期せずA-RISEのPVへの参加権を得てしまった行人は、打ち合わせのため、彼女らの牙城UTX学園を訪れる。そこで待ち受けていたのはA-RISEのセンター綺羅ツバサ。彼女に翻弄されるまま、行人はかねてより一度顔を拝んでみたかった音ノ木坂学院の生徒会長がUTX学園を訪れることを知る。このチャンスを逃してはならぬと、綺羅に頼み込むのだが……。
一方、その頃、西木野邸では、不器用な二人の少女が交流を始めようとしていた。
少しは縮まったのかもしれない。
最初はおっかなびっくりに、当たり障りのない話題からかと思ったけど。
――ほ、本当に、いいの?
――い、意外と飲めます。だ、大丈夫です。
――それなら、いいけど……無理はしないようにね。
塩紅茶は会話のきっかけとするには、ある意味最適だったのかもしれない。不幸中の幸いっていうのは、こういうのをいうのかな。などと花陽にポジティブな考えが浮かび始める。
次は、敬語をなくしてみよう、かな。
そういえば、と真姫はジャムの詰まったお茶請けのクッキーを口に運びながら、
「いつも一緒って訳じゃないのね。アナタたち」
一瞬言葉の意味がわからなかったが、花陽はすぐに意図するところを把握し、
「もしかして、凛ちゃん、のこと。で、で……すか?」
思わず付け加えてしまった不自然さに、失敗しちゃったと思う花陽に真姫は気にした様子もなく、
「敬語、いらないわ」
「――――えっ?」
「同い年だし、その……クラスメイト、じゃない。必要ないわよ」
伏し目がちに、髪をくるくるいじりながら言うその様は、どう見ても素直じゃないなぁと微笑ましいもので、
花陽もつい、くすりとこぼす。
「な、何よ!?」
「え、あ、ご、ごめん」
なさいと続けようとする舌を辛うじて両手で封じ込め、
「……ごめん」
今度は成功した。
その互いのぎこちなさに二人は見つめ合うと、
「ふふっ」
「ぷふっ」
示し合わせたかのようなタイミングで吹き出すのだった。
ひとしきり笑い合うと、空気は簡単に弛緩した。
「ええと、そう、星空さんと小泉さんのことよ」
「花陽で、いいよ?」
そんなことも言えるくらいには。
「そ、そう? なら、私も……」
互いに下の名前で呼び合う、かつてどうしても出来なかったこと。ここから始めてみよう。
「えと、真姫ちゃんも、アイドルが好きなんだよね?」
名前を口にしてくれたことが嬉しくて、頬を紅潮させたまま真姫は今までたった一人にしか語ったことのない秘密を話す。
「……ええ、私も……アイドルは好きよ。花陽、ちゃん」
声にした後で、真姫はガラスの内側へと、ついに二人目を招き入れた自分に気づく。いや、違うか。招き入れたのは初めてかもしれない。彼女の時はいつの間にか入られてしまっていたのだから。
故に、浮かれてるのかしら、私。とも思ってしまう。
そこには、戒めた方がいいんじゃと身構える自分もいて、そんなだからとたしなめる自分もまたいる。
とにかくこういうのには慣れていないのだ。
正解がわからない。
でも、
少なくとも、目の前で同好の士をようやく見つけたとでも言うかのように、パァと表情を明るくしている花陽を見ていると、そんなことは大した問題じゃないのかもしれないと真姫は、つい感じてしまうのだ。
× × × × × ×
「ひ、日高、くん…………?」
しぼり出すかのような声と共に、へなへなとその場に力なく座り込んでいた絢瀬の目に涙が浮かんでいたのを見て、俺の罪悪感はマックスだった。
