ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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めがみか。

 女神は成長しない。それは女神候補生も同じこと。

 ここでいう『成長しない』とは、身体的なものを指す。

 たとえば身長。顔立ち。髪の長さと癖。

 そういった見た目に影響のある変化はない。

 それを私は生まれて一年で実感した。本当に変わらないのだ。鏡に映る私も。毎日見るラムちゃんとお姉ちゃんも。他の女神も。

 でもほんの少しは許容範囲があるらしい。たとえば前にネプギアが言っていた、姉の体重が増えたという話。それは多分、国民からあの女神はぐーたらだからそういうところもある。だから少しは太ったりするんじゃないか。という印象や妄想があるから、気を抜いたら体重が増えてしまったのではないか。と私は思う。

 逆にそういう印象が全くない他の女神は、自己管理がきちんとできているイメージがある。黒の女神なんかは一番その印象が大きい。お姉ちゃんも周りからはその辺りはきちんとできているイメージだと思う。……実際にはよく寝不足になるくらい遅くまで作業してるみたいだけど。それがお仕事かどうかはわからない。この間寝る前に水を飲みにいこうとしたときに、お姉ちゃんの部屋の前を通ったら少し扉が開いてて、中から不気味な笑い声が聞こえたし。多分あれは仕事じゃない可能性が高いと思う。

 

 で、見た目の変化がないのなら中身は、と思うのだけど、これもあまり変化はない。一年しか経っていないけれど、ラムちゃんの精神年齢が上がったようには感じないし、ネプギアとユニも変化はない。あるとしたら、それぞれの姉との仲が、初めて会ったころより良くなっている程度か。あとラムちゃんと二人の仲の良さも上がってると思う。

 さすがに知識が最初の頃のままかと言われれば、そこは成長してると答えられる。ラムちゃんは最近、お絵かきの技術が上がってきているように見えるし。

 それにラムちゃんの戦闘能力も上がっている。最初はスライヌを倒すだけでも一苦労だったのが、最近はスライヌベスを倒せるようになってる。それ以上はまだお姉ちゃんが戦わせてくれないんだけど。

 

 さて、そんな中で私は空き時間に、前世の知識をある程度活用して、少しずつ強くなっている。それでもラムちゃんと一緒にミナちゃんに教わっていただけの頃よりもずっと速く力が増している。「どうしてそんなに速く?」と疑問を持たれないためにも、普段はわざと弱く魔法を放っているけれど、それは実は考えなしに放つよりずっと頭を使うんだって、今世では初めて知った。

 

 そういえばこういう思考って、お姉ちゃんの部屋にあったライトノベルの主人公が考えていたっけ。よくある異世界転生ものの一つで、生まれ変わったら神からの贈り物で最強にって。だけど問題起こしたくないから、普段は力加減してるんだけど、ちょっとした気持ちの興奮でやりすぎて「俺、何かやっちゃいました?」って。

 正直多感な時期の少年少女が、前世の自分と同じくらいの少年少女に転生したのなら、まだ精神年齢低いから感情のコントロールできないんだろうな、と思うのだけど、社会人とかそれ以上の年齢のおじさんおばさんが少年少女になったからって、精神年齢そっちに引っ張られるなよ。感情のコントロールくらい人間社会じゃ日常茶飯事だろ? と思ってしまうのはきっと、相手が人間で、私のなかでの常識から見たら、彼らは愚かな存在に見えるから。

 力を持つ者が感情をコントロールするなんて、できて当然だ。それが力を持つ者の義務だし、それもできないお子様が力を持っているのは、核兵器がその辺をウロチョロ歩いているのと同じ。ちょっと刺激しただけで全部ドカンだ。そんなの恐怖でしかない。

 だから正直、お姉ちゃんがどれだけああいうのが好きでも、私はあの手の物語は好かない。見るとしたら中の登場人物を見下したり、苦労してる力ある者に同情したりしかしないと思う。

 

