ロムに憑依しちゃった話。(仮)   作:ほのりん

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ぎょうかいはかば。

 お姉ちゃんが出発して、私も教会を出てすぐ。

 私が向かった方角は、ギョウカイ墓場。まさに今、お姉ちゃん達が倒しにいく、犯罪神が封じられている場所。

 調べたところ、様々な要因で“死”を迎えたゲーム機やゲームソフトが最後に行きつく場所らしい。

 その起源は不明で、文献によればその場所はある日突然不毛の地となり、“死”が集まるような場所になってしまったらしい。その場所は元々どんな場所だったのか。そこまでは調べ上げていない。

 前世の私の記憶に、そんな場所は存在しない。だからそれは私が死んでから出来たのだろう。もしかしたら私が知ってる土地が、私がいない間に変化してしまったのかもしれない。

 もしそうだとしても、昔と今とじゃ地形に差がある。昔はあった山は今はなくて、逆に知らない山が増えてたり、なんてことも。

 だからもし知っていたとしても、気付けるかは分からないだろう。

 

 山越え谷越え……って、ほとんど雪山登りで、魔法で身体強化と防寒結界を展開しながら素早く登って降りていく。

 右耳には周りの雑音が入るけれど、左耳には複数人の声が聞こえている。

 けど、私の周りには人はおろか、モンスターだっていない。

 なのに聞こえてくる理由は……

 

 盗聴魔法パート2、なんて。

 

 お姉ちゃんに渡したお守り。小さな巾着のようなその中には、魔法陣が書かれた紙が入っている。

 かけた魔法は1つだけ。お姉ちゃんの部屋に仕掛けたのと同じ、盗聴魔法。

 けど、ほんの少し違って、どう違うかっていうと、周波数の違うアンテナを立てたようなもの。ラジオのチャンネルが違うとも言えるのかな。

 今のところこの魔法は『お姉ちゃんの部屋』と『お守り』の二つだけ。

 私がこの魔法で同時に聞けるのは両耳を使って最大2つだけど、両耳を使うと自分の周りの音が完全に聞こえなくなる。二つの音を合わせることはできなくて、一つずつしか無理。

 今はお姉ちゃんの部屋を盗聴したところで人もいないから無音だし、一人でいるときに両耳を使ってしまえば聴覚での警戒ができなくなるので、必要のない方は置いといて、今はお守りに仕掛けた方のみを聞いている。

 その耳に入ってきた声から情報を整理すると、どうやらお姉ちゃん達はまずプラネテューヌに集まって、作戦の最終確認をしてから、ギョウカイ墓場に赴くのだと。

 今はまだお姉ちゃん達はプラネテューヌにいるみたいで、どうやら最終確認みたい。お姉ちゃんの他に紫、黒、緑の女神三人の声と、あちらの教祖の声が聞こえる。あれ? でも他に聞こえるこの声って……

 

『大丈夫? やっぱり残ってた方が……』

『ううん。私も行く。私だって女神化して戦えるんだもん』

 

 先の声は紫の女神で、その後の声は……

 

『……わたくし達が言うのもあれですが、もしダメであれば、逃げてくださいな』

『あなたは私たちの補助をしてくれたらいいから』

『もしものときは、無理しないように』

 

 続く言葉はお姉ちゃん達の、「ついて行く」と返事した声の主を心配する声で。

 

『ネプテューヌさん、ノワールさん、ブランさん、ベールさん。そして()()()()さん。皆さんに今、ゲイムギョウ界の未来がかかっています。どうか、犯罪神を倒し、ゲイムギョウ界の平和を取り戻してください』

『うんっ!』

『ええ!』

『わかったわ』

『もちろんですわ』

『頑張ります!』

 

 …………。

 ほうほうほう、ほぉう? そーゆーことですか。

 実はお姉ちゃん達、余裕ぶちかましてますね? 犯罪神なめてますね? 

 それでネプギア(おもり)付きでも勝てると思ってるんですね? 

