ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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なかなおり。

 ──『姉妹とは仲良く、共にあるべきだ』。

 たまにその考えがわからなくなるときがある。

 姉妹だからといって何故仲良くしなければならないのか。

 所詮同じ血が流れているだけ。同じ親から生まれただけ。元は赤の他人だった場合もある。

 それなのに何故共に同じ家に住んでいるからといって仲良くしなければならないのか。仲良く一緒にいなければならないのか。

 別にいいんじゃないか。仲が悪くたって。相手に何を思っていたって。

 離れ離れで暮らしたっていいんじゃないのか。一緒にいる必要はあるのか。

 時々会うだけでもいいんじゃないのか。

 

 私がそう考えてしまう原因はきっと、私が“家族”というものを忘れてしまったからだ。

 

 

 


 深夜、ギリギリ日付が変わらないくらいに私は彼の家の扉の前にいた。

 普通は寝る前にドアのカギをかけるんだろう。街から遠く離れた村じゃそうでもないらしいが、ここではカギをかけるのが普通。彼も寝る前にかけていた。

 だからきっと今日もかかってる。もしそうだったら大人しく教会に行こう。深夜に帰ったことに対してミナちゃんに怒られるだろうけど、聞き流せばいい。それで私達の部屋で寝よう。……いややっぱり別の部屋を用意してもらおう。もしあれだったらリビングのソファで寝ればいいし。いっそ野宿を考えた方が良いか。

 そうごちゃごちゃ考えていたのに、ドアノブは何の抵抗もなくひねられて、ドアが開いた。

 不用心だ。そう思いながらも入って、明かりをつけないままいつもの寝室兼リビングとなっている彼の部屋へ行く。

 彼は寝ていた。一定のリズムで寝息をたてながら寝ている。

 その横に出しっぱなしの折り畳みの机に、裏返してある空の茶碗に箸が乗っていた。

 茶碗の上には小さな紙が乗っていて『冷蔵庫』としか書かれていない。

 冷蔵庫を開けろという意味なのだろう。茶碗と箸を持ってキッチン兼ダイニングの部屋に戻り冷蔵庫を開ける。中に料理が乗った皿が入れられてた。

 そしてここにも小さな紙に『レンジ』とだけ書かれている。レンジで温めて食えということらしい。

 料理を取りだして温める必要のあるものはレンジに入れ温める。

 唐揚げ、スープ、サラダ、デザートの牛乳プリン。

 それと保温にしてあった炊飯器から茶碗に盛った白米。

 行儀が悪いがキッチンの台を使って立ったまま、食べれるものから食べることにする。

 「いただきます」と小声で手を合わせ、サラダ、唐揚げと白米、スープ、プリンの順番で食べていく。

 

 味を感じなかった。

 

 何も食べないよりはいい。全て食べ終え「ごちそうさま」と手を合わせ、食器を水に浸ける。

 それから寝支度を調えて、再び彼の部屋に戻る。

 私がいないのだから彼はベッドで寝ていてもいいのに、今日も布団で寝ていた。代わりに誰も寝かせていないベッドはなんだか寒そうだ。

 この時点で私の眠気がピークだったのか、温かそうだと思っただけで彼の布団へと潜り込んだ。

 あぁ、うん。あたたかい。これは良い湯たんぽだ。

 でもやっぱり何か違う。けどもう限界。

 結局私はそのまま気絶するように寝てしまった。

 

 

 

 翌朝、カチャカチャトントンとうるさい音で起きた。いつもだったらお腹が空いてくる音なのに、何故か今日はうるさいとしか感じなかった。

 もう一度寝る気にもなれず、起き上がる。匂いも感じるが、不思議と美味しそうという感想は湧かなかった。

 既に起きていた彼に言われるままに顔を洗いに行く。

 洗面台の前に立って、水を出して顔を洗って、顔を上げて。

 鏡が見えた。そこに映るものも。

 

「……だれ」

 