 話が脱線してしまった。

 というわけで話を戻して、とにかく私は前世がある、という生まれ持った圧倒的ステータスを手に、現代に合わせて力を付けている。

 とはいっても、前世のあの頃と違って今は平和な世の中。女神同士の力による争いも、人間共の死体の山が築かれることもない。

 だから現代でも役立つ魔法は、知ってる魔法の数から見たらほんの僅か。日常系魔法なら毎日のように使っているけれど、戦闘魔法はほとんど使わない。

 というより使えない。理由は簡単で、今の私の身体はあくまで一年前に生まれたばかりの女神候補生だから。ゲームに例えるなら、シリーズ物の作品で、同じ世界線のものでも、一作目のキャラのレベルを、二作目とは共有できないのと同じ。毎回初期レベルからコツコツとレベルを上げていくしかないのだ。

 だから残念ながら初期の魔力保有量も、出力も、どちらも少ない。筋力だって女神だから少し上乗せされている程度。体力も同じ。

 けどラムちゃんと一緒に戦って、どんな状況でもラムちゃんが凄く見えるようになる戦い方で支援したい。そのためにはラムちゃんより力の余裕を持たないといけない。

 それが多分、私がたくさんじゃなくて、少しだけ強くありたい理由。

 

 そんな前世の知識を生かしながら強くなってる私だけど、最近は逆にそのせいで、ある能力を手に入れられなくて困っている。

 それは女神なら遅かれ早かれ手に入れる能力。この一年で何回も見てきた、女神のもう一つの姿。

 『女神化』の能力だ。

 

 

 

「ん~~っ……!」

「~~っ……!」

「……全然ダメだな。女神化の予兆すらねえ」

「ぷはぁっ……もー! どーして女神化できないのよー!」

「……できない……」

「ラム、落ち着け。ロムは落ち込むな。二人はまだ未熟だってだけだ。そのうちできるようになる」

「むー……」

 

 すごく不機嫌なラムちゃん。そんな顔も可愛いなって思いながらも、私も私で少し落ち込んだまま。

 今やっていたのは、女神化するための練習。といっても、お姉ちゃんから女神化するアドバイスみたいなのをもらって、なんとか頑張ってるだけ。今のところは惨敗。

 できない理由はお姉ちゃんの言うように未熟だから、なんだろうけど、その未熟って言うのは戦闘能力だけじゃない。女神として、まだまだ未熟だからなんだと思う。

 じゃあ女神として成長するには、どんなことをすればいいのか。どんなことを考えればいいのか。

 そういうのは、中身も純粋な女神であるお姉ちゃんやラムちゃんには簡単にわかることだと思う。

 けど私はそうじゃない。身体はそうでも、心は違う。

 女神にとって国民である人間は守らなくてはならない存在。もし彼らに脅威が迫っていれば、自らが先頭に立って戦わなくてはならない。もし相手が人間であれば、決して殺したりなんかしてはいけない。怪我も、可能な限りさせてはいけない。敵であろうと、救わないといけない。それが愛される女神像。それを理想に、女神は頑張る。

 でも私にとって人間は、利用価値があるだけの存在。可能な限り関わりたくない。私が利用することがあっても、利用されるのは嫌。もし彼らに脅威が迫ったとしても、利用価値のある人間なら少しは生かす。無価値なら見捨てる。彼らの為に努力するのは、無駄な労力を払うことだ。敵が誰であろうと容赦なく倒す。人間だったら余計に殺意が湧く。それが私の中での人間。

 そんな思考回路を持つ存在が、人間のために戦う力を得られるはずがない。だから多分、そういう思考を捨てない限り、私は永遠に女神化できないんだと思う。そして、私はその思考を捨てる気はない。

 

 お姉ちゃん達には悪いけど、多分私はどれだけ努力しても女神化はできないと思います。

 ラムちゃんは、いつかできるよ。絶対。

 

 ちなみに私ができないのは女神化だけじゃなくて、シェアエネルギーを扱うこともできない。これも女神化と同じ理由。というより、シェアエネルギーも扱えないのに女神化できるわけがない。

 感覚としては魔力を操るように使うみたいなんだけど、そんなアドバイスをもらっても、いざ出てきてしまうのは魔力だけ。これも思考を捨てなきゃ無理だと思うから、諦めるしかない。

 

 そう思っていても、少しだけ想像してしまう。

 女神化したお姉ちゃんと、ラムちゃんと、私。

 ホワイト姉妹が並んでいる、その姿を。

 少しだけ。ほんの少しだけだけど、夢見てしまう。

 そんな光景をこの私が作り出すのは、未来永劫むりなんだろうけど。

 