いやいや違うんですって。わざとやったとかじゃなくてですね。や、またしかにこうちょっと驚かしてやろう的な? ありましたけども、普通、ここまでビビられるとはまさか思わないじゃないすか。てかもうほんとマジごめん。
くそ、そもそも何で俺がこんなコスチュームプレイをする羽目になっているかと言えばだ。
綺羅のやつに、じゃとりあえず校舎に残っていた大義名分を立てなきゃねぇと、この部屋に押し込められたからだ。
ダッシュで一山ほどもある衣装と思しき物体を抱えて戻ってきた綺羅は、
「行人くんに、PVで着てもらうかもしれない服のサイズを測ってたり、試着してもらってたってことにするから。とりあえずこれ合わせてみてよ」
よくわからぬまま、ひとまず綺羅に従ったのだが――思えばこれが、悪手だった。
「……わかったよ」
「うん、よろしくー」
しかしどうやって着るんだこれってのがあるな、ほぼ着ぐるみみたいのもあるんだが……はい却下、クールな俺のイメージが崩れちゃうから事務所NGです。
せめて出来るだけでもマシなのをと思いながらあさっていると、白い袋があった。その中を見てみると、
「うぉっ、ビビった!? ……なんだよこれ」
絶妙に恐ろしい感じの仮面とそれに合わせたジャケットやらの衣装一式が入っていた。なんなんだろうな、この無機質な怖さってのは、生理的にも受け付けないと思う。
「ああそれね、いい顔してるでしょー。私のお気に入り」
どんなセンスしてるんだコイツは、こんなの家にあったら夜眠れなくなっちゃうだろ。
と言いつつも、実は興味あったりする。つける側としてならば、よさげではないだろうか。決して、綺羅の言葉で選んだわけじゃないが、これにしよう。
制服のブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外した俺は、一向に退室しない誰かさんに、
「おい、着替えるんですけどぉ? 今から」
「ここにいちゃ……ダメ?」
あざとすぎる口調と小首を傾げる仕草をかました綺羅だったが。ふふん、女狐め、この俺にそんな物が効くわけがなかろう。
「ったく、少しだけだぞ」
嘘です。速攻で意志とは袂を分かった口を戒めるべく、頬をはたく。
「じゃなくて、ダメ、絶対!!」
「えぇ~、ケチ」
「ケチじゃない、むしろ将来的にはリッチです」
「減るもんじゃないよ」
「ファンが増えちゃうんだよ」
なおもぶーたれる小娘をようやく追い払い、俺はいそいそと着替え始めた。最後に黒ジャケットに袖を通した俺は、仮面を装着してみる。
案の定息苦しいが、ほほう、外から見ると着けてる人の目は映らないがこちらからは見えるようになってるんだな。
晴れて、これでメタモルフォーゼ完了である。さぁ、じゃ自分の姿がどんなもんか確認しよう。
私、その、初めてだからドキドキ……ってか、鏡、なくないすかここ、
「自分の姿が見れないと意味ねー!!」
なかなかクオリティ高いことになっている自信はあるが、これではどうしようもない。え、このままで、ちょっとトイレに行けと? 無理無理、叫ばれでもしたら、俺もう表社会で生きていけなくなっちゃう。
しかし、どうする。
綺羅を呼んで、持ってきてもらう他ないんだろうか。背に腹は……と言うが真っ二つにされたら、結局代わらないよな、などと考えながら、気づけば茜に染まっていた部屋の中で俺は、
不意に聞こえた物音の方向へと、振り返った。
