主人公の前に初期で現れて圧倒的な強さを見せつけて終盤で味方になってすごくかっこよくなる悪役になります『リメイク』   作:??????

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プロローグ
始まり


前世の記憶というものを信じるだろうか?何故こんな馬鹿げた話をしているかと言えば、ついこの間前世の記憶がよみがえったからだ。そして気が付いてしまった。あれ此処、前世で読んでたラノベの世界じゃね?という事実に。

 

まあ、最初は混乱したものの別段どうということはなかった。前世の記憶と言っても、他の人の人生をドキュメンタリーで見たような感じだし、ラノベの世界に似ているからと言っても個人的にはここが現実なのだから仕方がない。

 

 

 

一つ問題があるとすれば、俺の生まれだった。この問題を整理する上で、この世界について整理しないければならない。

 

魔物と呼ばれる謎の生命体から世界を守るため魔法師という存在が一般的になった現代の東京もどきを舞台にしていて、主人公はひょんなことから学校の帰り道で傷だらけの少女を見つけて助けてしまう。それが、名家のお嬢様でその出会いから魔法使い育成のための名門の高校に通いだして魔法使いの犯罪を取り締まる組織に入ることになるという王道なストーリーなのだ。

 

さて、この世界で暮らす上で問題となることが二つある。一つはこの世界はモブに厳しいということだ。もう主人公の周りマジで治安悪い。魔物が街を襲撃にくるし、犯罪組織は学校にもぐりこんでくるし…しかも事件が起こるたびモブが必ず死ぬ。

 

二つ目は、俺がヒロインの一人である柊雪花の兄ということだ。え?何が問題なのかって?確かに一見、モブではなくなるので死にづらくなったように見えるのかもしれない。だが!この世界では主人公陣営の人間であろうと、死ぬときは死ぬのだ!実際問題、前世の俺が最後に読んだ最新刊ではすでに柊雪花は死んでいる。マジで由々しき事態である。そもそも、柊家自体に問題があるのだ。父親は怪しげな人体実験してるし、ストーリー上でのラスボスの組織の幹部が出入りしてるし。最後には真実に気付いた雪花は父親に捕まり人体実験の披検体だ。

 

 

 

これを踏まえたうえで、俺が生き残るための生存戦略を考えた。まず、ストーリーが終わるまでは平穏な生活を送るっていうのは無理だろう。主人公が速くラスボスを倒してくれることを願う。目下の問題は、柊家だ。あの父親を倒さないことには俺も人体実験の被検体にされかねない。モブに厳しいという問題は、モブにならず適度に目立ってストーリーが改変されない程度に物語に関わればいいのであまり問題ではない。

 

 

 

とりあえず逃げるにしても戦うにしてもある程度の力が必要だ。だから俺は、名家の権力をすべて動員してまず強くなることを決意した。今までの訓練で、俺にはかなりの魔法適性があることが分かっている。人は一つか二つの属性の魔法しか使えないというのが原則だ。特別な才能があるものでも三つだ。

 

例にもれず俺の属性もまた二つだった。だが俺の場合、柊家の特色でもある氷属性、その適正がずば抜けていた。魔力量もそこそこ多い。そして何より魔力の扱いにたけていた。名家の英才教育様様である。

 

 

 

というわけで、俺は使用人たちから教えられる魔法の基礎的な知識以外にも、将来必要になるであろう魔力制御の訓練を始めた。使用人たちは俺のことを天才だと評価したが、俺を上回る才能を妹が持っているのを知っている身からすればなんとも複雑なものだ。俺は主人公ではないので、才能があると言ってもそんなに簡単に力が身に着いたりしない。ただ、俺にアドバンテージがあるとするなら、未来の知識と効率のいい鍛錬の方法、そして早めに訓練を始めたという時間的なものだけだ。俺もできることなら主人公補正が欲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして6年の月日が流れた。俺は14歳になり、妹は11歳だ。予想に反して、鍛錬の成果は想像を遥かに超える形で出ていた。俺は現在当代最強と噂されるほど強くなっていた。まあ、最強といえどもランキングにはラスボスとかは入っていないし割と小さなくくりの中での話だ。数年後には誰かに抜かされるだろうし、終盤では必ず主人公の方が強くなっているだろう。だが、期待以上になったのは変わらない。

 

問題は、父親と柊家をどうにかする算段が立っていないことなんだけど…。ま、まあ、最悪、妹が殺されるまでにどうにかすればいいんだし問題ないよね…。

 

 

 

 

 

