ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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今回は途中で視点変更です。


雪山と彼女の話。
またけんか。/冷たい視線。


 約束をした。大まかに今あるのは二つ。

 一つは大事なヒトと。もう一つは友と呼べるヒトと。

 この調子だともう一人の友達とも何か約束をしそうだけど、そんな流れは多分ないはず。あったとしても、なるべくなら回避したい。約束は、破りたくないから。

 友達にはそういう主義だと言った。嘘ではない。けど、私の思考を全て表現した言葉でもない。

 私が約束を破りたくないのは、やられたら悲しいから。

 ただ、それだけが理由。

 

 

 


 時は進み、場所は移り、ルウィー、教会裏。

 普段は業者か女神みたいな関係者しか通れない扉の近くで待っていた私のもとへ、彼はやってきた。

 

「おっす、お疲れさん」

「ん……」

 

 片手をあげた軽い挨拶と共に缶のホットココアを受け取ると、彼は壁に寄りかかり、自分の分である缶コーヒーを飲む。

 私もプルタブを開けて、一口。

 

 うん、あまい、あったかい。

 

「そんで、わざわざこんなところへ呼び出してどうした? いつもみたく表のロビーで待ってればいいだろうに」

「……すこし、厄介な事情があって。あっちの姿を知ってるあなたには言っておこうと思ったの」

「あっち……ああ、()()()か。どうした? まさか誰かにバレたって言うんじゃないよな?」

「ううん、バレたわけじゃないけど……」

 

 元々利用者が限られている場所。彼が来る前に確認はしたが、念のためもう一回周りに誰もいないか確認して、極力声を抑えながら話す。

 

「……ネプギアとことりが、戦うことになっちゃって」

「……マジか……。ま、そのうち意見の相違とか価値観のぶつかり合いとか、そんな理由で一度はそうなると思ったけどな」

 

 最初こそ驚いたというような反応をするも、すぐに納得した彼へ、もう一つ。

 

「それと、皆をあの山へ連れて行くことになっちゃって」

「……はい?」

 

 意味がわからないよ。とでも言いたげな彼へ、少し憂鬱になりそうな気分で、あのときのことを思い出しながら話していった。

 

 そもそもあの夜の後どうなったのか。

 箇条書きみたいに言えば簡単で。

・起きちゃってたラムちゃんへ「お手洗いに行ってた」と嘘を吐き、

・翌朝には合流したユニと共にイストワールから話を聞き、

・その後ネプギアと同席していたアイエフから私……『氷結の魔女』の話がされ、

・終わったら解散、けどそのまま四人一緒にプラネテューヌで息抜きをしてから帰った。

 って感じなんだけど、四つ目でこうなったきっかけがあって……

 それはカフェでお茶を優雅に……というほど優雅でもないけど、飲みながら四人でこれからの活動について話していた時、私が「ゲイムキャラについて何か手掛かりになりそうな場所があるかもしれないから、行ってみる」と言ったのがきっかけ。

 そしてそこから……まぁ、なんだかんだあって、じゃあ一緒に行こうかと。

 

「いやいやいや、そのなんだかんだの部分が知りたいんだが!?」

「……言いたくない」

「そ、そうか……」

 

 声色にも不機嫌さを出してしまって、彼もそれで引き下がった。「あ、こいつまたなにかやらかしたのか」と表情が語っていたけど、それに反応せず、「そういうわけだから気づかれないように気を付けてね」と話を終えて、すっかり冷めてしまったココアを飲み干してから教会内へ戻った。

 

 

 


「……ねぇ、ネプギア」

「ユニちゃん? どうしたの?」

「いや、その……ふたりのことなんだけど……」

 

 改めて忘れ物がないか確認していた手を止めてユニちゃんへ向き合うと、ユニちゃんはチラチラと視線をある方向へ向けながらそう言う。

 その視線の先へ目を向けると、そこにはむすっと頬を膨らませてすごく不機嫌そうなラムちゃんと、そのそばで困り顔のミナさんの姿。

 それを見て、ユニちゃんの言いたいことがなんとなく見えてきて、私も思わず苦笑してしまう。

 

「あはは……だ、大丈夫だよ。ふたりはとっても仲良しなんだから」

「そ、そうよね。大丈夫……よね?」

「うん。前のときもそうだったんだから、きっとすぐに元通りになるよ」

 

 前にふたりがケンカ(?)しちゃったときも、次の日には元の仲良しな双子に戻ってたから。きっと今回もそうなる。

 なんて、曖昧な希望だけど、なんとなくそうなるんじゃないかなって思うから、ふたりのことを心配しているユニちゃんに優しくそう伝える。

 

 うん。きっと、大丈夫だよ、ね?