 

 

 そういえば、ネプギアとユニの二人もまた、未熟だからと女神化できないみたい。先月その話をした。

 数か月前の披露式典。その翌月から、私達候補生は交流するようになった。特にいつとは決めていないけれど、だいたい一か月に一回の頻度で、どこの国かは連絡しあって決めて、その日は丸一日空けて交流する。

 これはお姉ちゃん達……というより女神にも推奨されていて、こうやって候補生が他国と交流することで、国民に「うちの候補生はあちらの候補生と仲がいいから、私達国民も友好的にいこう」と思わせて、輸入輸出や技術の共有などをスムーズにいかせるのに役立つんだって。

 肝心の私達候補生にとっては、友達と遊べて、ついでに姉たちの役に立てて一石二鳥だね。って喜んでるから、良いことだと思うよ。

 それに時々私達の交流に合わせて、お姉ちゃん達四人も集まって遊んでる。

 普段教会からあまり出ないお姉ちゃん。外に出ないせいで運動不足みたいだから、もうちょっと外に出てほしいなって思いながら、いつも遊びに誘ったりしてるんだけど、お姉ちゃんはお姉ちゃんでお仕事と趣味に忙しいみたいで、いつも断られてしまう。

 そんなお姉ちゃんが外に出る数少ない機会だから、私もラムちゃんもお姉ちゃんを引っ張ってでも連れて行く。他の女神に会わせれば、部屋でゲームをするか、ゲームセンターに行くか、外で遊ぶか、大体その三択で、運動になることもあるから、お姉ちゃんの運動不足が少しでも解消されるのは嬉しい。

 あと、難しそうな顔ばっかりしてるときも、他の女神と遊んでいるときは、少し顔に出にくいけど、いつも楽しそうだから、その顔が見られるとすごく嬉しくなる。私とラムちゃんといるときは、お姉さんとしての顔ばっかりだから、楽しそうにしてても、今はまだお姉さんとして頑張らなきゃっていう意思が見えちゃう。私だから余計に、ね。

 だからそんな気苦労もなく、純粋に楽しんで遊んでるお姉ちゃんを見るのは、私にとっても幸せなことなんだよ。

 

 交流で楽しそうなのはお姉ちゃんだけじゃなくて、ラムちゃんもそう。

 普段遊び相手が私しかいなくて、ミナちゃんは教祖のお仕事で忙しい。お姉ちゃんはもっと忙しいから、いつも私達二人で遊ぶしかない。

 外に行って、公園で子供と遊べばって思う人もいるんだろうけど、実はラムちゃん、ああ見えて少し人見知り。ネプギアとユニに初めて会った時も、どう話しかけていいのかって悩んでたから、わかる人はわかるかもしれない。

 それにラムちゃんの中の世界では、今はまだ私とお姉ちゃんとミナちゃんがいれば十分みたい。ネプギアとユニの二人と、これからももっと仲良くして、ラムちゃんの世界を広げてほしいなって私は思う。

 そんなわけだからラムちゃんにとっては遊び相手に私達のうち誰か一人でもいれば十分で、無理に友達を増やす必要はないって思ってるみたい。だから公園に行ったって、私と二人で遊ぶだけ。

 ただ、話すきっかけさえできればすぐにでも仲良くなれるのがラムちゃんの魅力。それに物怖じせずにはっきり話せるのもまた一つの魅力。今はまだそれらを発揮する機会が少ないだけで、いつかきっと、ラムちゃんは誰とでも仲良くなれる、素敵な女神様になるんだろうなって思う。

 今はとりあえず、二人と遊ぶのをいっぱい楽しんでほしい。いつか絶対三人は、それぞれをかけがえのない友達として、協力し合いながら国をよりよく発展させていくんだろうなって思うから。

 

 ……私? 

 私は多分、その中には入れないと思う。

 理由とかは色々あるけど、全部まとめて言うならそれは、前世があるからかな。




彼女は諦めている。それに慣れているから。
“いつか”なんて未来(ゆめ)が、自分を苦しめる鎖となることを知っているから。
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