 そんな疑問が浮かんだ。この時ばかりは本当に鏡に映るのが誰なのかわからなくなっていた。

 どうやら頭が働いていないらしい。彼が私を呼ぶ声が聞こえて、ようやく鏡に映る女の子が自分であることを思い出した。

 

 

 

 彼は、教会に帰れと言えばよかった、と私に言ったけど、彼も私がここに帰って来るだろうとわかっていたんだろう。昨日のカギや料理がまさにそれだった。

 そんな事を思ったりしながら話をして、ひと悶着も終えて、仲直りの方法を考えるのも終わって。

 教会へ行くことになった。私からしたら“帰る”という方が正しいだろうけど。

 さて、大した用意もないし、さっさと行こう。

 

「っておい。ちょっと待て。お前さん、まさかその格好で行く気か?」

「……恰好?」

 

 そう言われて自分の姿を確認する。

 あぁ、そういえばまだ寝間着だ。忘れていた。

 

「ほれ、着替えろ。そうじゃなくてもコートを着ろマントもだ」

 

 言われるがままにその場で彼が持ってきた私の服に着替える。彼は慌てて私に背を向けていたけど、今更ではないだろうか。

 そう言うと彼は「今更ってなんだ今更って。そりゃ俺は幼女の体見て興奮するような大人じゃねぇが、それでもお前さんはもう少し恥じらいってものを持って欲しいものだ」とやたら早口で言ってた。

 

「けどペットに見られても別に気にしないよね」

「それ他の人間の前でも言うのか……?」

「言わない。だって他は人間という面倒な存在で、あなたはペットでしょ」

「……あぁそうかい。じゃあ俺が勝手に見ないようにするだけだ。それでいいだろ」

「私は別にいいよ。そこまであなたの行動を制限させる気はないし」

 

 さて、コートも着て、マントも羽織って、帽子を被って。

 

「これでいい?」

「ん……ああ、いいんじゃないか」

「そう、じゃあ行こう」

 

 後ろを向いていた彼がこちらを向き確認し、ようやく外へ。

 それで教会への道を歩いて……

 

「おいどこに行く」

「教会じゃないの?」

「まずはギルドで報告だろ、ことり」

「……そうだった」

 

 報告できてなかったんだった。

 

 

 

 ギルドには彼も付いてきた。心配だからって。

 そんなに心配されずとも、何をすればいいのかわかっている。

 そう思ったけれど、いざギルドに着いていつものお姉さんに声をかけて、そこで自分が何をしに来たのか忘れた。

 私の親戚を名乗る彼がいなかったら、私は何もしないでギルドを出て、また入るというおかしなことをしたかもしれない。二度手間にならずに済んでよかった。

 拾った素材もその場で売って、報酬と一緒に受け取る。確認したらこれまでで一番稼いだ額になっていた。どうやら売った素材の中にはレアなものもあったらしい。何も考えずダンジョン内のモンスター全て一掃しただけだったけど。

 

 ギルドで報告も終わって、さあ行こう。……としたらまた彼に止められた。「お前さんは偽装したまま行くのか?」って。

 忘れていた。だから隠れて素早くマントと帽子を外して収納し、いつもの帽子に付け替える。

 これでルウィーの女神候補生のわたしだ。

 ……中身はいつもよりもボケている私でもあるけど。

 

 

 

 教会にはすぐに着いた。元々ギルドから離れているわけでもないから。

 そう考えると今までよくロムになっている間に誰かに話し掛けられなかったなと。

 ……そういえば前から街に出て職員の人間に話し掛けられることなかったな。

 

「ああ、それは職員の中で暗黙のルールになってるんだ。プライベートで女神様を見かけても、用事がない限りは決してこちらからは話し掛けないって。特別仲が良いとかがない場合はな」

「ならあなたは?」

「俺はお前さんになら話し掛けてもいいんだろうな。他の方は無理だろうが」

「ふぅん」

 