 なぁるほどなるほど。よぉっっっくわかった。

 

 

 

 あ、これ負けるな、女神。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 それからお姉ちゃん達が女神化して、ギョウカイ墓場へ向かっている間も、私は足を止めずに進む。

 ようやくギョウカイ墓場と思われる禍々しい雰囲気を感じる場所が見えてきて、少し休憩していると、少し遠くの上空を5人の女神達が飛んで行った。向かった先はもちろん、ギョウカイ墓場。その中心の一番禍々しい力を感じる場所。

 そこへ向かうお姉ちゃん達の後ろ姿が小さくなったころ、私も動き出す。お姉ちゃん達と同じ場所へ。

 

 

 

 『不毛の地』。その表現は確かに合っているようで、少し違うように感じたのが、足を踏み入れて感じた最初の印象。

 確かにぺんぺん草さえ生えていないような場所だけど、それは植物ができない場所、というより、()()()()()()()という方が正しい気がする。

 だから“死”が集まる。代わりに“生”が寄ってこない。

 けど、少しの例外はいるもので、ゴーストタイプのモンスターはそれなりにいるみたい。ゴーストタイプのモンスターは動いて、活動している。つまり生きてはいるのだけど、どちらかというと死に近いから、この地は居心地がいいのだろう。あるいは彼らも昔は別のモンスターで、死んでその体になってしまったのか。

 それはさておき、彼らを適当にあしらいながら、進む。お姉ちゃん達の後をつけるように。

 

 にしても、なんだか初めて来た感じがしない。だけどこんなところ、私の記憶にないはず……

 ……うん。今の私はもちろん来てないし、前の私の時も死んだ土地なんてなかったはずだから……

 

 パチンッ。

 

「誰!?」

「っ……」

 

 突然聞こえた音に体をビクッと震わせ、音がした方を見れば私の足元で、声は魔法からではなく、直接両耳に聞こえた。

 片足をどかすと、どうやら気付かぬうちに携帯ゲーム機の残骸らしきものを踏んでいた。音はプラスチックが割れたもの。

 そして、私が隠れるほど大きな岩の向こうから、誰かが近づいてくる気配。

 

 まずいまずいまずい。思考に夢中で近づきすぎた。気付かれた。

 どうする? どうすればいい? 

 すぐに逃げる? だめ、こんなところで逃げても私だってバレる。

 隠れる? だめ、隠れる場所なんてない。

 いっそ姿を現す? どうしてここに来たんだと怒られる。

 どうしよう、どうしよう。

 今の私にはこの三択ぐらいしか思いつかないし、もしこの中から選ぶんだったら……

 

「そこね! って、なんで……!?」

 

 考えているうちにタイムアップが来てしまって。

 私に剣を向けたのは、女神化した紫の女神。その剣先は、瞳は、私を捉えていた。

 相手が私だと知った紫の女神……ネプテューヌは、困惑した表情で、どう声をかけたらいいのか迷いつつ、とりあえず剣を下ろす。私もそれで強くなりつつあった警戒心を、元の強さに戻す。

 やはり相手が女神だとしても、武器を向けられているとどうしても警戒心が強くなってしまう。それを相手に悟らせないようにするのも大変なのに。

 さて、この場をどう切り抜けるか……

 

「おい、どうしたネプテューヌ。そこに何があった?」

「ぶ、ブラン……えっと、その……」

 

 訊いたのがお姉ちゃんだからか。いつもの彼女らしからぬ言葉の詰まり具合に、疑問に思ったんだろう。もう一人……お姉ちゃんが近づいてくる気配がして、私はそれに逃げも隠れもせずに、お姉ちゃんと視線をぶつける。

 

「なっ……!? ロム!? お前、どうしてここに……!?」

「…………」

 

 お姉ちゃんの疑問に、どう答えれば少しは穏便に進むか悩んで、でも結局怒られるよね、とも思って。

 私は悩んで、お姉ちゃんは動揺して、その場に沈黙が少しだけ流れて。

 先に口を開いたのはお姉ちゃんだった。

 

「……ロム。お前、どうやってここまで来た」

「……魔法で、いっぱいがんばった」

「魔法ってお前……」

 

 本当のことだから、嘘も誤魔化しもしてない。魔法で何を頑張ったのかは言ってないけど。

 それ以上は何も言わない私に、お姉ちゃんは頭をガシガシ掻いて、次の質問をしてきた。

 

「じゃあロム。なんでここに来た?」

「……お姉ちゃんたちが心配だったから」

 

