異聞帯がロスリックだった件 作:理力99奔流スナイパー
◎
やったぜ
っしゃあ! 眼帯ちゃんを救出!
ほんと危機一髪だった! まさかオメメ犠牲にしようとするとか! 覚悟ガンギマリ過ぎィ! しかもあの流れ絶対シリウスなんたらってのも使ってたろ!
少しでも来るのが遅かったら失明して最悪脳味噌くるくるパーになって死んでたとかマジ? 誰だよルドウイーク居れば大丈夫っしょ! って言ってた奴、俺だわ!
いやでも狩人様召喚されるとか予想外でしょ。デモスレさんはもっと予想外だわ。しかもなんか異聞帯のスルトにまで目を付けられてたし……ちょっと眼帯ちゃん不憫過ぎませんかね? これ絶対あれでしょこれ、本来のシナリオなら死んでたろ。
カドック生きてたからまあ大丈夫だと思ってたけどやっぱ死ぬ奴は死ぬのね……ってか回収しに来たのが麻婆の時点で死亡フラグまだまだ満載だったわあいつ……。
まあでも眼帯ちゃんに関しては助けられて本当に良かった。スルトもなんか色々混ざっててやべーことになってたし万が一を考えて無名さんも連れてきといて良かったわー。
デモスレ相手にも内心ビクビクだったけど、スタイリッシュ聖女と弦ちゃんの不意打ちタコ殴りでぶちのめしたしなんかクールに去るぜ! って感じでカルデアに大物感見せ付けて立ち去れたしもう完璧じゃねこれ?
狩人様に腕吹っ飛ばされたけど。痛い。まあ、死ねば治るし~? ……痛い。
にしても狩人様参戦とかずるくない? しかも見た感じ弱体化してるとはいえ上位者のままだよね? ずるくね? ずるい(確信)。
まあ、元より戦力差あるしこのくらいのハンデは別に良いけど他の異聞帯がなんか可哀想だな……あ、そういやキリシュくんにどう説明しよ? 不可侵条約みたいのあったよね? うーん……適当に誤魔化そ!
それよりも眼帯ちゃん歓迎する為に祭祀場掃除しないと! ということで鯖の皆さん瓦礫の撤去よろ!
さあ、そんな感じで今日も一日がんばるぞい!
__とあるクリプターの手記より。
◎
__ファランの城塞。
かつて、深淵の監視者たちの本拠地であったそこは彼らが薪となった後、腐った森に呑まれ、毒沼に沈んだ。
ファランとはその昔、大狼の住まう黒い森の庭だったが、長い年月が過ぎ去り、いつしか流刑者の地となった。ファランと呼ばれるようになったのもその頃だ。
火の時代において流刑者とは罪人の他に、ダークリングを宿した不死人も居た。ファランの不死隊を結成した不死たちもきっと、その中の幾人かだったのだろう。
彼らが深淵歩きの伝説に触れ、その身に狼血を宿すことでファランの不死隊、“深淵の監視者たち”が誕生したのだと思われるが、その経緯には様々なことが語られる。
もはや見る影も無いその地で、侍祭の末裔たちと老狼に仕える番人たちは戦士の眠りを守り続ける。それこそが、彼らに与えられた使命であり、自らをこの世に繋ぎ止める唯一の縁なのだから__。
そして、再び帰還した“王”は兵を募った。
来るべき戦いの為に。恐るべき深淵に真っ向から立ち向かえるだけの猛者たちを喚び寄せんと__。
「……随分と様変わりしたな」
城壁の上から毒沼を見下ろしながら、エルデン・ヴィンハイムは驚きを以て呟く。
視線の先に居る者たちは、少なくとも彼の記憶では本来そこに居るはずがない存在だった。道中の生贄の道や磔の森も同様に見慣れぬ者たちばかりが居る。
これが薪の王__“深淵の監視者”が兵を、戦力を募った結果だ。限りなく少ないこの異聞帯において正気を保ち、また腕に覚えのある者たちは深淵の駆逐という明確な目標を立て、この延々と続く古き時代に終わりをもたらす活路を開かんとする彼らに惹かれ、またすがるように集った。