 

 ユニちゃんの心配に影響されて、私も少し心配になってきたとき。部屋の扉が開いて、ロムちゃんが男の人を連れて戻ってきた。部屋に入ると二人は別々の方向に動いて、彼は私達の近くへ。「お久しぶりです」と互いに挨拶して、少し会話を交わしてから、彼は少しだけ困ったように眉を寄せながら私達へ訊いてきた。

 

「ところでお二方にお聞きしたいことがあるのですが……」

「あ、はい。答えられることであれば」

「ではお聞きしますが……あの二人は何故ケンカを?」

「え、えぇっと……それは……」

「ロムはなんて言ってましたか……?」

「皆さんがプラネテューヌでお茶をした、ということと、そのときいろいろあって、それがきっかけでお三方が彼女と共に山登りをすることになった、ということだけ。その“いろいろ”の中身までは知りません。本人から言いたくないと言われてしまったので」

「なら私達も、あんまり言わないほうがいいのかな……?」

「それは……どうでしょう?」

 

 彼はそう言いながら、壁際でぽつんと一人でいたロムちゃんへ向くと、その視線に気づいたロムちゃんは一瞬視線を合わせて、

 

「……言いたくない」

 

 とすぐにそっぽを向いて、無表情でそう言った。

 

「えっと……それってつまり……?」

「お二方から聞く分には何の問題もない、ということですよ」

「よく今ので理解できましたね……」

「伊達に彼女の世話をしているわけではありませんから」

 

 ユニちゃんの言葉に、当然です、というように返す彼。

 私もロムちゃんともっと仲良くなれたら、ロムちゃんの短い言葉から、ちゃんと意味をくみ取れるようになるのかな……?

 そう思いながら、ロムちゃんからの許可(?)も貰ったので彼へ何があったのか話す。

 

 ……にしてもロムちゃん、無表情だったけど少し寂しそうに見えたのは気のせいかな……?

 

 

 

 あの日、お出かけの終わり際に寄った喫茶店で起きたこと。そのときの会話を一部抜粋すると……

 

『わたしもロムちゃんといっしょに山に行きたい! いっしょにいたいー!』

『で、でも、あの山はラムちゃんにはあぶないから……』

『わたしだっていーっぱいしゅぎょーして、強くなったのよ! そりゃユニには負けたけど……でもでも強くなってたでしょ!?』

『う、うん……いっぱい頑張ったの、ちゃんと伝わったよ……? でも……』

『でもなによ! ロムちゃんはわたしといっしょがイヤなの!?』

『ちがう……! ラムちゃんといっしょなのがイヤなわけじゃないよ……! でもラムちゃんには危ない目にあってほしくないし、それにっ……! ぁ、いや……』

『それになに!? ロムちゃんってばいっっつもホントのこと教えてくれないの、なんで!?』

『ひ、ヒトには言いたくないことぐらい、私にだってあるの! いくらラムちゃんが相手でも全部を言うと思ったら大間違いだよ!』

『なぁっ!? わたしはロムちゃんに内緒にしてることなんてないのに!』

『そんなのどうでもいいよ! 内緒にされても嘘つかれても私は別にいい! でも自分がそうしてるからって私にそれを押し付けてくるのは嫌!』

『うぅっ……! ロムちゃんなんて……ロムちゃんなんてぇ……!』

『ふ、二人とも落ち着いて!』

『ほ、ほら、頭に血が上った状態じゃ、ちゃんと話し合えないわよ。いったん深呼吸して……』

『私は別に怒ってない!』

『わかった、わかったわよ。いいからほら、深呼吸』

『っ………!』

『え、えっと……そうだ! ロムちゃんがイヤなのは、ラムちゃんが危ない目に遭うことなんだよね? だったら私とユニちゃんも一緒に行けば、いざというときに守れるんじゃないかな?』

『……まあ、否定はしないけど』

『なら決まりだね。あっ、えっと……ラムちゃんとユニちゃんもそれでいいかな……?』

『なに本人を差し置いて勝手に決めてるのよ。……と、言いたいところだけど……ま、まあ、別にいいわよ。アタシも付いていってあげるわ』

『う~……ネプギアに決められるって、なんかしゃくぜんとしない~』

『えぇ……?』

 

 

 