 これも本当。でもそれ以外にも理由はあるのだけど。

 ……そういえばネプテューヌの姿がない。向こう側から驚いた声が聞こえてきたから、多分私がいるって残りの三人に教えに行ったのかな。

 

「留守番、頼んだよな?」

「ら、ラムちゃんは教会にいるよ……?」

 

 多分今頃寝室には、布団がこんもり膨らんで、中からは何かをすする音が聞こえるんじゃないかな、と思うけど。

 

「お前も教会にいなきゃダメだろ! これは遊びじゃねえって言ったよな!」

「……だって……」

「だってじゃねえ! いいからさっさとお前は帰れ!」

 

 そう言って、背を向けるお姉ちゃん。

 強い言葉で、怒鳴られる。

 けど言葉の裏にあるお姉ちゃんの心配を感じ取れる。

 その心配は私のことを想ってくれてるからこそのもので、それ自体は嬉しく思うけど。

 私の心の中にあるお姉ちゃん達への心配とは、強く反発するものだから。

 

「……お姉ちゃんだって……」

「……?」

「……なんでもない」

 

 「お姉ちゃんだって、これが遊びじゃないってホントに分かってるの?」、と。そう言ってしまいたい。

 けど、そう言ったところで、お姉ちゃんたちはここまで来てしまったから。

 今言っても遅いから。

 

 それにどうせ、どっちにしてもお姉ちゃん達の実力は足りないから。

 

「……わたしは帰らないから」

「っ……お前……っ!?」

「……!」

 

 お姉ちゃんの怒鳴り声が響き渡る前に、私達は敵の存在を感じ取った。

 強大な力と、邪悪な気配。勢いよく近づいてくるその敵の気配に、私達の間に緊張の糸が張り詰めた。

 

「……どうしても帰る気はねえんだな?」

「うん」

 

 その問いに即答すると、お姉ちゃんは一拍置いて、言った。

 

「……わたしが逃げろって言ったら、絶対逃げろ。それが条件だ」

「……わかった」

 

 ここで更に言い合ってたら、敵が来て襲われる。

 だから私達はそこで妥協して、他の女神達と合流した。

 やはりネプテューヌはすでに他の女神達のとこへ合流していて、私のことを話したようだ。私がこの場にいることは驚かなかったけど、お姉ちゃんと一緒に来たのには驚いていて、お姉ちゃんに「どうして帰らせなかったの」と問い詰めていた。それをお姉ちゃんは「仕方ねえだろ。強情だったんだからよ」と返す。

 他の女神がお姉ちゃんを責めている間、ネプギアは私に近付いてきた。

 

「えっと……ラムちゃんはどうしたの?」

「教会でおるすばんちゅう」

「そ、そっか。じゃ、じゃあどうしてロムちゃんはここに……?」

「それは……」

「それは?」

「……お姉ちゃ──」

 

 ドォン……

 

 続いて言った言葉は、敵の派手な登場によって、途切れた。

 土煙が舞う。音がした時点で全員武器を構え、警戒していた。

 

 瞬間、細い何かが空気を斬り、風圧で煙が晴れる。

 中から姿を現したのは、女神のプロセッサによく似た意匠の装備を纏い、まるで死神のような鎌を持つ、絶世の美女だった。

 そのスタイルから醸し出される雰囲気は、まさに妖艶。ただそこにいるだけで多くの男を魅了できるんじゃないだろうか。

 

 ただし私達にとっては敵である。

 

「……ほう。ネズミが入り込んだと思えば、女神か」

 

 第一声がそれなのが、少し似合ってしまうと思うほど、上から目線が似合う女性。それが私が彼女に抱いた第一印象。

 そんな彼女の力は膨大で、それと同じくらい感情の力も強い。

 敵意。殺意。憎悪。そして──愛。

 最初の三つは明らかに私達へ向けられているのは分かる。それも強い。殺気で人を殺せるって、これぐらいのものを言うんだろう。昔はたまにだけど向けられていたから、懐かしいとさえ思ってしまう。

 最後の一つは、もちろん犯罪神へだろう。でもその感情は、もはや狂ってるように見えるほど、強く、固い。

 こういうのを狂った愛っていうんだっけ? 