まるで誘われるかのように、冷たい絵画からミルウッド騎士や幽鬼たちも這い出る。
(……一体何を考えているのやら。もはや深淵狩りには、何ら意味が無いというのに)
今やファランの総戦力は、冷たい谷のイルシールやロスリックにも匹敵するだろう。
その変貌に当初エルデンは疑問を抱いていた。未だにファランの不死隊が深淵の駆逐という大義を掲げていることに。深淵の監視者なのだから当然であろうと思えるが、彼らは知ったはずだ。火を継ぎ、その身を薪として焼かれた際にすべてが嘘であったということを。
偽りの使命。偽りの誓約。
火継ぎとは神々の欺瞞であり、そして人の本質こそが深淵の闇そのものである。だからこそ、彼らは玉座を捨てたのだ。
けれど、彼らは決して諦めてはいなかった。深淵狩りを、その駆逐と根絶を__。
故に、エルデンは評価を改める。かの狼騎士の後継。憧れ焦がれた彼らは如何なる理由が、残酷な真実があれど、心折れることはなく監視者という使命を放棄しないということを理解した。
「……ほう」
それからエルデンは思い出す。深淵の監視者は不死人であると同時に鼻が利く“狼”であるということを。
彼らは深淵の匂いを嗅ぎ付け、その兆候を見つければ一国すらも滅ぼし、異形を狩る。
「……これはこれは。まさか貴公の方から来てくれるとは」
「………………」
いつからそこに居たのかは分からない。ずっと前から居たかもしれないし、ほんの数秒前に現れたかもしれない。どちらにせよ、分かるのは彼__“深淵の監視者”がエルデンに気付かれずにその背後に立っていたということだ。
ボロボロのマントを靡かせる、動きやすさを重視した軽装の鎧。その右手には分厚く長大な特大剣が握られ、左手には短刀が逆手に握られている。
そして、特徴的な尖った鉄兜。それは不死隊の象徴であり、不吉の前触れとして衆人に忌避されたという。
「……遂に話を聞いてくれる気になったか? きっと貴公らにも悪い話ではないはずだ。我らと貴公らで、共に新たな世界を築こうではないか」
監視者を見据えるエルデンの瞳には僅かながら期待が込められていた。いつもならば自ら城塞外縁の篝火から彼の居る場所まで赴き、交渉を試みても門前払いされてしまう。
今回で十回目の訪問になるが、此度は彼が直々に自身の眼前に現れたのだ。何かしら心境の変化があったと考えるのが常だろう。
「………………」
監視者は、兜の隙間から覗かせる赤色に輝く目でエルデンを見据えていた。
もはや理性を失っているように見えるが、その瞳の中には確固たる意志が存在しており、彼が深淵に呑まれかけながら獣と成り果てていないことを証明している。
それを為せたのは、彼らの“狼血”が故だろう。
「_____」
実のところエルデンは警戒していた。
深淵の監視者が、自身に対して敵対的なのは此迄の事柄からよく分かっていた。左手には
けれど、エルデンが動くことはなかった。
「…………ん?」
ボトリ、と首が擦れ落ちる。
とうに大剣は振るわれており、エルデンの首は斬られていた。長時間も斬られたということに全く気付かず、血すら流れぬ程に綺麗な切断面で。
急に視界が下がったことにエルデンは眉をひそめ、そして自身の顔を踏み潰さんとする監視者の足を最期に、彼の意識は暗転した。
◎
「……ふむ、いつ斬られていた?」
篝火の前でエルデンは目覚める。
これで十回目の死。指に嵌めていた貴い犠牲の指輪が砕け散るのを確認し、今は繋がっている首を傾げた。
「何だ……また懲りずにファランへ行き、死んだのか。貴様」
