異聞帯がロスリックだった件   作:理力99奔流スナイパー

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ミラのルカティエル登場させるにあたって久しぶりにダクソ2新データでやったけど巨人の森とかまだ人が居て嬉しかった。


エルデンとカルデアの者たち 前

 ◎

 

 

 __ロシア異聞帯が消滅した。

 

 その知らせは、急遽召集されたクリプターたちを酷く驚かせた。

 

『……死んだのか? カドックは』

 

 各人が様々が感情を抱く中、まるで予想していたとでも言うのか、いつもと変わらない様子でエルデン・ヴィンハイムが問いかける。

 

『不明だ。しかし、“大令呪”を行使してはいないようだし、恐らく生存はしているだろう。上手く逃げ延びたのならばいいが、カルデアに拘束されている可能性が高い』

 

『……そうか』

 

『んだよ、随分と冷たい反応だな。お前さんカドックとは結構仲良しだったじゃねえか』

 

 キリシュタリアの言葉に眉一つ動かさず、ただ一言そう返すエルデン。そんな彼の反応に疑問を持ったベリルが問う。

 

『そうね。てっきりカドックはアナタのお気に入りだと思っていたのだけれど……』

 

 ペペロンチーノもまたその疑問に同意する。

 

『もうエルデン……もっと表情や態度に出しなさい。ただでさえ貴方は無愛想なのだから誤解されちゃうわよ?』

 

 するとオフェリアが呆れた様子で指摘する。

 

『む、そうか?』

 

『そうよ。本当はカドックのこと、心配してたし、生きていて安心しているのでしょうけど……』

 

『え? そうなの?』

 

『……ああ。その通りだ』

 

 どうやらあれでカドックの身を案じ、生存に安堵していたようだ。もはや無愛想などというレベルではない。そして、これを判別したオフェリアにペペロンチーノは少しだけ戦慄した。

 

 ヒナコはただ冷ややかな視線を向けている。

 

『私としても彼の生存は喜ばしいことだ……さて、報告はこれだけではない。これを観てくれ』

 

 するとキリシュタリアはある映像を表示する。

 

『…………!?』

 

 そこに映る存在を認識した瞬間、エルデンは目を見開く。

 

 映像には今話題のロシアと思われる雪景色で大剣を振るう、翁の面を被った奇抜な騎士が映っていた。

 

『何だ? こいつは?』

 

 皆の疑問を代弁するようにベリルが問う。

 

『ロシアにて出現が確認された汎人類史側と思われるサーヴァントだ。クラスは不明。自身のことを“ミラのルカティエル”と名乗っていた』

 

『ルカティエル……女性ですか?』

 

『いや、声は男のものだったそうだ。この謎のサーヴァントは突如として現れ、ロシアの勢力を殺戮し、異聞帯の王であるイヴァン雷帝を単独で撃破した。実際のところロシアを滅ぼしたのはカルデアではなく彼といっていい』

 

『! 単独で異聞帯を滅ぼしたというのですか? キリシュタリア様』

 

『ああ。俄には信じ難いことだが……実際、査察へ向かわせたランサーと戦闘を行い、彼を打ち負か『俺は敗けてないからな?』……深傷を負わせた』

 

『ランサー……あのカイニスが、ですか?』

 

 カイニス。後の名をカイネウス。

 

 キリシュタリアが従える三騎の神霊のサーヴァントの内の一角であり、ギリシャ神話における猛々しきアルゴナウタイの一員……海に愛され、海に穢された者。

 

 海神ポセイドンの力を持つ彼ないし彼女だが、どうやら件のサーヴァントに敗北したらしい。近くに居るらしい本人は否定しているが……。

 

『ああ。神霊である彼を圧倒する程の『圧倒されてねぇ! あれは油断しただけだ!』……ともかく並みの英霊ではない』

 

『へぇ……そりゃ恐ろしいな。こっちに来ないことを願うぜ』

 

 キリシュタリアの説明に皆がこの正体不明のサーヴァントを警戒すべき存在だと認識する。

 

 カドックの担当するロシア異聞帯は唯一空想樹が根付いていなかった。しかし、だからといって決して弱くなく、むしろ強い歴史だ。それを単独で滅ぼしたという事実は恐るべきことであり、脅威がカルデアだけではないことを証明していた。

 