 

「……あなたは?」

「我が名はマジック・ザ・ハード。犯罪神様により生み出された、四天王の一人」

「っ……!」

 

 誰かが息をのむ。それほどまでに今の言葉は衝撃的だったか。

 まあ四天王ってことは、犯罪神の次ってことだし、それもそうか。

 ……って思ってたんだけど。

 

「まさか犯罪神が自分の手で手下を作ってたなんて……」

 

 あ、そっち。

 

「ふん。四天王だからなに? 封印も完全に解けてないやつが作った手下なんて、大したことないじゃない」

「貴様……犯罪神様を侮辱するつもりか……!」

「ええ。そんな毎回女神に負けるようなやつ、私の相手じゃ──っ!?」

 

 ノワールがそう言い切る前に、彼女の身体はぶっ飛ばされ、ガラクタの山に埋もれる。

 誰がやったかはもちろん、ね。

 

「……どうやら貴様らは死にたいようだな」

「っ……みんな、注意して!」

 

 ネプテューヌの言葉に、ノワールさんを除いた私達はマジックと距離を取る。

 その間、マジックは動かない。一人一人自分達が攻めやすい位置へ移動するというのに、見向きもしていない。

 それがはたして余裕なのか。その余裕はどこまで持つのか。

 それは、今目の前で繰り広げられるだろう戦いで分かることだ。

 

「ベール! わたしに合わせろ!」

「了解ですわ!」

 

 そう言って、お姉ちゃんのハンマーとベールの槍がマジックへ襲い掛かる。そのコンビネーションは決して悪くはない。

 けど、それをマジックは容易く鎌で捌く。

 二人が攻めている間に、飛ばされたノワールも、ガラクタ山から勢いよく飛び出てきて、復活。その顔は怒り心頭といった具合で、全速力でマジックとの距離を詰める。

 ネプテューヌも両手剣を手に、攻撃を始めていた。

 どれも常人には出せない動き。それが女神のスペックではあるけど、相手もまた人の類じゃない。

 

「ぐあぁ!」

「お姉ちゃん……!」

 

 これまたノワール同様、ぶっ飛ばされるお姉ちゃん。

 連携が崩れれば、被害が及ぶのは相方も同じ。

 

「くはっ……!」

「ベールさ──」

『きゃあっ!』

 

 ベールも飛ばされ、ネプギアが叫ぶ。

 が、その声が途切れる前に、残り二人の声も聞こえた。

 あらら……予想通りというか、予想以上というか……

 

「ふん。その程度では、犯罪神様の御足もとにも及ばん」

「っ……、この程度で……勝った気でいるんじゃないわよ!」

「まってノワール! あなた一人じゃ……!」

 

 マジックの言葉が癪に障ったのだろう。再び突撃するノワール。

 ネプテューヌの言葉が終わる前に飛び出して行って、剣と鎌を交わせる。

 キンッ、キンッ、と金属同士が激しくぶつかる音が響き、火花が散る。

 何度も素早く剣を振るノワール。それを涼しい顔のまま鎌を動かし、防ぐマジック。

 どうせまたマジックがノワールを弾き飛ばして、またガラクタ山に埋もれる。

 そう思った。けど、

 

「はぁっ! 『レイニーラトナビュラ』!」

 

 ベールもまた、マジックに接近し、その槍で素早く連続で突く。

 反撃を突く隙も与えない、女神二人による怒涛の攻撃。

 さすがのマジックの表情も、変化する。

 

「これでも食らいやがれ! 『テンツェリントロンペ』!」

 

 ハンマーごと身体を回転させ、その遠心力を利用して重い一撃を繰り出すお姉ちゃん。

 素早い攻撃の連続、その間に叩き込まれた重い一撃を、さすがのマジックも防御が間に合わずその身体にくらってしまう。

 けど……

 

「……その程度か?」

「なっ……っ!?」

 

 目を見開き固まったお姉ちゃんの身体を、鎌が突き飛ばす。

 そのまま一緒に、二人もまた地面へ身体をぶつけた。

 

「っ、ネプギ……っ」

 

 ネプテューヌが自分の妹の名を呼ぼうとして、その妹の姿を見て言葉をひっこめた。

 なにせ、当のネプギアは、

 