かくして室内に入ってきたのが、どこかで見たことがあるような人物だと思い、疑いつつも近寄ってみたら、なんとその人物は床にへたり込んでしまった。この時点で、しっかり顔を確認し、その疑う必要のないブロンドの髪と共に絢瀬だとわかったのだが、いかんせんカバンを取り落としたり、口をパクパクさせるリアクションに完全に調子に乗ってしまったのである。
一歩近づく度に、恐怖のメーターが上がっていったのが手に取るようにわかるんだもんよ。だから、俺のコスプレも捨てたもんじゃないわははと……もう繰り返すけどほんとすいません、気分はヒーローショーで観客席まで降りていって子供たちを怖がらせる悪役やってました。
しかし、絢瀬の顔が白を通り越して青くなり始めたことで、俺もこれ以上やるとマジでまずいと判断し、マスクを取って真実の姿を露わにしたというわけである。
「――ほんっとーに、申し訳ない。ごめん」
「わ、わかったから、……もう、大丈夫だから」
両手を合わしながら謝罪をする俺に絢瀬は苦笑する。どうにか平生に戻ってくれようで、ほっと胸を撫で下ろした。
すると、
「それより、日高くんは、どうしてここに?」
ごもっともの疑問だ。けども、如何せん事情が説明しにくいったらありゃしない。野暮用と一言で片付けたらドン引き確定だろうし。
「あー、まぁ色々あるんだけど……ちょっと前にA-RISEと知り合いになってさ、で、ちょっと用事があったんだな……うん」
我ながら、必要最低限の表現だなと思いつつも絢瀬は、
「そ、そうだったんだ……」
――やはり、踏み込んでは来ない、のか。
それは拒絶ではない。だが、明確な境界線を絢瀬は俺に対して引いている。距離感を測りかねているだけだろうと思っていたが、どうやら確実にそれは存在している。
出会った当初はそれもわからなくなかった。事情が事情だったからだ。……あれから亜里沙ちゃんを介し、幾度か顔を合わせたのにも関わらず、知り合い以上友達未満という妙な関係性に収まっている以上、やはりそうなのだ。
もっとも俺も踏み込まなかった以上、お互い様、か。
……とはいえ、
「そういう、絢瀬は――」
「いたいいらいって、文ぽぉん!!」
「うるさい。何かあったらどうするつもりよ」
「それはそれで――」
そこに、首根っこを掴まれた綺羅と修羅と化した千歳さんが現れる。
まーた怒らせてる訳か、綺羅のやつは、いや待て、千歳さんの何かあったらって、もしかして俺のことか? ご安心を、日高行人はジェントル紳士ですよ。
クールに肩をすくめつつ、へたり込み、制服も乱れている絢瀬とその前に仁王立ちしていたオリジナリティ溢れるかっこの俺という構図に改めて頷き、
――ん? あれれー? せんせー、この構図ってちょっといけないと思いまーす。
「日高さん……」
「いやいや、待ってください千歳さん。違うんです、これはタイミングの問題だっただけなんです」
半目の千歳さんに、わずかとはいえ今まで築き上げてきた信頼感が音を立てて崩れ去っていくのを感じる。行人、状況証拠ってキライ!!
「おお~、意外と肉食? 行人くんて」
綺羅の瞳がきらりんと光った。
現実逃避に激寒なダジャレを脳内で唱えながら俺は、とにかく変態がいかんことをしてしまったかのような状況を、当事者である絢瀬に説明してもらわねばまずいと彼女を助け起こす。
「と、とにかく説明してくれ、絢瀬!!」
二人が何やら勘違いしてることは、絢瀬とて理解していたのだろう。わ、わかったわと、
「だ、大丈夫です。何もされてませんから……」
「そうだそう――」
説明できてない、説明できてないよ絢瀬さん、むしろ意味深になっちゃったよ!?