 湧いた疑問に彼はするりと答える。辞書代わりにもなる便利な人間だ。

 それはともかく中に入るために教会のドアノブに手をかけようとして、手が汗で濡れていることに気付いた。

 おかしい。今日も外は積もった雪が溶けていないくらい寒いのに、手汗を掻くなんて……

 

「……緊張してるのか?」

「……だとしても、会うだけだよ」

 

 会って、謝って、伝える。

 それだけで仲直りができるなら、私はいくらだってしてやる。

 

 中に入って、まずはミナちゃんに会うことにした。

 廊下を進んで、教祖用の執務室の前で立ち止まって、ドアをノックする。

 これでいなかったら探しに行かないと、と思ったけど中から返事する声が聞こえた。いつもよりも元気のない声だけど。

 彼に目で「行ってくる」と伝えると「じゃあ俺は前で待ってる」と目で伝えられた。

 さて、まずは保護者気取りの人間へのご機嫌取りだ。

 カチャッとドアを開け、その隙間からチラリと中を覗く。

 すぐにミナちゃんと目が合った。ミナちゃんは来訪者が私だと知ると目を大きく開き、すぐに椅子から立ち上がってこちらへ寄ってくる。

 私も部屋に入ってドアを閉めて、ミナちゃんの方へ歩き、ある程度の距離で止まる。

 

「あの……その、ね……」

 

 私が何か言いたそうにすれば、ミナちゃんも止まって無言で待ってくれる。

 それを確認してから私は選んだ言葉を口にして、帽子を手に取って頭を下げた。

 

「……いっぱい心配かけたと聞きました。心配かけて、ごめんなさい」

「……彼から聞いたのですか?」

 

 コク、と頷くとミナちゃんは「そうですか……」と言って、その場に両膝をついて膝立ちになった。

 それが私達と目線を合わせるためだと知ったのはわたしがまだ生まれて数か月くらいの頃、お姉ちゃんに訊いたからだったと記憶している。

 

「ロム、頭を上げてください」

「……はい」

 

 顔を上げて、ミナちゃんの顔を見る。

 怒っているけれど感情的にならず、真面目な顔。何度も見たことがある、ミナちゃんが私達を説教する時の顔。

 好きではないけど、嫌いでもない顔。

 

「彼から事情は聴きました。あなたが最初から誰も傷つける気などなかったことも、ずっとブラン様を助けたいという想いで頑張っていたことも、会わなくてもずっとラムを想っていたことも」

「……うん」

 

 違いはない。きっと彼なりに思って言ったんだろう。それを余計なお世話だとは思わない。

 だから素直に頷いた。

 

「あなたの想いは立派なものだとは思います。ですがそのための行動が、周りを考えないものでした。それは理解していますか?」

「……うん。ラムちゃんのこと、ちゃんと考えてなかった」

「反省は、していますか?」

「……うん。これからはちゃんと、ラムちゃんと、皆のことも考えて、行動する」

「……分かりました。あなたは賢い子ですから。その言葉を信じましょう」

 

 頷き、真面目な顔を止め微笑みながら頭を撫でてくるミナちゃん。それを拒まず撫でられる。ミナちゃんに撫でられるのは悪い気はしない。

 

「……あら? ロム、あなたもしかして外を走ってきたのですか?」

「……? ううん。歩いてきた」

「そう、ですか……」

 

 何かが気になったのか私の頭に手を乗せたまま首を傾げるミナちゃん。けど私が帽子を被ろうとすると乗せた手を引っ込めた。

 それから私が「ラムちゃんは、どこ?」って訊くと「昨夜からずっと部屋に籠もりっぱなしで……」って返ってきた。

 彼の話が正しければ、ラムちゃんは落ち込んじゃってるから部屋に籠もっちゃったんだよね。そしてそれは私のせいなんだよね。なら早く行って謝らなきゃ。

 

「わたし、ラムちゃんにあやまってくる」

 

 そう言い、ミナちゃんに背を向け急ぎ足で部屋を出る。外で待機していた彼に「次は?」と訊かれてすぐ「自室」と短く答えながら駆け足で部屋まで向かった。

 