『そして、基本的には剣術による接近戦を行っていたが、イヴァン雷帝との戦闘の際、杖を触媒に魔術を行使した。それは現代のあらゆる体系からかけ離れていたが、ある一族のものと合致した。よって、このサーヴァントは“火の時代”の英霊の可能性が高い』

 

 __“火の時代”。

 

 キリシュタリアがその単語が出した瞬間、全員がエルデンへと視線を向ける。

 

『成る程。ある一族というのはヴィンハイムのことか。確かに“火の時代”の英霊ならばその実力も納得だ。神代よりも遥か古代の猛者たち……その神秘は下手な神霊よりも濃い』

 

 デイビットが納得した様子で頷く。一方、エルデンは神妙な面持ちを浮かべていた。

 

『何か心当たりはないかい? エルデン』

 

『…………』

 

『……エルデン?』

 

 何か知っているかもしれないという期待を抱いてキリシュタリアが問う。しかし、エルデンは表情を硬直させ、映像に釘付けになっていた。

 

『……何故、奴がロシアに? 何が目的で__』

 

『どうした、大丈夫か?』

 

『こらエルデン! キリシュタリア様が呼んでるわよ』

 

『__む、何だ?』

 

『このサーヴァントについて心当たりがないか質問した。けれど、その様子だとやっぱり何か知っているようだね?』

 

『……ああ。俺の知る限りではそいつの真名の候補は一人しかいない』

 

『! ……本当か?』

 

『ああ。十中八九そいつで間違いないだろう』

 

 皆が注目する。情報は多かったが、まさか真名にまで行き着くとは。

 

『まず最初に、そいつはミラのルカティエルではない。本来のルカティエルはオフェリアの予想通り女だ。そいつは彼女の名を広める為に様々な土地で活動していた……今回もその一環だろう』

 

 淡々と説明するエルデン。しかし、そこには想定外の存在に対する苛立ちと焦りが見え隠れしていた。

 

 あのエルデン・ヴィンハイムが、だ。故に、あのベリルですら表情を真剣なものへと変えて彼の話を聞く。

 

『……ふむ、ミラのルカティエルは偽名か』

 

『クラスについては分からないの? エルデン』

 

『分からん。有力なのは見た目通りセイバーだが、そいつはライダー以外の全てに適性がある。本物のルカティエルが大剣を使うからそれを真似てるだけで剣も槍も弓も短剣だって使うし、魔術も奇跡も使える。場合によっては専門を上回るだろう』

 

『何だよそれ? 万能じゃねえか』

 

『ああ。流石にクラスで制限を受けてるだろうが……そもそもサーヴァントですらない可能性もある。そいつは不死で、その最期は不明だからな』

 

『……不死、ね』

 

 その単語にヒナコが反応する。

 

『奴に本当の名は無く、幾つかの呼び名があるのみだ。呪われ人、亡者狩り、因果へ挑みし者、死を超える者、原罪の探究者……』

 

 そして、と彼は遂にある名を口にした。

 

「__“絶望を焚べる者”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎

 

 

 __やぁ、ご機嫌如何かな? 

 

 __私はそうだね。通りすがりの花の魔術師とでも呼んでおくれ。そう、今君の思い浮かべた名前が正解だ。

 

 __ずっと君のこと見てたよ。最後の悪足掻き、惜しかったね。横槍が無ければそれなりの損害を与えてたんじゃないかな? 最初は卑屈で根暗な奴だなぁって思ってたけど意外と根性あるじゃないか。

 

 __その反骨心、実に彼の気に入りそうな人間だ。

 

 __彼って誰かって? 君も知っているだろう。人間性の怪物、エルデン・ヴィンハイムさ。

 

 __ああ。怪物さ。恐ろしくおぞましい怪物。あれなら人類悪の獣の方がずっとマシだね。

 

 __何でか? 人類悪とは即ち、人類“が”滅ぼす悪。その人理を脅かすものの本質は人間への悪意という一過性のものではなく、人理を守ろうとする願いそのもの。即ち、人類愛なのさ。

 

 __より善い未来を望む精神が今の安寧に牙を剥き、やがて英霊召喚の元になった人類の自滅機構・即ち自業自得の死の要因となるって訳だ。

 

 __けどあの怪物はどうだい。アレに愛なんて欠片も存在しない。敵意すら存在しない。ただ好奇と期待だけで災厄を振り撒こうとしている。

 

