不運の連鎖により家庭が崩壊した主人公__草薙かおるは自分の運命を恨み、この世に別れを告げる。

しかし、不運(?)の連鎖はどこまでも連なり続けて…


この作品は小説家になろうでも掲載しています。

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この作品は一応短編として出したくせに、はっきりとした終わりはありません。(それなりにオチはつけてますが)
歯がゆい思いをする場合もあるかもしれませんが、こんな設定、ありきたりだけど好きかもとおっしゃってくださる方がいれば幸いです。

では、どうぞ。


僕が異世界に転生してしまったのは仕方ないとしても、果たしてTSする必要はあったのだろうか

 

 

 

 

 

頭上には青空が広がり、周りは緑に包まれていて花の良い香りがする。

 

 

 

ところで皆さん。この物語の題名(タイトル)、まさか忘れてやしないよね?

TS(性転換)する必要…あるのかな?」

現代、刻一刻と減っていく自然。その中に今、僕_草凪かおるは身に何も纏わず、某然と立ちつくしている。

 

 

とりあえず、こうなった経緯から説明するね。

 

 

 

 

 

 

___「お父さんの会社が倒産してお母さんが自殺してお兄ちゃんが捕まって妹が交通事故?!」

 

普通レベルの共学校に通う、男子高校生の僕はその日、家族を失った。そう。本当に不運(・・)だったんだ。

それまで、家族仲良く暮らしていた僕の家庭は一日にして崩れ去った。

 

お父さんは倒産のショックで自暴自棄になり、廃人のように誰の声も届かなくなってしまった。

そんなお父さんをみるに耐えられず、もともと精神がそんなに強くなかったお母さんはこれからの生活などを危惧するうちに精神崩壊し、自殺。

大学生の兄は、父の会社の倒産による借金を目の当たりにし、思わずバイト先のお金を盗み、警察に逮捕された。

中学生の妹は、僕がさっき先生に聞いたように、中学校で母や兄の状態を聞いて急いで帰宅する中、飲酒運転の車にはねられ意識不明。

一つの不幸を始まりに連鎖が続き、僕の家族はめちゃくちゃだ。

 

僕?…僕はこれからお母さんの元へ行こうと思ってる。

いや、思っていた(・・・・・)。なんで過去形なのかって?

目の前に憎むべき存在_運命の女神が現れたからだよ。もしかしたら僕も、あたまがおかしくなってしまったのかもしれない。

目の前にいる女神…綺麗な顔立ち、すらっとした体に綺麗な長い髪。思わず見とれてしまいそうになる。それでもこいつを一発殴らないと、死んでも死にきれない!

「やっはっはー、ごめんごめん!運の調整を間違えちゃってさー」

…。

「うぉっとっとー、ダメダメ!君、運命の女神様を殴ろうとするなんて、罰当たりなことをしちゃあダメだよ!」

「うるさいっ!お前のせいで!」

「だーかーら、ストップ!」

?!急に体が動かなくなる。まるで、金縛りにあったみたいだ。

「落ち着いて、落ち着いて!君にいい話を持ってきたんだよ」

いい話?そんなもの、あるわけがないよ。

「君の人生はこんなはずじゃなかった。だから、もとに戻してあげる!」

…え?

「…本当にっ?!」

僕は思わず身を乗り出そうとした。が、金縛りにあってたんだっけ。

「もっちろん。すべてが元に戻るんだ」

「じ、じゃあ、お母さんはっ!?」

「『死んだ』こと自体がなかったことになるよ。みんなもとの暮らしに戻るんだ。」

「本当っ?!なら早く!早くそうして!」

僕は幻覚かもしれない女神に向かって、そう叫んでいた。

「そう言うと思った。実はね、申すでに神様がすべてをもとに戻しているんだ。死んでしまった君やお母さんも、神様がもう創り直したんだよ」

「ちょっとまってよ!僕は?僕はまだ戻ってないじゃないか!」

「だから、言ったでしょう。神様がもうすでに創り直したって。これを観てみなさい」

女神が差し出した水晶玉を、僕は食い入るように覗き込んだ。

 

