ほとんどタイトル通り。
ただし、実のところマイクラ世界の方とはほぼ無関係。
そして、続きの予定も無い。

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マイクラ世界の方とはほぼ無関係です。


【単発】ゾンビサバイバルに放り込まれたきりたんが琴葉姉妹inマイクラ世界と出会うまで

 どうも皆さん、東北きりたんです。

 早速ですが、私の住んでいる町がゾンビだらけになりました。

 徹夜でゲームしてる間も何かサイレンとか悲鳴とか聞こえるなぁって思ってたんですが、どうやらゲームじゃなくてリアルからしてたみたいです。

 世の中何が起きるか分からないものですね。これからは今までちょくちょく手を抜いてた神棚の掃除もほんの少しだけ丁寧にやろうと思います。その機会があればですが。

 さて、これまた突然なのですが良いニュースと悪いニュースがあります。

 良いニュースはずん姉様とイタコ姉様の2人は用事で東北に帰省していて、この騒動には巻き込まれていないこと。詳しくは分からないのですが、何でも実家で祀っている神様が、予言をどうのこうのということで急遽戻ることになったんです。今日の午後戻ってくるはずでしたが、この分では無理でしょう。

 本当は私も戻る予定だったのですが、正直こっちでダラダラしてたい……もとい学校があるので残りました。まあずん姉様はともかくイタコ姉様がゾンビ見たら卒倒してそのまま仲間入りしてしまいそうなので、ちょっと安心してます。あの人、イタコやってる癖に幽霊とかホント駄目なんです。まあそれに関しては私もあまり言えないですが。

 そして悪いニュースは……。

 

「う゛あ゛あ゛あ゛」

「ひいぃ! く、来んな、きりたん砲ぶちかましますよ!?」

 

 不肖きりたん、絶賛大ピンチの真っ最中です。

 

 

 

 ゾンビハザードに気がついたのはゲームに一区切りがついて、SNSを覗いた時のことです。

『【速報】ガチでゾンビに遭遇したったwww』と頭悪い感じの話題が急上昇していたので、ちょっくら煽ってやろうと思ったんですけどね。一昔前のブラクラ画像なんか目じゃないグロ写真が載っけられてて度肝抜かれました。

 テレビ点けたらこの町で大規模な暴動が起きてるってニュースも流れてて、『あっ、これマジやべぇ奴だわ』ってなりましたよ、えぇ。

 それからは最初籠城を考えました。もちろん我が家はプレッパーでも何でもないので、まともな防備なんて存在しない一般家屋ですが、非力な小学生がゾンビのひしめく外に出て行くよりはずっと安全です。誰だってそうするでしょう。私もそうしようと思いました。

 ただ問題がありました。ちょうど食料を使い切るタイミングで、冷蔵庫がスッカラカンだったんです。間が悪いにも程があります。一応探したらずんだ味のふりかけだけはありましたが、それで飢えを凌ぐくらいなら私はご飯だけを食べます。その肝心のお米すらも無かったんですけど。……いや、ゾンビじゃなくても防災意識の欠片もありませんね、これ。地震や台風で物流止まったらどうする気だったんでしょう。

 ですが、文句ばかり言っていてもしょうがありません。いつ終わるとも知れないこの事態を水だけ飲んでじっと堪えるなんて無茶ですから、早々にプランBに移行することにしました。プランBが何かって? 賢明な皆さんならお分かりでしょう。ねえよ、んなもん。

 渋々、嫌々ながら、やむを得ず不可避となった外部での食料調達を仕方なく行なうことにしました。目的地は最寄りのスーパーです。

 よくフィクションであるゾンビの習性や性質同様、どうやら動きは遅くて目や耳もあまり良くないみたいでした。思考能力も低下しているみたいで、鍵のかかっていない扉も開けられないようです。道中、扉をバンバン叩いて壊しているのを見ました。

 気をつければ、まあ何とかなるだろうと。ゲームで培った伝説の傭兵の技術を駆使してスーパーまでは辿り着いたまでは良かったんですが。自動ドア開いたら土気色をしたお客様方の群れと間近でご対面と相成りましてね。思わず悲鳴を上げてしまい、そのせいで余計にワラワラと呼び寄せてしまいました。

 そこからどこをどう逃げたのかはよく覚えてないんですが、とりあえず普段人気の少なそうな方に向かいました。その方が逃げた先でゾンビの群れに出くわす可能性が低くなるだろうと考えたからです。

 それで大群は振り切ったものの、ひと安心してたところを物陰に潜んでた奴に奇襲されました。走り通しだったので、疲れててまともに動けなくて。初撃をどうにか避けた後はよろよろ這いながらも距離を取ろうと頑張ったんですが。

 とうとう路地裏の行き止まりに、追い詰められて……しまいました。

 

 

 

「き、聞いてるんですか! ホントにけ、警察を呼びますよ!」

「あ゛あ゛あ゛」

 

 元は普通のサラリーマンだったのであろう、スーツ姿のゾンビは緩慢な動きでこちらに迫ってきます。さっきはあんなことを言いましたが、きりたん砲は嵩張るので家に置いてきてしまいました。こんなことなら持ってくれば良かったと思いますが、もう後の祭りです。

 

「ず、ずん姉様が来ればあなたなんてイチコロなんですから!」

 