 __まあ、君は信じられないだろうね。何の気紛れか知らないが、彼は君たちには人間性を見せていた。けど言わせてもらうよ。

 

 __あれは私以上の“ひとでなし”さ。

 

 __さて、本題に入ろう。私としてはカルデアの方に協力したいところなんだけど、生憎と私は今、彼のサーヴァントだし、なんか変なのに取り憑かれちゃってねぇ……塔へ帰ることも自害することさえ出来ない。

 

 __けど僕はハッピーエンドが好きだ。とんでもないバッドエンドを思い描く彼とは相容れない。尤も、今はそれも悪くないと思ってしまっているけれどね……だいぶ汚染されてしまったよ。

 

 __久方ぶりに恐怖心ってのを抱いたよ。いつ僕が僕でなくなるのかを考えると夜も眠れない。だから私がまだ私である内に何か手を打たなければならない。

 

 __そこで君だ。

 

 __このままでは彼の筋書き通りになってしまう。それだけは何としてでも避けなければならない。

 

 __カルデアは駄目だ。彼は知り過ぎている。あっちはこっちの僕に任せるよ。彼にとっての不確定要素はあの異星の神と、君たちAチームだ。そして、君はあの彼らの中で一番の可能性を秘めている。

 

 __キリシュタリア? 残念。彼では時間が足りない。君は知らないだろうが、彼はもう長くないんだ。ん? 詳しくは言うつもりはないよ。個人のプライバシーだし、君には必要のない情報だ。

 

 __ああ、オフェリア・ファルムソーネも最後の最後で躊躇してしまうし、芥ヒナコはそもそも彼と敵対しないだろう。それでも可能性はあるがね。

 

 __けど言ったろう。君が最も可能性があると。

 

 __イレギュラーは多い方がいい。その分、より最悪のシナリオへ繋がる可能性も高いけどね。

 

 __私はろくでなしさ。人の心が理解出来ないどうしようもない阿婆擦れだ。だけれどね、だからこそ、私はエルデン・ヴィンハイムがやろうとしてることを看過することなんて出来ない。

 

 __だから頼んだよ、カドック・ゼムルプス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎

 

 

「さて、ここに至った今、我々がすべきこととは何か……現状の把握だ」

 

 __虚数潜航艇、シャドウ・ボーダー。

 

 ブリッジの作戦司令台に立つのは、この“カルデア”において今や貴重なサーヴァントである名探偵、シャーロック・ホームズだった。

 

「で、“アレ”は一体何なのかね? ホームズ君」

 

 そう言うのは人理修復という偉業を成し遂げ、用済みとなったカルデアを買い取り、所長の座に着いた小肥りの男、ゴルドルフ・ムジークであった。

 

 彼の視線の先には大型のディスプレイがあり、そこにはある静止画が映されている。

 

「__分からない。私を以てしても何も分からない」

 

 それは背中に二機の大型のスラスターを搭載した、赤いロボットだった。

 

 突如として現れ、ロシア異聞帯の消滅を促進させた存在。確認出来ただけでも“九機”が各地で無差別攻撃を行い、カルデアもそれに巻き込まれる形となった。

 

「ロボットということは、呂布さんと同じで中国出身のサーヴァントでしょうか……?」

 

 短い桃髪の少女、マシュ・キリエライトが画像を見ながら問う。

 

「どうだろうね。カルデアにおいては過去の英霊だけでなく、現代そして未来の人物がサーヴァントとして召喚された例もある。恐らくはその類いだろうと思われるが、情報が少な過ぎる」

 

「武装はチェーンガンにパルスキャノン、レーザーブレードに垂直ミサイル……その火力と機動力といい、明らかなオーバーテクノロジーだ。こんなのがサーヴァントだっていうんだからふざけた話さ」

 

 お手上げといったポーズを取るのは、美しい少女の姿をした世紀の大天才__レオナルド・ダ・ヴィンチだ。

 

 カルデアのシステムはこのロボットの霊質をクラス・ルーラーのものだと解析した。ロボットの中に居る存在ではなく、このロボットが、だ。それはつまりはロボット自体がサーヴァントであることを意味している。宝具か何かではなく……。

 

 有り得ない、とは言わない。機械の英霊は確かに居た。呂布奉先、加藤段蔵、メカエリチャン……最後はともかくここまでがっつりしたロボットが召喚されるとは予想外だった。

 

