ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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山籠と彼女の話。
ゆびきりげんまん。


「ダメです」

 

 はい、当然ですが、反対されました。

 

 

 

 「山籠もりをする!」と決めた次の日にはミナちゃんにそう話をしたけど、最後まで話を聞いてくれたミナちゃんは「どうしてそう考えてしまったのでしょうか……」と悩まし気に呟いた後、「強くなろうと思う気持ちは大変素晴らしいと思うのですが」と間を入れて、私の話に反対。そしてその理由を至極丁寧に教えてくれた。それはもう、ラムちゃんでも分かるぐらい言葉をきちんと噛み砕いて。ミナちゃん自身の気持ちと、立場的なお話も含めて。

 

 まあわかってた。私はあくまで女神候補生のロムで、まだ両手で数えられる程度しか生きてなくて、未熟で、まだ社会をほとんど知らなくて、精神年齢も幼くて、保護者が守ってあげないといけないような見た目で。

 

 一言に纏めるなら、心配なのだ。わたし(ロム)のことが。

 

 ラムちゃんには反対されるって最初っからわかってた。だからまずは本命より先に周りから、とミナちゃんに言ったのだけど、結果はそういうこと。

 

 しかしあの日から既に一週間は経過していた。

 あの日、ユニとネプギアが喧嘩……とも言えないような一方的なものだったけど、すぐ仲直りして、私達四人で必ずお姉ちゃん達を助ける! と誓った。

 でも今のところ地道な活動しかできていない。あの日最終的に決まった活動の方針は、とにかく今は地道にシェアを取り戻すという地味な方法。プラネテューヌの教祖が言うに、今有効な手段を考えてるらしいんだけど、その手段を見つけ出すのに三か月くださいとか言われた。遅い。けどスペック不足だからしょうがない。彼女は人工生命体だし。どっちかというと機械よりだし。

 

 だからそれまでは大きく活動なんて出来なくて、それをしたところで各国に増えつつある犯罪神崇拝者が私達を非難したり、もっと過激になればデモ活動を行うかもしれない。頭を失って弱体化してしまった教会としては、なるべくそういうのは避けたいのだ。

 それにデモだけで済めばいいけど、中にはそれで済ましてくれない人間共もいる。犯罪組織の組員なんかは特にはっきりと犯罪を犯している。

 

 メリットとデメリットを比べた時、デメリットが大きければそれは最善の行動とは言えないのだ。

 

 そんな理由から私達に今できる可能な範囲の活動は、地道に犯罪組織の連中を見つけては捕まえたり、マジェコンが売られてる現場を見つけ次第潰したり、女神への信仰を促したり。

 それでも私達の活動で女神信者が戻ってくるよりも早く犯罪神崇拝者は増えて、マジェコン所得者は増え続けている。潰しても潰しても黒くて素早い虫みたいに逃げたり隠れたり増えたりする様は、うざいきもいうるさいの三拍子。

 いい加減、もっと効果のある行動がしたい。

 

 だいたいネプギアやユニは毎日のようにクエストとかそういうこと出来てるからまだいいけど、私とラムちゃんは危ないからって小さなクエストを少ししかやらせてもらえてない。そりゃ無理したらすぐに体調崩しそうだし、あんまり強くない(と思われてる)し、犯罪組織関係は私達全員あんまり関わらせてもらえない。あんまり出しゃばって今度は候補生まで捕まったら、とでも思ってるのかな。まあ私は私で危害を加えてきた人間全員殺していいのなら、って条件でなら捕まらないだけだし。……脆い人間が悪いんだよ。

 

 だったらさ、しばらく私、強くなるのに専念しても良いんじゃね? って思うんだよ。

 だって私達が許可されてるクエストで得られるシェアなんて雀の涙ほどで、すぐに上塗りされちゃう程度だし、それで進行を抑えられるかと言われればノーだし、今のところ国にいるだけでしか効果のないお飾りさんなんて、わざわざ教会に留まっている必要なんて身の安全しかないわけだし、それならもっと有意義に使いたいし。

 

 ……まあその分ラムちゃんの傍に居られないのは寂しいけど、この状況にただじっとしてるのも嫌だから。

 

 

 

 そんなわけで冒頭の言葉はこの一週間毎日のようにミナちゃんの書斎に足繁(あししげ)く通って、何度もお願いして、その度に言われた言葉だった。もう聞き飽きた言葉だったけど、それはミナちゃんも同じだろうね。だって本当に毎日何度も隙を見ては話しかけてたんだから。さすがのミナちゃんでもうざいと思ってるんじゃないかってほどに。もはや二人っきりの時に「あのね、ミナちゃん」って声をかけるだけで次の言葉が分かったように溜息を吐くくらい。

 正直ミナちゃんは人間だから、別に嫌われてもいいんだよね。教祖って責任重大だし、どうせ私を嫌ったところでやめてしまえるほどいい加減な職業でも、いい加減な人間でもないわけだし。

 

 そのたゆまぬ努力のおかげかな。諦めの悪さがやっとわかったのかな。

 今日この時、いつものように切り出したら、ミナちゃんはいつものすぐに「ダメです」から始まる、どれほど私のことを心配しているか。そのことに対する不安がどうとか。聞き飽きた言葉を口にせず、気持ちを落ち着けるように目を閉じて、そして開いた時、「いいでしょう」という言葉が、彼女の口から発せられた。