「どう?幸せそうでしょ?キミも、お母さんも。他の皆も」

水晶玉の中には、家族揃ってご飯を食べる、幸せなボクたち(・・・・)の家庭があった。

「どっ、どういうこと?今のは何?あのボクは何なの!」

「率直に言うと、神様が君じゃないキミを創ってしまったから、君にはもう帰る場所が無いんだ」

「元に戻るんじゃなかったの!?」

「元に戻ってるじゃないか。どう?いつにもまして幸せそうな顔をしているようだよ」

確かに水晶玉の中のボク…だけじゃなく皆、これまでになく幸せそうな顔をしている。

「…幸せそうだね。じゃあ僕は?あんな奴ニセモノじゃないか!本物の…ここにいる僕はどうなるんだよ!どこにいけばいいんだよ!」

「同じ人が同じ世界に2人存在するなんてあるわけないじゃない?言ったでしょう、君には帰る場所がないって。」

「そ、そんなぁ…あなた女神なんでしょ?!どうにかできないのっ」

「えーっと、どうにもなりませーん!」

神はあまりにも残酷だった。

「…うっ、ひぐっ…あんまりだぁ。僕が何をしたっていうのさぁ。なんで僕を、最期まで絶望させるんだよぉ…」

「そこで!いい話があるんです!もう、あの世界には君は存在できず、君はそのまま消えていくだけ。…それはあまりにも悲しすぎる!というわけで、この女神直々に運命を書き換えてあげよう!」

「…ふぇ?」

「いやー、まぁそりゃ神様がいろいろやっちゃったことは覆せないけどさ、女神だからできないことなんて、あんまりないんだぞー?」

「え、じゃあどうにかしてくれるの?」

「君が帰るところはないけど、(かえ)るところならたくさんあるんだよ。世界は一つじゃないんだから」

「う、うん…ん?」

「と、いうわけで!君が生き返るのはズバリ異世界です!」

「えっ、異世界?!」

「うん、ほら君たち人間が作った幻想の世界で冒険やらなんやらする遊びがあるだろう?」

「ん?えーっと…ゲームのこと?」

「そうそうそれそれ!でさ、その君たちにとっては幻想の世界かもしれないけど、実は存在するんだよね。それで、君にはそこに行ってもらいます」

「なっ、なんでそんな変なところにっ?!」

「いやー、別にね君が元居た世界と同じような世界…つまり並行世界(パラレルワールド)とかもあるにはあるんだけど…その…ね」

「な、なに?問題があるの?」

「いやー、君が存在し得る世界に蘇らせる場合、その世界で君に当たる存在を消さなきゃいけないからかわいそうだし…」

「そ、それもそうだね。今の僕みたいな状況には…なってほしくないかな」

「あと、幻想の世界でパシられて欲しいことがあるんだよね!」

「ばっ、パシリ?!」

女神のパシリって…天使がするもんなんじゃないの?そういうの!

「そうだよ。いやぁ、やっぱり直々に世界に手を出したほうがいろいろと調整しやすいからね。私や天使はそれとなく促してバランスとらなきゃいけないからめんどくさいんだよ」

んー、なかなかテキトーな女神だね。本当に生き返ることができるんだろうか?

「それと、神の意思でなく、私が個人的に君の運命を変えるんだ。少しくらい手伝ってくれてもいいでしょう?」

「いや、もともとあなたが運のバランスを崩さなきゃ僕はこんなことに…」

「わーわー、なーんにもきこえなーい。あ、そうだ。もう君を蘇らせる準備は出来てるんだけど」

「えっ、まだなにかあるの?」

「いや〜、私ってば純真無垢な女神様だから、男の人の体とかみたことないんだよね。ってなわけで君のもとの体を創ることができないんだぁ」

「…は?どういうこt」

「まぁ、その分いろいろとサービスしてあげるから!行ってらっしゃい!がんばれ!クサナギ・カオルちゃん!」

「っ!!!」

______

 

 

 

 

 

 

で、そんなわけで意識を失って。気がついたらここで寝ていたというわけなんだ。

ちなみち、この壮大なる草原にも、今見えるだけで4匹ほど青いヤツがみえる。これって、アレだよね?うん。

どうやら、本当に異世界に転生してしまったらしい。

「うーん、しかし…」

改めて自分の身体を見る。胸は…多少膨らんでいる。が、たぶん妹よりも小さい。あまり詳しくは知らないけど貧乳の部類にはいるのかなぁ?