呆れたように、溜め息混じりにそう言い、法王サリヴァーンは彼を見下ろす。
ここは冷たい谷のイルシールにある大聖堂。エルデンは法王との盟約により、ここに篝火を作る許可を得ていた。
「……ああ。首をはねられてしまったよ」
「当然だろう。深淵の末裔である貴様は奴らにとっては狩るべき対象であり、怨敵にも等しい。交渉の余地はなかろうに」
首元を触りながらエルデンは笑う。不死にとって死に対する価値観は軽く、戯れとすら思う者も居る。自身の裏庭で“道場”などと称して延々と殺し合いに興じる火の無い灰たちや神喰らいの守り手たちが良い例だ。
故に、未だに定命の生物であるサリヴァーンには理解し難く、過去において徹底的に迫害されたのは、神々の策略云々含めても当然と思える程にどうしようもない存在のように思えた。
「……ふーむ。どうしたものか」
「始末すれば良いだろう。兵なら出すぞ? 元より目障りな連中だったからな……それに薪の王とはいえ所詮は群れることしか出来ない狼だ。貴様のサーヴァント、特にあの忌々しき戦神を引き連れて来ればどうとでもなろう」
「__貴公。それは些か彼らを舐め過ぎだ」
深淵の監視者を侮る発言にエルデンが指摘する。それはまるで以前の自分を見ているようであった。
ファランの不死隊。それは個人ではなく、複数で薪として成り立っているという、歴代の中でも珍しいタイプの薪の王だ。
王たる資格はその身に流れる“狼血”にこそ存在し、個人個人の戦闘力は神話を生きた歴代の王たちよりも遥かに劣る。故に、甦った王たちの中では最弱と言えよう。
そう、エルデンは思っていた。しかし、実際に見てみてその印象は大きく覆った。むしろ他のどの王たちよりも覇気に溢れ、闘争の中を生きていた。
「それにもはや彼らを単なる群れと断ずるには些か無理がある。彼らはファランの不死隊という個であり、深淵の監視者という群なのだ」
「……ああ。そうであったな。少々口が過ぎた」
かつて、“火の無い灰”が到達した時、深淵の監視者たちは殺し合いを繰り広げていた。
エルデンはその理由を知ることは出来ず、様々な考察をしたものだが、今の彼らを見た瞬間にそれを容易に理解する。
__彼らは、その“狼血”を一つにしたのだ。
その名は深淵の監視者“たち”ではなく、深淵の監視者。もはや個人として薪の王に足り得る存在であり、今の彼らの力は深淵歩きアルトリウスにすら匹敵するだろう。
「深淵歩きの再来……否、深淵すら克服した奴らはもはや憧れを越えた訳か。後数千年ほど生まれるのが早ければ、この世界も多少はマシになったと思うか?」
「……それは流石に無いな。何もかもが手遅れだ」
「ククク……だろうな。とっくの昔から、神々が火を手にした時からこの世界は修正しようがない程に間違っていた。故に、我らは__」
「__終わりを待つしかない」
二人が笑い合う。サリヴァーンは今でもエルデンのことを解せぬ存在だと思い、狂人とすら思っているが、それでも彼らが同盟を結び、気安く語らう関係が成り立っているのは一重に利害の一致だけではない。
結局のところ彼らは同類なのだ。望みも行き着く先も同じ__終わりの先にこそ、希望があり、そしてそこでのみ彼らの野望は叶う。
「……だが、ならばこそ優先して滅ぼすべきだとは思うが? 話に応じぬ以上、放置しておくべきではない」
「いや、駄目だ。それでは駄目なのだ。彼らにはカルデアの壁になってもらわなければ」
「……またそれか。奴らが来るまでに連中が行動に移せば意味ないぞ? 連中、いつになったら来るのだ?」
「さあな……次かもしれないし、その次かもしれないし、その次の次かもしれない。なに、あまりにも遅ければこちらから招き入れるまでさ」