 どうせ今日もダメと言われる。そろそろ家出でもしてしまうか。と考え始めていた私には予想外の言葉で、僅かに声を漏らして驚く私に、ミナちゃんはその言葉に更に言葉を繋げた。

 

 「ただしラムにきちんと説明して、納得してもらうこと。まずは一日だけ。きちんと決めた日時に帰ってくること。それができれば少しずつ期間を延ばす。そして護衛として職員の一人と共に行動すること」

 

 そう、ミナちゃんから条件を付けられた。

 ラムちゃんに説明する、というのはもとより決めていたことで、ミナちゃんから許可さえ取れればすぐにでもラムちゃんの説得に切り替えるつもりだったからいい。まずは一日っていうのも、妥協した結果だろう。

 ただ護衛というのが正直面倒で、邪魔くさくて、荷物にしかならない。護衛っていうかただの連絡役でしょ。護衛の仕事なんてできないでしょ。むしろ私が護衛する方でしょ。

 それに教会職員から選べって、余計に嫌だよ。そりゃミナちゃんからしたら同じ女神を信仰するものとして信頼できるのかもしれないけど、信者ってその多くが女神に理想を抱いてるんだよ? で、女神が理想と違う行動なんてすれば、すぐさま「こんなの女神様じゃない!」って批難してさ。自分の中の理想と願望を押し付けてくる。

 そんな可能性のあるやつと二人っきりで行動なんて、願われてもやだね。

 

 けどそれを拒否したって「じゃあこの話はなかったことに……」ってなるだけだし、せめて職員の選択権は私に委ねられただけマシだと思うことにしよう。……適当な人間を選んだら自分の首を絞めることになるから、その分慎重に選ばないといけないのは面倒だけど。

 

 ひとまずはラムちゃんの説得だよなぁ……

 

 

 

「ヤダ!」

 

 ですよね~

 

 すぐにお部屋に戻って、私と遊ぶための準備をしていたラムちゃんに、しばらくダンジョンに籠もりたいからそばにいられない、って結論だけ先に言えば、ラムちゃんの口から飛び出たのはその言葉。おまけで泣きそうな顔。

 でもここでその表情に気持ちを揺らがせてしまえば、この一週間の苦労は台無しとなってしまう。できれば一度決めたことは貫きたい。……できれば、だけど。

 だからなんとか説得しようと言葉を重ねても、最初の否定の言葉の一点張り。ミナちゃんからの許可も貰ったと言ってもラムちゃんの意思は石のように固く……あ、ダジャレじゃないです。ただの比喩です。

 ただ石ってほら、弱点はちゃんとあるから。水とか草とか格闘とか地面とか鋼とか……いやあれ正確には石じゃなくて岩だけど。

 

 とにかく意思の固いラムちゃんは全く私の話を受け付けず否定拒否反対の三連発。子どもが駄々をこねるように「ヤダヤダ」と喚き、終いには「だったらわたしも行く!」と言い出す始末。もちろん断固として反対しました。それはもう、一度ラムちゃんの出かけていた涙が引っ込むほど強く。

 ただそう言うと、当然のことながら言われるのが、何故自分はダメで私はいいのか、という疑問。

 それに本当のことを交えて答えるのならば、私には前世の記憶があるから事前知識があるのと、異常事態に対しラムちゃんより適切に対処できること。目指す強さと、そこへ至るまでの道筋が明確であることなどが挙げられるけど……そんなの一つも言えるわけがない。どれか一つでも言えば、どこかで綻びが出る。

 

 ではどう言えば適切で、ラムちゃんを納得させられるか。

 頭をフル回転させて導いた言葉は、一度ラスボス一歩手前の中ボスと相まみえたから、というもの。

 その強さをこの身で味わったからこそ、強くなりたいと願い行動しようとしている。その行動にラムちゃんを連れていけば、この国は一時的にでも女神不在の地になってしまう。それだけは避けたい。だから私の代わりにラムちゃんに国を任せたい、と。

 

 傍から聞けば面倒事は妹に押し付けて勝手な行動をしようとする姉の話だけれど、内容が内容だし、何より私達のうち両方がいなくなってしまえばまずいのは本当のこと。……ちなみに実例として、今一番犯罪組織の被害を受けてる南の島国の名が挙げられます。

 

 そして決定打になったのは、お姉ちゃんを早く助け出すために私にできる行動を、できる限りやりたい。その言葉だったと思う。

 ラムちゃんは、ようやく首を縦に振ってくれた。

 けれどラムちゃんから悲しい、寂しいという感情が伝わってきて、いたたまれない気持ちになって、私はラムちゃんと一つの約束をした。

 

 全てが終わったとき、必ず一緒に遊ぶこと。お姉ちゃんも一緒にたくさんたくさん遊ぶこと、と。

 

 お姉ちゃんには悪いけど勝手にお姉ちゃんも巻き込んで、約束する。

 小指と小指を絡めて、詠って、誓う。

 絡めた指を解き、胸に当て、己に誓う。

 

 大丈夫だよ。約束は必ず守るから。

 だからまた平和な世界で、いっぱい遊ぼう。

 雪玉当てたり、雪人形作ったり。駆けまわったり。お姉ちゃんの小説に落書きしたり。

 ね、全てが終わったら元の日常が戻って来るんだから。

 そのためのことをするだけ。

 だから少しの我慢だよ。私。




彼女は約束する。それができると信じているから。
彼女はできない約束はしない主義だ。
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