でも、ふにふにとマシュマロのような柔らかさで…なんだか可愛い。

「って、自分の胸に興奮してどうするんだっ!」

思わずツッコミをいれてしまった。

だが、しかし!まだ女の子になったと確定したわけじゃないよね!

「僕には、この下のほうに最後の砦がある!女神がしくじって胸がちょっとふにふにしているだk」

恐怖を振り払うように叫びながら男の砦に手を当てる。それと同時に僕は地面に崩れ落ちた。

「…ないんだよね」

男の体をみたことがないから、女の子にされるなんて!やっぱりあの女神に感謝はできないなぁ!

「あー、あー、あいうえお」

さっきから気にしていなかったけど声も高くなっている。可愛い声だ。

明らかに全部女体化してしまっている。

 

___どうしよう?生き返ることができたのはいいものの、ここには僕の家はない。頼れる人もいない。さらにはモンスター…らしきものまでうろついている。

女神からはこれからどうすればいいのか聞いていないし、そもそもどうしようもないのでその場に身を隠すように座る。そのうち女神が現れるだろう。

 

 

 

 

___待つこと3時間。

 

「おはよー!どうどう?その体!ヤバイでしょ?かなりいい感じでしょ!」

ものすごくハイテンションな女神が僕の前に現れた。

「え、あ、そうなの?顔とかみてないからわかんないんだけど」

「もちろんだよ。女神様である私をプロットにおいて、そこいらの男がほっとけないような、勇者でさえもオトせそうな感じで構築されてるんだから!」

「へー、そうなの。えらく楽しそうだね」

「むー。女神様直々にスペシャルな体を創ってあげたというのに、つれないね」

「いやー、なんというか。もうどうでも良くなってきたよ。一度死んじゃってるしね。どうにでもなれっていうか…」

遠くをみてそう呟く。

「そうやってなげやりにならないでさ!やっぱこう、アクティブにいこうよ!せっかくこういう世界にきたんだから!」

えー、めんどくさい。

「僕の人生なんだから、どう生きたっていいでしょ」

「えー、あれ、もしかして拗ねてる?」

あんたが3時間もまたせるからねぇ!

「あー、ごめんごめん。いろいろと手続きがいるからね」

「ちょっと!心を読み取らないでくれるかな!」

まったく、相手が女神なだけにやりにくい。

「はー、それで僕はどうすればいいの?」

「よーし!じゃあこの世界のことから説明しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

女神の話は長い上にまとまりがまったくなかったので、僕が代わりに説明するね。

___この世界の名は「ミラージュ(蜃気楼)」どこかの惑星なのかそもそも次元が違うのかそこのところは分からない、存在自体があやふやな世界。

ありきたりだけど、長年の間人間と魔物の争いが絶えず、現状としては人間側が少しおされているんだとか。

そこで人間側のトップ__皇帝は、息子である王子=勇者に魔王討伐を命じたが多くの魔物が行く手を阻む___

 

「それで、カオルちゃんには双方のバランスをとって欲しいんだ」

えーっと、それってもしかして

「…ありきたりだけど、魔王を倒せってこと?」

「ダメダメ!そんなことしたら!人間側が優勢になっちゃじゃない!」

え?どういうこと?

「あくまでも、バランスをとってほしいの!魔王を倒して欲しいわけじゃないよ」

「んー、それじゃあどうすればいいのさ」

「ある程度魔物の数を減らしてくれればいいよ。そもそも魔王なんて倒せないでしょ!方法はなんでもいいけどバランスは保ってね」

え?そうなの?女神補正みたいなのかかってて、魔王一撃とかじゃないの?

「え!じゃあなに、もしかして僕って弱いの?」

「んー、なんせ私に腕力無いからね。あ、でもその世界で言う魔法には期待してくれていいよ!たぶん人間じゃないくらいの能力だと思う!」

に、人間じゃないって、それはそれでなんかいやだな…

「まぁ、つまり女の子的な能力はなんでもいい感じだけど男っぽいのは全然ダメだと思ってくれればいいよ。まぁ、物は考えようだから魔法で肉体を強化すれば筋力なんてどうにもなるよ」

あ、そうなんだ。

「まぁ、そんな煩わしいことするより魔法つかって倒すのがはやいけどね」

まぁ、確かにこの身体がゴリゴリのムキムキになるのは…想像したくないねぇ。

「まぁ、テキトーに自分で試してみたら?じゃあ、たまにみにくるからちゃんとバランスとっておいてね。バイバーイ」

 

女神の姿が消えると同時に目の前に大きな箱__たぶん宝箱が現れた。

罠…じゃないよね。さすがに。

おそるおそる箱を開ける。

中には衣服から食料、様々な種類の武器、この世界のお金っぽいものなど、これから必要になるものが入っていた。

なんというか、ものっすごい豪華なボーナスチェストだね。

あ、メモがある

"これでなんとかがんばってね。あ、魔法はイメージすればなんとなくできると思うよ"

な、なんとなくって…

"ちなみに、このメモは読んだら消滅するよ!"