「……なるべく早くしろ。英霊共の相手はもう飽きた。あの半神の槍兵はなかなかに手応えあったが、どいつもこいつも取るに足らぬ有象無象ばかりだ」
嘆くように、サリヴァーンは言う。人の時代において英霊となる程の偉業を成した者たち。然れど、火の時代というのは英雄ですら心折れ、ソウルと成り果てる魔境。その時代において上から数えた方が早い強者に位置するサリヴァーンからしてみれば抑止によって召喚された汎人類史の英霊とやらは肩透かしも良いところであった。
サリヴァーンは元より武人ではなく、闘争も好まない。魔術の手腕も二刀流の剣術も必要だから得たに過ぎず、どちらかと言えば策略を好む男だが、退屈を持て余すこの異聞帯において唯一の娯楽は生死を賭けた闘争くらいだ。
だからこそ、あのエルデンが異常なまでに評価し、待ち詫びているカルデアという者たちへ強い関心を寄せる。
「了解した。けれど、侮るなよ? ご老体」
「ふん……分かっている。木っ端め」
何だかんだ楽しみにしている様子のサリヴァーンにエルデンは薄い笑みを浮かべながら軽口を飛ばす。
「……さて、そろそろ貴公の“王”と面会したい」
「__ああ。そうだったな、良いだろう。丁度“食事”を終えた所だ」
パチン、とサリヴァーンが指を鳴らす。
すると次の瞬間。彼らは別の場所へ転移する。この冷たい谷の奥地にある、かつて神々が住まい、栄華を極めていた都__“アノール・ロンド”へと。
「秘匿者が謁見を申し出ている。通せ」
「……御意」
空間転移。魔法の域にある大魔術を何のことでもないように使いながらサリヴァーンは守るように立つ深みの主教たちを退かし、大柄な彼には些か小さな階段を上り、エルデンはその背について行く。
そこは廃聖堂。かつて、竜狩りの筆頭騎士と巨大な処刑者が試練として不死に立ち塞がった大広間。神聖なるその空間は澱んだ闇に蝕まれ、今や僅かな面影を残すばかりだ。
エルデンは、懐かしさと物悲しさを覚える。あの頃を知る身としては当然の感情であろう。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️……」
何かが、蠢く。
それは唸り声にも、呻き声にも聴こえる叫び。歪で人骨が入り雑じった黒く醜悪な汚泥のような肉塊が、腐敗臭を漂わせながら床を這う。
「……ご機嫌よう。相変わらずそうで何よりだ、エルドリッチ」
そんな無形の怪物を前にエルデンは表情一つ変えず、その虚空を見つめているような瞳で見据えながら語り掛ける。
__“神喰らいのエルドリッチ”。
薪の王が一角。おぞましい人喰いの果てに、薪となるだけの力を得た深みの聖職者。その肉体は蕩け、人の膿そのものと成り果てている。
「◼️◼️……◼️◼️◼️……◼️◼️◼️◼️◼️◼️……?」
「……前にも言ったが、今の俺では貴公の言葉を理解出来ぬ。申し訳無いが、啓蒙低き俺でも解るよう話してくれ」
「__◼️◼️◼️◼️」
ほんの数瞬、肉塊の動きが停止したかと思えば、まるでのたうち回るように蠢き、中から何かが胎児が出産するかのように、蛹や繭から成虫が飛び出すように、或いは寄生虫が肉皮を食い破ってくるように、這い出てくる。
ブシャ! と弾ける果実のように汚水のような体液の飛沫がエルデンの顔に掛かるが、彼は僅かに顔をしかめるだけで然程気にしていない様子だった。
「__これなら、分かるカ?」
響く高めの女声。
出てきたのは、黒い襤褸布に身を包んだ痩せた女性のような体つきの人物。蛇の尾のような汚泥から上半身だけを生やしたその姿は美しさと醜さ、そしておぞましさが入り雑じった形容し難いものであった。