 

 

「……あら、あなたもいらしたのですね」

「ええ、心配で……あの、ありがとうございます、教祖様。彼女を怒らないでいただき……」

「それはあなたがあの子を怒らないであげてほしいとお願いしたからです。それがなければ、わたしは今頃あの子を叱っていたかもしれません。それに、無断外泊については後ほど注意しなくてはなりませんが、行き先があの子が信頼するあなたの家であったのなら安心しました」

「……その、招いた私が言うのもあれですが、教祖様は私を怒ったり……或いは彼女から遠ざけたりしないのですか? 職員とはいえ、私は男です。もしかすると良からぬことを企み、ロム様を家へ招いたのかも知れませんよ?」

「それを言うなら今更な気もしますが……」

「あー……それもそうでしたね……」

「ですがそういったことでの心配はしていませんでした。あの子は……ロムは人を見る目がありますから。そんなあの子が選んだのであれば問題はないと判断しています」

「……随分と彼女を高く評価しているのですね」

「わたしはただ正当に評価しているだけにすぎませんよ」

 

 

 

 そんな会話が交わされているとは露知らず、私は私達の部屋の前に立っていた。

 ここまで駆け足で来たせいか息があがっている。ミナちゃんの部屋からそこまで遠くないはずなのに。心臓が緊張か何かでバクバク鼓動しているせいもあるかもしれない。

 空調が効いた教会内でコートを着たまま走ってたせいか体も熱い。かといってコートを脱ぐ手間が惜しかった。

 汗を拭い一度息を整えてからコンコンコンとドアをノックする。……返事はない。

 けれどそこにいると思うから。

 

「入るよ、ラムちゃん」

 

 そう一言言ってからドアを押し開け、中へと入る。

 ……部屋の中は昼間だというのにカーテンが閉め切られ、薄暗い。ドアを閉めれば外からの光が遮断され、まるで夜のような暗さだ。

 けれど何も見えないわけじゃなくて、部屋の隅で膝を抱えているラムちゃんが見えて、そちらへゆっくりと近付く。

 ラムちゃんはそんな私をゆっくりと見上げて、赤くなった目を大きく開かせた。

 

「え……ロム、ちゃん……? どうして……」

「……ごめんねって、言いに来た」

 

 ラムちゃんの正面に正座して、赤くなった目を真っ直ぐに見つめる。そんな目にしてしまったのが私の行いのせいだと思うと疑問よりも罪悪感が上回って目を逸らしたくなるけど、それは耐えて見つめ続ける。

 先に目を逸らしたのはラムちゃんで、口を開いたのは私からだった。

 

「……ごめん。ずっとラムちゃんに会わなくて、ごめんなさい」

「……どーして会ってくれなかったの?」

 

 責めるような言葉に、準備していた言葉を引っ込める。

 何度かこれだと思う言葉を口に出そうとしても、いざ口から出る前に本当にこの言葉でいいのか疑問が浮かんで口を閉ざしてしまう。

 何て言えばいいのだろう。こういうとき、人間の子供はどう言うのだろうか。

 ……人間の子供は難しくは考えていないのか。知らないものが多いからこそ、単純に考えられる。

 私もそうすればいいだけなんだろう。単純に、至ってシンプルに。

 私自身の言葉で、伝えるんだ。

 

「……ラムちゃんのことが好きだから」

「……うそだ」

「嘘じゃない。ラムちゃんのことが好きで、ラムちゃんとずっと一緒にいたいって思っちゃうから。だから会わないようにしてた。ガマンできるようにって。でも私の身勝手でラムちゃんを傷つけちゃった。ごめんなさい」

「……ロムちゃんは、わたしのこと嫌いじゃないの?」

「大好きだよ。ラムちゃんが私のこと嫌いでも、私は大好き」

「っ……」

 

 ラムちゃんが泣きそうになるけど、それでも私は言葉を止めない。

 ()()()の気持ちを伝えるためにも、止まってはいけない。

 