 そんなイレギュラーな存在を元人類最後のマスターである少女、藤丸立香はジッと見つめ__。

 

「……かっこいい!」

 

 周りがずっこけそうになる。

 

「いや立香ちゃん? 気持ちは分かるけどね?」

 

「こんな状況で何を言っているのかね君は! 大体日本人はロボットなんて見慣れているだろう! 東京にガンダムなど配置しおってからに!」

 

「えっと、所長……お台場のあれは偽物です」

 

「まったく……君はアレに殺されかけたのだぞ? 少しは恐怖心を持ったらどうだ?」

 

「あはは……ごめんなさい」

 

 目を輝かせる立香にゴルドルフが呆れた様子で叱る。サーヴァントたちの防御が無ければ今頃瓦礫に潰されていたことだろう。

 

 直前まで戦闘をしていたクリプター、カドック・ゼムルプスは不意を突かれた形で爆風で吹っ飛ばされるも軽傷と気絶だけで済んだ。現在は治療を受け、個室で拘束している。

 

「それにしても、ルカティエルさん……大丈夫かな?」

 

「サーヴァントですし、きっと無事ですよ。先輩」

 

 そして、彼女はあの攻撃ではぐれた翁の面を被ったサーヴァントのことを心配する。

 

『__初めまして、ミラのルカティエルです……』

 

 カルデアのデータベースのどれにも該当しないクラスで、素性も全く不明な翁の面をしたサーヴァントは、ロシアの雪原で殺戮猟兵を焼き尽くした炎の嵐の中から現れると立香たちに優雅な一礼をしながらそう名乗った。

 

 殺戮猟兵を駆逐し、あのイヴァン雷帝ですら単独で撃破したイレギュラーの度合いで言えば件の赤いロボットに並ぶ規格外の英霊……彼の存在が居なければロシア異聞帯の攻略はもっと苦労したに違いない。

 

 無口だが、悪い人ではないと立香は思う。しかし、ダヴィンチたちが警戒する理由も分かる。

 

 単純な実力もそうだが、大剣を使っていたかと思えば直剣、棍棒、斧、槍、大盾、弓、拳と様々な武器に一瞬で持ち替え、更には炎や雷、魔力を操るなど高度な魔術までも使えるのだ。

 

 一つ疑問なのは、途中から剥ぎ取った殺戮猟兵の衣服を着込んでいたことだ。変装のつもりだろうか? 

 

「ともかくだ。一刻も早くこいつの対策を考えねば。異聞帯を攻撃していたが、我々も構わず攻撃してきたのだ。味方だとは思えん」

 

 正体不明のロボット。次の異聞帯にもまた出現した際の対策にカルデアは悩まされる。

 

 ただでさえカルデアは追い詰められた戦力の中、異星の神と七つの世界という巨大な敵と対峙しているのだ。更に脅威が増えたのは由々しき事態だった。

 

「__ほう。これは驚いたな」

 

 その声が響いた時、空間が凍り付いた。

 

「まさか“ナインボール”、それもセラフが召喚されるとは。アラヤも本気という訳か……」

 

 立香のすぐ背後に、濃い青色のコートを身に纏う灰髪の青年が立っていた。

 

「__!」

 

 真っ先に動いたのはホームズだった。対象を排除しようと一瞬で近付き、鋭い蹴りを放つ。

 

「__緩やかな平和の歩み」

 

 ちりん、と鈴が鳴る。すると蹴りは青年の眼前で停止する。否、止まっていると見間違う程に遅くなったのだ。ホームズだけではない。周囲の者たちも同じように動きが鈍化していた。

 

「……っ!?」

 

「おっと、迂闊に動かない方がいい。貴公らが俺を殺すよりも俺が何人か殺していく方が速いぞ? シャーロック・ホームズ」

 

「! 何……」

 

 低速の蹴りを難なく避け、青年は近くの椅子へ腰掛ける。それと同時に鈍化が解除される。

 

 さらっと真名を言い当てられてしまっている。いや、既に知っていたと言うべきか。

 

「な、何者だっ……!?」

 

「君はっ……エルデン・ヴィンハイム……!?」

 

「エ、エルデンさん……!?」

 

 皆が驚愕し、混乱する。ダヴィンチとマシュはその姿に見覚えがあった。

 

「何ぃ!? エルデン・ヴィンハイムだとぅ!? あの狂人のエルデンかっ……!?」

 