「……ああ。それでいい。いつもその姿で居てくれれば助かるのだが」
顔の半分を隠す太陽を象った王冠を被り、死の瘴気を纏う骨で作られた大刃の突いた大杖を抱き抱えるように持つ彼或いは彼女はこの火の時代においては有名な存在だった。
陰の太陽__グウィンドリン。
日が陰り、神々の去った神都に唯一残ったという大王グウィンの息子であり、女神として育てられた暗月の神__旧王家が統治する冷たい谷のイルシールにおいて信仰されていたが、法王の謀叛により幽閉され、その挙げ句に神喰らいの供物として捧げられた。
かつての華やかさは失われ、みすぼらしい姿となったが、その瓜二つの姿はエルドリッチが彼を喰らった何よりの証拠であった。
「断る……この貪欲ナる偽リの神の姿で過ごスのはァ……アア……不愉快極まりなァイ……」
「……そうか」
紛うことなき神威を放ちながら、エルドリッチは死体のようにぐったりしたグウィンドリンの肉体の方の口を動かし、どこかぎこちなく不自由そうに喋る。
まるで喋り慣れていない怪物のようなその姿は、とても元が人間でしかも聖職者だとは思えなかった。
「アア……深淵の末裔よ、オマエの姿を見るのモ、酷く不愉快ダ……ロストベルト、異聞帯だっタカ? 可能性無きが故に、剪定さレた行キ止まりの人類史だト? アア……アア……! 何と愚かナ! 何と腹立たしいコトか……!」
突如として怒り狂うエルドリッチ。対するエルデンは見慣れた光景であるかのように、或いはああまたかといった様子でそれを見据える。
「いずれ静謐なる“深海の時代”ヘ到達スるこの世界ガ! すべテが深イ海の底へと沈みユき、高次元暗黒へと夢想スる新世界の到来をォ! たカがヒトごときの繁栄の為にィ! 消し去るナどコレ以上の愚行がアろうカァ!」
「……全く以てその通りだ。一つの種族の為に、数多の歴史を、世界を切り捨てる。何ともまあ都合が良く、度し難い」
本体である汚泥を激しく蠢かせ、憤怒の言葉を重ねる。エルデンはその醜悪な有り様をどこまでも無機質で無感情な瞳で見据え、頷く。
「そうダ! そうであろウ! 神も! 人も! それ以外のスベテも! 等しく無価値! 我らが待ち望ム新世界の到来を邪魔するモのは如何なるモノであろうト許してはならヌゥ!」
初めて異聞帯について知った時、エルドリッチは激怒した。信じ難い真実であったが、エルデン・ヴィンハイムという全く異なる歴史からの来訪者に際し、認めざるを得なかった。
かつて、エルドリッチが予見し、垣間見た火が消えた先にある、闇の中に沈んだ世界。いつか必ず、訪れるそれを彼は“深海の時代”と名付け、ただひたすらに待ち望んだ。
深みとは本来、静謐にして神聖であり、故におぞましいものたちの寝床となる。それが“闇の時代”のことを指しているのか、古い“上位者”に列する存在たちが蔓延る世界なのか、その詳細をエルデンは知らず、分かる事実で考察するしかないが、少なくともエルドリッチにとっては希望に等しく、だからこそ、彼はいずれ来る深海の時代の到来に備え、貪欲に力を求め、苦行にも等しき神喰らいを始めた。
その覚悟すらも踏みにじられ、剪定されたというのだ。当然の怒りと言えよう。
「__アア、して、此度は何用ダ……?」
「……ああ。そちらの法王殿には伝えているが、俺が思い描いている計画を、貴公にも教えようと思い、馳せ参じた所存だ。またこれは、これからについての話でもある」
「ほう……? 申してみヨ……」
唐突に気味が悪いくらいに落ち着いた声へと転調させ、尋ねるエルドリッチにエルデンが漸く本題を切り出す。