「えぇっ!えっ!ちょっ、ちょっと!」

「なーんて、そんなわけないよねーあははは、こういうのやってみたかったんだなー」

…ボイスメモ?なんていうか…僕やっぱりこの女神嫌いだ。

 

「とりあえず着替えよう」

着替えっていうか…もともと何もきてなかったんだけどね。

春か夏なのだろうか、寒さは感じなかった。そもそも四季があるのかも怪しいんだけどね!

というかっ!3時間裸で放置ってどんなプレイだよっ!ま、まぁ街とかじゃなくて草原だったのが救いだね。人がいなくて本当によかった。

「よし、着替えよう」

いつまでもこうしていられない。人がいないとはいえ、やっぱり裸は恥ずかしいもん。

「さぁ、着替え」「なにしてるんですか?」

え?

「こんな草原で裸になって、独り言ブツブツ言って、何をしてるんですか?」

後ろから女の子の声がする。え、誰もいなかったはずじゃ?

びっくりして後ろを向くと、「どうも、回復役です」と言わんばかりの格好をしたショートカットの可愛い女の子が立っていた。年齢は僕とさほど変わらなさそうだ。

「な、なななな、あっあっ…あぁぁぁぁ!」

やばい!人に…女の子に裸を見られたぁ!

「も、もしもし?大丈夫ですか」

「らいじょぶれす!見ないでください!」

かっ、噛んだ!恥ずかしい!

「うーん、裸な時点で大丈夫じゃないと思うんですけど」

「ううぅぅ、みっ、見ないでください!」

「女の子同士だから、そこまで気にしなくても大丈夫だと思いますけどね」

あっ、そうか!そうだったね。

「あっ、その、えっと…」

「モンスターに襲われましたか?」

「いや、そんなんじゃなくて…」

「服、持ってるならきたらいいじゃないですか。」

「あのー、それが、着方がわからないん…ですはい」

「…色々と事情がありそうですね。まぁ、とりあえず着替えを手伝ってあげます。」

 

 

___「ここをこうしてっ、はい。これで着れました」

おぉー、しっかりと着ることができている。

ちなみに、服自体はローブのようなもので、そこまで難しいわけでもなかった。

「下着って、こんなに密着感があるものなんですね」

「…あなた生まれてこの方ずっと裸で暮らしてきたんですか?」

「いや、そういうわけじゃ…」

そう。わからなかったのは下着。まぁ、胸はあってもないようなものだから、つける必要あるのかわからないけど、なんでも擦れるからしないといけないんだってね。

「それで、あなたは一体ここで何をしていたんですか?」

んー、何をしていたと聞かれても…生き返ると女の子になってました!なんて言えないしね。

「んー、気がついたらここにいたんです。あとはよく分かりません」

「ん?記憶喪失ですか?それは、大変ですね」

おぉ、それいいね!記憶喪失。これならこの世界のことよくわかってなくてもごまかせるし。

「そうなんです。これからどうすればいいのか…変なモンスターもいますし」

よしっ、この回復っ娘を仲間にする方向でいこうかな!

「それなら、これからも行動を共にしたほうが良さそうですね。みたところ戦う力はなさそうですし」

「あっ、これならありますよ!」

地面においておいた杖を見せる。

いろんな武器があったけど、魔法をつかえるならやっぱりこれだよね。

ちなみに、服と杖とお金をとった時点で箱は消えてしまった。武器全部くれないなんて、ケチだよね。まぁ、全部も持てないけど

「おっ、いい杖ですね。魔法が使えるんですか?」

「たぶん…そのうち」

やばい、まだ魔法試してないよ!