「ぁ……ぁぁ……」

 

 なんて。見るからに恐怖で震えていたから。

 ああほら、事前に思ってた通り、彼女は力にはならない。

 でも、当然といえば当然なのかな。これはモンスター相手とはわけが違う。彼女が生まれてまだ数年。その間に一体何回対人戦を経験したのだろう。ここ数年は犯罪神の影響を除いたら平和も平和。平和ボケした人間が量産されてるくらいなんだから、彼女が悪意を持った相手に対して、その剣を振るう機会なんてあったかどうかも怪しいぐらい。

 その程度の経験しかしてない奴が、こんなとこで女神が全く歯が立たない相手を見てれば、そりゃ恐怖に飲まれる。

 私だって、何も知らないロムとしてここにいれば、きっと恐怖で震えて、泣いていたかもしれないよね。

 だけどここにいるのは()。この程度では恐怖を感じない。感じろって方が無理だ。

 だからって、恐怖以外を感じないわけじゃない。

 お姉ちゃんが無様にぶっ飛ばされて、地面に叩き付けられて、傷を負って。

 他の女神もまた傷ついて。

 何も感じないわけがない。

 

「……私は……」

 

 私はただ、女神(お姉ちゃん)達がどのように負けるのか。どんな相手に負けるのか。それを見に来ただけ。

 それが、私がさっきネプギアに言いかけた言葉。

 既にその目的は果たしてる。

 敗因は圧倒的戦力の差。敵は犯罪神が生み出した(しもべ)

 その両方を知れた。敵の力がどの程度かも。

 

 そして、今の腑抜けた自分では、彼女には勝つことができないことも、悟った。

 

 別に今ここで倒してしまおうと思ってきたわけではない。本当に、たださっきの二つが知りたかっただけ。

 正直お姉ちゃん達が負けようと、殺されようと、「その程度だった」と心の中で彼女達との物語にピリオドを打つ。そのままゴミ箱に放り込まれて、処分されて、忘れる。いつか彼女達がいたことを思い出しても、思い出はぼやけて忘れて、そのうち完全に思い出せなくなる。

 いくら私がお姉ちゃんを好きだと言っても、思っても、結局は私のなかではその程度にしかなってない。

 そう思ってたのに……

 

「……ほんとうに、家族って厄介……」

 

 目の前では、敵と女神が戦っている。ネプギアの協力を諦め、一人突っ込んだネプテューヌ。何度ぶっ飛ばされても諦めず立ち向かうお姉ちゃん達。

 これが他人(人間)だったら滑稽だと馬鹿にするのに。

 身内(女神)だと、カッコいいと思ってしまう。

 そしてそんな彼女達を、私は少しだけ、支えたいと思えたから。

 その分くらいなら、支えてあげる。

 

「これは……」

 

 四つの魔法陣が、お姉ちゃんの足元に展開されて、そこから魔法の効果が表れる。

 効果は二つ。四つ全てに共通する、治療魔法。

 もう一つは、それぞれで違う。

 紫は攻撃力。

 黒は素早さ。

 緑は魔法力。

 白は防御力。

 それぞれ違う色の魔法陣は、それぞれの色に合った女神の下で、彼女達の能力を強化した。

 

「もしかして、これ……ロムが……?」

「……わたしだって、戦えるから」

「……ああ!」

 

 驚いたような顔をしたお姉ちゃんは、私の言葉に力強く頷き、再び敵と激突する。

 他の女神もまた、敵を倒そうと動く。

 先ほどよりも一つ一つが高威力で。目では追いきれない速さで。衣のように纏った風で。ちょっとやそっとじゃ飛ばない頑丈さで。

 支援魔法による能力の上昇は、確実にマジックとの差を縮めていた。

 

 だからって、差を全て埋めることは、やっぱり不可能で。

 きっとこの程度じゃ勝てない。勝てない戦いを延長させているだけ。

 お姉ちゃん達の苦しみを、長くさせているだけ。

 それでもいいから。だからみせてよ。

 女神(あなた)の在り方を、私にみせて。




彼女は見つめる。彼女達の在り方を。
彼女にとってそれは、夜空の星のように、儚く美しいものに見えるから。

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