俺は数日後この考えがいかに浅はかだったのか知ることになる。なぜなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は記録的な大雪だった。大して雪が積もらない東京でも5cmを超える雪が積もっていた。しんしんと辺りを銀世界に染めていく雪。そして、銀世界を染め上げている赤い血。あたり一面から生えている氷の槍柱も相まって、柊邸は異世界と化していた。

 

「私としたことが……息子の資質を見誤っていた、ようだ……カハッ」

 

氷の槍にその身を貫かれながら、その男柊千里は吐血しながらも笑みを浮かべる。

 

「魔力の暴走で辺り一帯に干渉してみせるとはな…お前はやはり」

 

「もうしゃべるな…」

 

「…ハハハハ。浮かべているのは憐憫か?後悔か?怒りか?」

 

「全部だよ」

 

顔をゆがめる緋色とは対照的に千里は愉快そうに笑っている。

 

「実験は失敗だ。私は、想定を遥かに超えるものを作り出してしまったらしい」

 

「ああ、………俺もあんたも愚かだった。自分の理解を超えたものなど作り出してはいけなかった。その結果がこの惨状だ」

 

「……結局、私の願いは人には過ぎたものだったらしい」

 

「なあ、何がそこまであんたにさせた?」

 

「…緋色………いずれお前にもわかる。愛情とは人を最も狂わせる麻薬なのだと」

 

緋色と千里、二人の会話は驚くほど静かなものだった。まるで音も感情も何もかもを雪が冷やしてしまったかのように。

 

「ひ、緋色ぼっちゃん」

 

二人の間に第三者の声が吹き抜ける。そこには片腕をかばいながら、足を引きずって歩く初老の男性いた。

 

「クハハハッ!ガフッ!?ハァ、ハァ、しぶとさだけは一流だな…翁」

 

「だ、旦那様」

 

未だに事態を把握しきれていない翁は、目を見開き困惑する。氷の槍に貫かれ満身創痍の千里とその場に立ち尽くす緋色。翁にとってその光景を理解するには情報量が少なすぎた。そんな翁を見かねたのか千里は助け舟を出した。

 

「真実が……知りたいのであれ、ば一人で地…下に…行け。用がなく…なれば資料は廃棄しろ。ハァ…ハァ…ハァ、当主としての最後、の命令だ」

 

「そ、それはいったい…これは」

 

「次期当主には雪花がなる」

 

「翁…後のことは頼んでいいか?」

 

困惑したまま立ち尽くす翁だったが緋色の目を見て、疑問をすべて飲み込んだ。その眼は14歳の少年がするには、あまりにも痛々しい、後悔と残痕が混じった眼だったからだ。

 

「ッ……はい」

 

「柊千里は俺が殺した。目的は不明。柊千里を殺めた後に使用人を虐殺。屋敷を半壊させ、逃走を図った。いいな?」

 

「…よろしいのですね?」

 

「ああ…どうやら俺は思っていた以上に周りの人間のことが好きになっていたらしい」

 

無邪気な少年がするには何とも儚く痛々しい笑みを浮かべ、自嘲気味に翁に笑いかける緋色を見て千里は嗤った。

 

「クハハハハ…ひいろ…お前は必ず私と同じ道を選ぶ…なぜ、なら———」

 

緋色は、そう言い残して力なく倒れていく父を見ながら、淡く幼い魔力を感じて後ろを振り返る。

 

「お兄様?」

 

「雪花か」

 

庭には、雪花がいた。ここまで走ってきたのだろう。息を切らせながら、朱色の目を見開いている。

 

「これはお兄様が…」

 

雪花は信じられないといった声を出しながら、数歩あとずさり座り込んでしまった。倒れ伏す父とその傍らに返り血を浴びた兄がいれば理解が追いつくだろう。

 

「昔、お前は言ったな。魔法で多くのものを守りたいと。傷つけるためには使いたくないと…。教えてやる。お前の魔法では誰も助けることなどできない…お前は、無力だ。あやふやな理想でなせるものなど何もない」

 

「兄さん、何で…こんな」

 

一面から生えた氷の槍は多くの人間を刺し貫いている。氷も、地面も、赤い血で染まっており、振りだした雪をも赤く染めている。まさに地獄絵図。11歳の少女には、トラウマだ。

 

「フン、俺の目的のために行動しただけだ。いいか、雪花……守りたくばつよくなれ。余計な感情など捨てろ」

 

そう言い残して、緋色は屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

この日、予想外の出来事と自分の言動を鑑みて俺は今後の方針を大きく変えた。そう、これからの俺の方針は———

 

 

 

主人公の前に初期で現れて圧倒的な強さを見せつけて終盤で味方になってすごくかっこよくなるそんな悪役になる。

 

 

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