「と、いうことがありまして……」

「……いやはや、本当にケンカしていたとは……」

「ケンカしたってこと、ロムから聞いたんじゃなかったんですか?」

「いいえ、全く。しかし一目瞭然ではありますから。どちらも不機嫌なのと、その間に漂う空気が明らかにケンカしているときの空気です」

「た、確かに……」

 

 ラムちゃんはロムちゃんが戻ってくると、不機嫌そうな表情から悲しそうな、落ち込んだ表情でロムちゃんのことをチラチラと見ていたけど、ロムちゃんが無表情のまま全くラムちゃんと視線を合わせず、顔も反らしてつーんっとした態度だから、ラムちゃんはまた怒った表情になって、こっちもまたつーんって顔を反らしちゃって。

 誰がどう見てもケンカしてますって雰囲気のふたりに、ミナさんは心配で仕方ない様子。

 それを見た私とユニちゃんは顔を見合わせて、思わず困ったように苦笑してしまう。

 そんな私達へ、彼は考える素振りを見せ、訊いてくる。

 

「ふむ……ネプギア様とユニ様には何か、お二人を仲直りさせる案はございますか?」

「え? うーん……私は、時間が経てばそのうちケンカしていたことを忘れて仲直りしたり……なんてことぐらいしか思いつかなくて……。ユニちゃんは思いつく?」

「全然。ふたりがケンカしていること自体稀なのよ。この前のだって、アタシ達が何かする前に終わってたし」

 

 どっちも思いつかない。その返答を聞いた彼は頷くと、優しい表情で言った。

 

「であればここはひとつ、私が彼女を刺激してみましょう。もっともどう転ぶかは、彼女次第ではありますが」

「刺激……?」

「ええ。少々お待ちください」

 

 軽く頭を下げてから、彼はロムちゃんへ近づいていく。平均的な身長の男性ではあるものの、小柄なロムちゃんは見上げないと顔が見えなくて、そっぽ向いていた顔をやや上へ。

 そこまで見えたところで私の位置が悪くてロムちゃんの顔が彼の体で隠れてしまった。だから今ロムちゃんがどんな表情をしているのかは見えなくて、あまりにも小声だからなのか声も聞こえない。

 けど彼が少し身振り手振りをしたから何か言ったんだと思う。次にロムちゃんの顔が見えたとき、その表情は無よりは変化していて、スタスタとラムちゃんへ近づくと、一言。

 

「……準備ができたのなら、行こ」

 

 そう、いつもラムちゃんに声をかけるときに感じる優しい雰囲気は一切なく、ただ淡々とした声色でそう言った。

 

「……うぅっ……!」

 

 予想とは遥かに逸れた発言に静まり返る部屋で、最初に声を発したのは言われた本人であるラムちゃん。

 けどそれは、声は声でも悲しそうなうなり声。大好きな人にそんな態度で接されるのがショックで悲しいけれど、自分が悪いわけじゃないと意地を張っているからこそ素直に謝れない。そんな気持ちがこもっているようなうなり声で、精いっぱいロムちゃんを睨みつける。

 けどロムちゃんはそんなラムちゃんに一切態度を崩さず、くるりと反転してまたスタスタとラムちゃんから離れる。そして扉のドアノブに手をかけて、振り返って一言。

 

「……行かないなら、それでもいいよ」

 

 それだけ言うとロムちゃんは出て行っちゃって、いつものロムちゃんらしくない冷たさに私達が呆気に取られている中、最初に動いたのは彼。「先に行って、いつでも出発できるようにしておきますね」と和やかな笑みでそう言って出ていく。

 それでようやく私達も置いて行かれないよう慌てて荷物を持って、全員で外へと向かった。

 今のロムちゃんは私達を置いて先に行ってしまうかと思えるほど、冷たさを含んでいるように感じたから。

 

 そして外へと向かう道中、私は彼へ気になったことを質問した。

 

「あの、さっきロムちゃんにはなんて言ったんですか?」

「その……準備が出来ているかどうか、一言でもいいから確認してきては、と」

「え……それでロムちゃんはあの発言を……?」

「まさかああ転ぶとは思いませんでしたね」

 

 予想外だった、と言う彼だけど、まるでこれが軽いことだと思っているとばかりに笑みを浮かべる。優しいものでもなく、私達を落ち着けようとしているものでもない。

 ふたりがケンカしている。悲しいはずの状況を前に、彼は楽しそうに笑みを浮かべていて……

 

「だって、ケンカするほど仲が良いって言うでしょう?」

 

 と思考を読んだように、私と目を合わせて理由を告げた。

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