傍らで何食わぬ顔で佇んでいるサリヴァーンを一瞥しながら、神喰らいは興味深そうに言葉の続きを待つ。
どこか尊大さ、そして傲慢さを覚えるその態度は纏う神威も相馬ってまるで本物の神のようであり、おぞましい容姿からは程遠いものであった。
「__さあ、貴公。舌を噛んで、語り明かそうではないか」
両手を広げ、エルデンは笑う。
◎
「__は。実に愉快な奴だな」
廃聖堂の前で、サリヴァーンは笑う。
エルデンは次は巨人と話す為に“罪の都”へと向かい、エルドリッチは新たな食事の時間が来たため奥へと消えていった。
得体の知れぬ咀嚼音が神都中に響き渡っているが、彼も信奉する深みの主教たちも外に居る銀騎士だった者たちも日常のことであるように気することはない。
「どこまでも狂っている。が、あのエルドリッチすらも引き入れたのは、流石と言えよう」
愉しげな声。彼にとってはエルデンも、エルドリッチも理解し難く、頭の可笑しい狂人にしか見えない。
しかし、それ以上に彼らには力があり、利用価値があり、また必要不可欠な存在だった。だからこそ、サリヴァーンは彼らの盟友なのだ。
「さて、ロシアと北欧だったか……二つの異聞帯が、カルデアとやらの手によって消滅した。前者はどうでもいいが、後者の方に住まう女神に炎の巨人は、エルドリッチの極上の供物になったやもしれぬというのに」
何となしにサリヴァーンは呟く。エルデンが伝えていないはずの他の異聞帯についての情報。何故か彼はその多くを把握していた。
どこで知ったのか__少なくともエルデンにとっては予想外な事実であり、望むべきことではないだろう。
「グウィンドリンだけでは足りぬ。英霊の神性だけでは足りぬ。彼が“深海の時代”を統べるには、もっと
神々はとうに滅び、どうしたものか難儀していたが、エルデン・ヴィンハイムの来訪から暫くしてその問題はあまりにも呆気なく解決した。
絶好の餌場が存外近くにあったのだ。
黒き最後の神、オリュンポス十二機神、そしてブリテンと南米には__。
サリヴァーンは企てる。火の時代の古き神々にも負けぬ強大な神性が、生命が、異聞帯には揃っている。それらは神喰らいのエルドリッチの糧となるに違いない。中には機械や単独種といった流石の彼でも腹を壊してしまいそうな存在も居るが、別段問題は無いだろう。
元より神喰らいとは、苦行なのだから。
「__何の因果かは知らぬが、我らは再び現に肉を得た。この剪定された、滅び往く世界に」
灰に討たれ、生き返った記憶。現代までイルシールの法王として君臨し、神喰らいと共に深海の時代を待ち続けた記憶。相反する記憶のどれが正しいかは知らぬが、別に知ろうとも思わない。
法王サリヴァーンという男は何も変わらぬ。その身に燃えるような野心を抱きながら、しかし暗躍を続ける。終わりの先にあるのがエルドリッチが待ち詫びる深海の時代であろうと、闇を乗り越えた人の時代であろうと、そしてエルデンの思い描く光景であろうと、彼は彼が思うがままに動く。
「火を知らぬ者には世界は描けず、また火に惹かれる者に世界を描く資格は無い」
果たしてそれは誰の言葉だったろうか。思い出すのは、今もきっと燃えているであろう冷たい故郷。生まれ、育ち、そして何も失っていなかったが故に捨て去るべきだったもの。
__あの少女は、あの赤頭巾の老い耄れは、為すべきことを為したのだろうか。
「故に、エルデンよ、闇でありながら、
思惑は交錯する。その行く末は、誰にも分からず、然れどきっと近いに内に訪れるだろう。
ドロリッチとブラボ組の相性いいな(今更)