ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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なかれおこられ。

 出発するときには昇り始めていた太陽も、すでに頂を通り下がり始める頃に、私達はプラネテューヌへ帰ってきた。

 もっともその表現が適切なのはネプギアだけで、私は本日初めてここに来たんだが。

 

「ネプギアさんっ、おかえりなさい。……ほかの皆さんは……?」

「いーすんさん……ごめんなさい……私、何もできなくて……お姉ちゃん達が……!」

「そう、でしたか……」

 

 連絡を受け、文字通り飛んできたイストワールはこの場にネプギアと私しかいないことに疑問を持って、泣きそうなネプギアの言葉で落ち込んだ。

 本に乗った手はぎゅっと握られてるし、少し震えてる。どことなくいつもより低い位置に浮いてる気もする。

 悲しい、悔しい、そしてこれは……自分への怒り。

 それらをイストワールから感じられた。

 けどすぐにイストワールは下がっていた顔を上げた。

 

「ネプギアさん、お疲れのところ申し訳ないのですが、ギョウカイ墓場で起きたことを教えてください」

「……はい。分かりました」

 

 その顔は決して諦めてなくて、むしろ燃えてるようにも見えて。

 ネプギアもイストワールの言葉に、溢れかけた涙を拭い、頷く。

 さて、ネプギアをプラネテューヌに届けたし、私帰ってもいい? 

 あ、ダメそう。

 

「ところでどうしてロムさんがこちらに?」

「その、ロムちゃんは……えぇっと」

 

 そういえばお姉ちゃんに内緒で一人でギョウカイ墓場に来ちゃったってことになってたんだった。

 まあもうネプギアやお姉ちゃん達にはバレてるからここで言っちゃってもいいけどね。

 

「……お姉ちゃんが心配だったから、ギョウカイ墓場まで行った」

「ということはまさか、ロムさんも戦ったのですか!?」

「うん」

 

 私の言葉に困惑するイストワールに、「私も驚いた」と言いたげな顔で同情するネプギア。

 うーん、そういうイメージを与えるような言動をしてきたのは私だけど、こう、いざ想像してたのと違う行動をすると毎回驚かれるのはなぁ……かといって今更素で接しろなんて無理だけど。

 

「そ、そうでしたか。ではロムさんからもお願いできますか?」

「……うん」

 

 ほとんどネプギアと同じことしか言えないと思う、と思ったところでそういえばネプギアってちゃんと内容覚えてるのかなって不安になったから、頷く。

 まあ補足説明位でいいよね。

 

 

 

 いつまでも立ち話をするわけでもなく、きちんと別室に……というか女神のプライベートフロアと呼ばれる、つまりネプギア達の生活居住区……というか階? に通されて、所謂リビングのような場所で椅子に座って向き合う。

 この部屋はよく来る。というか、ここを通らないと紫姉妹の部屋に行けないし。遊びに来たら、必ず通るかこの部屋で遊ぶ。食事もこの部屋だし。

 今もその朝と昼と夕方で必ず一回ずつ使われる机にお茶が入ったコップが二つ、ジュースにストローがささったグラスが一つ置かれてるし。

 ……用意してくれたネプギアの気遣いは嬉しいけど、別にお茶でもよかったのに。オレンジジュース美味しいけど。

 

 ともかくギョウカイ墓場で起きたことを全部、といっても私からはあくまで客観的視点から見たもののみ、しかもネプギアの説明に補足するだけにして話す。マジックと女神達の戦闘の話では「私たちの想像よりも相手は強大でしたか……」と力量を測れなかったことと、そんな無謀な戦いに女神を送った自分に怒って、女神達が捕まったことを嘆いていたけど、私達が逃げる時の話では何度もネプギアの顔と私の顔を交互に見ていた。まあネプギアは飛ぶだけ。私がいろいろやりました、なんて言えばね。

 イストワールの、説明が終わって最初の一言は「驚きました。まさかロムさんが多彩な魔法を身に着けていたとは」だったし。氷属性以外の魔法を使ったらダメなのかっての。しかも今回岩動かして氷と風ぶつけただけだし。こちとら全属性の魔法使えるんだぞー。

 

 と、話してる間に部屋に差し込む光はオレンジに色付いてきた。

 そこでイストワールは「お二人ともお疲れでしょうから、今日はもう休んでください。ロムさんも、部屋を用意しましょう」と提案。ネプギアも賛同してたんだけど……うん。ちょっとそれは断りたい私です。

 だっていくらお姉ちゃん達にバレて、今ここで話したからって、ラムちゃんとミナちゃんに無断で来たのは確かで、今頃「ロムちゃん帰ってくるのおそいなぁ」って呑気に思ってくれてるといいなって望んじゃうくらいだし。

 

 つまり、怒られるのやだ。

 

 だからイストワールに「ラムちゃんとミナちゃんが心配してるから帰る」って言ったら「こちらで教会に連絡しておきますね」ってもはや私が泊まることが確定してるかのような言いっぷりだし。

 え? しかも寝る部屋ってネプギア達の部屋なの? あ、布団用意してくれるの。そりゃお泊りのときは同じ部屋で寝るけど…… あ、うん。夕飯の時は呼んでね。え? 希望? 私は特にないけど……あ、大盛がいいかな。魔力減ってるし。コンパの手料理ね、はいはい。あの人間の料理はミナちゃんに負けないくらい美味しいよね。あ、諜報部のあの人間もいるのね。じゃあ五人で食卓を囲むのね。はいはい。