「は、はぁ…まぁ、分かりました。とりあえず起こしますか」

「へ?起こす?」

「『覚醒』…おーい、起きて下さ〜い」

回復っ娘ちゃんが杖を降ると同時に光が放たれ、数メートル先の草むらに当たった。

なに、これが魔法?!

「ん?何故俺は寝ていたんだ?」

数メートル先から男の声が聞こえる…男ぉっ?!

「あー、女の子の体を盗み見するといけないので、私が眠らせました。」

「おいおい、パーティメンバーをやすやすと眠らせるもんじゃないよ、一応モンスターもいるんだから」

草むらを分けて出てきたのは、細身だが、引き締まった身体をしている黒髪のイケメンだった。

「えっ、えっ!えぇっ?!」

「おっと、そんなに驚かなくても大丈夫。君の体は見てないよ。その前にこいつに眠らされたから。

俺はアル。まぁ、よろしくな」

そう言って差し伸べられた手を若干ためらったあと握ると、彼はニコッと微笑んだ。

凛々しい顔立ちをしているからか、少し可愛く思えてしまう。

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私のことはエリーと呼んでください。」

こちらも手を差し伸べてくる。間髪いれずに握ると、こちらもニコッと笑顔になったので、僕も微笑み返した。

裸を見られたんだもん。警戒することなくかもうないよ。

「でだな、君のことを教えてくれないかな?なんせ寝てたもんだからさ」

そういえばエリーにも自己紹介はしていない。

2人ともえらく長い名前だけれど、わざわざ合わせる必要もないよね。

「僕はえーっと、カオルだよ」

僕の名前。お父さんとお母さんが考えてくれた…。体が変わっても、世界が変わっても家族(みんな)がくれた思い出(もの)は今もぼくの心の中に…

 

「えーっと、大丈夫か?それでだな、自己紹介も終わったところで聞きたいことがあるんだが、カオルはどうしめこんなところにいたんだ?それも裸で。弱いとはいえ一応ここにもモンスターもいるしな」

1人しんみりとしている中でアルが質問してきた。そりゃそうですよね。

「えーっとね、記憶喪失で分からないんだ。なんでこうなったのか」

女神のヘマで自殺して女の子に転生して、もともと異世界にいましたなんて言えないもんね。

下手な説明いらないから、記憶喪失ってのは本当に便利。

 

「みたところ杖を持っているようだから、ある程度は戦えるのかもしれないけど、女の子1人じゃ危ないし記憶喪失だと何かと不便だよな。エリーもいるし、俺達についてこないか?」

おー、急展開だけどわりとありきたりだよね。この世界の勝手もまったく分からないし、ここはもちろんついていくよね。

「うん、じゃあそうさせてもらうね」

これでひとまず安心かな。悪い人じゃなさそうだしね。

 

「ところで、あなたの魔法の腕はどれくらいのものなのですか?これから道を行くにあたって、モンスターとの戦闘はかわせません。ある程度使えるならば、カオルにも参加していただきたいのですが」

…ですよね。そりゃそうなるよね。でもまだ魔法試してないんだよ!

「んー、どんな感じの魔法をだせばいいのかな?」

とりあえず魔法を見せてもらってからだね。そうしないとイメージもなにもできないし。

「そうですね…なら、『火球(ファイア)

掛け声と共にエリーの杖先から炎の球が放たれる。

け、けっこうでかいもんなんだねあれって。

「これが最弱の火系魔法です。これの威力を…そうですね、最大にまで高めて放って下さい。あ、上級呪文を使うのではなくて威力を高めるだけでお願いします」

なるほど、どれほど弱い魔法で敵を倒せるかっていうのは効率がいいか悪いかに関わるもんね。

まぁ、そもそも上級の呪文なんてしらないんだけど。

「…分かりますか?」

「な、なんとなく」

うー、女神みたいな答え方になってしまった。まぁ、今のでイメージは掴んだからなんとか…

「『火球(ファイア)』!」

それっぽく見えるようにエリーの真似をして振った杖から、火の球…どころではなく爆炎が放たれる。

…あれ?やっちゃった?

メ○くらいのつもりがメ○ゾーマくらいでたんだけど。

「ってだめだ!かっ、かか、火事になっちゃうよ!」

自分で出しておいておどおどするのもなんだけど、僕にはこれをどうこうする力がまだありません!