 私は手元に落ちてた石を投げつけながら叫び続けます。それしか出来ません。もちろんゾンビが言葉を解してくれるなんて期待していません。それは今にも目を閉じ、耳を塞ぎ、縮こまりたくなる自分を奮い立たせるための行為でした。

 

「だから、だから」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「来ないで……」

 

 行き止まりの壁を背にへたり込む私の目の前に、ゾンビがやってきます。

 それはまるで巨人が迫ってくるかのようですらありました。

 

「あ……あぁ……」

 

 覆い被さってくるゾンビの動きも、遠くから聞こえる喧騒も全てがスローになって。

 早鐘を打つ私の心音だけがいやにはっきり聞こえます。

 

「うあっ、やめ、離れっ!」

 

 私はのし掛かってきたゾンビを叩いたり蹴ったりしましたが、ゾンビは痛覚すら鈍いのか全く効いている様子がありません。大人と子供の体格差では尚更のことでしょう。そのまま噛みついてこようとするゾンビの頭を両手で必死に抑えます。

 

「誰かっ誰か助けて!」

 

 

 でも、ここまでみたいです。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 

 その時は無情にも、ひどくあっけなく訪れました。 

 

 

「や、やめ」

 

 

 食事を前に興奮しているかのような、そんなゾンビの勢いにとうとう押し負けて。

 

 

 

 私は、食われた。

 

 

「あ――あっ、あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

 

 

 熱した鉄を首に押しつけられる。

 そんな錯覚を感じた瞬間には、私は絶叫していました。

 かつてない痛み、捕食される恐怖、そして血肉と共に自分の命が失われていくという喪失感がごちゃ混ぜになって、頭の中を支配しました。

 

「いだいいだい、いやだじにだぐない! だずげでずんねえざま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

 止めどなく溢れる涙のためか、苦痛と失血のためか。

 視界がぼやけて見えなくなっていきます。

 

「だ、ず、げ……」

 

 叫びすぎたせいで喉が嗄れて、濁った感じの掠れた声しか出ません。

 でも、それも束の間のことでした。

 どんどん力が入らなくなっていって、痛みも感じなくなっていって、夢の中にいるような感覚が広がっていきます。先ほどまでとは打って変わって、奇妙なまでの安堵が心を包んでいくのが分かります。

 

「――――!」

 

 ぼんやりした視界の中、ゾンビの姿が消えたような気もしましたが、それさえもどうでもいいことに思えます。実際そうでしょう。死に逝く者にとっては。

 最後に、私にとって一番大切な面影が思い浮かびました。大好きな、大切な笑顔。きっと悲しませてしまうだろう。それだけが心残りです。もしもイタコ姉様の口寄せで呼ばれることがあったら謝りましょう。

 

「あ……」

 

 ずん姉様、さようなら。

 

 

 

 

 

「スプラッシュポーション! エイヤッ!」

「ひえあっ!?」

 

 パリンという何かが割れる音と共に軽い衝撃がした途端、靄が晴れるかのように私の意識は鮮明に戻りました。

 同時に頭から水でも被せられたのか、濡れた感触がしてさっきよりもずっと間抜けな悲鳴を出してしまいます。

 一体、何が起こったんでしょう。

 

「葵、ナイス投擲や。こりゃ甲子園、いやメジャーリーグのトップ狙えるかもなぁ」

「高校野球から一気に飛んだね、お姉ちゃん」

 

 話し声が聞こえてきます。気さくな感じの関西弁? それともう少し落ち着いた感じの声。

 目にかかった液体を拭ってから見やると、そこには容姿が瓜二つの女の子が2人いました。髪色と服装以外は目の色含め、ほぼ一緒です。双子なのでしょうか?

 

「あーキミ、大丈夫か? ゾンビはやっつけたけど、結構ガブられとったやろ?」

「また新しい用語作ってる……」

 

 赤い女の子はそう言いつつ、私の首元をじっと見ました。ハッとなって手をやってみれば、まるでさっき噛まれたのが嘘だったかのように、傷一つないいつも通りの感覚が返ってきます。

 でも、さっきの出来事は決して夢なんかじゃありません。その証拠として、呆然としつつも周りを見渡せば、先程私を襲ったゾンビの頭部と胴体が泣き別れしているのが目に映りました。クリティカルです。一撃で即死するタイプの古典的な。

 

「……ひっぐ」

「ん、どっか痛むん? 金リンゴとこのポーションでもって、ええっ!?」

 

 何が起きたかはまだよく分からないけど。

 私は、助かった。

 

「う、うわあぁぁん!」

 

 そう実感した時には、私は赤い女の子に抱き着いて、そのまま泣き出していました。

 

「あ、葵! どないしよう!」

「周りを警戒しつつ落ち着くの待つしかないかなぁ。まあダイヤ一式だし、ちょっとくらいなら寄ってきても何とかなるよ」

 

 慌てた様子の赤い女の子と冷静な感じの青い女の子の会話が聞こえます。

 それはどこかゾンビ以上に現実味のないものでしたが、泣いている私はそれに気がつかなかったのでした。

 

 

 

 こうして私は茜さんと葵さん、琴葉姉妹と出会ったのです。

 それから2人と共に行動するようになったり彼女達がマインクラフトのアイテムや能力を使えるということを知って衝撃を受けたり、後に知り合ったゆかりさんも加わって4人でこの事件に立ち向かっていくことになるのですが。

 

 それはまた別の話。




続かない


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