「絢瀬、もっとこう……ある!! 言うべきこと、たっくさん!!」
「え、あ、うん、ええと、……私、気にしてないですから」
「ダメ押しとか勘弁してください」
土下座をかます俺の頭上で、絢瀬はオロオロとしており、
「なぁ~んだか知らないけどさぁ、お二人さんはお知り合いなの?」
愉快愉快と言わんばかりにこちらに寄ってきた綺羅に、
「そう、そうなんだよ。見ず知らずの関係ではないのっ、なっ?」
「はい、そうなんです。ごめんなさい……なんか勘違いさせてしまって」
絢瀬が俺の発言を認め、頭を下げたことでようやく千歳さんも半目をやめてくれる。なんか名残惜しい気がしたのは錯覚だな、目覚めるな俺のナニカ。
「じゃ、そこら辺、全部ひっくるめて――お話ししよっか」
綺羅は一礼をすると、
「UTX学園スクールアイドルA-RISEのセンター、綺羅ツバサです。はじめまして、
その言葉はひどく簡単に耳を通過していった。
惚けたように口を開き、一拍置いてようやく理解が及ぶ。
俺の横に立って、身を強張らせる絢瀬が、
「音ノ木坂の、生徒会長……?」
× × × × × ×
「だからね!! あの時のテレビワンの記事は全部スクラップしてあるんだ!!」
「凄いじゃない。私は、ネットの画像でしか見たことがなかったわ」
「じゃ、今度見せてあげるね!!」
ああ、気兼ねすることがないというのはなんと素晴らしいのだろう。全力を出しても受け止めてくれる存在というのがいるだけで、こうも違うものか。違うものなのか。
花陽が明らかにはしゃいでしまっている自分に気づいたのは、向かいの真姫が微笑を浮かべているのがきっかけだった。
――うぅ、恥ずかしい……。
三十秒前までの己に赤面する花陽に対し、真姫はおもむろに、
「それだけ好きなら、自分でもスクールアイドルをやってみようとは思わないの?」
ある種、至極当然な問いを口にした。どんな会話であろうとありえる、好きなら自分でもやってみないのかという、あの流れ。真姫に悪気なんてあるわけないのはわかっている。でも、
やはり、心は痛む。
出来ることならとっくに、やっているから。
だが、アイドルは目の前の真姫のような「特別な」人間でなければならない。目を引く容姿であったり、他を圧倒するような歌唱力を持っていたり、聴衆を思わず笑わせてしまうようなトークが出来たり、そういった個性を持っている「特別な」誰かが「アイドル」なのだ。そしてまた、そうあるべきだと「ファン」の自分も思っている。
「……真姫ちゃんこそ、やらないの?」
自分と同じくらいアイドルが好きなら、質問を質問で返せる。卑怯だとわかっていても、言葉は紡がれてしまった。
その結果、真姫も押し黙ってしまう。
何か、自分も尋ねられたくないことを尋ねてしまったのだろうかと、反射的に謝ろうとした矢先、
「うちは……病院を経営してるの」
窓の外へと視線をやりながら、真姫は答えた。ガラスの向こう、バルコニーの先には、庭に植えられた葉桜が顔を出している。
その遙か彼方にあるであろう存在は――近所の総合病院の名前は、そうだ、
「も、もしかして、西木野総合病院って……」
「ええ、うちの病院」
珍しい名字が一致していることから、時々陰で関係者なんじゃないのかとささやかれているのは耳にしたことが確かにあった。でも、偶然の一致かもしれず、花陽は半信半疑のままだったが、実際本人の口から認める発言を得たことで信じる他ない。
真姫は続ける、
「いずれ私も医者になるわ。そのために、医学部を目指してるの。だから、時間を割く訳にはいかないもの……仕方ないわ」
「で、でも……」
まだ受験は先の話だ。医学部なんて、とんでもなく頭のいい人しか行けないぐらいの知識しか持ち合わせていない花陽にも、多少は勉学以外の課外活動をしても大丈夫なんじゃと考える。
「もちろんそれだけじゃない」
じゃあ――、
「でも、いつかやめざるを得なくなる。……その時、絶対辛い思いをするわ。だったら、最初からしない方を私は選ぶ」
「真姫ちゃん……」
「それに父さんも……」
口にしかけた言葉は最後まで続くことなく、
「この話題はやめましょ」
話題の転換を促す。花陽もなおも納得しない気持ちを抑え、それ以上食い下がることはしなかった。