「私はラムちゃんが私のこと嫌いなままでもいい。そう思われて当然のことをしちゃったんだよね。ならそれでいい。仲直りもできなくていい。一緒に遊びたくないと思われてもいい。私はラムちゃんのことが好きで、仲直りもしたくて、また一緒に遊びたいけど、ラムちゃんが嫌なら我慢するか──」

 

 「ら」。最後の一文字を言い切る前に、ラムちゃんが私へと勢いよく抱き着いて、私は後ろへと倒れた。何故ラムちゃんがそんな行動をいきなりしたのかすぐにはわからなくて、けれど耳がすぐ横からの声を拾って、私の考えがまた間違っていたこと。ラムちゃんは私に言葉を言い切らせないためにこんな行動をしたのだとようやくわかった。

 

「──そんなの、ヤダ……ロムちゃんと仲直りできないままなんてヤダ……一緒に遊べなくなるのもヤダ……ロムちゃんのことをキライなままなんて、絶対ヤダ……!」

「……うん、私も嫌だ。ラムちゃんと仲直りできないままなんて嫌だ。一緒に遊べなくなるのも嫌だ。ラムちゃんに嫌われたままなのも嫌だよ」

「わかってたの……! ロムちゃんがお姉ちゃんを助けるためにがんばってるの、わかってたの……!」

 

 泣きながらそう話すラムちゃんの言葉を、相槌を打ちながら大人しく聞く。

 その涙が、その言葉が、私の心を痛めつけるけど、そんなの自業自得だから。

 

「でもさみしかった……! お部屋に戻っても誰もいなくて、ごはんもミナちゃんが忙しいから一人で食べて、お庭で遊んでも誰もいなくて……ずっとずっとさみしかった……!」

「うん……ごめん。ごめんね、ラムちゃん。ラムちゃんをずっと一人にさせちゃって……寂しい思いをさせちゃって……」

「わたしもごめんね……! ロムちゃんのこと大嫌いってウソ吐いちゃって、ごめんなさい……! 本当はロムちゃんのこと、大好き!」

「うん……私も、ラムちゃんのこと、大好き……!」

 

 そっと優しく、けれどぎゅっと力強く抱きしめる。

 あぁ、やっぱり嫌だな。

 散々いろいろ言ったけどさ。

 ようやく手に入れたこの温もりを、手放したくないよ。

 

 

 

 しばらくの間私もラムちゃんも床に転がったまま、ラムちゃんが泣き止むのを待ってから、起き上がった。

 ……正確には、私は起き上がろうとした。

 

「……? っ……」

「ロムちゃん!?」

 

 視界が揺れて、体がふらっとして再び床にぶつかる。痛い。

 あれ、ラムちゃんが驚いてる。ああ、私がまた床に転がったからか。

 ごめんごめん、ちょっとふらついただけだから。すぐに起き上がるよ。

 そう思いながら再び体を起こそうとして、手に上手く力が入らないことに気付いた。

 手だけじゃない。足も、体全体に力が入らない。

 それにさっきから心臓がバクバクうるさい。体も熱い。

 何故……? 

 

「ロムちゃん大丈夫!? もしかして具合悪いの!?」

「……だい、じょうぶ。ちょっと、ふらっとしただけ……」

「だいじょうぶじゃないわよそれ! えっとえっと、こういう時はまずお熱があるかどうか確認するのが先よね!」

 

 そう言ってラムちゃんの左手の手のひらが私の額に触れる。

 

「えへへ……ラムちゃんの手、冷たくて気持ちいいね……」

「ちがうわよ! ロムちゃんのおでこがとっても熱いの! どうしよう……!? このままじゃロムちゃんが……!」

 

 すごく慌てているラムちゃんを落ち着かせようと思うけど、体が動かない。それどころか頭がぼーっとして、急激に眠くなってきて……

 

 ……ま、いいか。おやすみ……




彼女は理解できない。世間一般の『姉妹』という関係性を。
けれど理解していることもある。自分が今ある温もりを手放したくないということを。
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