「エルデンって、確かクリプターの!」

 

「__やぁ、ご機嫌よう。カルデア諸君」

 

 ゴルドルフが悲鳴に近い声をあげる。立香もその名は今は亡き大人のダヴィンチから聞いていた。

 

 曰く、ヴィンハイムという特別な一族の生まれでキリシュタリアとデイビットに並ぶ天才であり、戦闘力だけならばカルデア最強でサーヴァントにも優るとも劣らないという。敵となった今では警戒すべきクリプターの代表格だった。

 

 それが今、目の前に居る。

 

「……安心したまえ。今回は別に争いに来た訳ではない」

 

 そう言って八人目のクリプター、エルデン・ヴィンハイムはくつくつと笑う。

 

「……君、そんなキャラだったっけ?」

 

「貴公は……ダヴィンチか? 随分と小さくなったな、幼女趣味にでも目覚めたか?」

 

 寡黙で無表情。以前、そんな印象を抱いていたダヴィンチは饒舌に語るエルデンに怪訝な表情を浮かべる。対してエルデンは記憶と違うダヴィンチの容姿に驚いている様子だ。

 

「……ああ、そういうことか。神父辺りに殺られたか? 流石は世紀の大天才、自らのスペアを作っていたとは」

 

「自己完結してくれて何よりだ。しかし、解せないな。どうやって侵入した? おまけにセキュリティや私たちに気付かれずにここまで接近するなんて……いくら君でも不可能のはずだ」

 

「貴公の言う通りだ。俺では姿を消し、音を消せてもサーヴァントに一切気付かれずに近付くのは無理だろう。けれど、可能な存在は居る」

 

「……近くに君のサーヴァントが居る訳か。アサシンか?」

 

「さあ、どうだろうな?」

 

 そう言いながら手に持つ小さな鈴のようなものを弄ぶエルデン。彼だけでなくサーヴァントも来ている。当然と言えば当然の事実にゴルドルフやスタッフたちは更に動揺に包まれた。

 

 そんな彼らなど気にも留めず、エルデンは興味深そうに立香を見据える。

 

「……ふむ、性別は女だったか」

 

「え……?」

 

「……さて、久しい顔触ればかりだが、何人か新顔も居る。一応挨拶しておこうか」

 

 するとエルデンは立ち上がり、優雅な貴人の一礼をする。それは立香とゴルドルフに向けられたものだった。

 

「初めまして。俺はヴィンハイムのエルデン……しがない魔術師であり、今は汎人類史の裏切り者をやっている身分だ。今後ともよろしく頼むよ」

 

「えっ……あ、その……」

 

 よろしく、と立香が思わず返事しようとする前にホームズが彼女を守るように前に出る。

 

「それで、争いに来た訳ではないと言っていたが、では何が目的でカルデアに侵入した?」

 

 ホームズが問う。

 

「……ああ。色々とあるが、主な目的は一つ__カドックはどこだ?」

 

 その瞬間、エルデンの表情から笑顔が消える。まるでスイッチを切り替えたかのように。

 

「__成る程。やはり君の目的は、カドック・ゼムルプスの救出かね?」

 

「……その反応からするに、どうやら生きてはいるようだな。良かった、安心したよ。で、どこの部屋に収容されている?」

 

「__ふ、ふざけるな! 人質を引き渡せだと! そんな要求が認められるか!」

 

 カドックの居場所を問うエルデンに、ゴルドルフが身体を震わせながらも真っ向から拒絶する。それに対し、エルデンは能面のような表情のまま彼へと視線を向けた。

 

 元よりその悪名からエルデンに恐怖心を抱いていたゴルドルフはその視線だけで顔面を蒼白させてしまう。

 

「ひっ……!?」

 

「……そうだな、至極真っ当な意見だ。ゴルドの息子よ」

 

「へ?」

 

 思わず間抜けな声を出してしまうゴルドルフ。当然だろう、まさか死徒や執行者と殺し合った狂人の口から父の名が出るなど思ってもいなかったのだから。

 

「……けれど、別に俺は許可を求めていない。カドックは元より強奪するつもりだ。どうせ居場所はすぐに分かる」

 

 だから、とエルデンは再び笑みを浮かべる。

 

「__少し話をしようじゃないか。カルデアのマスター」




謎のキャスター……一体誰なんだっ!?
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