「アイドルが好き。それはいいわ。じゃあ、誰が一番好きなの?」
なるほど、そこは当然知りたいよね。自分の一番、愛してやまないと言っても過言ではない
「王道も王道なんだけどね、たぶん真姫ちゃんもわかっちゃうかも」
「王道……ねぇ」
「この人しかいない、っていう人」
“
目が滑るような
アイドルアルティメイト殿堂入り、Sランクアイドル。
奇跡の面子とまで言われた伝説級のアイドルらがひしめく中でも、圧倒的な支持率でアイドルバトルを勝ち抜き、優勝。更にそれを三年連続で成し遂げ、殿堂入りとなった。そして今でも、殿堂入りしているのは彼女のみ。
「なるほど、わかった」
「えへへ……やっぱり?」
それくらい、わかりやすいもんねと花陽が苦笑すると、
「私も……一番あの人が好きだから」
「ほんと!?」
人の好みはそれぞれだから、こんな偶然がとても嬉しくて花陽は苦笑を引っ込め、破顔する。真姫も同様に笑みを深め、二人は同時に、その名を口にする。
その、伝説のアイドルの名を。
「日高――舞ちゃん」
× × × × × ×
「――――今日、こちらに伺ったのはそのためです」
隣で真剣な様子で語る絢瀬。
ぼんやりと横目で彼女の挙措を追う。
まさか……音ノ木坂の生徒会長だったとは。まったく知らなかった。向こうは語らず、こちらは尋ねなかったツケがこれか。
あいつらの……穂乃果達の発言がよみがえる。
――生徒会長もがんばってるのは、わかるけど、私たちだって学校のことを考えて。
――生徒会長も廃校の件に関して以前から色々と考えて行動していたみたいですから、いきなり横から現れて虫のいいことを言う私たちをあまりよく思わないのは……当然かと。
――前にそこら辺の話をお母さんが少しこぼしてた……色々な企画をしてくれているけど、あまり効果がないみたい。
心なしかくたびれて見える彼女は、どれだけの苦労を負ったのだろう。俺ごときが計り知ることの出来るものではないとはいえ、心配してしまう。最初に会った時から――
「――日高さん?」
「っ……すいません、ちょっとボッとしてました」
「ちゃ~んと話聞いてた?」
一応聞いてはいた。たしか、ついさっきまで絢瀬の話していた内容は、
「音ノ木坂でA-RISEにライブをしてもらうってことでいいんだよな?」
絢瀬と千歳さんが同時に頷く。ほれ見ろと綺羅に向き直ると、綺羅はこちらに向けて口端を上げていた。
とっさに顔を背けてしまう。何度か味わった、途方もない化け物にこちらが認識されてしまったかのような感じに強引に思考を絢瀬の話へと戻す。
そう、A-RISEにライブをしてもらう。
いやはや、凄いことを考えたものだ。
近隣の高校の人気No.1スクールアイドルをエサに入学希望者となり得る中学生以下の子供たちを集める、なんて。
それだけ、なりふり構ってられないということか。
音ノ木坂を知ってもらう。
その点においては、この手段はアリだ。確実にA-RISE目当てに客は集まるだろう。
ただ……あいつらはその光景を見てどう思うだろうか。しかし、
「どうか引き受けて頂けないでしょうか。よろしくお願いします……っ!!」
悲壮感すら漂わせ、必死に頼み込む絢瀬の姿を見ていると、致し方ないことだとも思ってしまう。
口を開こうとする千歳さんを手が制する。
綺羅の手が。
「一つ、条件があります」
何をと、目で問う千歳さんを一瞥し、綺羅は、
「ちょっとこの前、小耳に挟んだんですけど」
至極自然に、
「そちらにもμ’sっていうスクールアイドルがいるらしいじゃないですか」
「え、と、それは……」
μ’sの名を出され、絢瀬の顔に焦りが浮かぶ。そもそもこの企画はA-RISEの人気ありきなのだ。断られたら、何もかもが終わる。だからこそ、条件を提示されたら頷くしかない。
そうわかっていて、
おい、
「私たちもせっかくなら同じスクールアイドルとして仲良くさせてもらいたいですし」
何を、
「彼女たちを、」
お前は、言う気なんだ。
「私たちのライブの前にオープニングアクトとして出してくれるなら、引き受けましょう」
女王は――――、
「どうします?」
何度だって、笑う。
◆#27 “エニグマティック・スマイル”◆
【あとがき】
はい、お待たせしました。
さあさあ、まあまあ、――こうなっていくワケですよ火火火