く、それはもう、想像を絶するものだ。
彼らに与えられる仮初めの意志とは、人への羨望、或いは愛であり、その最期が小さな悲劇でしか有り得ないとしても目標を追い、求め、貪り続ける。
__正しく人の本質たる渇望だ。
「 おのれ、おのれ、おのれおのれおのれ!! 貴様だけは!! 貴様だけは許さんぞエルデン・ヴィンハイム!! 俺が得られぬすべてを持つ貴様だけはァァアアアアアアアア!! 」
怨嗟に満ちた叫びと共に、スルトは最後の力を振り絞ってエルデンを指差した。
「むっ? これ、は__」
「 死のルーンを刻んだ! 貴様はもう終わりだ! 」
__“死のルーン”。
原初のルーンの一種であり、刻んだものに死をもたらし、それは英霊すら殺せる__特に警戒していなかったエルデンは回避する暇もなく刻み込まれてしまう。
身体から力が抜け、冷たくなり、心臓が止まり、そして意識を失い__。
「__トドメを刺せ、ライダー」
再び目覚める。
何事も無かったかのように、エルデンは重力に従って倒れようとしていた身体を足で支え、自身の使い魔へ命令する。
「 __何っ!? 」
馬鹿なとスルトが驚きの声をあげると同時に、バチバチと稲妻が走る。
その時には無名の王は既に彼の眼前に現れ、剣槍を持たぬ方の掌から鋭利な雷を形成し__それを振り下ろすようにスルトの脳天へと叩き付けた。
「 グガァ!? 」
__雷の杭。
それは忘れられた竜狩りの姿。竜のウロコを貫くのなら、雷を投げてはならぬ。
その手で直接、竜に杭を突き立てるのだ。
炎が揺らぎ、肉体に皹が生じ、そして崩れ始める。スルトにとってその一撃は致命的なものであり、遂に足掻き続けた彼の生命が尽きようとしていた。
『____! スルトの魔力量大幅に低下……!』
「 オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!? そんな!? そんな馬鹿なっ!? 」
__死ぬ。
星を終わらせることも、この北欧を終わらせることも、憎き恋敵へ一矢報いることも、何も成せずままに死ぬ。その事実をスルトは信じられず、目を見開いて否定する。
しかし、もはや避けられぬ。再生することも不可能であり、すぐにでも消滅するだろう。
「 オフェリア! オフェリア!
オフェリアァァアアア!! 」
最期に思い浮かんだのは、怒りでも憎しみでもなく、ただ守ろうとした、己を見つけてくれた女。
その名を叫び、断末魔をあげながら、星の終わりを夢見た巨人王スルトは息絶えた。
「……ああ、破壊しか知らぬ哀れな巨人よ。これもまた悲劇であろうな」
それを聞いてか聞かずか、何かを悟ったようにエルデンは呟く。その手には先程までなかったはずの、熱気と冷気を発しながら耀くナニカが存在していた。
__氷炎のデモンズソウル
こうして、一つの戦いが終わる。それはつまり次なる戦いの始まりを意味していた。
氷雪の女王、空想樹、そして__。
「__見事だ。諸君」
巨人王の死を見越したかのように、
波乱は、まだまだ続く。
エルデン「闇の奔流ってねーよな……せや! 作ったろ!」
次で終わると言ったな? あれは嘘だ。
エルデンくんの使ったオリジナル魔術の名前は適当です。ルビかなんか中二っぽい。