 ……あれ? 何か忘れたような……

 

 

 

 はい。良い具合に流されて、そのまま夕食を頂いて布団を被ったロムちゃんです。

 ええ、もちろんイストワールさんはあのまま向こうの教会、というかミナちゃんに直接連絡して、明日、ラムちゃんとミナちゃんが迎えに来ることになりました。いや忙しいのにこっち来ていいの? って思ったけど、きっと仕事より私の方が大事なんだよね。それは嬉しいのだけど、明日の私が長時間正座でいる光景がずっと頭をよぎってるの、どうにかならないかな。……ならないよね、きっと……

 イストワールもこれには苦笑い。きっと何か言おうと思っても、結果的にはネプギアを連れ帰ってきた功績があるから、結局何も言えないんだよね。私がいなかったらネプギアも捕まってたかもしれないんだし。

 

 どうしよう……明日がこわい……

 

 あ、夕飯美味しかったです。けど魔力を全快させるには物足りなかったので、また明日ぐらいに補給します。

 

 ところでネプギアも私と同様に夕食を食べてすぐにベッドに入り込んだんだけど、全然寝れないみたい。さっきから寝返りをうつ音と、小さいけど何かをすする音が聞こえるし。

 

 ……うん。やっぱり違う部屋のほうがいい。じゃなきゃネプギアに我慢させちゃってるし。

 お姉ちゃんが捕まったの、悲しいけど、泣いてもなかったことになんてならない。

 けど今は我慢するほうが自分に毒だ。

 でもどうせ同じ部屋にいるなら、何もしないよりは何かした方が良いのかな。

 

「……ネプギアちゃん、ねれないの……?」

「っ、ご、ごめんね、うるさかったよね……」

「だいじょうぶ。けど、ネプギアちゃんはだいじょうぶ?」

「……うんっ、大丈夫だよ。今は、そんな場合じゃないもん」

 

 そう元気そうに言うけど、空元気なのは私じゃなくても分かる。

 ……うん。私が邪魔になってるなら、せっかくだから更に邪魔しよう。気付いたらいない方が違和感になってた、隣のぬくもりもないし。

 

「ネプギアちゃん、そっちに行くね」

「え? って、ロムちゃん!? あぶないよ!?」

 

 そう言う前にすでに枕を持って二段ベッドのはしごに手をかけてて、上る。

 いやネプギア、あんまり私を子ども扱いしないで。というかはしごから落ちたところで女神の身体は丈夫でしょ。というか落ちないよ。

 あ、枕で片手が……上に投げればいっか。

 

「わっ、ちょ、ロムちゃん!?」

「ん。当たった?」

「あ、当たってないけど、えっと、なにを?」

「いっしょにねようと……あ、もうちょっとそっちいって」

「は、はい!」

 

 またそんな返事。変なの。

 

「よいしょっ」

「え、えっと?」

 

 あ、どうして一緒に寝ることに? って言いたげな顔。

 まあそうだよね。普段ネプギアちゃんと二人っきりになることなんてない……というか今回初だっけ。

 けどあんまり我慢されたりすると心がモヤモヤしたままだし。

 

「いっしょにねちゃ、だめ?」

「はうっ……う、うん。一緒に寝よう、うん!」

 

 この体になってからお得意の涙目おねだりもちゃんと効いたところで、私達は寝っ転がる。

 一人分のベッドは二人で寝るには狭いけど、幸い私の身体が小さいおかげでそこまで窮屈じゃない。ネプギアとの距離は近いけど。

 

「ぎゅーっ」

「はわっ、ロロロ、ロムちゃんっ?!」

 

 狭いならもっとくっつけばいいよね、なんて思ったから……というわけでもなく。

 ただくっついた方が良いかなって思ったから。

 だって……

 

「……このほうが、寝れると思って」

「ロムちゃん……うん、そうだね」

 

 ネプギアも私の背中に手を回してぎゅってしてくれる。

 人の気配がすると眠れない人もいるけど、ここには逆に人のぬくもりがあるほうがよく眠れる人しかいないから。

 

 結局この日、ネプギアは泣かなかった。

 

 

 

 ただし次の日、私が泣きました。

 

「ロームー?」

「ロムちゃーん?」

「ひぃっ、ひゃぁぁぁ!」

 

 逃げていい? 逃げていいよね? というか逃げる! 

 

 このていど ほんきになっちゃ だめだから

 まほうをね つかわずにげて かくれたよ

 かくれんぼ ふたりがあいて まけるよね

 ごめんねと なんどいっても おわらない ふたりのいかり みにしみるかな

 

「ロム、あなたのブラン様を想う気持ちも分かりますが、だからといって無断で国を出るのは勝手すぎます。しかもギョウカイ墓場へ行ってしまうなんて……」

「ロムちゃん! どーしてわたしにも話してくれなかったの!? わたしだってお姉ちゃんと戦いたかったのがまんしてるのに!」

「はい……すみません……ごめんなさい……もうしわけありません……」

 

 長時間の正座は肉体的にもつらいけど。

 二人の言葉も、その表情も、そのどちらにも込められた感情は本物で、偽ってない。

 だからこそ、心の方もいたかった。




彼女達はぬくもりを与え、感じ合う。
けれど本当に欲しいぬくもりは、別の場所にある。
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