うろたえる僕を少し呆れたような目で見たあと

「『龍雨(ドラゴンシャワー)』」

と、エリーは呪文を唱えた。

龍の形をした水の塊が僕らの目の前に現れ、僕が出した火球(ファイア)を呑み込む…

「ぶわっ!」

ジュアァァァァという盛大な音と共に、水でできた龍が水蒸気に変わり、爆炎もろとも消え去った。

 

「…なんと規格外な!最弱の魔法が私の今使える最大の水系魔法と同等とは…いくら私が回復特化の魔法使いとはいえ、信じられないですよ!」

今までの落ち着き用が嘘だったかのようなリアクションをとるエリー。いや、一番信じられないのは僕なんです…。

 

「…一応俺も魔法使えないことはないけど、火球(ファイア)でこの威力なんて…恐怖すら感じるな」

アルもあまりに炎が巨大なので、周りの被害を抑えるためか臨戦体制に入ってしまっている。

僕の女神補正が恐ろしいだけで、2人とも腕はたつのだろう。

僕の魔法に露骨に驚かず、反射的に対応したことからそのことが伺える。

「これはあれですね、もはや…」

そういいながらエリーがアルに目で合図を送る。

アルもわかった、というように頷いた。いったいなんなんだ?僕大丈夫だよね?殺されたりしないよね?

 

「出会って間もないうちに、とんでもないことを言おうとしていることはわかっている、だが今のカオルの力を見てぜひとも俺達の力になって欲しいと感じたんだ」

アルはいったんそこで間をおいて、それまでとうってかわって真剣な眼差しで僕にこう告げた。

 

「俺達と一緒に、魔王を倒す旅をしてくれないか?」

 

 

 

 

「え?」

今なんて言った?この人!魔王を倒すとか言ったような気がするんだけど、聞き違いかな?!

 

「俺…いや、私はエルダント帝国第一王子、アリヴェラ・デ・エルダント。王より魔王討伐の命をうけた勇者だ。ぜひとも貴女の力をお貸し願いたい」

 

…。なんでこうなったの?!

よりによって初めてあった人間が勇者ご一行様だなんて!

こんなこと聞いてないよ!もしかしてまた女神?運のバランスがどうにかなってるんじゃないの!?

 

「改めまして、(わたくし)の本名はエリアーデ・リア・ノエレーゼ。ノエレーゼ連合国の姫ですわ。魔法の才能を買われ、勇者様のパーティの回復役をさせていただいてますの。よろしくお願いいたしますわ。」

 

急にお嬢様口調に?!さっきのアリヴェ…アルにせよ、キャラ変わりすぎじゃない?やだもう本当に誰も信じられないよ!

 

「とまぁ、俺達2人の正体はこんなかんじだ。一国の王子として、ぜひカオルには、力になって欲しい。忌々しき魔王を打ち破るために!」

「そういうことです」

あ、戻った。

いやぁ、確かに魔王を倒すのも人間にとって大切なのは分かりますけど…

「あ、あの、お断りさせて頂いても」

「脅すようですが、断った瞬間にあなたは世界中の人間を敵にまわしたも同然ですよ?カオル、それでも良いのですか?」

…王子と姫なんですよね。はは、あはははは。

「ぜひとも一緒にいかせて下さい、勇者様、姫様」

世界中の人に嫌われるのはやはり恐ろしいのでひれ伏す。この間約0.5秒。

 

「おいおい、勇者様なんていうなって、仲間なんだから仲良く軽〜くなっ!」

「そういうことです」

2人の満面の笑みに、僕は若干顔をひきつらせながらも答える。

 

あれ、そういえば僕って魔王を倒しちゃいけないんじゃ…






___遥か昔、勇者や姫と共に魔王討伐の旅へ向かい、数々の魔物をその強大な魔法で次々と打ち破り名を馳せた、まさしく女神のような容姿をした女魔法使いがいたという。

なんでも別の世界から来たと言い張る彼女は、女神の命だと言い張り、ついには魔王と対峙した時に、戦いをすることなく魔王にある交渉を持ちかけた。

__人間の知能と魔物の力、二つ合わされば争うことなく、双方バランスもとれて幸せでしょ?__

それを聞くや否や笑い出した魔王を持ち前の魔法で黙らせ、ミラージュはそれから大きな争いが起こることなく今に至るんだとか。

彼女の旅がどんなものだったかを知る者は、この世で1人。

__作者しかいない。

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